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パーカー75 プラスヴァンドームという選択肢【プラスヴァンドームのバリエーションと比較】

2024年10月1日

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筆記具には沼が幾つも存在します。
一つの沼に沈んでみると また違う沼が中に広がっていたりということもしばしばで、実はその沼の中の沼こそがその筆記具の本質だったりもします。
 
このブログが始まって間もない頃、パーカー75(シズレ)沼に足を踏み入れました。
パーカー75はスターリングシルバーの程良い重さとシズレパターンによるグリップの良さ、ミドルサイズの軸径を持つ筆記具としての使いやすさ。また、大きく初期型・後期型に分けられる刻印や天ビスのバリエーションが面白い。熟れた中古価格から2本・3本とストックしておきたくなる筆記具なのです。
 
そんなパーカー75もしかり、パーカー75という大きなチャンクで沼があり、その中にさら小さなチャンクに分かれた沼があるのです。
 
その沼の中でも、なかなかに深みのある沼が「75 プラスヴァンドーム」。
 

 
プラスヴァンドームはフランス製造のパーカー75亜種で、軸の豪華な柄がとても美しい逸品です。
フランスはヴァンドーム地方の古き良きエッセンスをプラスしたエレガントなデザインと言いましょうか、とてもヨーロッパ的な感性にあふれる筆記具となっています。
 
昔は某オークションにもしばしば出品されていた本種ですが、最近はたまに出品されているのを見るだけで出品数は少なくなってきているように感じます。
(ボールペンはたまに見かけるのですが、万年筆はまあ見かけませんね…)
 
ということで、のんびりと時間をかけて集めるにはもってこいの「パーカー75 プラスヴァンドーム ボールペン」。
 
探すと言うより目についた時に、タイミング良く入手してきたプラスヴァンドームボールペンは現在手元に3本。
まだまだ氷山の一角ですが、今回はシズレとの比較や手元にあるプラスヴァンドームの軸の柄などをじっくりと観察し、その魅力に迫っていきたいと思います。
 

 

 

 

75プラスヴァンドームの特徴とシズレとの比較

パーカー75と言えばシズレ、シズレと言えばパーカー75というほどパーカー筆記具のアイコン的存在のパーカー75シズレ。
その亜種としてバリエーションが展開されている(されていた)75プラスヴァンドーム。
まずはその特徴と、シズレとの比較を行っていきましょう。
 

 
パーカー75シズレを手放せない理由として、その筆記具としての絶対的な安定感があります。
とにかく書きやすい。
 
深く刻まれたシズレパターンは滑りにくく、王道のキャップノック式による操作性の良さ、シンプルだが高級感のあるクリップデザインにクインクフローのインク粘度を十分に発揮する程良い重量など。
ビジネスマンなら1本は持っておきたい魅力溢れるボールペンです。
 
そんなパーカー75シズレと、フランス的エッセンスをプラスした「プラスヴァンドーム」の違いとは何なのか。
 

 
まずはプラスヴァンドームシリーズの特徴として、矢羽クリップと天ビスのカラーが胴軸と同色であることが挙げられます。
画像は左から、パーカー75シズレ、プラスヴァンドームのゴドロン、ガーラン、フラーメ。
 
シズレがシルバーとゴールドの2トーンなのに対して、プラスヴァンドームはシルバー一色、もしくはゴールド一色という展開です。
パーカー75シズレは全体のカラーバランス、プラスヴァンドームは矢羽クリップは控えめに、軸の柄がメインであるかのように感じます。
 
シズレのデザインだけでもビジネスに向いていると言えますが、更にさりげなく控えめに人前で使いたいのであれば、プラスヴァンドームという選択肢もありではないでしょうか。
 
 
続いてキャップリングのデザインに目をやると、キャップリングの幅が違うことに気が付きます。
 

 
左がシズレ、右がプラスヴァンドーム“ゴドロン”。
シズレのキャップリングに比べてプラスヴァンドームのキャップリングは5分の4程度。
キャップリングの刻印については後述しますが、初期型・後期型で刻印の位置に差があるシズレとは対象的に、プラスヴァンドームのキャップリングの刻印は一定です。(ゴドロンのみ追加刻印有り)
 
 
また、柄が主張される軸全体のバランスにおいて、ペン先のデザインに注目して頂きたい。
 

 
ベースが同じ軸と前述しましたが、シズレに比べてプラスヴァンドームのペン先デザインは口金部分が長めに設定されている事が分かります。
 

 
シズレと比較するとこの通り。
シズレの方が短く、プラスヴァンドームの方が長い。
軸の柄が豪華な分 ペン先のプレーンなデザインを長くする事で柄がクドくならず、ペン全体のバランスが良くなっているように感じます。
 
 
天ビスはどうでしょう。
 

 
左から、シズレBP、シズレMP、プラスヴァンドーム。
シズレはBPとMPと筆記モードは違えど、初期型と後期型で天ビスのデザインが違います。
これについてはプラスヴァンドームも同じ。もしかすると柄によっては後期型天ビスしか無いものもあるかも知れません。(写真の一番右、ゴドロンについては初期型・後期型それぞれの天ビスバリエーションがあります)
 
プラスヴァンドームもパーカー75シズレと同じで初期型天ビスの方が後期型より高値で取引されています。
個人的には天ビスが凹んでいる方が好みですが…。
 

 
リフィルについては当然ですが現行のクインクフローを含めたパーカータイプのリフィルに対応。
プラスヴァンドームのリフィルを見ると「Made In U.K.」の文字が。
うーむ、U.K.製のリフィルもあるんですね、こちらも奥が深い!
 
 
さて、ここまではプラスヴァンドームの特徴をシズレとの比較を交えて見てきました。
次項からはプラスヴァンドームのバリエーション(デザイン)について見ていきます。
 

 

“ゴドロン”(きらめく流星)

個人的にプラスヴァンドームの代名詞的な位置づけと認識しているのがこの“ゴドロン”です。
日本のカタログに載っていた和訳は「きらめく流星」。
 

 
軸はV字にカットされた美しいストライプ。
単なる線彫りではなくV字に彫られているところが特徴で、光の反射が美しく見る角度によってキラキラと輝きます。
 
矢羽クリップとのデザインマッチングも一番決まっている柄ではないでしょうか。
 

 
年代物のため小傷が多いですが、金属軸の良いところが使い古したとしても「小傷は味となる」ところです。
こういったソリッドなデザインになるほど小傷がよく似合うようになります。
 
キャップリングの刻印は、
「パーカー旧ロゴ」に続いて、「PARKER」「PPマーク」「30μ」「MADE IN FRANCE」とキャップリングを一周する情報量。
 

 
各刻印部を拡大すると刻印が深く彫られていることが分かります。
「30μ(ミクロン)」とはシルバーコーティングの厚み。
カランダッシュのエクリドールで10μですので、いかに分厚いシルバーコーティングが施されているかが分かります。(10μでも十分に厚い)
 
コーティングがこれだけ厚ければ表面が擦れても地金が出てくる心配は無いでしょう。
 
ゴドロンについては30μのコーティングの他にスターリングシルバー製もあると聞いたことがありますが、実際に見たことはありません。
 
プラスヴァンドームの中では私が一番好きな柄がゴドロンです。
 

 

“フラーメ(フラメー)”(情熱の炎)

続いて、情熱の炎という和訳のフラーメ。
一般的にフラーメと呼ばれていますが、カタログの中にはフラメーと書いてあるものもあります。
 
情熱の炎と言うだけあって、軸には炎のような短い縦彫りが一定のパターンで並んでおりそれが柄を成している、あまり他の筆記具では見られない柄ではないでしょうか。
 

 
持ってみると意外にも落ち着いたデザインに見えるフラーメ。
表面はシルバーコーティングですがゴドロンほどの厚みは無く、厚みに関する刻印も無し。
 

 
刻印は、
「30μ」を省いたゴドロンと同じで「旧ロゴ」「PARKER」「PPマーク」「MADE IN FRANCE」。
ちなみに先ほどから「PPマーク」と書いていますが、私が勝手にそう呼んでいるだけで正式名称は不明です。
 

 
表面の刻印拡大図。
一見ランダムなパターンに見えますが、退いて見ると同じパターンが一定間隔で並んでいることがわかります。情熱の炎というには少し大人しい、チェック柄タイプの「エコセー」や「デガーレ」に比べても控えめな柄に見えます。
 
ビジネス向きではあるものの、その柄が影響してかグリップ感はシズレほど無く、少し滑りやすく感じます。
 

 

“ガーラン”(菱の小紋)

手元にある3本のプラスヴァンドームの中で唯一ゴールドのガーラン。
プラスヴァンドームの中と言うよりは、私が持っている筆記具の中で唯一全金軸な一本です。
 
軸の柄があまりに美しすぎたために、人前で使う予定はないものの買ってしまったという一本。
実際、利用は家の中のみでまだ人前では使っていません。(この使い方はちょっと勿体ないと反省しています…)
 

 
ゴールドは日本人の手馴染みが良いですね。
私の指でもこれだけ馴染むのですから、女性の指にはより良くマッチするかと思います。
 
フランスの伯爵が持っていそうな優雅なパターンの筆記具。
重厚感があると同時に、日本的に言うと何故か昭和的(1970~80年代的?)な懐かしさもある柄です。
 

 
刻印の内容は先ほどのフラーメと同じため割愛しますが、キャップリングはよく磨かれています。
プラスヴァンドームの刻印全体に言えることですが、「PARKER」の字体がぽってりとしていて少し可愛さも感じてしまうんですよね。
 

 
軸の柄をよく見てみると、菱の小紋はベースとなるラインが曲げられることによって形成されていることが覗えます。とても手の込んだ造りで、近くで見ると曲がった線ですが、遠目で見るとドットで作られた菱紋のように見えます。
 
このような目の錯覚を利用した仕上げ、どこかで見たことがあると思ったら カランダッシュエクリドールのシェブロンですね。
あれも線を一部曲げる事によってV字を形成させているという柄です。
 
このガーラン、当時のカタログでは「180エレガンス」シリーズの中の柄バリエーションとして掲載されています。
そう考えると、当時180エレガンスと75プラスヴァンドームの柄は共通するデザインが使われていたと考えて良いでしょう。
 

 

さて、様々な(と言っても3種類ですが…)プラスヴァンドームの軸デザインを見てきました。
柄の種類としては本当に一部にすぎません。
 
他にも、
 
・デガーレ(優雅なタータン)
・グレン・ドルジュ(こまやかな綾織)
・パルレー(きよらかな真珠)
・ダミエー(光のチェック)
・エコース(波の調べ)
・ミラレー(銀の流れ)
 
などがあります。
(まだ他にもあるかも…)
 
そして柄によってはシルバーとゴールドの2種類が存在するものもあり、まさに多種多様な軸が楽しめるのです。
他の柄も直接見てみたい…!
 

 

おまけ:他の細軸ボールペンとのサイズ比較

さて、最後は当ブログ記事恒例の「他のボールペンと比較」です。
細軸ながらミドルサイズ並みに持ちやすいシズレと美しい75プラスヴァンドームの軸。
 
他の筆記具とのサイズ比較の参考にして頂ければと思います。
※全てボールペン
 

▲左から、シェーファーインペリアルスターリングシルバー、シェーファータルガ、パーカー75シズレ、パーカー75プラスヴァンドームのゴドロン、ガーラン、フラーメ、カランダッシュエクリドールヒュッゲ、モンブランノブレスオブリージュ(前期型)、モンブランノブレス、クロスクラシックセンチュリースターリングシルバー、クロスシグネット。
 
繊細な細軸+金属の輝きが美しい。
 
ちなみにここに並べた5メーカー計11本のボールペンですが、それぞれメーカーごとにリフィルの互換性がありません。
そちらを比較して終わりたいと思います。
 
 
[パーカー/シェーファー]
 

 
プラスヴァンドームのゴドロンとタルガを比較。
シェーファーのリフィルは左が旧タイプで右が現行です。
 
 
[パーカー/カランダッシュ]
 

 
同じくゴドロンとエクリドールのヒュッゲを比較。
11本のボールペンの中では唯一キャップと胴軸という概念が無いカランダッシュエクリドール。
胴軸は一体形成でノックボタンがノック機構を兼ねます。
リフィルは油性では断トツの書きやすさである「ゴリアット芯」。
 
 
[パーカー/モンブラン]
 

 
ゴドロンとノブレスオブリージュ(前期型)で比較。
リフィルの全長はほぼ同じです。パーカーがノック式でモンブランが回転繰り出し式。
モンブランのリフィルが著しく汚れているのはご愛嬌。
 
 
[パーカー/クロス]
 

 
ゴドロンとクラシックセンチュリーで比較。
クロスは他のメーカーと比べてリフィルの印象がまるで違い、細めのリフィルですが粘度が高いせいか不思議とインクは長持ちします。日本製のリフィルでは三菱のものと互換性あり。
近年はノック式のクラシックセンチュリーもラインナップされていますが、やっぱりクラシックセンチュリーと言えばこの回転繰り出し式ですよね。
 

 

今回はパーカー75の派生沼である75プラスヴァンドームについて見てきました。
フランスをイメージさせる煌びやかな柄を纏ったパーカー75はエレガンスに彩られ、またシズレと違った魅力があります。
 
バリエーションもかなり豊富で価格もリーズナブルなため、集めやすい(コレクターさんも多い)のも楽しみどころ。
ただ、一度パーカー75沼に踏み入れるとなかなか戻ってこれない可能性もありますのでご注意を。
 
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
 
 
〈パーカー75に関連のある当ブログ記事です、こちらもご参考に!〉
パーカー75の後継ボールペン 【ソネットとプリミエ比較】
ペンシルリフィルでパーカー75 シズレ ボールペンをペンシル化する!【初期型パーカー75ペンシルと比較】

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