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デルタの限定モデル「少数民族シリーズ」から世界の少数民族を学ぶ【DELTA トゥアレグ レビュー】

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皆さんこんばんは。
最近 忙しくしており記事の更新が延びていました。
 
今回はイタリア製のボールペンについて書いていこうと思います。
2022年にニノ・マリノ氏によって華々しく復活を果たした、万年筆ブランドの「デルタ」。
 
ドルチェビータをはじめとした鮮やかで美しいマーブルレジンが魅力のデルタの筆記具。
数々のデルタの筆記具コレクションの中で、最も有名なのは「少数民族シリーズ」ではないでしょうか。
 
少数民族シリーズは、世界の少数民族の文化、伝統にフィーチャーして作られた数量限定のコレクション。
2003年に製造が始まったこのシリーズは、旧デルタ廃業の2017年までに15モデル、そして、2022年復活以降の2024年に新作「センチネル族」が発売されています。
 

 
そんな「少数民族シリーズ」から、2004年に発売された「トゥアレグ」のボールペンを見ていきます。
 
トゥアレグは、アフリカのサハラ砂漠に散在する越境遊牧民。
越境遊牧とは国境をまたいで季節移動を行う遊牧のことを指します。現代の「国花の固定的な国境」という概念ができる以前の、自然環境に合わせて自由に移動していた行動範囲が国境によって制限・分断されたことで生まれた言葉でもあります。
 
少数民族というと一定の地域に根ざして生活する民族が一般的なイメージですが、トゥアレグはサハラ砂漠という広大な環境を生活圏としており、リビア・アルジェリア・ブルキナファソ・マリ・ニジェール等の国境を越える広域移動や交易路を通じた越境移動が伝統的に行われてきました。
 

 

国境をまたぐこと自体が生活の一部となっている点が、他の少数民族とも大きく事なる点と言えます。
そのような民族の背景があることを念頭に、この筆記具のデザインを見ていきましょう。
 

 
この筆記具を見たときに、まず目に飛び込んでくるのがクリップのデザインではないでしょうか。
剣の形をしたこのクリップはトゥアレグ族伝統の刀剣であるタコーバ。
 
少数民族シリーズにおいて、その民族独自の刀剣や短剣がデザインされることは多く、その中でもトゥアレグのクリップは一目で刀剣と分かるデザインとなっています。
 

 
クリップにはスプリング等は設置されておらず、金属板の弾力をもって開閉します。
タコーバの三角形の柄の部分を押すことで最大2mmほどの開きが生じますが、あまり分厚い生地を挟むのには適していないと思われます。
 

 
「青の民」とも呼ばれるトゥアレグの衣装(タガルマ)を表現した濃紺のマーブルレジンと、キャップリングの位置には同じくターバンやヴェールに使われる白が使われています。
 
特徴的な男性衣装のタガルマ(青いヴェール兼ターバン)はインディゴ染めの布。
深い青色のマーブルレジンは、風にたなびくタガルマをイメージさせます。
 

 
手元にあるデルタのボールペン、カプリ マリーナグランデのレジンと同じ色が使われているようです。
マリーナグランデは海洋をイメージした濃紺、トゥアレグは青い民族衣装をイメージした濃紺。
 
それにしても私の好みの色というのは分かりやすくて、青や紺色が好きなのですが、本当によく似たカラーの筆記具が集まってきます。
 

 
美しく磨かれたデルタのマーブルレジン。
マーブルレジンはどの筆記具メーカーからも出ているのですが、イタリアのマーブルは発色がひときわ美しいと感じます。
 
深みのあるマーブルと言いますか、見る角度、光の入り方によって全く別の表情が見られる分かりやすい写真ではないでしょうか。(自画自賛)
 
デルタの筆記具は胴軸部分にモデル名が刻印されることが多く、トゥアレグは「DELTA ITALY TUAREG LIMITED EDITION」に、デルタのロゴが刻まれています。
 

 
トゥアレグ(ボールペン)の製造本数は限定1830本。
この数字の出所を探しましたが分からず。1830年はフランスのアルジェリア侵攻の年ですが、トゥアレグとの因果関係は謎です。
 

 
ペン先側の装飾と刻印。
トゥアレグのクリップとこのペン先のリングにはシルバー925が使われており、ペン先のリングには、中東から北アフリカで広く使われているアラビア語で「TUAREG」と刻印されています。
ここはトゥアレグ独自の文字である「ティナフィグ」で書いてほしかったかな、と個人的には思います。
 
ちなみに、トゥアレグの万年筆ではこの装飾は尻軸側に配置され、ペン先にはトゥアレグクロスが刻印されています。
 
デルタと言えばマーブルレジンにシルバー925のトリムがお家芸のようになっていますが、トゥアレグ族においても銀製品の文化があり、北アフリカでも金を交易の中心としたエジプトとは対象的に銀を尊ぶ文化を持っています。
 
トゥアレグにとって銀は「月」や「冷静さ」を意味していて、砂漠環境の過酷な太陽に対する月(冷たい守り)とみなされているため。
 

 
ペン先側の装飾にはホールマーク。
デルタのシルバー925の認可刻印である「☆1 CE」と925の刻印。
毎回書いていますが、CEはカゼルタの地域略号となります。
 

 


 
少数民族シリーズ トゥアレグ ボールペンの美しいシルエット。
キャップは両サイドが緩やかに反っており、胴軸側はペン先にかけて緩やかに細くなっていく形状。
 
通常のデルタ製ボールペンのような大きな金属製の口金ではなく、金属部分は小さくシルバー925リングとのバランスも良好。
 

 
私は普段から万年筆を使っているため、筆記時のグリップ部分は胴軸真ん中寄りとなりますが、ペンを短めに握る場合はシルバー925リング部分の凹凸が指がかりとなり、良好なグリップ感となるでしょう。
 
スペックは、
全長(携帯時):137mm
重量:32g
軸径(写真のグリップ部):12mm
 
ペンの重心はキャップの白いラインの下。ペン先側のシルバー925パーツの重さが作用し、太軸も相まって32gという重量の割にそこまで重さを感じません。
これはトゥアレグのボールペンに限らずですが、ペンの重心がペンの中心に近づけば近づくほど、心理的に重量を感じなくなっていくものと考えています。
 

 
(旧)デルタ製のボールペンを3本並べてみました。
左から、カプリ マリーナグランデ、トゥアレグ、ドルチェビータ ミディアム。
ペンの重心を白◀、重量ポイントを◎としています。
 
筆記感で言うと この3本は似ているのですが、トゥアレグ両脇の2本については重量の要であるシルバー925のトリムが軸のほぼ真ん中に位置しており、重心もペンの中心。
 
トゥアレグはキャップに重量がある分、ペン先側のシルバー925の重みがそれを相殺し、重心が真ん中となっています。
トゥアレグは重量を感じるポイント(キャップとシルバー925のリング)が合谷(親指と人差し指の間)から離れているため、サイズ以上に重量感を感じなくなっているのです。
 

 
デルタのペンにおいてデザイン的・価値的に重要な役割を果たしているシルバー925のトリムですが、実は装飾という位置付け以上に快適な筆記感に大きく関与していると言っていいでしょう。
 
とは言っても、やはりこの硫化してきたシルバー925のトリムを磨くことがデルタの筆記具において一番愉しいのには変わりないのですが。
 

 
デルタの筆記具は、天冠の装飾の違いを見るのも愉しみ方のひとつ。
マリーナグランデはカプリ島にある時計台の文字盤、ドルチェビータはオーソドックスなデルタのロゴ。そして、トゥアレグはおそらくですが南十字星、もしくは太陽を表しているのではないかと考えます。
 

 
デルタのボールペンは、回転繰り出し機構の軽快さも魅力の一つ。
これはイタリア軸のボールペン全般と言っていいのかもしれませんが、ペン先に設置されるスプリングの長さと太さが一般的なボールペンよりも長くて太いという特徴があります。
 
これにより、ペン先繰り出しのロックが小気味よく決まり、ペン先を収納する際も少しの捻る力で半自動的に軸内に収納される。
このキビキビとした操作が実に気持ちよい。
 

 
ついでに胴軸とキャップの素材の厚みについてですが、この拘りを見て頂きたい。
左のドルチェビータやカプリ マリーナグランデのような、シルバー925(重量素材)がキャップリングにあたるペンは中軸の素材が薄めに設計されており、トゥアレグのようにペン先側に重量素材があるペンについては中軸を太くして重量を持たせるよう設計されているのです。
 
このように重心のコントロールを行うことで、装飾デザイン中心の書きにくいペンではなく、書き心地についても怠らないものづくりの姿勢が 長きにおいてファンの心を掴んで離さないのだと思います。
 

 


 
さて、今回はデルタの少数民族シリーズから2004年発売の「トゥアレグ」ボールペンをレポートしました。
 
モンブランの作家シリーズもそうですが、デルタの少数民族シリーズにおいても、美しくデザインされたペンを眺め、使いつつ、テーマとなった人物や民族について調べ、学び、想いを馳せることで本当の意味で「その作品を愉しむ」ということになるのだと考えています。
 
今回はトゥアレグ族について色々調べ、少数民族の生活圏や生活スタイル、社会的な位置づけや言語、そして筆記具の元になったであろう衣装やシンボルなど、様々なことを知ることができました。
またこのような貴重なシリーズを手にできる機会を楽しみに待ちながら、今回の記事を締めたいと思います。
 
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

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