三菱鉛筆とLAMYのタッグがもたらした新しい筆記感【LAMYの筆記具×ジェットストリーム】
皆さんこんばんは。
今回は、今一番筆記具界で話題となっているLAMYの筆記具について。
先月に満を持して発売された三菱uniのジェットストリームインクを搭載したLAMYサファリ。
実際に手にされて使っておられる方も多いのではないでしょうか。
ジェットストリーム入りサファリが発売されるに至った経緯をざっくりと振り返ってみましょう。
日本筆記具業界屈指の老舗「三菱鉛筆株式会社」が、デザインに優れたドイツの筆記具メーカー「LAMY社」を正式に連結子会社化するとして発表されたのが2024年2月28日。
誰もが驚きと同時に、新たに起きる筆記具業界の旋風に期待したことでしょう。
それからおよそ7ヶ月後の2024年9月2日。
三菱鉛筆は2025年1月に「三菱鉛筆の販売網を通じた日本市場でのLAMY商品の扱いを開始する」と発表しています。
そしていよいよ、先月2025年1月にジェットストリームインクが封入された「M17リフィル」と、それを搭載するLAMYサファリが発売されました。
三菱鉛筆といえば、日本で最も使われていると言っていいでしょう、三菱uniの低粘度インク「ジェットストリーム」。
そしてLAMYといえば、サファリやLAMY2000を代表としたバウハウスの思想が生きたデザイナーズ筆記具の数々。三菱鉛筆がLAMYの全株式を取得し、連結子会社化したことでなり得た、これら最高のプロダクトの繋がり。
まず今回のジェットストリーム入りサファリ発売は所謂序章で、「強めのジャブ」ということになったと思っています。
初動に関してはある程度予想はできたものの、ジェットストリームが正式に入るようになったLAMYの筆記具は、やはり製品としての完成度がグッと上がったと感じますし、そのLAMY製品を日本市場で戦略的に扱えるようになった三菱鉛筆にとっても 今回のサファリ(M17リフィル)発売はとても大きな一歩と言えるのではないでしょうか。
これからどのような製品が生み出されていくのか、非常に楽しみなコラボレーションです。
ひとつ間違えてはならないポイントとして、「連結子会社化」であって「完全子会社化」ではないこと。
単純に「株式買収」と聞くと、LAMYが三菱鉛筆に吸収合併されたと思いがちですが、連結子会社化は親会社にあたる三菱鉛筆がLAMYの議決権の50%以上を保有したということです。
これはLAMYが三菱鉛筆の一部として吸収されて影を潜めたのではなく、「横並びに繋がった」と認識すべきでしょう。
そのため、三菱鉛筆は三菱鉛筆の強み(日本でのマーケット)を生かしながら世界的にブランド力のあるLAMY製品を扱えるようになり、逆にLAMYもまたしかりなのです。
(LAMYのデザインが無くなってしまう、ということはないのでご心配なく)
この連結子会社化の話がどちらの会社から切り出されたものなのか明確な情報はありませんが、三菱鉛筆が2022年に掲げた長期ビジョン「ありたい姿2036」において、「筆記具業界のグローバル化」を重点方針の一つとして挙げていたことから、三菱鉛筆側が2022年より前から主導的に動いていた可能性が高いです。
何にせよ、我々ユーザーにとっては 筆記具業界のグローバル化により選んで使う筆記具の幅が広がるため、メリットが大きいということに間違いありません。
前置きが長くなりましたが、早速リフィルのM17を入手しましたので、試していきたいと思います。
ということで、入手したM17リフィル。
おそらくサファリは皆さん既に手にされていると仮定して、あえてストレートにサファリ×ジェットストリームのレポートは書きません。
(書きやすいに決まっていますので…)
もっとも、今までのサファリとデザインは変わらず、中身の専用リフィルがジェットストリームに置き換わったという製品ですので 慌ててサファリを買う必要はないかな、という見解です。
それでも個人的にブラックと限定カラーのサンセット(朱色?)は気になりますが…
むしろ私が試したいのは、LAMYの過去モデルとフラッグシップモデルに対して この「ジェットストリームのM17リフィル」を使用した際、筆記感にどのような変化がもたらされるか、ということ。
今回、M17リフィルを入れて書いてみようと用意したのはこの3本。
左から、LAMY2000ブラックウッド、LAMY2000(通常モデル)、LAMY 226。
LAMYと言ったらコレ+過去の廃番モデル1つ。
LAMY2000ブラックウッドは普段から仕事で使っていますので、もはや手の一部であります。
ブラックウッドは中軸が真鍮製ということもあり、通常のLAMY2000よりも重さがあります。
逆に通常モデルは見た目に反して意外と軽やかなペン。
LAMY 226はステンレスにヘアライン軸のモデルで、「W.Germany」の刻印があることから、1990年以前に販売されていた製品だということが分かります。
と、実際に装填する前にパッケージを眺めてみると、「LAMY M17 F」にお馴染みのロゴ「JETSTREAM」が並んでいます。
実に感慨深い。
LAMYのM16リフィルを使う製品でジェットストリームが使える日が来るなど、数年前まで誰が予想できたでしょうか。
もっとも、先月これが発売される前までは、リフィルアダプター「LM-63」でジェットストリームの4C芯はほとんどのLAMY製品で使えていたわけですが…。
LAMYのM17 JETSTREAM リフィルは、0.7mmのF(細字)と0.5mmのEF(極細字)の2種類。
M16には、F(細字)とM(中字)とB(太字)がありましたが、EFは今回が初となります。
一番大きいのが、M17という M16と同じインクタンクでジェットストリームが使えるということ!これに尽きますね。
しかし今のところM17はブラックのみですので、ジェットストリームのレッドやブルー他、様々なカラーの日本製4CリフィルをLAMY製品で使いたい場合は、引き続きリフィルアダプター+4C芯の組み合わせになります。
それでは、まずはいつも使っているLAMY2000ブラックウッドにM17を装填します。
LAMY2000のペン先から低粘度インクがぬらぬらと出てくる不思議な体験。
結論としてはどちらも素晴らしい筆記感。
普段からM16(高粘度)を使い慣れている身としては、重さ36gのブラックウッドに対しては今までのM16の方が合うように感じました。
軸が重い分、低粘度インクが走ってしまう傾向でコントロールが少し難しく感じますが、これはブラックウッドに対してM17リフィルが使いにくいということではなく、個人的な慣れの問題。
今回はF(細字)で試しましたが、EF(極細字)も新たな感覚を与えてくれることでしょう。
なにより、近代的デザインが人気のLAMY筆記具において、それでも使うことを敬遠されていた方というのは、このM16の「THE・油性」な硬い書き味が合わないという理由がほとんどではないでしょうか。
そんなデザインに優れたLAMYボールペンの敷居を下げ、今までLAMYを使ってこなかったジェットストリームファンの感心をLAMYに向けることに成功した、今回の連結子会社化の恩恵は大きいと感じます。
インクのカラーは同じブラックですが、M16はチャコールグレーに近く、M17はクッキリとした濃いめの黒となっています。
これはジェットストリームの売りとも言える部分で、サラサラな書き心地で文字も見やすい。
ビジネス用途で人気が出るのも頷けます。
それぞれの文字を右側に拡大してみました。
高粘度インクと低粘度インクにはそれぞれ一長一短があると考えています。
M16は、ペン先のボールへのインクの供給量が一定(ダマになりにくい)となる代わりに、気温の影響を受けやすく、書き出しや書き終わりに“かすれ”が生じやすいこと。
インクの粘度が他のメーカーのボールペンより高いこともあり、冬場は特に書き始めがかすれる印象。
一方、M17のような低粘度インクはインクが柔らかい分、書き始めペン先にインクが溜まっているとダマになりやすい一面があります。しかし、一度書き始めると安定してペン先にインクが流れていくため、文字にかすれやムラが出にくいというメリットが。
書く人の好みにもよりますが、この2つの異なった書き味を「同じインク容量(同じリフィル形状)で選べるようになった」というところがポイントで、喜ぶべき点だと言えます。
続いて通常モデルのLAMY2000とM17の相性はどうでしょう。
実のところ、ほぼ同じ形のブラックウッドと比べてかなり相性が良いように感じました。
重さ約36gのブラックウッドに対して、約17gのノーマルなLAMY2000。
軽い軸に対してM16のような高粘度のインクだと、どうも書いていて指に余計な力が入ります。
それを良い意味で中和解消してくれるのが、低粘度インクのM17。
LAMY2000は樽型のため、グリップポイント(握る位置)は筆記者がある程度自由に選べて比較的コントロールし易い筆記具。低粘度インクのジェットストリームは、太軸且つ軽めの軸とここまで相性が良いのか…!というのが私の評価です。
個人的にブラックウッドに入れるよりも通常LAMY2000に入れる方が、素直に使いやすいと感じます。
最後は、廃番モデルのLAMY 226 × M17 JETSTREAM。
これもLAMY2000(ノーマル)との組み合わせほどではないですが、評価は高いです。
226の重量は17g。やはり軽い軸にM17リフィルは合いますね。
ただ、細軸かつステンレスヘアラインデザインの226は、冬場は筆記時に否応なく指がペン先側に滑っていくため、M16よりM17の方がマッチするという評価となります。
使いやすさはLAMY2000ノーマルモデルの方が高く、今回試した3本のボールペンの中ではM17の恩恵を一番受けていたと言えます。
総じて、M17は20g以下の軽めの軸では良好な筆記感となるものの、30gを超える上位モデルで使うには慣れが必要という検証結果となりました。
ただこれはあくまで以前からM16を使っている私の個人的な見解であり、今から初めて重量軸+M17を使おうという方には当てはまらない可能性があります。
M16と同じデザインのインクタンクだからこそできる、このペン先までの一体感。
これも書きやすさに大きく関係しています。
軽量で太めの軸においてM17の性能は最大限に発揮される。
2025年1月に発売されたM17搭載のサファリは、まさにこの条件にマッチするためすこぶる書きやすいのではないかと思います。(今のところ使っていないので想像ですが…)
とにかく、LAMY2000通常モデルを使っている方は ぜひM17リフィルを試して頂きたい!
さて、今回は三菱鉛筆×LAMYのタッグがもたらした「M17 JETSTREAM」リフィルを、フラッグシップの2モデル+過去モデルのLAMY 266に装填して検証してみました。
検証結果としては、軽量かつ太軸のLAMY2000ノーマルモデルとの相性が一番良く、書き心地は180度変わったと断言できるものでした。
LAMYのボールペンはもともとM16リフィルを使うモデルが多いため、すでにLAMY製品を使っているという方もお手元のボールペンでM17リフィルを試してみるもの一興。
また新鮮な気持ちでLAMY製品を見直すことができるでしょう。
これからも目が離せない、三菱鉛筆とLAMYの強力タッグ。
LAMYの高粘度油性インクの書き心地に馴染めなかったという方は、是非ともM17を搭載したLAMYサファリで2社それぞれの良さを体験してみて頂きたいと思います。
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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