デルタ ドルチェビータのペンシルを持つなら回転繰り出し機構を備えた旧モデル【DELTA DOLCEVITA レビュー】
皆さんこんにちは。
しばしば出てくる高級筆記具メーカーのメカニカルペンシル欲求。
または、シリーズで筆記モードを統一(コンプリート)したいという欲求。
今回はこれらが同時に発症してしまい、結果 入手に至ったペンシルのお話。
イタリアの高級筆記具ブランドとして名を馳せていた「DELTA(デルタ)」が2018年に廃業してから4年後、2022年にマイオーラのニノ氏(元デルタ創業者の一人)により 華々しく復活を果たしたことは記憶に新しいかと思います。
今もデルタブランドで様々な筆記具のリリースを続けている、注目の新生デルタ。
そんな新生デルタに復活を要望したいメカニカルペンシルがあります。
それがこの旧ドルチェビータ(ミディアム)方式のメカニカルペンシル。
もちろん新生デルタのドルチェビータにもメカニカルペンシルはあるのですが、旧デルタの方はひと味違うのです。
ドルチェビータといえばデルタを代表する、言わば代名詞とも言えるモデル。
もともと元祖デルタが廃業する前から何本かのデルタ製万年筆を使っていたのですが、デルタのペンシルはどのようなものかと興味があったことが入手の動機となります。
考えてみると、デルタやアウロラのようなイタリア製筆記具は万年筆やボールペンのイメージが強く、メカニカルペンシルを出しているイメージが湧かなかったというのもあります。
また、あるにはあっても回転ノック式(キャップを回転させて数ミリ単位で芯を繰り出すスタイル)であり、ドイツ製ペンシルで嫌ほど使ってきた機構のため、あえてイタリア製の回転ノック式ペンシルに食指が沸かなかったというのも事実…。
しかし調べていくと、デルタ ドルチェビータのメカニカルペンシルには2種類あり、スリムが回転ノック式、ミディアムが回転繰り出し式であることが判明。
それが分かった途端、大好きなドルチェビータ故に「回転繰り出し式」を試さすにはおれないだろう、と。
程度の良い旧ドルチェビータのメカニカルペンシルを入手し、旧ドルチェビータ ミディアムサイズのFP・BP・MPの全筆記モードが揃った形となります。
当記事では、旧ドルチェビータのデザインを改めて見つめ直し、同モデルの万年筆やボールペンとの比較、他メーカー筆記具との比較で再度その魅力に迫っていきたいと思います。
まずはドルチェビータ ミディアムの各筆記モードでのサイズ比較。
左から、万年筆(FP)、油性ボールペン(BP)、メカニカルペンシル(MP)となります。
クリップの長さは同じで、クリップ長37mmのローラ付き。
万年筆とボールペンは同サイズで、メカニカルペンシルのみ全長が天冠一つ分(約9mm)長いです。
全長に関しては携帯時で142mmありますが、軸径も踏まえて、手に持ったときの収まりの良さはこの三本の中でも一番ではないかと感じています。
それにしても美しいデザイン。
このモデルに使われる、ブラック、シルバー、そしてマーブルオレンジのコントラストと配色バランスが本当に素晴らしいのひと言に尽きます。
今となっては当たり前のように認知されている「マーブルレジンの軸」。
個人的にその美しさに触れたのがアウロラ製のマーブル軸よりもデルタ製の方が早期だったため、マーブルレジン=デルタの印象が強いです。
私にとってドルチェビータのマーブルレジンはオレンジマーブル軸の走りのような感覚。
そして、ドルチェビータのアイデンティティであるキャップリングも欠かせないデザインです。
職人による手彫りの柄部分はスターリングシルバー製。
そのすぐ上のシングルリングはプラチナプレートと思われます。
この複雑な模様の溝部分が硫化で黒くなり、また一層 シルバー製であることの所有満足感を掻き立てます。
旧ドルチェビータシリーズでも、フェデリコというモデルは全体のデザインが同じながら この手彫り刻印部分がレーザー刻印となっているため見分ける必要があります。
裏側にはホールマークの刻印スペースがあり、デルタは「★ 1 CE」。
カゼルタの検査所にて認可された銀細工であることが分かります。
このホールマークについてはイタリア軸の過去記事でも触れていますので、もしよろしければカテゴリ一覧から遡ってみて頂きたい。
それにしてもこのホールマーク用スペースのお陰で、ペンをデスクに置く際、ピタリとクリップ面が上部に来るように置くことができます。
簡単な転がり防止と、私のようにモノ撮りする人間からすると非常に有り難い仕様です。笑
キャップリングの上に見える数字は、製造通し番号。
この個体は25827番目に製造された個体であることを表しています。
イタリアメーカーの筆記具は、クリップ先にローラーが設置されていることが多々あります。(これが各イタリア軸上位モデルの証のような共通認識にもなっています)
ローラーの形状はメーカーによってそれぞれですが、デルタはビーズの両側をカットしたような樽型で、動作も良好。ジャケットの胸ポケットや内ポケットの生地を傷めず、取り出し&収納もスムーズ。これがあるとないとではかなり違います。
旧デルタ ドルチェビータの唯一惜しい点として、トリムの劣化個体が多いこと。手元のペンシルも点状劣化が見られます。
一概にコーティングが弱いとも取れますが、使用環境や保存環境によって影響を受けやすいと考えて良いでしょう。
まあこれはモンブランであってもモデルによっては同じことが言えますので、旧デルタだけがとも言えないのですが…。
新生デルタではこの辺りの腐食耐性も上がっていれば良いな、という感想です。
キャップの上部裏側には、モデル名のペイント。
印刷ではなくペイントと書いた理由が、画像を見てお分かり頂けると思います。
左のドルチェビータ スリムのモデル名が印刷されているのに対して、右のミディアムのモデル名はペイント(文字表面に膨らみあり)となっています。
これは万年筆・ボールペンにおいても同様となっていて、実に味わい深い仕様です。
このモデル名の記載については製造された年代により変わっている可能性もあるため、スリムが印刷でミディアムがペイントと断言はできないのですが、お持ちの方はお手元のドルチェビータを確認して頂くと気づきがあるかも知れません。
さて、ドルチェビータにはミディアムサイズとスリムサイズがある(他にミニサイズもあり)と書いてきたわけですが、ここでミディアムとスリムの全長や胴軸の軸径比較をしておきます。
手元にあるドルチェビタースリムは万年筆で、携帯時の全長が133mm。
同じ万年筆のミディアムだと137mmとなり、4mmのサイズアップ。
それ以上に軸の太さが全く違い、スリムが軸径12mm、ミディアムが軸径15mmとなっています。
ミディアムはモンブランの#149並みの太軸となるため、ペンケース探しは気をつける必要あり。
メカニカルペンシルとボールペンのミッドサイズの軸径は、スリムの軸径とほぼ同じでキャップ下で13mm、グリップ部付近で12mmとなります。
メカニカルペンシルの重心はキャップの丁度下となり、握ったときのバランスも良好。
天ビスの比較。(一番右のみスリム)
新生デルタの天ビス部分をまだ拝んだことがないのですが、旧デルタの天冠は「ペン先ロゴ」となります。
この部分もクリップと同じく経年劣化の影響を受けがちで、点状の錆が出やすい部分でもあります。
回転繰り出し式メカニカルペンシルの芯の補充はペン先から差し込む事で行います。言わばクラシックな手法での芯装填。
そう、ミディアムサイズの売り(?)である「回転繰り出し式」は、通常のメカニカルペンシル(所謂シャーペン)のように内部に芯をおれておくだけで勝手に芯がペン先に供給される仕様とは異なるのです。
予備芯は軸の内部に収納しておくのですが、収納された芯を取り出す際は、キャップを真っ直ぐ引き抜いて、内部機構にアクセスします。
そこで気付いたのが、このドルチェビータのキャップの肉厚!
この厚みよ。
他の回転式のペンシルやボールペンのように胴軸部分がキャップ内に一部入り込む構造ではなく、キャップ口に触れる程度の接合となるため、この厚みが実現できるようです。
なんというか、これだけ厚いと「安心感」が半端ない。笑
マニアックなところですが、私が気に入っている部分でもあります。
キャップを外し、銀色の内部機構の先のイレイサーを外すと収納された芯にアクセスできます。
芯の太さは0.9mmが対応。
太軸でどっしりと文字を書くのに適した芯径が採用されています。軽快に扱えるスリムの方は0.7mm。
軸内に11本の芯を収納可能で、ペン先から装填する芯と合わせて12本の芯が使えます。
このヤード・オ・レッドのペンシルのようなクラシカルな機構、たまりません。
芯は0.9mm記載のリードの他に、1.0mmのものも使えます。
家にあったロットリングの1.0mmを装填。HBの芯を入れてみて率直に感じたこと、この太軸のドルチェビータにはB以上の硬度の方が似合う気がします。
キャップを回してヌルヌルと無段階に繰り出されてくる芯。
左がペンシル、右がボールペン。ペン先の形状も若干異なっており、回転ノック式のようなペンシルユニットがあるモデルとは違い、リード(リフィル)の細さに応じたペン先の形状をしていることが分かります。
そうなると口金パーツが流用できない分、生産コストもかかると思われます。
経年劣化で接着が弱くなっているからか、もともとそのような仕様なのか、ペン先が外せそうなミディアムサイズのペンシル。
内部の繰り出しユニットとペン先が固く接続されていたため、これ以上は無理に分解することは避けました。
使っていて万一この先壊れたら再度チャレンジしてみようと思います。
最後に、回転繰り出し式の高級メカニカルペンシルといえば、モンブランの#167!
ということで、比較をしていきたいと思います。
左がモンブラン マイスターシュテュック#167。
ブラック×ゴールドで流線型のモンブランとは大きく印象が異なるドルチェビータ。
この二本の共通点は、同じ回転繰り出し式機構を備えたメカニカルペンシルであること。
このモンブランの#167を手にしたときも、えもいわれぬ高揚感があったものです。
ドルチェビータで再びこの愉しさに触れることになろうとは…。
キャップを外して内部機構を比べてみます。(位置が入れ替わっているのはご愛敬)
内部機構の径やイレイサーのサイズはモンブランの方が大きく道具としての剛性感・安心感があります。
回転繰り出し動作にも違いがあり、ドルチェビータの方が軽めで、モンブランは重くねっとりとした感触が味わえます。
スペアの芯を内部に収納する仕様はどちらも同じ。
書き比べ。
と言っても、芯はどちらも同じですので同じような字幅になるのですが、注目したい点は口金の芯が出てくる部分の厚み。
ドルチェビータの方が先細りとなっているため書いている際は、視認性が高く感じました。
逆にモンブランが書きにくいというわけではなく(むしろ書き慣れているのはモンブラン)、口金の厚みにより繰り出す芯の長さを長く調整すれば解決します。
このように繰り出し幅の微調整が効くのが「回転繰り出し式ペンシル」の最も優れている点ではないでしょうか。
さて、今回はイタリアの太陽のように美しい、オレンジマーブル軸のメカニカルペンシル。
「ドルチェビータ ミディアム」のペンシルをレポートしました。
一般的に良く使われているのがノック式のシャープペンシル、続いて利用人口が多いのがキャップノック式のメカニカルペンシル。そして一部のユーザーに使われているのが回転繰り出し式のメカニカルペンシルやクラシックなプロペリングペンシルではないかと。
この独特の、キャップを捻った分だけ無段階にヌルヌルと芯が出てくる感じ。
どっしりとした太軸がもたらす筆記の安定感と、スケッチにも文字書きにも使える0.9mmの芯径。
たまりませんな!(二回目)
高級筆記具メーカーが出す回転繰り出し式のメカニカルペンシルは、今回登場したデルタ ドルチェビータやモンブラン#167の他にも、銀軸のヤード・オ・レッドやパーカーのデュオフォールドなど選択肢も多々ありますので、この気持ちの良い回転繰り出し動作をまた体験したことがないという方は、是非ともペンケースの中の一本に検討頂ければと思います。
それでは今回はこの辺で。
今回もお読み頂きありがとうございました。
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