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LAMY2000 ペンシルの新旧モデル比較から見えるデザインのアップデートとその考察【LAMY2000ペンシル分解徹底比較】

2023年5月14日

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皆さんこんばんは。
 

新年明けましておめでとうございます。
今年も私が入手した筆記具のレポートを不定期でのんびり書いていきます。
 

少しでも皆さんの参考になるよう、そして皆さんの素敵な筆記具との出逢いを後押しできればと思いますので、本年も何卒よろしくお願い致します。
 

さて、今年一発目の記事は、2022年最後の記事にも登場した「LAMY2000」。
 

 
既に使っているよ、という方も多いモデルではないかと思いますが、まだ使ったことがない方も多くいらっしゃると思いますので、今回はこちらの新旧モデル比較を行っていきたいと思います。
 

LAMY2000は、「2000年になっても通用するデザイン」をコンセプトとして1966年から発売が開始された筆記具で、そのコンセプト通り 現在も発売当時とほぼ変わらないミニマルなデザインが人気のシリーズです。
デザイナーはゲルト・アルフレッド・ミュラー氏。
 

プラスチックとステンレスの素材を基に、ペン全体に施されたヘアライン加工はマットで知的な印象を与え、どの使用環境にも馴染むデザインが、書くことを邪魔しない道具としての本来の役割を約束してくれます。
 

そしてこのミニマルなデザインが、あくまでペンは使用者の一部であり、使う者こそが主役であると主張しているようにも感じます。
 

そのシンプルなデザイン故に 発売当時から変わらないデザインの筆記具と言われていますが、実は1966年の発売当時と現行品のデザインは多少異なっているのです。
 

あえて「ほぼ変わらない」と前述した理由はそこにあります。
 

今回はLAMY2000のペンシル(0.7mm)をもとに新旧デザインの比較を行っていくのですが、分解して見ていくと それがアップデートによるデザイン変更であることが分かってきます。
 

前置きはほどほどにして、LAMY2000ペンシルの初期モデルと現行モデルを写真多めで、徹底的に比較していきたいと思います。
 

それでは見ていきましょう!
 

 

 

 

外観の違い(胴軸、ペン先のパーツ)

それではまず、ペン全体のデザインの比較から。
2本のLAMY2000ペンシルを並べてみます。
 

 
写真にもあるように、左が初期モデル、右が現行モデルとなります。
以降掲載する全ての写真においても、左側が初期モデル、右側が現行モデルとなりますのでご参考にして頂ければと思います。
 

どちらも基本的なデザインコンセプト自体は1966年の発売当時から変わっておらず、ヘアライン加工にステンレス削り出しの金属パーツという構成。
 

 
まず一番分かりやすい見分け方として、胴軸の刻印の有無が挙げられます。
左の初期モデルにはクリップと反対側あたり(刻印の位置は個体差がある可能性もあるため断言はできませんが…)に「LAMY 2000 W.GERMANY」の刻印。
 

これが初期モデルの一番の特徴と言って良いほど目立ちます。
目立つと言ってもスミ入れはされていませんので、あくまでLAMY2000のデザインを損なわない控えめなものには変わりはないのですが。
 

 
2つ目の外観的な違いはクリップ。
 

クリップの違いには2点あり、
・1点目はクリップ右側面の「LAMY」刻印の有無
・2点目はクリップ先端形状の違い
となります。
 

クリップ右側面の「LAMY」刻印については、現行モデルが有りで初期モデルが無し。
これは先ほどの胴軸の刻印ともつながりがあるように思います。
 

ようは、東西ドイツが1990年に統合し、胴軸の「W.GERMANY」が意味をなさなくなったため、刻印が「LAMY」へと姿を変えてクリップ横に移動した、という見方です。
 

2点目のクリップ先端の違いはデザインに関わる重要な部分です。
こちらについて詳しくは次項で見ていくのですが、不変的なデザインにおいて 大きなデザインのアップデートを感じる部分ではないでしょうか。
 

現行モデルは矢先を半分にしたようなソリッドなデザインとなり、初期モデルに比べ洗練さが増しているように感じます。
 

 
また、ノックキャップ天面の字幅表記の有り無しも外観的な違いと言えます。
2本のLAMY2000は同じ0.7mmの字幅のものですが、現行モデルには「7」や「5」といった刻印があります。
 

これは1966年の発売当初は0.7mmの字幅しか無く、後に海外の輸出国向けに需要がある0.5mmの字幅が追加されたことが要因ではないかと考えます。
 

つまり、初期のW.GERMANYモデルは0.7mmの字幅のみのため、字幅の刻印を入れる必要が無かったわけですね。
 

 

それでは 上記の外観の違いを踏まえた上で、早速2本のLAMY2000を分解してみましょう。
 

分解はさほど難しいものではなく、まずペン先のパーツは胴軸の3分の1あたりのところからネジ式で外れ、クリップベース(クリップ根元)の分割線も、同様に反時計回りに捻れば外せます。
 

 
強いて言えば、このクリップベースの部分を回す際 少し硬いかなと思うのと、クリップ先端が胴軸に触れている都合上、美しいヘアラインに痕がつく可能性があるため、写真のようにクリップ先にマステなどでテーピングをしてからやると良いでしょう。
 

 
分解するとこのようなパーツ構成となります。
 

・ペン先
・胴軸
・ノックキャップ
・クリップ
・クリップベース
・内部機構
 

パーツの構成はどちらも同じですね。
 

それでは、胴軸のパーツをじっくり見ていきます。
 

 
刻印の存在が大きな初期モデル。
胴軸の形状やヘアラインの表面処理、重さにおいても同じなのですが、この写真で分かる違いがネジ切りの本数。
現行モデルの方がネジ切りの本数は多いですが、初期・現行で互換性があり、入れ替えも可能でした。
 

 
ペン先パーツとの接続部分を見てみると、内部に穴の有り(初期モデル)無し(現行モデル)が見られます。
これは接続時にそれぞれのパーツにかかる力を逃がすための工夫と思われますが、現行モデルの方はこの穴(というより、ギザのようなもの)がペン先パーツ側にあります。
 

これは後ほど詳しく見ていくとしましょう。
 

また、拡大写真を撮り忘れましたが、現行モデルのネジ切りのペン先側には手書き風の「4」の数字の刻印があり、これは初期モデルの方にはありませんでした。
 

皆さんのお手元のLMAY2000ペンシルはいかがでしょうか?
 

続いて、ペン先のパーツを比較します。
 

 
同じく左が初期モデルで、右側が現行モデル。
外観は全くと言っていいほど違いがありません。(右の現行モデルは使用により若干テカってますが…笑)
 

異素材ながらも統一されたヘアライン加工で、未来的な印象を受けると共に、1966年の発売当時から全く姿を変えていない部分ということもあり、本当に変える必要の無い美しさを感じます。
 

 
胴軸との接続部を見ると、前述したとおり現行モデルの方には負荷を逃がすためのギザが設けられています。
初期モデルは胴軸側に同じ機構を備えていますのでペン先パーツ側には無し。
 

接続部の負荷を逃がすという機能としては同じですが、見えないところのデザインとしてやはり現行モデルの方が無駄がなく洗練されているように感じます。
 

 

クリップ周りのデザインとデザイン変更の考察

さて、それでは次にクリップ周りの比較に移ります。
 

外観比較でもあった通り、初期モデルと現行モデルで大きく違うデザインとなっているのがクリップ先の形状です。
 

 
外したクリップを並べてみると、クリップ先・裏側の刻印、付け根の形状、内部バネに至るまで全てが違うことに気付きます。
 

これはLAMY2000で唯一、1966年発売当初のデザインから大きく変更された点で、後述しますが、その理由として付け根の形状変更が絡んでいると踏んでいます。
 

 
クリップ先のデザイン。
裏面に丸い玉が配置された初期モデルと対象的に、三角形のクリップ先となる現行モデル。
 

また、現行モデルには「GERMANY」の刻印が見られます。
先にも書きましたが、こちらの「GERMANY」刻印も初期モデルの胴軸にあった刻印の一部がクリップ裏に移動したものと考えます。
 

 
付け根の比較。
こちらの形状も全く違うものに変更されており、バネも現行モデルは小型化。
 

クリップの形成についても、初期モデルはステンレス棒の削り出しで形成されているのに対して、おそらくですが、形状を見るからに現行モデルは一旦ステンレスを鋳造した後、削られているのではと思います。
 

これは製造工程の自動化等に伴う変更であることが想像されます。
より早く、より効率的な製造工程に見直しされていったことが覗える部分ではないでしょうか。
 

 
クリップ右側面の比較。
横から見るとクリップ先と付け根の形状の違いが顕著に分かるのと、「LAMY」刻印の有無が見えてきます。
 

クリップ先のデザインはやはり現行モデルの方がしっくりきますが、丸いクリップ先もオリジナリティがあって格好良いですね。
 

 
クリップ根元の樹脂パーツを比較してみましょう。
 

シルエットは同じに見えますが、クリップが嵌まる部分の形状が異なっています。
この根元パーツの変更こそが、クリップユニット全体を見直すきっかけになったのではと私は考えています。
 

 
角度を変えてみてみましょう。
目立つのは三角形の金属部分の形状が異なること。
 

しかしよく見て下さい。
クリップの付け根の形状とリンクし、樹脂部分の形状も微妙に違っていることがお分かり頂けるでしょうか。
 

この溝こそがクリップの形状見直しをかける原因になったものと考えます。
 

 
その根拠がこちらの画像。
初期モデルのLAMY2000(各筆記モード)において、この根元の樹脂パーツに亀裂が入ったものをよく見かけるということ。
それも同じ位置に、です。
 

クリップを固定するための溝が樹脂パーツの強度低下を招き、その結果、クリップの使用頻度に応じて亀裂が入るものと推測します。
 

デザイン変更の真意は不明ですが、初期モデルに起こっている現象とデザインを紐付けることで、そのような仮説を立てました。
皆さんはこのデザイン変更、どのようにお考えでしょうか?
 

 

内部機構の比較

外観の比較が一通り終わったところで、内部機構の比較をしていきましょう。
こちらはペンシルとして技術が詰まった部分となりますので、技術の進歩と共に変更があるのは頷ける気がします。
 

 
同じく左側が初期モデル、右側が現行モデルです。
基本的なシルエットは同じとなりますが、パーツ毎に見ると各部で違っています。
 

 
ペン先側にフォーカスしてみます。
 
ペン先パーツに固定するゴムのパーツ(中央辺りの黒い部分)から下は、色が違うだけで同じ造りっぽいです。
上部のパイプはというと、芯タンクに繋がる部分の長さが違っています。
初期モデルが長く、現行モデルが短い。
 

これは単にコストカットと思われますが、ここが変わったことで強度的な変化はないと思われます。
 

 
どちらも0.7mm芯対応。
口金の表面処理こそ違います(初期モデルが横ヘアライン、現行モデルが鏡面)が、構造は同じで2本の口金を入れ替えても使えることから互換性があると言えます。
 

ちなみに、両方とも口金にはガタつき防止のセロテープを巻いています。
(これは精神衛生上、安心できるからという程度ですが…)
 

 
消しゴム側を比較すると、凸部分から上の長さが異なっています。
初期モデルは短く、現行モデルは長い。
 

そして、元々そうだったのかは分かりませんが、初期モデルの消しゴム(ブラウン)は直接パイプに差し込まれており、引き抜くことができなくなっています。
 

 
このままだと緊急時に消しゴムが使えないため、詰まったブラウンの消しゴムをホジホジと掻き出し、以前の記事の時に買ってあった現行の換え消しゴムが装填できるか確認します。
 

 
ピタリと収まりました。
パイプの径が同じなので当然と言えば当然ですが、約55年ほど前の品物に現行の消耗品がマッチすること自体、感慨深いです。
 

ノックキャップも問題なく奥まで嵌まりますね。
 

 
胴軸に戻したとき、パイプの長さが違うため消しゴムが軸から出る長さも異なります。
使用感はそれほど変わりません。
 

 
ノックキャップも比較しておきましょう。
天面の字幅刻印有りなしは前述したとおりですが、本体と繋ぐパイプの部分も仕様の変更が見られます。
 

左の初期モデルはスリットとパイプ固定用の凸があり、現行モデルのありません。
このノック部に設けられたパイプは径が異なり、初期モデルの方が若干太くなっています。
 

元々装填されていたブラウンの消しゴムの径が関係していた可能性もありますが、異なるパイプ径を繋ぐため、ノックキャップの抜け落ち対策として設けられていたことが想像できます。
 

ペンシルの心臓部である内部機構について、パーツの違いは見られますが 心地良いノック音や快適なノック感は発売当時から変わっていない、という比較結果となりました。
 

 

筆記感に違いはあるのか?

それでは、ディティールの違いはあるものの、筆記感は異なるのか?を書いていきたいと思います。
 

結論から書くと、筆記感に変更は見られず、共に太軸で軽やかな筆記を提供してくれます。
 

 
胴軸のヘアライン加工は指紋に対して十字になり、それがグリップを助けるという効果を生んでいます。
グリップ部が樹脂ということも、グリップ感向上の要因として一役買っているようにも感じます。
(そうなるとオールステンレスの上位モデル「プリミエステンレス」のグリップ感も気になるところ)
 

 
胴軸の接続部において、指で撫でたときのシームレスさは現行モデルがより滑らかに感じます。
これは単に製造技術の進歩と言って良いでしょう。
 

現行モデルは全体的にパーツ同士の噛み合わせの精度が上がっており、販売開始からデザインを生かすための生産精度向上が繰り返し行われてきたことを裏付けています。
 

もう一点、重量については、
 

初期モデル:18g
現行モデル:19g
 

と1gの差があり、わずか1gの差ですが初期モデルに体感的な軽さを感じます。
 

それによって筆記感が異なるとまではいきませんが、1gの差の原因を確認すると、ペン先パーツの重さの違いにあることが分かりました。
 

デザインは一番変化がないペン先パーツでしたが、重量が違うという意外な結果に…。
 

 
口金部分を拡大して見てみるとこちらも大きな変化は見られず、筆記感が同じであることの証明となっています。
ペン先パーツと口金パーツが別パーツということもあり、2つの部品の間には隙間が生じ、これによりわずかなガタつきを感じる方もおられます。
 

ガタつきを感じる場合は、口金にセロテープを少し巻くことで改善しますので、未対策の方は是非お試しください。
 

 

さて、新年一発目の記事はLAMY2000ということで、私の大好きなドイツ製筆記具の比較検証・考察となりました。
 

 
大きくデザインを変えていないとされるLAMY2000。
実は初期モデルと現行モデルでは細かな部分でアップデートが行われており、強度的な問題解決やユーザーがより快適に使えるような工夫が見られました。
 

まだLAMY2000を使ったことがないという方は、今回の記事を参考にぜひLAMY2000ペンシルをお試し頂きたいのと、既に持っているという方も 当記事で初期モデルとの違いを愉しみながらお使い頂ければ幸いです。
 

それでは今回はこの辺で。
長い記事となりましたが、最後までお読み頂きありがとうございました。

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