ボールペン・万年筆・メカニカルペンシルなど、文房具好きの購入記を写真多めで比較レビュー。
たまーに気になったガジェットのレポートも。
物欲のままに手に入れたアイテムをレビューしたりしなかったり。

LAMY2000 の総金属軸「EDITION 2000」とジェットストリーム M17の相性を考える

スポンサーリンク

皆さんこんばんは。
今回は再びLAMYの記事となります。
 
以前、主に過去モデルのLAMYボールペンに、新発売されたM17ジェットストリームリフィルを装填して検証してみたところ、M17はLAMYの「軽量系ボールペン」に合うのではないかという結論に達しました。
 
おさらいすると、検証したボールペンはLAMY2000(通常モデル)、LAMY2000(ブラックウッド)、LAMY226の3本。
結果がLAMY2000(通常モデル)とLAMY226に対してM17リフィルは良好な書き心地になったのに対して、LAMY2000(ブラックウッド)に対してはどことなく書き心地に違和感を感じたのでした。
 
その理由として、太く重い軸に対して低粘度インクを入れることで、ボールペンの自重に負けて文字が走りがち(ペン先が軽くなりすぎてコントロールが難しい)になってしまうことが考えられます。
 
これはもちろん個人差もありますが、太くて重量のあるボールペンには高粘度で太めの字幅(MやB)のインクが一番合うように思うのです。
 
ボールペンの自重の助けをかりながら、適度に力を抜いてペン先を動かす。どっしりとした太軸から太い線がヌラヌラと出てくる気持ちよさ。
このメカニズムを意識的に感じながら書くと言うよりは、あくまで無意識的に、指先の感覚に従って書けるという喜びが得られます。
 
逆に軽い軸や細い軸に対して高粘度のインクリフィルを入れると、ペンの自重に頼れず筆圧が必要となるため指先に余分な力が入り、結果、人によっては指が疲れて長時間の筆記が困難となってしまうのです。
 

 
という具合いに、ある意味自分にとってひとつの結論を出しておきながら、今回はLAMY2000でも個人的には扱いが難しいと感じる「高重量でヘアライン加工のステンレス軸」に、あえて低粘度インクのM17を入れて検証してみようと思いたちます。
 
世に出るボールペンの魅力や書きやすさを引き出すのは使い手でもあり、自分の思い込みでそのペンの使い勝手の善し悪しを一方的に決めてはならない。
そういった観点から、何事もトライ&エラーでやってみるのが当ブログのコンセプトです。
 
それでは、LAMY2000 EDITION 2000のデザインの魅力に迫りながら、ジェットストリーム M17リフィルとの相性について書いていきたいと思います。
 

 

 

 

LAMYとヘアライン加工

LAMY2000は、工業デザイナーのゲルト・アルフレッド・ミュラー氏によってデザインされ、1966年に発売されました。「西暦2000年になっても古さを感じないデザイン」をコンセプトに作られたこの筆記具は、そのコンセプト通り 2025年の今も尚、我々ユーザーを魅了し続けて止みません。
 
LAMY2000の表面加工は細かなヘアライン加工が施され、流線型のフォルムと相まって不変的な未来の筆記具を印象づけています。
 

 
実はこの「ヘアライン加工」はLAMYのお家芸とも言え、フラッグシップモデルであるLAMY2000に止まらず、以前レポートしたボールペンの226やステュディオといった他のモデルにも採用されている表面加工。
素材も、LAMY2000のようなレジンから、ステンレス、アルミニウムと様々です。
 

 
手元のヘアライン加工のLAMY製品を並べてみます。
左から、LAMY226(BP)、LAMY EDITION 2000(BP)、LAMY プレミエステンレス(MP)。
 
一見同じような加工に見える三本ですが、実は同じヘアラインでも表面処理や素材によって風合いや握り心地は異なります。
しかし、一般的にヘアライン加工で金属軸というと、乾燥肌泣かせではありますが…。
 

 
LAMY226(左)とLAMY EDITION 2000(右)。
226はアルミニウムにヘアライン加工、EDITION 2000はステンレスにヘアライン加工。
ヘアラインの粗さ(溝の深さ)は似ているようで、EDITION 2000の方が粗く仕上げられています。
 
ヘアライン加工は見た目の美しさは言うまでもないですが、欠点として横向きの小傷が目立ちやすく、使うにあたっては少しデリケートな表面仕上げだと言えます。
 

 
一方、プレミエステンレス(左)と、EDITION 2000(右)の比較。
現在のLAMY2000の最上位モデルであるプレミエステンレスは、よく見ると細かなヘアラインがありますが、触った感じは限りなくシルキーに感じる肌理の細かな表面。
EDITION 2000とのヘアライン加工の目の粗さの違いは一目瞭然。
 
プレミエステンレスの発売日が2012年の10月、EDITION 2000がその12年前となる2000年発売ですので、プレミエステンレスはEDITION 2000のリメイクと言うべきか、オマージュと言うべきか、同じようなイメージを纏いながらも またひと味違った個性となっています。
 
個人的にEDITION 2000に惚れた部分がこのヘアラインの「粗さ」であることは言うに及ばず。
LAMYのヘアライン加工としては粗さがレトロな部類に入る、なかなか味のある表面加工ではないでしょうか。
 
LAMY EDITION 2000は2000年を記念した限定モデルであり、ボールペンが10000本、万年筆が5000本の数量限定。
※メカニカルペンシルはラインナップされていない
 
製造本数はそれほど少なくはないものの、なかなか市場に出てきません。
万年筆はグリップ部分がブラックとなっており、こちらも魅力的なデザインとなっています。
 
それでは、次の項でEDITION 2000ボールペンのデザインについて詳細を見ていきます。
 

 

EDITION 2000のデザイン


 
1966年に発売された時からほぼ姿を変えていないLAMY2000。
通常のLAMY2000はトリムがステンレス、胴軸部分が樹脂でできていますが、EDITION 2000、そして後に発売されるプレミエステンレスはオールステンレスの金属軸となっています。
 

 
EDITION 2000のクリップ対面には「LAMY EDITION 2000」のレーザー刻印。
ボールペンは10000本の製造本数となりますが、シリアルナンバーは刻印されておらず、外観において目視できる文字・刻印・ロゴの類いはこちらのみ。
 
それにしても、オール金属軸ならではの このソリッド感がたまりません。
ヘアライン加工がそれに拍車をかけ、エッジが際立っています。
 
ノックボタンはプレミエステンレスが鏡面仕上げなのに対して、EDITION 2000はボディと同じヘアライン加工。この統一感です。
 

 
クリップはボディとは対象的に鏡面仕上げとなっており、デザイン上のアクセントに。
 
クリップの表面加工におけるプレミエステンレスとの違いは、プレミエステンレスはクリップ側面が梨地、クリップ正面が鏡面となっているのに対し、EDITION 2000は側面も正面もオール鏡面仕上げ。
 
ざらりとしたEDITION 2000特有の粗いヘアライン加工と、この鏡面加工のクリップ。
異なるテクスチャーの共演が美しい。
 

 
クリップはバネ式となっていますが、可動範囲はそれほど広くなく3mm程度の開きでバネも硬め。
この辺りは初期のLAMY2000(クリップ止め部が丸いモデル)に近い部分があって、樹脂軸の初期型LAMY2000はクリップの稼働によりクリップ周りの樹脂に亀裂が入っている個体もしばしば見かけます。
言うなれば、デザインに全振りしたことにより可動については余裕のない構造になっているといえます。
 
一方、後発のプレミエステンレスやブラックウッドのクリップは、クリップが可動するための「隙間」が設けられており、可動範囲も良好。
この辺は後発だけあって、しっかりと改善されているのが覗えます。
 

 
クリップを上から見た部分に入っている縦のライン。
細かいところですが、このデザインが初期のLAMY2000(W.Germany製)と同じで個人的にツボ。
 
また、ノック音はLAMY2000のバリエーションの中でも一番静かで、「コトッ」と小さな音をたてるのみ。
ノックしたときのサウンドは周囲への配慮でもあります。
LAMY2000ブラックウッドはマウスのクリック音のような低めで上品な音を奏でますが、EDITION 2000はキーボードの上質なキートップが静かに押し込まれるような心地良いサウンド。
 

 
クリップ裏には「GERMANY」の刻印。
初期型LAMY2000はこの部分に刻印無し(代わりに胴軸にW.Germany刻印)、現行モデルと派生モデルには「GERMANY 1」と「GERMANY 2」が刻印されています。
 
今のところこの「GERMANY 1」と「GERMANY 2」は、筆記モード(FP/MP/BP/多機能BP)によって分けられている訳でもなく何のための数字なのかは謎のまま。
私の手元のLAMY2000の中で、数字がない「GERMANY」のみの刻印はEDITION 2000が初めてです。
 

 
全体のシルエットはグリップ部が一番太くなっており、軸を握るのに余計な力が入らないような合理的なデザイン。
そしてLMAY2000を持つ度に感心するのが、胴軸中程にある 限りなく隠蔽された分割線。
 
リフィル交換の際は胴軸を捻って本体を2分割するのですが、その継ぎ目が本当に目立たない。
これはステンレス軸に限らず通常モデルのLAMY2000でも同じなのですが、普通に使っていて分割線が気になることがありません。
 
言わば筆記に集中するためのデザインであり、同時に限りなく道具としてミニマルに、一切の無駄を省いたデザインだということ。まさに工業デザイン(インダストリアルデザイン)の鑑!
 

 
ネジを回してリフィル交換を行います。
ギザギザしていない雄ネジの形状もお洒落ですが、何より接続部の加工の精密さは必見。
 
そして、今回の検証目的となるジェットストリーム(M17)リフィル。
このヘアライン且つ重厚な「LAMY EDITION 2000」との相性については次項で触れていきます。
 

 

重量なステンレスモデルとM17リフィルの相性


 
さて、前回のLAMYボールペン×M17リフィルについてのレポートでは、重量20g以下のLAMYボールペンに対して非常に良好な書き心地になる、という結果でした。
 
M17リフィル(ジェットストリーム)のような低粘度インクは、筆圧に影響されず一定の濃さの文字が書けるというメリットがあります。すなわち、ローラーボール(水性インク)や万年筆に近い感覚で書けると言っていいでしょう。
しかし、個人的には30g以上の重量があるボールペンに装填した際、滑らかすぎてペンの自重と筆圧によりペン先のコントロールが難しくなったりします。
 

 
一方、M16リフィル(高粘度インク)の場合、筆圧によって文字の濃さをコントロールできるというメリットがある反面、ある程度の濃さで文字を書こうとするとそれなりに筆圧をかける必要がでてきます。
ペン先のボールを瞬時に潤せる低粘度インクと違い、インクの流れが遅い低粘度インクはしっかりとペン先のボールを「転がす」必要があるからです。
 

 
ヘアライン加工のボールペンは、握った状態で下方向への力を加えると ヘアラインに沿って指がペン先側に滑ります。
それに加え、インクの粘度が高いと筆圧をかける必要も出てくるため、さらにペン先への指の滑り(力の逃げ)が発生するということ…。
 
そのため、先に書いたそれぞれのインクの特性から、一般的にヘアライン加工のボールペンは筆圧(またはグリップ力)を必要としないM17の方が書きやすくなるという訳です。
 

 
LAMY2000のブラックウッドがM17(低粘度インク)よりもM16(高粘度インク)の方が書きやすいと感じる理由は、木軸の恩恵で十分なグリップ感を得ることができる(=指がペン先側に滑っていかない)ため。
 
逆に、十分にグリップ感が得られていて重量も重いペンに低粘度で軽い書き味のインクを合わせると、紙面にかかる筆圧+自重がサラサラなインクに受け流され、文字が暴走してしまう(なんだかいつもより文字が走ってしまう)のだと考えます。
 
このような、インク粘度・ペンの重さ・筆圧の仕組みを理解しておくと、意識的に筆圧を弱め力みを無くすことができ グリップ感が得られる重量級のペンでも快適に低粘度インクを使えるようになるのではないかという結論に達します。
 

 
ということで、一見低粘度インクに合わなさそうなオールステンレスの重量級でヘアライン加工の「LAMY2000(EDITION 2000)」は、下記の理由からM17との相性が良いと言えます。
 
①筆記の際、指がペン先側に流れないようにするために不要な力を抜くという意識
②ヘアラインに流されずグリップを維持するために、軸の太い部分を軽く持って書こうとする意識
③それにより余分な力が抜けた筆記となるため、低粘度のM17(ジェットストリーム)が合う
 
今回分かった事は、自分の筆圧や書き癖、ペンの握り方、ペンの重量に対する意識、それに加えインクの特性を正しく理解することで、よりそのペンを愉しむことができるということ。
ペンに対する「使いにくいかも」という固定観念を一旦リセットすることが重要なんだと気付きます。
 

 

LAMY2000の各モデル比較

それでは最後にLAMY2000のモデル比較を行って終わりたいと思います。
 

▲左から、ブラックウッド、EDITION 2000、LAMY2000(ベースモデル)
 
フォルムは同じで様々なバリエーションがあるLAMY2000。
他には、樹脂軸でブラウンやダークブルー、ダークグリーンの特別生産品や、胴軸にセラミックが使われた「セラミコン」、チタニウムボディの「LAMY2000 チタニウム」、梨地仕上げのステンレスボディを持つ「ブラックアンバー」、ブラックウッド+シルバープレートトリムの30周年記念モデル等、特別生産品も様々。
 
個人的にはブラックウッドが大のお気に入りですが、今回記事にしたDEITION 2000の無機質で粗いヘアラインとM17リフィルの組み合わせも、私にとっては新たな境地で使うのが愉しいです。
 

 
シルエットは同じですが、モデルによる各部の仕様の違いもLAMY2000の面白さ。
クリップの表面加工も異なっており、ブラックウッドが梨地仕上げ、EDITION 2000が鏡面仕上げ、通常モデルがヘアライン仕上げとなっています。
 
ノックボタンも同じく、梨地、グロス、ヘアラインとバリエーション豊か。
 

 
デザインが同じLAMY2000において、構造の違いも興味深い。
リフィル交換の際のボディ分割箇所がモデルにより異なり、木軸モデルはペン先、金属軸モデルがボディ中ほど、通常モデルがボディペン先寄りとなっています。
 
これは同時に、木軸・金属軸・樹脂軸を跨いでパーツの互換性がないということ。
ボールペンについては、高粘度インクのM16に加え低粘度インクのM17ジェットストリームリフィルも加わり、自分が好きなモデルで自分好みの書き心地を実現できるようになりました。
 
まさにデザインと書き味の両立。
一気に自分好みのボールペンが増えたようで嬉しいです。
 

 
さて、今回は重量系ヘアライン金属軸のLAMY2000「LAMY EDITION 2000」に、新発売となった「M17 ジェットストリームリフィル」を入れて相性の検証を行いました。
 
とにかくM17リフィルの存在は大きく、LAMYボールペンのネックであった独自規格の高粘度インク(M16)しか選択できないという状況の打破が、より多くのLAMYユーザーを獲得するに至ったと言ってよいかと思います。
 
私の周りでも実際に、今までM16が苦手で使わなかったという女性がLAMY製品を持ち始めるというケースも。
今回の検証にもあった通りEDITION 2000のような重めの軸でも、M17リフィルを入れることで女性にも使いやすく化けるのではないかと考えます。
 
これを機に、様々なバリエーションがあるLAMY2000にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
 
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

◆当ブログは人気ブログランキングに参加中です◆

クリックしていただけると
ブログ更新の励みになります!
人気ランキングチェックはこちら↓


文房具ランキング