モンブラン 作家シリーズ フランツ・カフカ ボールペン レビュー
皆さんこんばんは。
今回は、購入から随分と経ってしまったモンブランのボールペンについて。
新品を購入したわけではないのですが、しばしば持ち出して使っていたため 結構小傷がついてしまいました。
そのボールペンは、モンブランの作家シリーズ「フランツ・カフカ」。
2004年に発売された作家シリーズの中でも初期のモデルです。
記事を書くにあたりピカピカに磨こうかとも思いましたが、トリムに使われているシルバー925のクスミ具合いや小傷も味があり、むしろピカピカにして使うよりもこのままの方が格好良いのでは?と思い、今回は軽く磨いた程度で各写真を撮っています。
それでは早速、モンブランの作家シリーズ「フランツ・カフカ」のボールペンをみていきましょう。
1992年の第一作目である「ヘミングウェイ」から発売が始まり、その後毎年新しいモデルが発売されているモンブランの「作家シリーズ」。
もはや定番となっている特別生産品です。
2004年に発売された「フランツ・カフカ」は、13作目のモデル。
フランツ・カフカの代表作である「変身」にオマージュされた筆記具は、丸軸から四角軸へのフォルムの変化という新鮮なスタイルが取り入れられています。
ボールペンとペンシルは、胴軸側が丸軸でキャップ側がスクエア。万年筆はその逆で、胴軸側がスクエア(グリップ部は丸軸)、キャップが円柱という仕様。
製造本数は、
万年筆:14,000本
ボールペン:12,000本
メカニカルペンシル:4,500本
※メカニカルペンシルはセット販売のみ
すなわち、ボールペンは16,500本の製造となっています。
この独特なフォルム。艶やかな暗赤色のプレシャスレジン。
カフカは作家シリーズの中でも全長が長めで、胴軸径も細めに仕上げられています。
スペックは、
全長:148mm
重量:33g
胴軸径(グリップ部):9mm
※胴軸径については実際に計った値で、クリップとの接続部分が11mmとなり、ペン先へいくほど軸は細くなっていきます。
グリップ感は、同じくらいの軸径であるマイスターシュテュック#164よりも細身の感覚。
マイスターシュテュックが緩やかな樽型であるのに対して、カフカはストレートのため見た目以上に細軸なグリップ感となります。
見た目の通り重心はリア寄りとなりますが、モンブランのペンの特徴でもある指に吸い付くようなプレシャスレジンによる確かなグリップ感と、33gという重すぎない重量もあり後ろに引っ張られるような感覚が無いのは流石モンブラン。
男性に比べて指が繊細な女性にも扱いやすいモデルではないかと思います。
所有している作家シリーズのボールペン。どれも比較的初期のモデルとなります。
1作目のヘミングウェイ以外はトリムがシルバー925(またはバーメイル)となっており、私の所有欲を満たす仕様。
そして特に初期の作家シリーズは、マイスターシュテュック#164をベースとしたコンパクトかつシンプルなデザインのものが多いのが特徴で、素材の良さ(シルバー925)も相まって実用性と所有満足感の両方を満たしてくれるのです。
キャップから順にデザインを見ていきましょう。
まず、素晴らしいのがプレシャスレジンのカラー。ルビーのようなでもあるミステリアスなクリアの暗赤色。
キャップこそ作家シリーズ「フランツ・カフカ」のアイコンとも言うべきデザイン。
手元のカフカは傷だらけですが、それでもよく磨かれ、硬質でツヤを感じるカットと、天冠のシルバーとの間に段差のないシームレスなライン。
クリップに隠れる形で配置されている「Ag 925」の刻印。
「StOD」のマークはモンブランのシルバー925パーツに見られる刻印です。
こうした細かな刻印がシンプルなデザインのペンの情報量を上げ、それが持つ喜びにも繋がっています。
キャップに彫られたフランツ・カフカのサイン。
淡いゴールドのスミ入れとなっています。
ここまで寄るとキャップの小傷やシルバー925パーツのクスミがかなり目立ちますね…。
いつかの段階で、またピカピカに磨こうと思っています。
天冠のスクエアなデザインの端から伸びるクリップ。
こちらもなかなかに珍しいデザインではないでしょうか。
四角い天冠から伸びる丸く曲がったクリップ。まるで思いもよらない形で人生を終えた「変身」の主人公グレーゴル・ザムザを表しているよう。
カフカのサインの反対側にはシリアルナンバーが刻まれています。
先にも書いたとおり、ボールペンはセット販売分も含めて16,500本の製造。そのうちの一本が手元にあるという喜びと共に、気が引き締まるようでもあります。
製造本数だけみると、メカニカルペンシルが4,500本というかなりの少なさのため、コレクターにとっては見かけたら即入手ではないでしょうか。
天冠のデザイン。
スクエアの多重構造の中に佇む、小さく輝くホワイトスター。
個人的には万年筆のサークル型の天冠よりも好きなデザインのボールペン(メカニカルペンシル)のスクエア天冠。
こちらのパーツ全てにおいても一つ一つがシルバー925で作られており、硫化によって味が出てきます。
ホワイトスターが結構小さめのため、比較としていくつか並べてみました。
左のPixペンシルNo.16が私が持っているモンブランペンの中では一番ホワイトスターが小さく、カフカのホワイトスターはその次に小さいNo.49(ボールペン)と同等。
続いて右側のモンテローザ(万年筆)、ノブレスオブリージュ(ボールペン)へとサイズは大きくなります。
オブリージュのホワイトスターのサイズはマイスターシュテュックと同じ。
キャップと胴軸の間にもシルバー925のリングが設けられており、美しいコントラストを生み出しています。
ここは回転繰り出し操作の可動部でもありますが、モンブランのボールペンの回転繰り出し動作は非常に滑らかで、このカフカも然りです。
モンブランのようなドイツ製のボールペンとデルタのようなイタリア製ボールペンの回転繰り出し動作の違いは面白く、ペン先側に設置されたスプリングの強さ(針金の太さや巻きの数、長さ)が弱めなドイツ製は非常にマイルドな回転繰り出し動作となり、逆にイタリア軸は強く、ペン先を戻す際には強い力で戻りキビキビとした動作となります。
ペン先のデザイン。
口金は小さめで装飾無しですが、この部分もシルバー925製のため経年変化でくすんできます。
モンブランの作家シリーズでシルバー925が使われる場合、こういったトリムやサイズの小さなリングパーツにおいても抜かりなくシルバー925が使われるという豪華な仕様。
リフィルの交換は、キャップをペン先をしまう方向にさらに回して外すというマイスターシュテュックと同様の方法で行います。
モンブランの油性ボールペンは、モーツァルトのようなスモールサイズ以外はすべてこのリフィルが適合という分かりやすさ。
モンブランでもこれだけ多種多様なデザインのペンがある中で共通のリフィルというのは実に分かりやすいです。
今回、簡単な掃除も踏まえてキャップを分解してみました。
キャップを構成する点数は、内部機構を加えて6点。天冠はかなり細かく分解できます。
シルバー925を気合いを入れて磨こうとした際 スクエア部分の形状が複雑ですが、こうすることで隅々まで綺麗に磨けそうです。
(磨きにあたってはクロスでは不十分で、サンエーパールの出番になりそう…)
分解することで見やすくなった、クリップの裏の刻印。
1991年以降のモンブランのボールペンにおいて、Pix®刻印と製造国「GERMANY」の刻印はどこかにある、と考えていますが、いつの頃からか作家シリーズにもPix®が付くようになっているようです。
1992年発売のヘミングウェイから1996年発売のデュマまではなし、以降2001年のチャールズ・ディケンズまでのモデルは所有していないのですが、チャールズ・ディケンズはPix®の刻印あり。
1997年のドストエフスキーから2000年のフリードリッヒ・シラーまでのモデルの間でPix®の刻印が付くようになっているようです。
美しきキャップのプレシャスレジン。
本当にルビーのような深い輝きです。
丸軸から四角軸へ「変身」する過程にあるこの部分。
主人公ザムザの人生を凝縮したような形と色合いに感じるのは私だけでしょうか。
カフカの内部機構とマイスターシュテュック#P164の内部機構の比較。
作家シリーズはベースモデルが#164ですが、内部機構がどのモデルも違うという拘りよう。(仕組み自体は同じ)
これは逆に、作家シリーズのボールペンに対して#164の内部機構では代替が効かないという事でもあります。壊さないように大切に使いたいものです。
さて、今回はモンブランの作家シリーズ「フランツ・カフカ」のボールペンをレポートしました。
カフカの代表作「変身」をモチーフとした、シンプルながらも丸軸からスクエア軸に変化する奥の深いデザイン。ルビーのように透き通るミステリアスな軸色、刻と共に表情を変えるシルバー925のトリム。
ある日突然虫になってしまった主人公のグレーゴル・ザムザの人生と、カフカの巧みな文体を表したような、特異なモデルとなっています。
いや-、それにしても作家シリーズは面白い。
面白くも所有欲が満たされる、モンブランのペンの中でもデザインと実用のバランスが取れたお勧めのシリーズです。
皆さんが手に入れたい作家シリーズは何でしょうか。
このレポートがそんな皆さんの背中を押す記事の一つとなれば幸いです。
それでは今回はこの辺で。
ディスカッション
コメント一覧
いつも楽しく拝読させていただいております。こちらでモンブランのモーツァルトの魅力にすっかりハマってしまって1本買ってみたいと思うのですが、女性向けのサイズとしてモーツァルトサイズがありますが、クラシックと比べてどちらが使いやすいのでしょうか?ご教授願えるとありがたいです。どうぞよろしくお願いいたします。
K.Mさん
コメントありがとうございます。
そして、ご愛読ありがとうございます!
個人的な結論から書くと、日々の通常利用において総合的な使いやすさではクラシックに軍配が上がると思います。
その理由として、筆記時の安定感とインクの持ち。
筆記時の安定感というのは、ようは「慣れ」で、幼少期から通常サイズのペンを使っている私たちからして手に馴染んでいるのがクラシックサイズであることに由来します。
続いてインクの持ちは、モーツァルトの記事でも触れている4C芯対応という点。(万年筆の場合はカートリッジですのでインクの持ちは良いです)
これについては、日常から頻繁にボールペンを使う場合は気になる点となります。
そのため、私はクラシックのサブ的位置づけで使用しています。
しかし、モーツァルトをはじめ小型の筆記具は、他では代えられない機動性や高級筆記具が手の中に収まるという高揚感と特別感があります。
使っていて人目を惹く方は断然モーツァルトで、出先での手帳への書き込みの愉しさも断然モーツァルトとなります。
モーツァルトのソリテールなどは今なお憧れの筆記具ですね。ロマンがあります。
モーツァルトに限らず、ペリカンの300系、アウロラのオプティマやモンテグラッパのミクラ等、手のひらサイズの筆記具は多くあります。
そうした小型の筆記具に対して常に一定の人気があるのは、使いやすさにとどまらない特別な使い心地があるからだと考えます。
あとはコレクション性の高さもあるかと。(デザインはそのままに10センチ強のサイズ感)
以上から、使いやすさの定義にもよりますが、私は通常利用はクラシック(やミッドサイズ)、ミニ6手帳と一緒に持ち出し用としてモーツァルトとなっています。
もちろん、モーツァルトをメインに使うのもありかと思いますよ(それはそれで潔く、格好良い!)
ご購入検討の参考になればと思います。