モンブランとヴァシュロン・コンスタンタン【シグナムとヴァシュロンモデルのボールペン比較】
皆さんこんばんは。
今回は、モンブランボールペンの特別な亜種モデルについて書いていこうと思います。
そのペンとの出逢いは某オークションにて。
もともとマイスターシュテュックのソリテールドゥエ シグナムクラシックのローラーボール(#163)を使っており、その軸柄の美しさとグリップのし易さから、同じシグナムの油性ボールペン(#164)も欲しいな…と。たまに気が向いたときにのんびりとオークションを覗いては、出逢えればいいなというくらいで考えていました。
シグナムクラシックの油性ボールペンというと、なかなかに粗悪なコピー品も存在するため、出品されていたとしてすぐには飛びつかず一度冷静になることが必要です。
冷静になってみても出品物がコピー品(偽物)か本物なのかの判断は難しい時があり、広い知識があってこそたどり着ける境地なのだと思います。
というのも、私は過去にこの亜種モデルを見たことがあり、一度は偽物と判断してスルーしていたため。
実際は列記とした本物で、同じリシュモングループのヴァシュロン・コンスタンタンへモンブランが特別にデザインして捧げたモデルだったという…。
そのボールペンは、
「モンブラン マイスターシュテュック ソリテール #164 ヴァシュロン・コンスタンタン」
ヴァシュロン・コンスタンタンはスイスのマニュファクチュール(時計メーカー)。
私は時計にそれほど詳しい訳ではないですが、時計業界ではパテック・フィリップ、オーデマ・ピゲと並ぶ世界三大時計ブランドの一つだそうです。
うーむ、万年筆の世界三大メーカーは知っていましたが、時計にも世界三大時計ブランドなるものがあるとは、奥が深い。
モンブランのリシュモングループ入りが1993年、そしてヴァシュロン・コンスタンタンのリシュモングループ入りがその3年後の1996年となっています。
ベースはモンブラン マイスターシュテュックのクラシック(#164)。
キャップの素材に貴金属が使われたモデルは「ソリテール」と呼ばれ、胴軸部分が樹脂のタイプは「ソリテール ドゥエ」となります。
しかし、こちらのモデルの位置づけは樹脂胴軸でありながらソリテール。
胴軸にはヴァシュロン・コンスタンタンの「マルタ十字」がデザインされており、素材は樹脂であるものの光の当たり具合により立体的に模様が浮かび上がる特別な仕様となっています。
ラインナップはクラシックサイズのボールペンの他、ル・グランサイズの万年筆は確認できていますが、ローラーボール他のラインナップは不明。(おそらくあると思いますが)
製造本数についても、はっきりした文献は見当たりませんでした。
この美しい胴軸のカットは、ペン全体を見たときのデザインのアクセントでもあり、良好なグリップ感をもたらしてくれる仕掛けでもあると考えています。
繊細に彫り込まれたプレシャスレジン。
溝はそこまで深くはないものの、デザイン上 溝にチリや埃が溜まりやすいため、定期的なメンテナンスは必要かと思います。
口金には「VACHERON CONSTANTIN」のブランドネームとシンボルである「マルタ十字」のレーザー刻印。
このロゴは1880年に商標登録された、聖ヨハネ騎士団が掲げたとされる4つの扇型紋章を結合させたデザイン。
社名の「VACHERON CONSTANTIN」は英語読みすると「バセロン・コンスタンチン」なのですが、2002年頃からフランス語読みの「ヴァシュロン・コンスタンタン」が採用され、今は一般的にこの呼び方となっています。
キャップ部分はソリテールでも一般的なステンレススチールと同じものが採用されており、シンプルなキャップが胴軸の柄をより引き立てているようです。
ソリテール ステンレススチールのキャップは本体がプラチナプレート、キャップリングは梨地加工となっているのですが、この部分がすこぶる傷や摩擦に弱いため、誤って金属磨きクロスやサンエーパール等で磨かないように注意が必要。
クリップリングの背面(クリップと反対側)には、シリアルナンバーが刻まれています。
こちらの個体は「MBKC3PSV5」という9桁の英数字で、アルファベットと数字の並びの傾向から2010年以降に発売されたものと思われます。
(シグナムクラシックは2005年の発売)
モンブランのシリアルナンバーに関する考察については、過去記事のこちら「書くことへのモチベを爆上げするモンブランの銀軸ボールペン」をどうぞ。
クリップ裏の刻印は、「GERMANY metal Pix®」。
クリップリングに製造国(GERMANY)の刻印や、キャップリングにPix®の刻印がないため、クリップ裏に刻印が集結しています。
目立たないところにこうした精密な刻印があるところも、高級筆記具の良さというかワクワクするポイントでもあります。
さて、ここからは 前発のシグナムクラシック#163(ローラーボール)とヴァシュロン・コンスタンタンとの軸比較をじっくり行っていきたいと思います。
(集合体恐怖症の方はブラウザバック案件かもしれません)
まずはシグナムクラシックの胴軸部分アップから。
ダイヤマークの間に配置されたモンブランのロゴとその周りの10個のピース。これが帯状となって、軸の周りに7本配置されています。
とても小さいですが、モンブランのロゴマークがしっかりと分かる精密な刻印。
まさにアートなデザインとなっています。
これ ぱっと見、草間彌生さんの現代アート「かぼちゃ」に見えなくもない。アートファンにも刺さるようなデザインではないでしょうか。
一方、ヴァシュロン・コンスタンタンの胴軸。
シグナムと同じく、ダイヤマークを基点としてマルタ十字が彫られ、その周りには8つのピースが配置されています。そしてこの帯がシグナム同様に軸の周りに7本。
シグナムと比べて鋭利なイメージがあるヴァシュロン・コンスタンタン。
マルタ十字の8つの角が効いています。
2つを並べてみて分かることが、デザインのベースとなる帯の数やダイヤマークは同じ。
刻印の溝の深さはシグナムクラシックの方が深く、ヴァシュロン・コンスタンタンの方が浅いということが分かります。
レジンでありながらまるで貴金属のように輝くエンブレム入りの軸柄。
通常のソリテールのように、胴軸側も金属素材でこの「彫り」が施されたバージョンも見たかったというのが正直なところですが、デザイン、素材、書きやすさを取っても、十分に完成度の高い筆記具に仕上がっていると思います。
口金の刻印比較。
シグナムクラシックは「MONTBLANC – MONTBLANC」、ヴァシュロン・コンスタンタンは「VACHERON CONSTANTIN (マルタ十字)」の刻印。
もはやこちらの両モデルは新品を手にすることが難しく、オークションやフリマで入手するしかないのですが、モニターの画質などにより軸柄でモデルの判断ができない場合は、この口金の刻印で見分けるしか方法がありません。
刻印はシグナムクラシックの方が文字が太めとなっています。
手元のシグナムクラシックはローラーボールのため、直接柄の部分を握って筆記することはないのですが、#163ローラーボールの優秀な点はデフォルトでも十分握りやすい首軸が装備されていること。
これぞモンブランのプレシャスレジン(おそらくグリップ部は金属にラッカー塗装ではなくレジン)。
一方、#164がベースのヴァシュロン・コンスタンタンは、この彫刻でザラついた軸そのものを握って書きます。
ヴァシュロン・コンスタンタンの軸柄を握って書ける喜び。
一般的に軸がステンレススチールのソリテールは滑りがちですが、そういった心配もありません。
軸柄が違う2本のマイスターシュテュックボールペン。
ローラーボールの#163はクラシック用のローラーボールリフィルに対応。リフィルの先にネジ切りがあり、首軸にしっかりと固定できるのもモンブラン ローラーボールの強み。
油性ボールペンのリフィルはお馴染みのもので、ボールペンは全てこのリフィル一種類に対応しているため迷いません。
粘度のある油性インクですが、昔の油性ボールペンように書いていてダマになることもなく、9mm~10mmオーバー径のモンブランのボールペンのどれで使っても書きやすいようチューニングされた素晴らしい油性インク。
ミステリーブラックの油性・水性 書き比べ。
油性ボールペンは油性ボールペンの良さがあり、そして水性ボールペンも然り。
筆圧によって濃淡が出せる油性ボールペンはスケッチやクロッキーにも向いており、私もしばしば絵描きに使いっています。
水性インクは濃淡のないクッキリと読みやすい文字が特徴。
ビジネスシーンの署名にはもってこいですし、もちろん文字だけでなくイラストにも使える、パキッと目が覚めるようなコントラストが魅力。
さて、今回はモンブランがヴァシュロン・コンスタンタンのために作成した特別モデル「ソリテール ヴァシュロン・コンスタンタン」をレポートしました。
皆さんはシグナムクラシックとヴァシュロン・コンスタンタン、どちらの軸柄がお好みでしょうか。
精密に彫られたプレシャスレジンの握りやすさと、光の当たり具合によって表情を変える貴金属顔負けの美しい加工。
モンブランのボールペンはデザインだけでなく、書きやすさも申し分なし。
特にクラシックの#164(油性ボールペン)や#163(ローラーボール)は、男女問わず扱いやすいサイズかつ重量も重すぎないため、まだ使ったことがないという方はモンブラン入門にもお勧めです。
今回の2本は比較的中古市場でも見かけることが多いため、ボールペンが好きな方はもちろん、ヴァシュロン・コンスタンタンユーザーの方が時計とセットで使っても良さそうです(時計はとんでもなく高価ですが…)。
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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