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モンブランの筆記具の中に光る、モダンデザインのボールペン【モンブラン M ウルトラブラック ローラーボール レビュー】

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皆さんこんばんは。
前回のLMAYの記事につなげて、今回はデザイナーコラボの筆記具をフィーチャーしていきたいと思います。
 
各筆記具メーカーには専属デザイナーがいて そのメーカーの思想やモデル毎のコンセプトをもとにデザインされるのが通常です。
そんな中、まれに著名なデザイナーがメーカーとコラボして筆記具をデザインする事があり、モンブランにおいても2015年にオーストラリアのデザイナーであるマーク・アンドリュー・ニューソン氏(以下マーク・ニューソン)とのコラボを果たしています。
 

 
マーク・ニューソンの代表作は モンブランとのコラボ作を発売する実に29年前となる、1986年にデザインしたロッキード・ラウンジ チェア。
 
ロッキードという名前からも分かるとおり、航空機のような流線型フォルムにアルミニウムパネルをリベットで打ち付けて形成されたプロダクトとなっていて、製造数の少なさから今やオークションで数億円の値が付くコレクターズアイテムとなっているチェア。
 
代表作からも読み取れるマーク・ニューソンのデザインの特徴は、有機的で流れるようなフォルム、装飾を配したシンプルかつ洗練されたデザインとなっており、他にも、2015年の初代Apple Watchのケースデザインや、フォードのコンセプトカーのデザインが有名です。
また筆記具では、エルメスから2009年に発売された「ノーチラス」がマーク・ニューソンが手掛けたデザインとして知られています。
 
そして、2015年に発売された「モンブラン M」。
 

 
マーク・ニューソンのデザインが息づく、流線型フォルムにマッグネット式キャップというユーザー体験を向上させる機能性も備えたデザイン。
 
2015年の初代モンブランM(グロスブラック仕上げ)に続き、2年後の2017年にマットブラック加工のウルトラブラックを発表(発売は翌2018年?)。そして2018年にはプロダクト・レッド(RED)が発売されています。
 
それでは改めて、デザイナー マーク・ニューソンが手掛けた「モンブラン M」をじっくりと見ていきましょう。
 

 

 

 

モンブランMのディティール


 
私が手にしたモデルはマットな質感が美しい「ウルトラブラック」。
マットだけど粗くなく、細かなブラスト加工によって手触りに高級感あり。
 
光を反射しないボディのため、心なしか尻軸のホワイトスターもはっきりしているように感じます。
マットブラックのプレシャスレジンは指馴染みが良い他、指紋が目立たない(というか付かない)という点もポイント高し。
 

 
同時期に生産されていたマイスターシュテュックのウルトラブラックと並べてみても、マットな質感には違いがあります。
肌理はモンブランMの方が細かく、マイスターシュテュックの方が粗め。
クラシックとモダン。同じモンブランのボールペンですが このコンセプトの違いも面白い。
 
モンブランMの重量は28gで、マイスターシュテュックのウルトラブラック(ミッドサイズ)とほぼ同じ重量となっています。
 

 
この掌への収まり。キャップを外した状態での全長は、126mm。
金属の首軸部軸径は約11mmですが、万年筆慣れしている方の持ち位置は それよりさらに胴軸側のとなり胴軸の軸径約15mmの部分。
 
私は親指を胴軸に、人差し指と中指を首軸側に添えて握ります。
この太軸の手応えが堪りませんな…!
 

 
キャップを尻軸にポストすると155mmのロングサイズに。
ウルトラブラックのキャップはマグネットにより無理なく尻軸に吸着されます。首軸にキャップをする時に比べて吸着力は弱めのため、軽く着け外しが可能。
 
初代グロスブラックのモンブランMは尻軸にキャップをポストする機構は搭載されていないそうですので、キャップポスト派は購入時注意が必要です。
 

 
流線型のフォルムに対して尻軸側は平らな面(プラトー)となっており、この面にクリップが来るようにマグネットで誘導されます。
有機的なデザインとして流線型が使われる一方、このプラトーのような平面が無機的な印象を与えています。ミニマル+有機的と無機的の融合は、まさにマーク・ニューソンをイメージさせるデザイン。
 

 
プラトーの約半分が隠れるように嵌まるキャップ。
キャップをポストしたこのあたりのデザインも美しい。
 

 
首軸にはマーク・ニューソンのシグネチャーカラーである「パントーン オレンジ 021C」がチラリと覗きます。金属質でガンメタルな首軸、パントーンオレンジ、マットブラックというコンビネーション。
 

 
首軸の刻印。
かなり小さい文字ですが、しっかりと「MONTBLANC」のフォントの中に細工も見られ、細部にまで抜かりなく仕上げられている事が分かります。
 
通常、モンブランの筆記具は目に見える部分にこのブランド名が刻印されますが、キャップを外して筆記するときにのみ現れる粋なブランド刻印。ミニマルデザインが徹底されています。
 

 
最後はキャップ。
キャップから出る(生える?)クリップの右側面にはシリアルナンバー。
クリップリングやキャップリングなど、クラシックなモンブランには必ずあるデザインが廃され、あくまでスッキリとしたデザインにまとめ上げられています。
個人的に、この天冠の丸さが堪らないポイント。
 
マグネットキャップ式の唯一の弱点は、ポケットが独立しているピッタリ系のペンケース(特にレザーペンケースのようなひっかかりのあるペンケース)に入れた際、キャップを持ち上げてペンを引き抜き難いということでしょうか。
ペンケースによってはキャップがすっぽ抜けてしまうため、そのあたりは考慮してペンケースを選ぶ必要がありそうです。
 

 
モンブランMにおいて、唯一クラシックなモンブランとの共通点を感じるホワイトスター。
クリップ面を下にしてデスクに置くと、角度がつき持ち上げやすいのでお勧めです。
 

 

デザイナーコラボ筆記具の魅力

さて、続いては手元のデザイナーコラボ筆記具の一部と一緒に、デザインについて考察したいと思います。
 

 
我々を魅了して止まないデザイナーコラボモデルの筆記具。
コラボと言っても筆記具を1からデザインするパターンと、メーカーのベースモデルはそのままに カラーや素材だけを換えるものと様々です。
 
今回のモンブランMについては前者であり、それはまったく新しいモンブランの筆記具としてデザインされ、クラシックなデザインが中心のモンブラン筆記具ラインナップに華を添えていると言って良いでしょう。
 

 
各メーカーのレギュラーモデルの筆記具とデザイナーコラボモデルとの違いは何なのか。
著名デザイナーがデザインする筆記具には共通点があり、ミニマルかつ機能的であることが挙げられます。
 
いずれも、それまでの筆記具メーカーらしさや筆記具に対してのデザイン的な固定観念をことごとく打ち砕き、言うなれば一本の棒、一本の線という単位からデザインを見つめ直している点ではないでしょうか。
 
それゆえデザイナーの個性が生かされ、筆記具というプラットフォームにおいて必要最低限の形と、書くという行為から生まれるイマジネーションを邪魔しない機能美が具現化されるのだと考えます。
 

▲左から、LAMY noto(ラミー ノト)、MONTBLANC M(モンブランM)、AURORA Thesi(アウロラ テッシー)。
 
モンブランと同じドイツの筆記具メーカーLAMYの「ノト」は、日本人デザイナーである深澤直人氏のデザイン。
太めで三角形のボディは、人がペンを握る時の指先の自然なポジションと同じで握りやすく、楕円柱の小さなノックボタンは静かにペン先を出してくれます。
 
クリップはボディと一体型。非常に無駄のないシンプルなデザイン。
軸の軽さや取り回しのしやすさから、サファリと同じくらいお勧めなモデル。ノトとジェットストリームリフィル(M17)の相性についても、近いうちに別途レポートしていく予定です。
 
アウロラのテッシーは以前記事にもしていますが、建築家のマルコ・ザンヌによるデザイン。
一見書きにくそうにも見えるボディですが、実は意外とそうでもなく、書く(ペン先を出す)・やめる(ペン先を収納する)の操作、リフィルを換える操作など、全てペン先側で完結できるように設計されているのです。
 
※詳しくは過去記事「1970年代デザイン!使ってみて分かるアウロラ テッシーの魅力」をご参照下さい
 

 
そして、流線型と平面でデザインされた、マーク・ニューソンによるモンブランM。
デザインの美しさに同居する機能美。シンプルなデザインは、あらゆる角度からの光源で作られる陰影をもデザインの一部として計算しているかのような感覚にとらわれます。
 
朝夕晩、いつどの角度から見ても美しいデザイン。そしてそれは機能的でなくてはならない。
これが2015年に発売されてなお、我々を魅了するモンブランMの、強いてはデザイナー筆記具における本質なのかもしれません。
 

 

モンブランMのリフィルについて

それでは機能面に話を戻して、モンブランMの対応リフィルについて書いていきたいと思います。
 

 
モンブランMを実際に使ってみて、私が一番以外だったのがローラーボールリフィルの種類。
モンブランの筆記具ではマイスターシュテュック系の筆記具をメインに使っていることもあり、サイズ的にも同じローラーボールリフィルが使えるものとばかり思っていました。
 

 
実際、モンブランMの対応リフィルは「ローラーボール キャップレスシステム リフィル」が対応となっており、マイスターシュテュック(クラシック)のローラーボールリフィルは非対応。
(クラシックサイズのローラーボールリフィルは差し込めませんでした)
 
うーむ、キャップレスでもないのにキャップレス対応?というのが少し分かりづらいです。
 

 
分かりやすく並べてみるとこのような感じ。左がモンブランM(キャップレス用)、右がMSTソリテールドゥエ(クラシック用)。
考えてみると、プラトー部(尻軸の平らな部分)がある分、クラシックサイズやル・グランサイズのローラーボール用リフィルは差し込めるはずがない事に気付く。
 
モンブラン ローラーボールのややこしいところが、リフィルの種類が3つもあるところ。
①クラシックサイズ用のリフィル
②ル・グラン用のリフィル
③キャップレス用のリフィル(モンブランMはコレ)
 
油性ボールペンのリフィルは1つなのに、なぜローラーボールはこんなにややこしいのか…笑
 

▲左がキャップレス用、右がクラシックサイズ用
 
クラシック用とル・グラン用はリフィルの先にネジ切りが設けられており、ローラーボールの首軸のネジに噛むようになっていますが、キャップレス用リフィルはネジ切りがありません。
ル・グラン用とキャップレス用はリフィルの太さが近い(リフィルの長さが違う)ため、購入前はこの辺りも見分ける参考にしてみてはいかがでしょうか。
 

 
それにしても、ウルトラブラックの首軸と胴軸の接続部、シグネチャーカラーのネジ切りがめちゃくちゃ格好良い。
よく見るとここに「Made in Germany」のデボス刻印があり、モンブランの筆記具に必要な刻印情報はこれで揃ったことになります。
 

 
モンブランMの筆記モードは、万年筆、ローラーボール、油性ボールペンの3種類。
それぞれ、キャップを閉じた時(携帯時)の見た目は同じで、首軸より先だけが違う仕様です。
 
モンブランMの初期モデル(グロスブラック)のローラーボールで、モンブラン純正の油性リフィルが使えるという情報をネットから得たことがありますが、手元のウルトラブラックには油性リフィルは入りませんでした。(リフィル先の部分が首軸内でつっかえてペン先が出せない)
 
可能性として考えられることは、
・初期モデル(グロスブラック)のローラーボールは、ローラーボールリフィルと油性リフィルの両方が差せる
・実はネットに出ていた情報のモデルが油性ボールペン(ローラーボールと見た目が同じ)だったか、またはコピー品である可能性もあり?
 
ではないかと。
 
モンブランMはコピーモデルも出回っているため、そのあたりも含めてモンブランのサイト意外で購入する際は注意が必要かと思われます。
 

 

モンブラン ローラーボールの書き心地

それでは最後に、モンブランMの書き心地について書いていこうと思います。
 

 
冒頭の項で触れた通り総重量は28g。
首軸が金属製のためフロントに重心が寄り、非常に快適な書き心地となっています。
 
キャップをポストしない状態だと重量は20gとなり、個人的にはペンの長さも含めキャップ無しの方が書きやすいと感じました。
 
ローラーボールの書き心地は万年筆に近いため、首軸と胴軸の間あたりを握って書くのですが、プレシャスレジンのマット加工がまた心地良いため、筆記モチベーションも否応なく上がります。
太軸好きには堪らないローラーボールではないかと…!
 

 
インクはクッキリとした黒で、インクフローも潤沢。
流石はローラーボールという書き味ですが、シャバシャバ過ぎず適度な粘度があるように思います。
ペンポイントのローラーを微妙に傾ける事で、字幅に若干のコントロールが可能となり、慣れれば抑揚を付けた文字を書くことも可能。
そのあたりに、インクがドバドバ出るけどのっぺりした文字になる一般的なローラーボールとの違いというものを感じます。
 
文字書きにもイラストにも使える優れたインクですが、ローラーボールのインクフローは裏抜けも必至ですので、手帳よりは一枚物の紙に考えをアウトプットする使い方が合っているかと思います。
 

 
さて、今回はモンブラン発のデザイナーコラボ筆記具、マーク・ニューソンデザインの「モンブラン M ローラーボール」をレポートしました。
 
とにかくミニマルで美しいシルエット。
どこから見ても様になるデザインはモンブランの筆記具多しといえど、モンブランM以外になかなかありません。
 
マーク・ニューソンの思想がふんだんに盛り込まれたローラーボールは、デザインだけでなく マグネットを使ったキャップのロック機構のような、モンブランにとっても新しい機能を備え、ユーザーに新しい体験をもたらしてくれます。
 
昨今の筆記具デザインのモダン化の流れもあり、このデザインがフィットする方は多いのではないでしょうか。ミニマルなデザインのガジェットと合わせたり、Apple Watchと合わせて使うのも粋かもしれません。
 
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂き ありがとうございました。

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