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デザインと書き心地の関係を探る【ロメオ No.3 万年筆(旧タイプ)レビュー】

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皆さんこんばんは。
今回は、かなり久方ぶりの万年筆記事となります。
 
万年筆は既に掌に馴染んだお気に入りを使っているため あまり次々と欲しくならないのですが、今回の万年筆はお気に入りを求めて…と言うよりは興味があっての入手となります。
 
世の中には自社で万年筆のペン先を製造しているメーカーと、ペン先の製造を他社に委託しているメーカーがあります。前者の代表例はモンブラン(MONTBLANC)やラミー(LAMY)、アウロラ(AURORA)など。日本メーカーであれば、パイロット(PILOT)、セーラー万年筆(SAILOR)、そしてプラチナ万年筆(PLATINUM)。
 
後者はそれ以外の大半の筆記具メーカーとなっていて、ドイツのBock社やJoWo社等にペン先の製造を委託しています。とは言っても私はそこまで万年筆の書き心地について詳しい人間ではないので、この書き味はBock、これはJoWoだ、というような利きペン先のようなことはできないですし、ニブのデザインが販売メーカーのもの(メーカーロゴ刻印やメーカー独自のデザインが入っている)であれば、それはそれで委託ニブであっても満足なのです。
 
自社でペン先を製造しているメーカーの万年筆には明確な「メーカーの書き心地」があり、これはニブの形状も含めそのメーカーの万年筆の顔となっています。
 
一方、ペン先の製造を他メーカーに委託する場合、完成されたクオリティのペン先が保証されると同時に委託元メーカーはそのアイデンティティーを少なからず失うことになります。
 
今回レポートする万年筆も、良くも悪くもOEMメーカー自体の「味」が話題となった過去を持つモデル。
しかし、ペン先がOEMメーカーと同じなら、はたしてその万年筆の存在自体までもが浸食されてしまうのか。
そこにポイントを置いた記事となります。
 
それでは、そんな生い立ちを背負う伊東屋(ITOYA)ロメオ No.3 万年筆の旧型を見ていきましょう。
 

 


 
伊東屋の創業は1904年(明治37年)にまで遡ります。
東京の銀座3丁目に「和漢洋文房具店 伊東屋」として伊藤勝太郎が創業。その名の通り和洋折衷の文房具専門店だった伊東屋は、国内外の優れた文房具をはじめオリジナル商品の開発を現代まで続けています。
 
創業から10年後となる1914年(大正3年)にオリジナルの万年筆となる初代「ロメオ」を発売。
紳士・淑女に愛されたロメオ万年筆は、関東大震災や大戦の戦火を経て姿を消します。
 
その後、創業100周年となる2004年(平成16年)にエボナイト軸を思わせる復刻デザインの「ROMEO No.2」として復活。(200本限定)
そして、2009年(平成21年)に「ROMEO No.3」へと進化。美しいイタリアンレジンや革などの異素材を用いたボールペンが発売となっています。
 

 
旧型のロメオNo.3万年筆については あまりネット上にも情報が無いようで、中古市場を覗いても玉数が少ないのかあまり出逢いません。それが今回記事を書こうと思った一番のキッカケなのですが、手放す方が少ないのか所有者が少ないのか今のところ定かではありません。
 
胴軸のデザインは個人的に好みで、大正浪漫溢れるデザインに美しいイタリアンレジン。サイズは意外と大型で、携帯時の全長は147mm、重量は39gとなっています。
 
それにしても、筆記具メーカーとしてではなく文房具店としてスタートした伊東屋ですが、この筆記具製造に対する情熱と拘りには感服します。
 
伊東屋のロメオNo.3万年筆については、今回レポートする旧ロメオNo.3から2024年にフルモデルチェンジを果たしており、新ブランドコンセプトを冠した新生ロメオNo.3は以下の特徴となっています。
 
・18金バイカラーニブを搭載したオリジナル刻印のペン先
・ピストン吸入機構を備えた大型の軸
・旧型ロメオを踏襲した竜頭型の天冠デザインには新たにロゴのバッジを配置
 
旧型のロメオNo.3万年筆は日本製(ペン先はプラチナ製)でしたが、新生ロメオは製造国が台湾(ペン先は台湾製もしくはドイツ製)となっており、TWSBIが製造に絡んでいる場合、ニブはドイツのJowo製という線も濃くなります。
 
伝統的なデザインを残しながら、伊東屋ロメオとしてのアイデンティティを手に入れた新型No.3。
こちらもいつかは試してみたい万年筆の一つです。
 

 
ロメオと言えばこの天冠とキャップのフォルム。
時計の竜頭をモチーフとした天冠には「大切な時間をこの筆記具と共に」という願いが込められています。
 

 
旧型の天冠トップには胴軸と同じ素材の無地バッジが配置されていますが、新型のトップはロメオのロゴ「R」のバッジとなります。
天冠にローレットがあるデザインはカヴェコなどにも見られますが、このノスタルジックな出で立ちが心をくすぐります。
 

 
クリップはパイロットのようでパイロットはない、絶妙な長さの玉クリップ。
個人的にパイロットの玉クリップがあまり好みではないのですが、天冠の重厚なデザインと着物の帯を思わせる極太キャップリングとのバランスが非常によいと感じる ロメオのショート玉クリップ。
(玉の大きさはパイロットよりも気持ち小さめ、クリップの長さはパイロットより5mm短い)
 
キャップだけでロメオと分かる これは重要なポイントで、この明確なデザインを持ってして書きたくなるという気持ちが高まるということは、万年筆にとってこの上ないアドバンテージと言えるからです。
 

 
大型のキャップリングに施されたロメオのロゴとNo.3の刻印。
今まで気付かなかったのですが、ロメオのロゴ「R」の1画目はつけペンのデザインとなっています。
 
裏側には「ROMEO」「JAPAN」の刻印。
ロメオNo.3は軸の色味やモデルによってトリムのカラーがゴールドとシルバーで分かれますが、私の好みは断然シルバー。軸全体のデザインも相まって凜とした日本らしさがあると思うのです。
 

 
尻軸にも竜頭のデザイン。
キャップを外して筆記する時もこの筆記具との時を感じる粋なデザイン。
新型のロメオはこの尻軸のデザインがオミットされましたが、代わりにピストン吸入式という素晴らしいスペックが搭載されました。
 
ピストン吸入式はカートリッジやコンバーターに比べてより多くのインクを溜め込めるというメリットがあります。一方、この旧型のカートリッジ/コンバーター両用式は、手軽に扱え、洗浄を含めたメンテナンスが容易であることがメリットとなります。
 

 
キャップ・首軸+コンバーター・胴軸に分けてみました。
首軸はまるっとプラチナ委託のため、対応するコンバーターも「プラチナ万年筆コンバーター 700A」が適合。700Aは操作部も軽く、安定した使い勝手。
キャップ内部には「スリップシール機構」が見られないため、キャップや胴軸がプラチナ製であるかは不明です。
 

 
胴軸及びキャップの接続部。
キャップリングにはしっかりとした厚みがあり、胴軸のイタリアンレジンにも十分な厚みがあることが分かります。手に持ったときの剛性感、グリップの良さはレジン万年筆の特徴でもあります。
 

 
全長147mm、39gの大型万年筆は筆記時のスペックも魅力的です。22gの程良い重量とペン先まで129mmの丁度良い長さ。キャップは尻軸にポストできますが、ポストせずに使う方がバランス的にもよいでしょう。
 
筆記時には、合谷(親指と人差し指の間の谷)に軸の重みが伝わり、指先の3点保持に加えて合谷の1点支えとなり、筆記時の安定感が増します。
すなわち、これは「心理的余裕」をもたらしてくれる万年筆。
 
心理的余裕をもたらす根本の要因として、ある程度重量のある太軸大型の万年筆であること、弾力やしなりのある金属ペン先であること、そして、最後は人によって異なりますが、私は軸のデザイン(握りやすさや筆記欲の高揚)が大きくを占めているのではと考えています。
 

 
旧型ロメオのペン先。
現行の複雑な刻印が入ったニブもいいですが、個人的にはこのシンプルなロメオのニブの方が好みですね。
ハート型のハート穴を含めて形はプラチナですが、ロメオのロゴが入ったシンプルなデザインのバイカラーニブ、これだけでこの万年筆を使う価値は出てきます。
書き心地についてもはや説明不要のプラチナニブ、しかしこれはプラチナの万年筆なのかと問われるとそれはそれで違う。ちゃんとロメオの書き心地なのです。
 

 
伊東屋がプラチナニブを脱した理由は定かではないですが、完成されたペン先とそのデザイン(特に印象深いハート穴)は 少なからずロメオとしての個性を浸食していた事が容易に想像できます。
 
旧型のペン先が国民が使い慣れたプラチナ製であることが良い悪いではなく、ロメオとしてのブランドを再確立すること。2024年のフルモデルチェンジからは、そうした過去のしがらみから脱し、万年筆「ROMEO No.3」として新たにスタートしようとする伊東屋の本気度や心意気、そして筆記具への愛が感じ取れます。
 

 
プラチナニブの特徴はカリッとした芯のある書き心地。
ニブを前方から見た時の形は半円形ではなく、台形のニブ。これが筆圧を受け止めてくれる。
サラサラと音を立て、軽やかに紙面を舞うペン先は 大型の胴軸ともとても相性が良いように感じます。
 
旧型のペン先はプラチナでも、決してプラチナに飲まれていないロメオNo.3。
軸のバランスと完成されたペン先、この2つのハーモニーこそがロメオNo.3のアイデンティティなのです。
 

 
軸のサイズ比較をプラチナ系万年筆と並べて行ってみます。
左から、プラチナ #3776 ミッドナイトオーシャン、同じく#3776 センチュリー、プラチナ・プラチナ、旧中屋万根筆ブライヤー、伊東屋ロメオNo.3、プラチナ出雲 空溜。
 
一番右の出雲は154mmとかなりの大型、サイズ感はプラチナのブライヤーとほぼ同じ。
#3776センチュリーも結構太くて大きな万年筆というイメージがありますが、ロメオはそれよりも大型となります。
 

 
プラチナのニブを搭載したプラチナ外万年筆は他にもあり、その代表的なものが旧中屋万年筆のNAKATAニブ(右から2番目)です。こちらはハート穴が丸形ですが、バッチリプラチナデザインの富士の稜線が入っています。
ロメオもハート形のハート穴ではなく丸穴であれば、プラチナ感はより薄らいだのかもしれません。
 

 


 
さて、今の中から4本を選抜して書き比べてみます。
左から、ロメオNo.3、プラチナ#3776センチュリー、旧中屋万年筆、プラチナ出雲(プレジデントニブ)。
 
同じプラチナのニブでも、プレジデントだけ形が明らかに違うことが分かります。
前方から見ると台形ではなく半円形のニブかつ、素材も18金。プレジデントニブはプラチナらしい芯のある書き心地を残しながら紙面へのタッチがまろやかになっており、まさにプレジデントの貫禄を感じます。
 
そして、プラチナと言えばUEF(超極細)ニブ。
左から2番目の#3776センチュリーはUEFなのですが、これがまたカリカリな書き心地で、まるで針の先で書いているかのような筆記感。ガチニブ大好きな方はお試し頂きたいペン先です。
 

 
それぞれ特徴のある書き心地です。
ここでは書いていないのですが、同じ#3776センチュリーのミッドナイトオーシャンがM(中字)ニブなのですが、これもこれでまたロメオのようにサリサリではなく少しタッチが柔らかめ。
 

 
今回の比較検証で分かったことは、ペン先のスペックや形状によってベースとなる大まかな書き心地というのは確かに決まるのですが、書き心地を左右するもう一つの大きな要因が軸の「大きさと重さ」だということです。
ロメオNo.3は、14金ペン先でありながら軸が軽いプラチナ万年筆のラインナップにはない、出雲のような重量のある大きめの軸。首軸と尻軸でしっかりと重みを分散し、筆記に最適なバランスをペン先まで伝える。
 
プラチナニブを搭載しているがプラチナにはあらず。
完成されたペン先と胴軸のバランス、大正浪漫を感じるデザインこそがロメオNo.3であり、ひとつのカタチなのだと考えます。
 
歴史のある日本の文房具店が生み出した魅力的な筆記具、旧型のロメオNo.3、そして新たなコンセプトで登場した新生ロメオNo.3は注目すべき万年筆ではないでしょうか。
また新生ロメオNo.3を手にした際は 旧型との比較等レポートしていきたいと思います。
 
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

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