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【保存版】カランダッシュ エクリドール の各年代における仕様の違いと考察

2025年1月19日

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前回に引き続き今回もカランダッシュの記事です。
 
カランダッシュとの付き合いはこのブログを立ち上げた頃からになりますので、もうかれこれ3年半くらいでしょうか。
まだカランダッシュを十分に語る程には至りませんが、849に始まりエクリドールに入り、バリアスを持ったところでまた再度エクリドールに戻るという、長い時間をかけて他の沼にも浸かりながらカランダッシュ沼をうろうろしているわけです。
 
と言ってもエクリドールの記事は過去にやっていませんので今回が初めてなのですが…。
 
ということで、今回のレポートは「カランダッシュ エクリドール ボールペン」の年代による違いについてです。
 

 
 
エクリドール自体1947年に歴史をスタート(販売は1953年)していますので、もう73年ほど経っています。
それだけ長い年月をかけて発売が続いているシリーズですので、バリエーションはあって然りといったところでしょうか。
 
私自身、エクリドールデビューしたのは数年前に発売されたサマーリミテッドエディション(復刻版)のベネシアンでした。
購入当時はレジン製の筆記具について色々調べている時期でしたが、ベネシアンのあまりの美しさに惚れてうっかり買ってしまったという経緯があります。
 
しばらく愛用のロールペンケースの中にいたのですが、使用頻度が低くなり手元を去ることとなりました。
何故その時ベネシアンの使用頻度が減ったかというと、ペン先の視認性の問題があったからです。
 
手元にあったベネシアンはノックボタンに「CdA」刻印のある一世代前のモデル。
軸はものすごく綺麗だったのですが、ペン先のカットがどうもしっくりこなかった。
 
と言うと、ペン先から出るリフィルが 自分が書きやすいと感じる間隔より数ミリ短かったため使いにくく感じたのです。
 

 
しかしその後、再度手にしたエクリドール(シェブロンの1970年代)はペン先のカット(と言うよりペン先の金属の厚み)がしっくりくる個体で、筆記時のペン先の視認性も満足のいくものでした。
 
その時、エクリドールは年代によるバリエーション(仕様の変化)があるのではないかと考え今に至るわけです。
コツコツと各年代のエクリドールを増やし、おそらく一通り揃ったかと思うので満を持してレポートをしていきたいと思います。
 
それでは長い記事になりますが、見ていきましょう!
 

 

 

 

大きく分けて前期型・後期型

手元にある6本のエクリドール。
 
これを、「基本デザインと書き味」をもとに分けるとしたら、前期型と後期型に大きく2分されるのではないかと考えます。※ここでいう基本デザインとは、柄ではなく「クリップ形状」「ノックボタン」「軸の仕上げやコーティング」の事。
 

 
個人的に 初めて手にしたベネシアンを売却するに至った「書き味」というのは非常に重要と感じ、前期後期の判別条件に入れましたが、人によってはノックボタンのデザインで見分けているという人もいるかと。
(ノックボタンで分ける場合は大きく3分ですが)
 
前期型の特徴として、クリップ形状がストレートでロング・ペン先の厚みが薄い。
後期型の特徴として、クリップ形状が反っていてショート・ペン先の厚みが厚い。
 
という形で2分してみますが、移行期については特徴が混ざっている場合もありますのでそのあたりはご愛嬌ということで。
 
 
まずはクリップの形状の違いにつて。
 

 
これはかなり一般的ですが、前期型のストレートなロングクリップ。
年代でいくとざっくり1960年代後半~1990年代末期くらいまででしょうか。
 
このロングクリップは1969年発売の849シリーズに派生して現在にも続いていますが、エクリドールは1997年頃に発売された1953年発売当初の復刻版であるショートクリップの50thアニバーサリーモデルを堺に、以降モデルからショートクリップへとモデルチェンジされています。
 

▲前期型のロングクリップを横から見たところ
 
そして、このロングクリップも細かく見ていくと仕様変更がみられる箇所があるのです。
 

 
クリップ自体の形状を見ていきます。2本の前期型エクリドールのクリップを見比べてみると、同じロングでも長さの違いがあることに気付きます。
しかもこのシェブロン、柄の向きが逆ですね。
 
前期型の前期(ややこしい!)のクリップ全長は37mm、前期型の後期は40mm。
クリップの先も、前前期が丸、前後期が角です。
 

 
クリップ先の造りも実は違っていて、
前前期は矢印の両側を内側に曲げたような造り、前後期は軸に触れる部分に面があり少し凝った造りをしています。これは素直に造形が進化したと言えますね。
 
一見、クリップは年代を追うごとに短くなったのではとも思えますが、1997年頃に発売された短いクリップのモデルが初代の復刻版ということになると、エクリドールのクリップは「短→長→短」と変化したと考えることができます。
 

 
前後期のクリップ上の「CdA」ロゴも近代エクリドールに向かう前のモデルの特徴です。
 

 
一方、後期型のショートクリップはクリップの先が反っていて現行品にも見られる優美な形状をしています。
クリップの真ん中を堺にして両側に傾斜がかけてあるのも立体感と美しさにおいてのポイント。
 

▲奥がエクリドール「マヤ」、手前が849「ネスプレッソ」
 
今やエクリドールと言ったらこの反ったクリップ形状でしょう。
このショートクリップが849との違いにもなっています。
 

 
ちなみにクリップと軸をつなぐ部分であるクリップベースの刻印は「CLIP METAL」(金属)。
前期型の初期モデルのクリップベースの刻印は「CLIP ACIER」(鋼)。
この「CLIP ACIER」のついたモデルは軸本体のコーティングも特殊で青みがかっているように感じます。
 

 

続いて「書き味」という点で前期型と後期型を見ていきます。
 

 
これは見たままなのですが、前期型はペン先の金属の厚みが薄く、後期型は厚みがあります。
 
写真では微妙な違いなのですが、実際書くとなると大きくその使いやすさは変わってきます(私だけならすいません…!)
 
もともと伯爵コレクションのような、ペン先が細く ペンポイント辺りが開けた筆記具ばかり使っているからかも知れませんが、太めのペン先からちょっとだけ出るリフィルというのが使いにくく感じるわけです。
 

 
しかし久しぶりに使ってみる太めのペン先(近年のモデル)も意外と悪くないですね…。
何でしょう、エクリドール愛が深まったからでしょうか。
 
以前ほどペン先が気にならない事に気付きました。
 
このように、エクリドールはクリップ形状で大きく前期と後期に分けることができます。
たまに849のような挟み込み式のクリップがついたエクリドール?を見かけることがありますが、もしかすると更に前の世代のモデルなのかも知れませんね。
 

 

エクリドールの各年代における仕様の違い~新旧のレトロを比較~

私が持つ6本の中で、まさにデザインの変化を調べるキッカケとなったモデルがこの「レトロ」。
おそらくですが、特徴から1990年代後半に発売された初代の復刻モデルではないかと。
(もしかしたら初代モデル?の可能性もありますが、情報がないため不明)
 

 
このレトロは所有満足感を最も満たしてくれる一本で、出番が非常に多いです。
 

 
クリップには仏語の刻印「CARAN D’ACHE / FABRICATION SUISSE」(カランダッシュ / スイス製)。
クリップに刻印が刻まれていること自体 他の筆記具に見ても希ですが、これがあるだけでシンプルなエクリドールの情報量が増し、精密感も上がります。
 
これは初期モデルと復刻モデルの特徴で、刻印と短いクリップ形状は初期モデルの再現。
この復刻モデル以降、このクリップ形状が後のエクリドールに引き継がれることになります。
 
レトロにおいて、復刻モデルと近年のモデルの違いは前項で書いたペン先に加え、このクリップ刻印、ノックボタンの刻印、軸の模様の彫りの深さ、あとは個人的に目が向くのが尻軸のエッジです。
 

 
まず、レトロはシンプルな網目模様なのですが、見る角度によって三角形の柄が浮かび上がるようになっています。これは彫りの角度が変えてあることによる光の当たり具合の変化に見られるものです。
 
復刻レトロは彫りが深く角度によってこの三角形がクッキリと浮き出ます。一方右側のレトロは堀が浅く柄が目立ちません。
完全なる個体差か、年代による仕様の変化か、はたまた偽物なのか…。分かりませんがかなりの違いがあります。(カランダッシュの偽物は聞いたことないですが、この右側のレトロは色々と造りが甘いです)
 
ノックボタンの年代による違いは後でやるとして、個人的に気になる尻軸のエッジです。
 

 
左の復刻レトロに見られる尻軸のエッジ。
エクリドールや849といった六角軸の尻軸は斜めにカットされたデザインをしているのですが、そのエッジが立っているのが初期型にみられる特徴。
 
手元にあるエクリドールではストレートクリップの前期型にも同じ特徴がみられました。
 
右の近代エクリドールはエッジが滑らかに仕上げられています。これは完全に好みの問題なのですが、私はエッジが立っている方が格好良く感じます。
皆さんはいかがでしょうか?
(ちなみに右のレトロのノックボタン上面にはよく分からないマークが着いています。企業ロゴかと思って調べましたがヒットしませんでした…。謎)
 

 

・ノックボタン側面の刻印

さて、エクリドールレトロの新旧モデルを比較しましたが、各製造年代におけるエクリドールの違いの一番分かりやすい部分として「ノックボタンの刻印」が挙げられます。
 
ノックボタン側面の刻印から見ていきましょう。
 

 
1970年代~1990年代モデルのノックボタン側面の刻印は「CARAN D’ACHE + SWISS MADE +」となっていて、字体も彫ってあるだけのシンプルなもの。
 
過去のデザインではありますが、この刻印のモデルは製造年数も長くかなり見かけることができるので、もしかしすると皆さんのお手元にもあるかも知れませんね。
 
2000年代に入るとシンプルなメーカー名刻印から、飾り字の豪華なフォントへと変わっていきます。
飾り字フォントにも2種類の存在を確認することができます。
 

 
左が2009年頃まで発売されていた「マヤ」、右は2010年以降の「レトロ」です。
小さな変更点ではありますが、「CARAN d’ACHE」の前後文字のCとEの間に2行で「SWISS MADE」という製造国の刻印があるものとないもの。
 
「SWISS MADE」が無い方が旧モデル、ある方が新モデル(現行に続く)となります。
 

 
さらに、「SWISS MADE」がある方にも2種類あり、メーカー名ロゴが「CARAN d’ACHE」と「CARAN D’ACHE」(Dが小文字か大文字か)のもの。
こちらは小文字(CARAN d’ACHE)が旧モデル、大文字(CARAN D’ACHE)が新モデルです。
 

 
ついでにこの「SWISS MADE」が無い飾り字フォントの場合、「SWISS MADE」はノックボタンを外した状態の軸に隠れる位置に刻まれています。
 

 

・ノックボタン天面のロゴ

ノックボタン天面ロゴも年代によって特徴があり、大きく分けて3種類。
 
前項の「CARAN D’ACHE + SWISS MADE +」の刻印の天面は無地のものがベースで、場合により企業ロゴが入っていることがあります。
 

 
6本のエクリドールのノックボタン天面を並べてみました。
 
左から右に行くにつれて年代は新しくなります。左から2本はシェブロンで、2本目はバイエルの企業ロゴが入っています。
※BAYER(バイエル)はドイツの大手医薬品メーカー
 
真ん中の2本は現行の一つ前のロゴ「CdA」。
赤い色彩が施されコーティングされているものが1997年頃の初代復刻モデル。それ以降は「CdA」は刻印に変わりシルバー一色となっています。
 
右の2本について。
ラインに波線の赤いロゴはおそらく企業ロゴ?と推測されます。
エクリドールの企業ロゴは、ノックボタン天面に入るか軸側のネームスペースに入るかどちらかです。
 
そして一番右は現行(2020年現在)のエクリドールに見られる「ペンシルロゴ」。
非常にシンプルで良いのですが、こちらについては賛否量論でこのロゴになってから旧の「CdA」ロゴを探し求める方も増えています。
 
 
このようにノックボタンの種類は企業ロゴや短期間モデルといったバリエーションこそあるものの、大きく分けて「無地」「CdA」「ペンシルロゴ」の3種類となります。
 

 
クリップとノックボタンの関係がこちら。
どのメーカーのどのモデルもそうですが、マイナーチェンジする際は変更前と変更後の仕様が混在する期間があります。
 
エクリドールも例外ではなく、仏語刻印の入ったクリップの上に「CdA」ロゴ刻印があったりとバリエーションは様々です。
気に入った仕様のエクリドールを見つけ出すのもカランダッシュの楽しみ方かも知れません。
 

 

エクリドールはどの年代のものを買うべきか

ここまで見てきた通り、エクリドールには年代による様々な仕様の変更点があり、自分にとってどのモデルが合うのか迷うと思います。
 
まず直感的に持ちたい軸のデザインがどれなのかという事が選ぶ基準として一番ではないかと思いますが、軸の柄以外のデザインで見ると、前期型の長いクリップなのか後期型の短いクリップなのか。ここは見た目に大きく影響します。
 
あとはノックボタンのロゴでしょうか。
また、各部デザインの好み以外で重要な要素が、操作感・書きやすさであることは間違いありません。
 
エクリドールの素晴らしい点として、ノック音の静かさと押し心地があります。
これは前回書いたバリアスの記事でも触れていますが、エクリドールはじめカランダッシュのノック音はとにかく静かでブレがない。
 
言うなれば胴軸は一本の金属筒。そこにノックボタンを含むリフィル繰り出しユニットが装着されているのみで、エクリドールのパーツ構成は金属軸、ノックボタン、バネ、リフィルの4つのみという潔さ。
この継ぎ目のない構造とノック機構が、カランダッシュ独自のノック感を実現していると言えます。
 

 
各年代のノックボタンを取り外すと昔から全く変わっていない事が分かります。
しかし微妙にですが、近代のエクリドールより2000年代以前のエクリドールの方がノック音が静かで滑らかなのです。
 
写真の右から2番目のレトロはノック機構の樹脂がグレーでノック音はこの中で一番大きく、一番左の前期型モデルのシェブロンが一番ノック音が小さい。
 

 
個体差もあるとは思いますが、手元にある6本のエクリドールは旧モデル(特に前期型)になるほどノック音が小さく押し心地が滑らかです。
 
私個人で言うと、6本のエクリドールでベストな1本はクリップに仏語刻印のある復刻モデル。
ショートクリップとノックボタン天面に赤いCdAロゴ、ノックボタンの押し心地も申し分なく、ノック音はこの中で2番目に静か。
 
さらにパラジウムコーティングされていないモデルのため、グリップ感も良好でオフホワイトの輝きも美しい。加えてペン先の金属厚も薄く文字の視認性も抜群です。
(しかし一番好きな柄はマヤなんですけどね…)
 

 

このように自分にとってベストなエクリドールは操作もストレスフリーで勉強や仕事も楽しくさせてくれます。
皆さんのお好みのエクリドールはどの仕様のものでしょうか。
 
 
さらに、特別な人へエクリドールをプレゼントする際「名入れも」重要な要素。
エクリドールは製造年代や仕様によってネームを刻印するスペースの広さに違いがあります。
 

 
一般的なのがクリップと対面の尻軸辺りのネームスペース。
スペースの長さは15mm。
 
手元にある最前期のシェブロンのネームスペースは10mmと短く、逆に復刻モデルのレトロはクリップ対面の背中辺りに41mmの広めなネームスペースが設けてあります。
ただこれは製造年代による仕様の変化なのか、ネームスペースにおけるバージョン違いなのか定かではありません。
 
最近のモデルの「エクリドール バリエーション」のようにネームスペース自体がないモデルも存在します。もしかするとクリップに刻印してもらえるのかも知れませんが…。
 
ネーム入れを考えている方はこの辺も注意が必要そうです。
 

 

年代による違いまとめ

さて、今回はエクリドールの年代によるバリエーションを色々と見てきましたが、項目やチェック箇所も多岐に渡りますのでここでまとめておきたいと思います。
 

 
手元の6本のエクリドールの年代別特徴です。
右へ行くほど新しいモデルとなります。
 
クリップの形状から大きく分けて前期型と後期型がありました。
クリップ上に「CdA」ロゴのあるモデルは前期後半~中期モデル。
 
ノックボタン側面の刻印はシンプルな文字の刻印から豪華な装飾文字の刻印へ。
ペン先の金属の厚みも前期~中期は薄め、後期~現行は厚めとなっていました。
 

 
ノックボタン天面は大きく分けて3種類でした。
旧モデルの中にはノックボタン天面や軸に企業ロゴがあるものも存在します。
 
前期型はシルバープレート(パラジウムコーティングされていないもの)もあり、硫化で変色するものの適度なグリップ感と味わい深いシルバーの輝きを愉しむことができます。
 
現行モデルは一部の特殊なシルバー925モデル以外はすべてパラジウムコーティングされています。
※上の写真の一番左のシェブロンみ青っぽい色をしていてどのような表面処理なのか謎
 
 
ネームスペースは確認できているもので3種類。
尻軸に10mmのタイプと15mmのタイプ、背中に41mmのタイプ、そしてスペース無しのタイプ(これは軸デザインによって有無が分かれそう)。
 

 
ジュエリーで美しい軸のデザインとコンパクトなサイズ、多様なバリエーションを持つ「カランダッシュ エクリドール」。
学生から社会人まで根強いファンの多い当筆記具ですが、その理由が分かった気がします。
 
ゴリアット芯の書きやすさ、一体型六角軸の握りやすさ、所有満足感をくすぐるオール金属の適度な重み、コレクタブルな軸のバリエーション、そして15000円程のリーズナブルな価格(※ボールペン/ペンシル)など、金属筆記具好きのすべてが詰まったようなエクリドール。
 
特殊なモデルを除き中古価格も6000円~9000円と安定しており球数も多いので、お気に入りの一本も見つけやすいかと思います。ぜひペンケースに加えてみては如何でしょう。
 
それでは今回はこの辺で。
大変長い記事になりましたが、最後までお読み頂きありがとうございました。

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