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カランダッシュエクリドールのG2リフィル使用可否をめぐるレポート

2024年3月24日

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最近、衝撃的な事実が発覚し動揺しております。
X(旧Twitter)でもツイートしました「エクリドールのG2リフィル利用」について、リプライを見ているとどうやらモデルや製造年代によって使える使えないがあるらしく…。
 

これは手持ちのエクリドール全てで試す必要があるのではないか、ということで今回の検証に至ります。
 

ゴリアットリフィルはカランダッシュのボールペンで使えるメーカー専用リフィルで、書き心地は滑らかそのもの(ペン先にインクを供給するためのラインが多い)。
 

各メーカーのボールペンを使い分けてきましたが、ボールペンの油性リフィルでは個人的に一番書きやすいと感じるインクです。
 

油性でありながら、硬すぎず柔らかすぎず。
それでいて筆圧のかけ方によってラインに濃淡が出せるため、とめはらいのある日本語に馴染み、繊細なタッチで描くデッサンにも向く。
文字書きとイラスト両方に強いところが気に入っています。
 

多少褒めすぎ感はありますが、それだけ私が信頼しているという事であります。
 

 
今回のツイート、そして検証に至るきっかけとなった1本のエクリドール。
柄が珍しくて譲って頂いたユーズド品ですが、仕様はシルバープレートで先が角形のロングクリップ。
おそらく製造年代は1970年代後半~80年代くらいでしょうか。
 

6面ある胴軸の3面にエレガントな縦ラインが彫られたモデル。
この柄の名前はいまだに分かりませんが、それも含めてエクリドールの楽しさでもあります。
 

 
そして検証に使うのは、日本国内で一番使われているであろうインクリフィル、三菱uniの「ジェットストリーム」。
こちらももともとはオリジナルのリフィル形状や4C規格で展開されていましたが、数年前にジェットストリームプライムが発売されたと同時にG2タイプのものも販売されるようになっています。
 

ちなみにカランダッシュにもG2タイプのリフィルはありますが、そちらは849ローラーボール用に作られた「水性インク」となっています。
(個人的にはカランダッシュの水性インクは用途に合いませんでした…)
 

ですので、水性インクではありますが、G2リフィル対応のボールペンでカランダッシュのインクを使うことは(一応)できるようになっていると言えます。
 

ジェットストリームも非常に優れたインクで、コントラストの強い黒は紙面に対してパキッとした文字を残してくれるとともに、インク粘度の柔らかさは油性で限界を極めているのではと思うほど。
 

この極限まで柔らかいインク粘度によって、0.5mmよりも細い字幅がラインナップできるというのもuniの技術があってのことだと考えます。
EFといった極細の字幅が選べる事、くっきりと安定した黒いラインが残せるという事もあり、ビジネスシーンで使っている方が多いのも頷けますね。
 

筆圧に左右されない安定したラインが書ける事が魅力である一方、ラインに濃淡を着けることが難しく、個人的には仕事専用という感覚で使っています。
 

ということで、ジェットストリームを装填させるエクリドールを並べます。
 

 
左の2本は販売年代がエクリドールと少し被っていたヘクサゴナルコレクション。
それ以外はエクリドールとなり、右へ行くほど製造年代が新しくなります。
 

今回の検証は、下記のモデル合計21本で行います。
 

・ヘクサゴナルコレクション2本(天冠ロゴCdA:有り無し)
・バリアスメットウッド(天冠ロゴ:CdA)
・ロングクリップ前期型2本(天冠ロゴ:無し)
・ロングクリップ後期型6本(天冠ロゴ:無し)
・ショートクリップ5本(天冠ロゴ:CdA)
・ショートクリップシルバー925モデル2本(天冠ロゴCdA:有り無し)
・ショートクリップ現行モデル2本(天冠ロゴ:ペンシル)
・RNX.316(天冠ロゴ:ペンシル)
 

さて早速ですが、これはもう1本ずつにG2ジェットストリームリフィルを入れて試してみるしかないという根気の作業です(笑)
 

 
まずは、エクリドールと同じノック機構を持つ亜種、ヘクサゴナルコレクションとバリアスにG2リフィルを入れてみます。
 

 
結果は、バリアスのみペン先を固定できず×。
ヘクサゴナルのカーボン(天冠ロゴ無し)とキューブ(天冠ロゴCdA)はしっかりとペン先の固定ができ、快適に筆記可能でした。
 

ただし、純正のゴリアットリフィルと全く同じ操作感、筆記感になるかというとそういうわけではなく、もともとG2リフィルの方がリフィル全長が長い分、ペン先から出るリフィルもG2リフィル利用時の方が1mmほど長くなります。
これはこれで嫌な変化ではないので、気になる方は少ないとは思います。
 

もう一点は、ノック感が少し重くなること。
これもリフィル全長がG2の方が長いことにより、バネのテンションが増すからと思われます。
 

 
一見、ノック機構の真鍮部分は同じに見える3本。
そうなると、G2リフィルが使える使えないはノック部分の金属パーツの形状の違いが関係していそうです。
 

 
続いて同じくノック式上位モデルのRNX.316はどうかというと、こちらもペン先を固定できず。
手元のRNX.316の仕様は、天冠のロゴが新ロゴの「ペンシルロゴ」。
リフィルを押すノック機構真鍮部分の形状はエクリドールと同様のものが使われていますが、ノック機構そのものの全長がエクリドールに比べて長いです。(後で比較画像を出します)
 

 
さて、どんどんいきましょう。
続いてはロングクリップの前期型2本。
少し青みがあるクロームコーティングのシェブロンと、旧型のシルバープレート手彫りベネシアンです。
 

 
ロングクリップ前期型の特徴は、クリップの先が矢印を折り曲げたような形状で、衣類の生地に触れる部分に「面が設けられていない」クリップ形状となります。
ロングクリップ後期型のクリップと比べて、クリップの全長が少し短いのも特徴です。
 

 
結果は微妙で、使えないもの&使えはするけど実用的ではない、という結果でした。
シェブロンの方はペン先が固定されず、バリアスと同じ結果。
ベネシアンは、ペン先が出過ぎるのとペン先を収納しきれないという状態です。
これは使えたものではありません。
 

 
ノック機構を外してみると、2本とも真鍮部分の形状が違うことが分かります。
特に左のベネシアンは改めて見ると、2爪の珍しい形状だと思います。
 

 
シェブロンについても現行のエクリドールとは違った4爪の形状で、ツメ一つひとつの幅が広いです。
おそらく、2ツメおよび4ツメ幅広の形状がG2リフィルのプラスチック部分と干渉し、ペン先固定できない&ペン先収納できないという現象が起きていると考えられます。
 

 
ちなみに、旧型のシェブロンにはリフィルアダプターを使い4C芯を装填しています。
リフィルアダプターが使える理由は、全長や形状そのものを純正のゴリアットリフィルに似せてあるため。
ゴリアットリフィルで出せないより細い字幅のリフィルを使いたい場合は、リフィルアダプター+4C芯の組み合わせもお勧めです。(ペン先に若干の隙間ができるため対策は必要かと思います)
 

 
続いては、ロングクリップ後期型のエクリドール6本で試します。
私が所有するエクリドールのモデルでは一番数が多いロングクリップの後期型。
その理由は、この年代のモデルの柄が非常に私を惹きつけるからです。
 

特にお気に入りは左から三番目の「アルルカン」。
彫刻も深く、シルバープレートのクスミが柄に残るため、とても渋い見た目になります。
 

この6本のうち、一番右のシェブロン以外はシルバープレートというのもお気に入りの理由でもあります。
柄に硫化によるクスミを残すという方法は、このシルバープレートかスターリングシルバーのモデルでしか味わえません。
 

 
さて、ロングクリップモデルの魅力を語るのはこれくらいにして、G2リフィルが使えるかの結果は全て○となりました。
 

優れたゴリアットリフィル以外にG2リフィルまで使える、なかなかパフォーマンスの高いモデルではないでしょうか。
ただ、これらが1970~80年代のモデルの全てではないので、手元にあるロングクリップ後期型のエクリドールがたまたま使えるモデルだったという可能性もありますが、まずは「G2が使える」と判断しても良いのではないかと思います。
 

 
次に、ロングクリップからモデルチェンジしたショートクリップ(天冠:CdAロゴ)5本でG2リフィルを試してみます。
 

この辺りのモデルから、使える使えないの声を聞くようになります。
今や新品で購入することが難しくなった天冠CdAロゴのエクリドールですが、ユーズド市場ではまだまだ現役のモデルと言えます。
 

 
結果はというと、手元のモデルではフラダリのみ×で、それ以外のモデルは○でした。
フラダリはノックしてもペン先が固定されず。バリアスやRNX.316と同じです。
 

これは意外で、×があるにしても仏語刻印のクリップを持つ50周年記念モデルのレトロかな、という予想でした。
 

何故フラダリなのか。
ノック機構の真鍮部分は同じに見えますが、何かがあって使えないということになります。
 

 
G2リフィルが使えなかったバリアス、RNX.316、エクリドールフラダリのノック機構を並べてみます。
形状はいずれのモデルも異なっていますが、RNX.316もフラダリも、リフィルを押し出す部分の真鍮パーツは同じ。これはすなわち「G2リフィルが使えるモデルとも同じ」となります。
 

大きな謎ですが、何かがあるはずです。
検証を続けましょう。
 

 
エクリドールスターリングシルバー素材のモデル。
この2本についてはどちらもG2リフィルが使えました。特徴は胴軸の素材がシルバー925、天冠のロゴはフラット(ロゴ無し)とCdAロゴ。
 

 
そして続いては、現行モデルの天冠ペンシルロゴ2本。
デザインは、バリエーション(左)とヒュッゲ/ミラネーゼ(右)。
現在購入できるモデルは全てこのペンシルロゴとなっています。
 

こちらはというと、G2リフィル使用不可でした。
理由はペン先が固定されず。
 

以上が全21本の結果となりますが、下記にまとめると、
 

ヘクサゴナルコレクション2本(天冠ロゴCdA:有り無し)→○
バリアスメットウッド(天冠ロゴ:CdA)→×
ロングクリップ前期型2本(天冠ロゴ:無し)→×
ロングクリップ後期型6本(天冠ロゴ:無し)→○
ショートクリップ5本(天冠ロゴ:CdA)→一部×でほぼ○
ショートクリップシルバー925モデル2本(天冠ロゴCdA:有り無し)→○
ショートクリップ現行モデル2本(天冠ロゴ:ペンシル)→×
RNX.316(天冠ロゴ:ペンシル)→×
 

エクリドールは、ロングクリップ前期型は×で後期型は○。
ショートクリップの一部(フラダリ)が×なのは、理由の追跡が必要です。
シルバー925モデルは○、ショートクリップのペンシルロゴ現行モデルは×。
 

ショートクリップにG2リフィル使用可否が混在していることから、理由の追跡を行います。
同じエクリドールのモデルに対して胴軸内の形状をころころと変更するのは考えにくいため、理由をノック機構全体の形状と仮定して検証します。
 

 
改めて利用可否のノックボタンをまとめるとこのようになります。
 

ロングクリップ前期型は、明らかにノック機構真鍮部分の形状が他のエクリドールとも違うため、これが要因と見て間違いないでしょう。
 

 
角度を付けて比較すると、ロングクリップ前期型の2ツメタイプ・4ツメ幅広タイプは、それ以降に発売された通常の4ツメタイプよりG2リフィルのプラスチック部分の形状に干渉する可能性が高い造りとなっています。
興味深いのはロングクリップ後期型~現行を含む、ノック機構の真鍮パーツが同じモデルにおいて使える・使えないの差が出ているということ。
 

着目点を真鍮パーツからノック部分の金属パーツに切り替えると、G2リフィルが使えるモデル・使えないモデルで違いがあることが見えてきました。
 

 
赤い▲印の部分。
どのノック機構も全長は同じですが、ノックボタンとなる金属カバーの形状に違いがあります。
 

写真の×のノック機構を持つ手元のフラダリはショートクリップで天冠のロゴがCdAでした。
しかし、ノック部金属カバーの形状が他のショートクリップかつCdA天冠ロゴのモデルと違うのです。
 

 
もしやと思い、天冠がペンシルロゴの2本とフラダリ、そしてG2リフィルが使えるショートクリップ+CdAロゴの組み合わせを持つマヤのノック機構を並べると理由が見えてきました。
 

G2リフィルが使えないエクリドールの仕様として、ノック部分金属カバーのラインが現行品と同じものという結論に至ります。
 

 
G2リフィルに対応しているモデルを○、対応していないモデルを×とすると、ノック部分金属カバーのラインの位置はこのようになります。
 

つまり、ノック時に指が触れる天冠から金属カバーのラインまでの長さが10mmのものはG2リフィル非対応(エラー改善済み)と結論付けられます。
 

ちなみに、バリアス、RNX.316のノックボタンの天冠からラインまでの長さも10mmでした。
皆さんのお手元のエクリドールは如何でしょうか?
 

 
ということで、今回の検証は終わりますが、最後にG2リフィルがエクリドールで使えなくなった事に対する考察を書いておきます。
 

おそらくですが、カランダッシュ側からするとG2リフィルが使えてしまうのは想定外のエラーで、1990年代にショートクリップのモデルが発売されて、まるで裏技のように知っている人は使っているG2リフィルが使えるという噂が、2000年代になってSNSを通じて表に現れ、カランダッシュエクリドールの仕様変更に繋がったのではと考えます。
 

メーカーのカランダッシュからすると、思いも寄らない裏技だったに違いありません。
筆記具メーカーとしては、生産コストがかかる軸を売るよりも原資が水であるインクを売る方が利益が上がるわけで…、G2が使えてしまうと自社のゴリアットリフィルが売れなくなる可能性も出てくるわけです。
 

そのため、ショートクリップで天冠がCdAロゴの末期から現行のペンシルロゴになるタイミングで仕様変更が行われたものと考えます。
 

まあ、私からするとジェットストリームよりもゴリアットリフィルの方が好きで、エクリドールはじめカランダッシュの軸にはゴリアット入れる派ですので問題ないですが、ジェットストリームが好きな方からすると少し残念な話なのかもしれません。
 

今回の検証では全長が同じノック機構に対して、キャップパーツの違いのみでG2リフィル利用可否を判断しています。
このキャップパーツのラインの違うことによって、リフィル繰り出し・固定にどのように作用するのかについては未だに謎で、完全にG2リフィルが使える使えないの答えを出すには エクリドールの胴軸を真っ二つにするほかないように思います。
そうすれば、胴軸側の固定部品(もしくは突起)、またはペン先に固定されているスプリングの違いなど、別の要因も見つかる可能性があります。
 
そこまでするかは置いておいて、G2リフィルが使えるというのは一種の思いがけないラッキーなオプションとして気軽に構えるのが良いかと。

大好きなエクリドールでゴリアットとG2を使い分けるという方法ができなくなったことを嘆くのではなく、エクリドールを生み出してくれたカランダッシュに敬意を払い、ゴリアットリフィルを使いましょう!という前向きかつ正当なコメントで締めたいと思います。
 

それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

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