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ローラーボールの愉しさが分かる ペリカンの特別生産品【自然の美観シリーズ「ナイアガラの滝」レビュー 】

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皆さんこんばんは。
 
定期的に使いたくなる筆記具、ローラーボール。
そんな中から、今回はペリカンのワンタイムエディション「自然の美観シリーズ」から、記念すべき第一弾となる「ナイアガラの滝」のローラーボールをレポートしていきます。
 
まずその前に、ボールペンの歴史をざっくりとおさらいしましょう。
 
ハンガリーで1930年代にボールペンの始祖(ボールチップ式の筆記具)が発明され、その後、第二次世界大戦を機に世界各地へ広がっていった油性ボールペン。
その頃実用性のあるボールペンとして世界に広まった、アメリカはパーカー(PARKER)の「ジョッター(1940年代)」や、フランスのBIC社が発売した「ビック クリスタル(1950年代)」は特に有名ではないでしょうか。
これらのモデルは80年ほど経った現在でも現役で、変わらぬ書きやすさと油性ボールペンの利便性を我々に提供し続けてくれています。
 
このように油性ボールペンは、筆記具としては万年筆やメカニカルペンシルに次いで歴史があり、今や世界のビジネスマンにとっても無くてはならない筆記具となっているのです。
 

 
それでは、当記事で取り上げる「ローラーボール」は、いつから世界で使い始められたのでしょうか。
 
実はこちらの歴史はまだ浅く、ローラーボールの発売・量産は1979年のパイロットの「パイロット・ローラーボール」からとされています。
 
それを機に日本国内でも低粘度インクおよびローラーボールの開発(主にパイロット、三菱鉛筆、ゼブラなどが技術を確立)が進んでいき世界への輸出が開始され、アメリカのパーカー(PARKER)やクロス(CROSS)、そしてドイツのラミー(LAMY)に採用されていったというのが経緯。
 
ローラーボール(水性ボールペン)の立ち位置としては、万年筆よりも気軽に、かつ油性ボールペンよりも軽やかで快適な筆記を実現する、つまりは2ジャンルの中間に位置する筆記具として広まっていった形となります。
 
技術は進み、今や油性ボールペンでも低粘度で滑らかなインクが使えるようになっていますが、それでも世界の高級筆記具メーカー各社は 新作発表の際「ローラーボール」を筆記モードの選択の一つとして製造し続けている。
これにはどのような背景や理由があるのか。
そんなことも考えながら、ペリカンのローラーボール「ナイアガラの滝」をレポートしていきたいと思います。
それでは見ていきましょう。
 

 


 
ペリカンの自然の美観シリーズは、2007年から2011年にかけて発売されたワンタイムエディション(初回製産のみ)モデル。
この「ナイアガラの滝」は第一弾で、以降不定期に、2011年に発売された第六弾「エターナル・アイス」までの全6種類となります。
発売順に並べると、
 
①ナイアガラの滝:2007年発売
②サハラ:2007年発売
③ポーラーライト:2008年発売
④エベレスト:2008年発売
⑤インディアン・サマー:2009年発売
⑥エターナル・アイス:2011年発売
 
第一弾のナイアガラの滝は、万年筆250本、ボールペン150本、ローラーボール70本の製産となっています。
モデルナンバーの640からも分かる通り サイズは600シリーズがベースとなっていますが、特徴的なのがこのシルエット。
 

 
手元にはローラーボールと油性ボールペンがありますが、樽状に膨らんだ胴軸こそがこのシリーズの特徴。
ベースがスーベレーンでありながら、通常の特別生産品のようにデザインや素材のみを変えたものではなく、シルエットそのものに変更を加えた、ある意味冒険みの強いモデルと言えます。
 
私がこのモデルに惹かれた理由が、まさにこのいい意味でペリカン離れしたシルエットと重量感、そして全体的なカラーバランス。
 

 
以前より手元にあったR200と並べてみました。
R200は「クラシック」と呼ばれるスーベレーン(400)シリーズのエントリーモデルで、サイズや重量は400とほぼ同等。
ペリカンのクラシックやスーベレーンシリーズというとこのシルエットなんですよね。
 
ご存じの通り、ペリカンのスーベレーンシリーズは、300(廃番)、400、600、800、1000とモデル名の数字が大きくなるにつれてペンのサイズも大きくなります。
右の200は400と同じ全長。600がベースの自然の美観シリーズが400よりも大きいのはそのため。
 
そして、ペリカンクラシック200の派生モデルに胴軸素材が金属製の215があるのですが、自然の美観シリーズはまさにそのクラシックでいう215にあたる金属質の重量を持ったペンなのです。
 

 
ローラーボールは胴軸側、油性ボールペンはキャップ側が金属素材でできており、ペン全体としても程良い重量感がプラスされています。
 
この柄が実に涼しげで、夏使うのにピッタリのペンに思えるのは私だけでしょうか。
落差50m超えの大瀑布を、わずか数十センチの筆記具に落とし込んだ涼を感じるデザイン。
 
そして、ナイアガラの滝を想起させるこの柄は一見ペイントかと思いきやレーザーによる手の込んだ加工なのです。
 

 
半信半疑で柄を拡大すると、なるほどレーザー加工であることが分かります。
このシルバーのライン一本一本、飛沫を表現したドット一つ一つにおいても、光の反射による細やかな水の輝きを感じさせるのです。
 

 
自然の美観シリーズに感心する点は、素材やシルエットだけではありません。
ペリカンの「顔」とも言えるクリップ部分。スーベレーンに長きに渡り採用されているペリカンヘッドはモダナイズされ、目はオミット。
顎を引いたペリカンの嘴ような、立体的なデザインとなっています。
 
また、樽型に膨らんだ胴軸部分と同様にキャップにも伝統的なシルエットを覆すデザイン変更がなされている事に、気付く方は少ないのかも知れません。
 

▲上が自然の美観シリーズ(640)、下がクラシック(R200)。
 
キャップを横から見比べると、ストレートなラインのスーベレーンシリーズとは違い、キャップリングに向けて緩やかに広がる自然の美観シリーズ。
 
胴軸の膨らみと合わせて、まとまりのあるシルエットに仕上げられています。
 

 
キャップリングの刻印は「GERMANY」「PELIKAN」。
リングの数はスーベレーン600シリーズと同じくダブルリング。トリムの素材はジャーマンシルバーとなっています。
ジャーマンシルバーというのが聞き慣れなかったのですが、調べてみると洋白の事で銀の成分は含まれていません。
 
しかし、経年によりシルバー925のような変色(表面にパティナと呼ばれる変色層の形成)が発生します。
シルバー925ではないながら、個人的に経年変化する素材が好きなので大歓迎です。
 

 
天冠も新規造形で、メダルの出っ張りはなくモダンな円盤形。
好みが分かれる部分でもありますが、クリップのデザインともマッチしており個人的には好みです。
 
ヒナの数は一羽で、2002年以降2013年頃までのスーベレーンの特徴となっています。
 

 
このペリカン自然の美観「ナイアガラの滝」の私のお気に入りポイント、胴軸のカラー。
グレーが入ったような少し枯れた色合いの、深みのあるブルー。
この色がたまらんのです。
 
色合いが近いであろうペンを並べましたが、やはりどちらとも同じではない、ナイアガラの滝だけの色合い。
 

 
左から、モンブラン スターウォーカー ブループラネット、ペリカン 自然の美観 ナイアガラの滝、ペリカンK800 ストーンガーデン。
 
ストーンガーデンのブルーも好みですが、並べてみると意外とパープルみもあり全く異なった色でした。
 
これまで自然の美観シリーズ第一弾「ナイアガラの滝」のデザインを中心に見てきましたが、ペリカンのフラッグシップモデルをベースとした特別生産品では新たなデザインを取り入れた革新的なモデルだったことが覗えます。
 
現状、第六弾までとなり継続したシリーズの発売はないですが、個人的には支持したい大好きなモデルです。
 

 


 
さて、ここからはペリカン自然の美観シリーズの使いやすさや書き心地について。
書き心地については個人の好みもありますので 参考程度に読んで頂きたいのですが、結論から書くと、ペリカンのローラーボールはインクと軸のバランスがよく、誰にでも使いやすいローラーボールであること。
 
低粘度インクの油性ボールペンが主流となっている今も尚、メーカーがローラーボールを出す意味、やはり油性ボールペンとは一線を画すローラーボール特有の気分の高揚がそこにあります。
 

 
ペリカンに限らず、ローラーボールと万年筆の決定的な違いはペン先の乾きを気にすることなく気軽に扱えること。そして、どの角度からも書けるペン先が気軽に使える要因の一つでしょう。
 
キャップをした時の外観的特徴は万年筆を全く同じ。
ペリカンのローラーボールは、万年筆と同じ首軸のくびれが握りやすく、自然の美観シリーズはそれに加え膨らんだ胴軸が指の腹にフィットするようにできています。
 

 
ローラーボールを力強く握ってしまうと万年筆のような柔らかなタッチや抑揚のある文字は得られず、いかに指先の余分な力を解放し柔軟に扱えるかがポイントとなります。
 
以前の私は、というより油性ボールペンをメインとして使っていた頃は、やはり無意識に指先に力が入り水性インクの潤沢なインクフローの前でベッタリとした抑揚のない文字しか書けませんでした。
 
そんな指先の余分な力を解放してくれるのにも一役買う、ペリカン自然の美観(R640)の流れるような胴軸のライン。金属素材からくる程良い重量は、合谷(親指と人差し指の付け根の間)に心地良く乗り、そこを支点とした指先のわずかな動きに反応するように、軽やかにペン先を進めることができるのです。
 

 
筆休めの際もコロンとした太軸は安定感があり、掌に置いたまま考えを巡らせて また筆を走らせる、という筆記する愉しさとも直結しているように感じます。
 
指先で扱う道具だからこそ、掌に収まっている時に高揚感を感じるということは重要。
かつ、使わないときもメンテナンスフリーであることも、次に使い出すときの安心感に繋がります。
 

 
また、ペリカンのローラーボールにおいて書かずにいられないのがインクの出来の良さ。
ローラーボールリフィルの「PELIKAN 338」はまさに名作。
 
ファーバーカステルやアウロラのローラーボールとも互換性があるため、私が使う他メーカーのローラーボールインクは、ほぼペリカン338一択です。
 

 
ペリカンのローラーボールは万年筆のインク吸入と同じく、尻軸のキャップを緩めて(外して)リフィル交換を行います。
 
尻軸(尻栓)には中でリフィルを押すような出っ張りがあり、リフィルの固定=ガタつきの無さも申し分なし。
 

 
ナイアガラに入っていた338(1C)と、昔から使っているファーバーカステルに入れていた338(9G)。
同じ338においても製造時期による仕様の違いはありますが、リフィルにプリントされているロゴのヒナ数から、1Cの方が新しいタイプのリフィルだと思われます。
 

 
尻栓を外したときに気付いたのが、ネジ切り付近の「704」というナンバー。
おそらく製造コードと思われますが、気になって油性ボールペンの方も確認してみました。
 

 
油性ボールペンの方には「703」の刻印。
これはパーツのコードなのか製造時期なのか…、さらに気になって手元のペリカン筆記具(スーベレーン系)のナンバーを調べてみると、
 
ナイアガラの滝(R640):704
ナイアガラの滝(K640):703
クラシックR200:810
ストーンガーデンK800:18
M101N リザード:UF(?)
スーベレーンM400:15E
スーベレーンK420シルバー/ブラック:411
 
自然の美観(ナイアガラの滝)が2007年の4月中旬発売であることから、2007年と製産月にちなんだ数字かと思いましたが、3月や4月に作っていては遅いだろうという事と、他のモデルの場合その考察に当てはまらない事から、部品コードであると仮説を立てておきます。
 

 


 
話が軸に刻印されたナンバーに大きく脱線しましたが、ローラーボールの書き味に話を戻して、各メーカーの書き比べを行っていきたいと思います。
 
8本のローラーボールは、左から、
 
・ペリカン自然の美観 ナイアガラの滝(R640)
・ファーバーカステル スターリングシルバー
・モンブラン ソリテールドゥエ シグナムクラシック
・モンブランM
・パーカー デュオフォールド オレンジ
・アウロラ プリマベーラ
・クロス タウンゼント スターリングシルバー
・ペリカン クラシック(R200)
 
この中でも自然の美観シリーズの胴軸の太さは際立っていますね。
 

 
書き比べてみました。
と言っても、ファーバーカステルにはペリカンの338(9G)、ペリカンのR200にはOHTOのリフィルを入れていますので、全てが純正のリフィルではありませんが…。
 
ローラーボールは字幅がインクフローにダイレクトに影響するため、MとFでは文字の太さと濃さにかなりの違いが出てきます。この辺りは万年筆の方が切り割りの絞り等ペン先調整で融通が利きますね。
 
この中でも個人的に特に書きやすいのが、ペリカンとモンブランとパーカー。
モンブランはマイスターシュテュック用のリフィルの方がインクフローが渋めで好み。
ペリカンは言わずもがなで、インク粘度も水性ながらシャバシャバ過ぎず細字はちゃんと細く書けて、私のような抑揚付けが苦手な人間でも抑揚が付けやすいと感じる書き心地。
 
パーカーのデュオフォールドは首軸の握りやすさと重量感のバランスが良く、流石パーカーというだけあってインクフローも良い塩梅です。
 

 
各社ローラーボールのペン先。
ローラーボールのそもそものコンセプト自体が「万年筆の書き味に似せる」であるため、首軸(グリップポイント)から紙面までの距離が万年筆(のニブ)とほぼ同じとなります。
 
筆記感覚は万年筆に近く、油性ボールペンのように気軽に使えるペン。
それに加え、ローラーボールには筆記時の流れるようなシルエットの美しさ、キャップを外して書くという優雅な所作、手応えのある重量感といった魅力も詰まっています。
また、万年筆や油性ボールペンよりも生産本数が少ないところも 特別感があって良い部分ではないでしょうか。
 
ビジネスでさり気なく出すローラーボール、これほど優雅で格好良い瞬間はありません。
 

 
さて、今回はペリカンのローラーボールについて書いてきました。
レポートした「自然の美観シリーズ ナイアガラの滝」は、ペリカンのフラッグシップモデルであるスーベレーンをベースに持ちつつ全てのスタイルを刷新し、デザイン、重量感、握りやすいシルエットから新しいペリカンを感じることができる稀有なモデルでした。
 
自然の美観シリーズは、2011年のエターナル・アイスを最後に新たなモデルは出ていませんが、その刷新されたスタイル故に古参ペリカンユーザーに受け入れられる部分と受け入れられない部分が様々あったのかと考えてしまいます。
 
私自身としては、スーベレーンよりもこちらの方が自分の筆記スタイルやデザインの好みに合いますので大歓迎です。そしてデザインでいうと、第二弾のエベレストあたりは押さえておきたいモデルかと考えています。
 
ペリカンのスーベレーン(400や600)は軽すぎて合わない、太軸が好き、ペリカンの中でも他の人と被らないペンを持ちたいという方は、選択肢に入ってくるペンではないでしょうか。
 
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

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