パーカー・ジョッター新旧比較!(誰得記事)
昔からあるモノでずっと形の変わらないモノってありますよね。例えば、鉛筆や消しゴムなど。時代や使い方によってバリエーションはあるものの、基本の形や機能は変わらないモノ。
そんな中から、昔も今もずっと変わらない不朽のボールペン。パーカーの定番ボールペンであるジョッターについて、新旧のジョッターを比較します。まさに誰得な記事ですが、ご興味のある方はぜひともお付き合いください。
▲黒・グレーグリーンともにパーカー・ジョッター・スペシャル
【はじめに】
パーカー・ジョッターにはバリエーションがあり、ステンレス+プラスチックの「スペシャル」、オールステンレスの「フライター」、カラフルな「コアライン」、彫刻が入った高級な「プレミアム」がラインナップされていますが、私が使うのはステンレス+プラスチックの組み合わせが非常に味わい深いジョッター・スペシャル。
なぜジョッター・スペシャルなのかというと、やはりこの素材からくるレトロなデザイン、パーカーという世界三大筆記具ブランドでありながら1000円ちょっとで買えてしまうリーズナブルな価格。そして、1954年の発売当初からほとんど形が変わっていないという。まさにボールペンのスタンダードと呼ぶにふさわしいペンです。ボールペンとしてはお値段相応であり決して高級感はないですが、確かな仕事をしてくれる相棒として仕事で使っています。
今回比較する二本は、
・1991年USA製のジョッター・スペシャル(黒)
・2014年フランス製のジョッター・スペシャル/レトロエディション(グレーグリーン)
です。その年齢差23歳。
なぜその年代と分かるのか?という疑問にお答えすると、ジョッターのステンレス部分には製造年のアルファベットが刻印されているため、そこから製造年が割り出せるわけです。
ジョッター・スペシャル(黒)には「IIIU」の刻印、レトロエディションには「III J.」とあります。海外のパーカーに詳しいサイト(parkerpens.net)を見たところ、それぞれの製造年は上記の通りとなりました。他にもUK製のジョッターもあるようですので、出合うことがあれば手に入れたいと思います。
そもそも、どうして比較するに至ったかというと、デッドストックのジョッター(黒)を手に入れたことに始まります。
いつものように何気なくヤフオクを見ていると、現行品にはない、ノック部にパーカーのエンブレムが入ったものが出品されており、見つけた0.3秒後にはウォッチリストに登録されていました。こうした過去の産物にお目にかかれるのはヤフオクの醍醐味。出品されている本数からもそれほどレアではないものの、これは手に入れとかなければ…!と、よくわからない衝動に駆られた次の瞬間、
入札→意地でも落札という流れに‥。(ヤフオクあるあるですね)
ボールペンは仕事でもよく使うので何本あっても困らないし、まあ自己投資ということで。ペンを変えると仕事のやる気も上がりますし。
品が届いて、まじまじと見てみると、これはなかなか違いがあるではないか!ということで違いをまとめていきたいと思います。
【ノック部のエンブレム】
今回の購入~比較のキッカケとなったノック部のエンブレム。左が1991年USA、右が2014年フランスです。
うーん、やはりエンブレム入りは文句なしにかっこいいですね。一目惚れしただけのことはあります。肝心のノックのしやすさはというと、悲しいかな、2014年フランス製のほうが押しやすいのです。適度な膨らみがあるからでしょうか。これは23年の進歩でしょう。新しいほうに軍配が上がります。
1991年USAのほうはエンブレム部がくぼんでいて、ノックすると親指に丸い痕がつきます。何回も連続してノックすると軽く痛いです。
ただそこはジョッターへの愛でなんとかするしかありません(笑)
ノック部周りは他にも変更点がありました。
▲左が1991年USA、右が2014年フランス
まず青矢印部ですが、1991年USAのほうがノック部が約1ミリほど長いです。これはエンブレム周りがエッジの効いたデザインのためでしょう。約1ミリ長いことでノック時のストロークもわずかな差が感じられます。
また、オレンジ矢印部ですが、デザインなのかバリなのか分かりませんが2014年フランス製は小さな受け皿のような形をしています。これによってノックした時の感触が変わるわけではないですが、こう比べてみるとデザイン的なアクセントとなっているように思います。
ノック感ですが、ジョッターは「カ、チッ!」としっかりしたノックが心地よいことでも有名です。新旧のノック感の違いとして、
1991年USAは2014年フランスに比べてノックが柔らかく、ノック音も低いです。2014年フランスは音が高い。音が高いと音が大きいようにも聞こえますね。しかしどちらも決して耳障りな音ではなく、音に厚みを感じるのです。
ステンレス部のノック機構のスプリングとリフィルを受けるペン先側のスプリング、二つのスプリングのバランスが厚みのある音を奏でているのでしょう。
少し下に目をやると、クリップが見えます。
パーカー筆記具の特徴と言える矢羽型クリップ部はどちらも同じに見えます。
矢羽の羽根の部分は同じに見えますが…、
実は、
矢の部分に違いがあったのです!
【矢羽クリップ】
拡大めの比較画像です。
矢印の部分を見比べると、1991年USAのほうは矢の溝が二重なのに対し、2014年フランスは一本彫りとなっています。USAがプレス、フランスが彫刻のようにも見えます。これは好みの問題ですが、私は1991年USAのほうがプチ高級感があって好きですね。
矢の下のブランド刻印も2014年フランスは文字が大きくなっています。近年の自動車のロゴのように巨大化したのでしょうか。
私は車もペンもコンパクトにまとまった控え目なロゴのほうが好みです。
矢の部分を横から見た際も若干の違いがみられます。
2014年フランスのほうが挟む部分が太いです。そのせいか、クリップ全体が若干斜めになっています。これは個体差の可能性がありますが、1991年USAのほうがスマートに見えますね。挟み込む力はどちらも同じようです。
ここまでを総合的にみて、過去に作られたほうが繊細な仕上がりに感じてしまうのはなぜでしょう。現代のコストカットの表れでしょうか。
ぐるっと回って、ステンレス部の仕上げと製造国刻印。
ステンレスのヘアライン加工は1991年USAのほうが若干粗い感じがします。指で撫でてみた感じも1991年USAのほうはザラザラ、2014年フランスのほうはすべすべとしています。こちらは技術の進歩でしょうか、近年製造のほうが目が細かく光が反射する感じも滑らか。
刻印の位置も1991年と2014年で違っていますね。刻印自体も、「MADE IN USA」に対して「FRANCE」のみ。実にシンプルです。国名の前にはパーカーのエンブレムが彫られているのですが、エンブレムも近年のものは横長になっています。
ちなみにペンの構造自体はまったく同じようで、プラスチックの部分は入れ替えて使うことができます。23年の差を感じさせない一貫した品質は流石です。もちろん使うリフィルも一緒、軸の先から出るリフィルの長さも全く同じ。パーカータイプのリフィルの生みの親だけあって、軸とリフィルのバランスも素晴らしいの一言。
【まとめ】
さて、新旧のジョッターを比較してきました。個人的な感想としては、ダントツで1991年USA製のジョッターのほうが好みです。
ヘアライン加工以外の各部の細かな仕上げは、間違いなく1991年USAのほうにクラフツマンシップを感じることでしょう。しかし2014年フランスも、ノックのしやすさは負けていません。
ノック部の長さによるストロークの微妙な改善、細かな部分で変更されたデザインや機構など、比較を通してジョッターがジョッターであるために歩んできた歴史を感じることができました。長きにわたって変わらないデザイン、変わらない使いやすさ。パーカー・ジョッターは、これからもボールペンのスタンダードとして使い続けられることだと思います。そして私の愛用の一本であり続けることは間違いありません。
この記事を読んだことで少しでもジョッターにご興味を持たれる方がいれば幸いです。
【おまけ・ジョッターの持ちやすさ】
おまけとして他のペンとの長さの比較です。仕事でよく使うボールペン3本を並べました。
左から、CROSSクラシックセンチュリー、パーカー・ジョッター、ペリカンD200(?)
CROSS :長さ135mm、軸径7.5mm、重さ33g
パーカー:長さ132mm、軸径10mm、重さ12g
ペリカン:長さ134mm、軸径11mm、重さ16g
長さは一番短くコンパクト、太さはこの3本の中では中くらい。個人的にクラシックセンチュリーは少し細いかなと感じるたちなので、太さはちょうど良く重さも一番軽量で扱いやすいです。重いボールペンは嫌いではないですが、樹脂軸の軽さは長時間の筆記にももってこいですね。ジョッターのこの太さ、軽さ、長さが絶妙で持ちやすさに直結しています。
とにかく書いてて疲れないです。先方にペンをお貸しして書いてもらうときもノックは分かりやすくていいです。大切な契約書に署名をいただく際に100均のペンとかだとなんだか申し訳ない感じもしますし。接客業、営業職の方は導入してみてはいかがでしょうか。
それでは今回はこの辺で。
ディスカッション
コメント一覧
刻印情報参考になりました。ありがとうございます。
ノック部周りの受け皿のような形状ですが、クリップの抜け止め対策での形状だと思います。
IIIUなどの旧タイプの形状ですと、ポケットにペンを入れていて、何かに力がかかった場合、クリップ部分がすっぽ抜けて分解な感じとなって、テープや接着剤等で固めないと字を書くには相当難儀いたします。
返しがあることによって強度対策をしたと思っております。
ノック部分に刻印があるタイプはおっしゃるように頻繁に押すと指が痛いですが形状が美しいのでお大事になさってください。
匿名さん
コメントありがとうございます。
なるほど…!
旧タイプと新タイプのクリップ付け根周りの形状の違い、そういうことだったのですね。
これはバリではなく“返し”で、クリップ抜け防止のためのアップデートということで合点がいきました。
情報ありがとうございます!
クリップの強度的な改善では新タイプ、ノックボタンの形状(エンブレム)は旧タイプと、どちらを使うか悩ましいところです。