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モンブラン Pix L71 ペンシル レビュー【ボルテールと比較】

2022年9月10日

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ああ、またヴィンテージ ペンシルを買ってしまった…。
 

しかしこれは私がずっと使いたかった物。
いわば、私にとって“アガリ”の一本と言えるペンシルです。
 

ヴィンテージ品ということもあり状態はあまり良くないですが、まず使えれば問題なし。
なによりそういった完璧でない部分を自分で補修しながら使っていくという過程も楽しめるので、ミント品を手にして恐れ多くて使えないという状態になるよりは良いでしょう。
 

 
そのペンシルはと言うと、
「MONTBLANC Pix L71」
モンブランの1930年代を代表する、優美なデザインのペンシルです。
 

 
どうしてもこの2本をセットで持ちたかった、という願望がありました。
モンブラン 作家シリーズのボールペン「ボルテール」とモンブラン ヴィンテージ ペンシル「Pix L71」。
 

なぜなら、モンブランのボルテールはこのPix L71(もしくはL72)のデザインをもとに作られたペンで、まさにボルテールのオリジナルとも呼べるペンがPix L71なのです。
 

※ちなみにL71とL72はデザインは同じで全長が違います。(L71はL72に比べてショートで太軸)
 

あと、ボルテールの記事のときに書きましたが、これでずっとやりたかったデザインの比較ができるというもの。
 

 
Pix L71の天冠彫刻は手彫りで仕上げられています。
1920年代のペンシルのため小傷はありますが、それも味ですね。
 

 
続いてボルテール(ボールペン)の天冠。
Pix L71と全く同じデザインではないところがミソ。
模様のパターンとしては同じですが柄が違っています。
 

 
2つを並べて比較します。
左がPix L71、右がボルテール。
 

葉の柄が1つと2つ。
その間にある模様もL71はシンプル、ボルテールはより複雑な模様となっています。
 

 
クリップのデザインもそっくりで、横から見ると どちらも湾曲のあるシルエットが美しい。
これぞヨーロッパのヴィンテージペンといったキャップ周りのシルエットです。
 

 
キャップリング、というより胴軸の中間リングと言いましょうか、クリップ下の胴軸付近にもシングルの手彫り装飾リングがあります。
 

左のPix L71は天冠の装飾パターンをそのまま小さくしたようなデザインである一方、右のボルテールは逆にシンプルで、葉のシンボルのようなパターン。
 

 
胴軸(キャップ側)の刻印は「MONTBLANC Pix」のクラシックな字体。
「A」のフォントがオリジナルでとても格好良いです。
 

軸の素材はエボナイト。
手元の個体も紫外線の影響で変色してカーキ色に。
 

この変色は窪川万年筆店に修理に出そうか迷っています。
まあ、このまま(カーキ色)も格好良いのであえて直す必要も無いのですが、しばらく使った後に気分転換に出してみようかと。
 

そして軸が黒く戻った時は、軸の亀裂も自分で直そうかと考えています。
 

 
MONTBLANC Pixの反対側は通常であれば「L71」のモデル名刻印がありますが、こちらは「gleitsmann」の企業ロゴ刻印。
 

この頃のモンブランのペンシルは企業ロゴが入っているものも多く、これもその一つ。
「gleutsmann」ということはドイツの「グライツマン セキュリティー インク」でしょうか?
 

これも彫りは浅いので耐水ペーパーで磨けば消えそうですが、これはこれで当時の贈答品事情を知るひとつの手がかりですので、このままでも良いでしょう。
 

エボナイトは素材として、その後ペンの素材の主流となるセルロイドよりも硬くで状態維持に優れているため、セルロイドのように痩せないですし、個人的に硬質な手触りも好きですね。
 

 
ノックボタンにはお馴染みのホワイトスター。
劣化して細かくヒビ割れていますが、これもその気になれば白い樹脂で覆った後に磨くことで修繕は可能。
今はこのペンシルが歩んできた歴史を楽しみながら、そのまま使うのが一番かな と思っています。
 

 
MONTBLANC Pix Pencil(モンブラン ピックスペンシル)という名は、ノックボタンを押したときの音に由来しています。
ノックする度に“ピックス ピックス…”とリズミカルに響く音と手応えがとても心地良いです。
 

 
ノックボタンのサイドには刻印があり、この個体には「D.R.P. 569824」と打たれています。
うーむ…、リサーチ不足(というか情報が無い…)ではありますが、シリアルナンバーのようなものでしょうか。
 

 
対応する芯は1.18mm芯。
ショートでもロングでも、どちらの芯も装填可能。
 

1.18mm芯は様々な太さの線が書けて、文字書きにもスケッチにも使える優れもの。
個人的に好きですね、この字幅。
 

注意点として、市販の1.18mm芯全てに対応しているわけではなく、芯によって(これが硬度によってなのか製造メーカーによってなのか定かではありません)は微妙な太さの違いから使えないものもあります。
 

この年代のペンシルは芯を口金先から差し込むタイプのものと、現在のペンシル同様にキャップ(ノックボタン)を外して芯を入れ、ノックを繰り返すことでペン先から芯を出すタイプのものがあります。
 

Pix L71は後者で、胴軸内に芯を補充したらあとはノックを繰り返すだけで書き始められます。
 

同じ1930年代のエボナイト製ヴィンテージペンシルに「カヴェコ スペシャル」がありますが、そちらはペン先から芯を補充するタイプでした。
同じ年代のものでも、ペンシルによって芯の装填方法が違うのは覚えておいた方が良いでしょう。
 

 
メンテナンスや分解は口金を外すことで行えます。
口金のデザインも、ヴィンテージペンシルはPix L71のように胴軸との接合部に刻みが入っているものが多く、デザインのアクセントになっています。
 

ペン先には3本のスリットが入っていて、これは亀裂などではなく仕様です。
芯の繰り出しや筆記時に、芯に少しの“あそび”を持たせるための調整スリットです。
 

 

ついでにPix L71を分解してみましょう。
分解と言っても造りがシンプルなため、胴軸が外せる程度ですが…。
 

 
口金を外した状態で、ペン先側に向けて胴軸(グリップ部)を滑らせ、引き抜くことができます。
こちらのパーツは中間のシングルリングを含みます。
 

 
続いて、胴軸上部も同じ要領で引き抜けます。
クリップ、天冠も同じように下げていけますが、クリップはペン先部分で引っかかり抜くことはできませんでした。
 

しかしながら、クリップ開きを直したりといった修理はこの状態もでき、手元のPix L71も購入当初はクリップが開いていましたが、直すことに成功しています。
 

軸の研磨や補修はこのように胴軸を抜いた状態で行うと、作業もやりやすいかと思います。
 

 
コロンとしたシルエットで手中に収まるPix L71。
スペックは、
 

全長:119mm
重量:20g
軸径:10mm(グリップ部)
軸径:12mm(中間リング部)
 

となっています。
 

いやー、実にエレガントで美しいペンシルです。
 

 
デザインコンセプトが似ている(ような気がする)4本のペン。
手前から、作家シリーズ アレキサンドル・デュマ、同じく作家シリーズのボルテール、Pix L71、Pix 172。
 

こういったクラシックなデザインで編成したペンケースというのも悪くないですね。
 

 
ちなみに全長の比較はこのようになっています。
デュマ以外は軸径もだいたい同じで統一感がありますね。
 

うーむ、いかんいかんハマってしまいそうなモンブランのヴィンテージペンシル。
Pix L71がアガリの一本と言っておきながら、この操作性で他の軸も見てみたいという欲求が湧いてきてしまいます。
 

 
わずか20gではありますが、エボナイトの吸い付くようなグリップ感、硬質な触り心地、手彫りの豪華な装飾等、筆記するにあたってモンブランペンシルの歴史を感じる瞬間です。
 

 

さて、今回は念願のモンブラン ヴィンテージペンシル「Pix L71」をレポートしました。
 

作家シリーズのボルテールが好きな方はもちろん、ピックスペンシルの硬めのノック感が好きな方も、エボナイトという素材が好きな方にもお勧めする、至高の一本ではないかと思います。
 

私の一生の相棒になることは間違いありません。
 

それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

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