ボールペン・万年筆・メカニカルペンシルなど、文房具好きの購入記を写真多めで比較レビュー。
たまーに気になったガジェットのレポートも。
物欲のままに手に入れたアイテムをレビューしたりしなかったり。

モンブラン スチールペン先 万年筆の書き味はどうなの?という話【モンブラン スリムライン(Sライン) 万年筆 レビュー】

2023年5月28日

スポンサーリンク

さて、今回はかなり久しぶりな気がする「万年筆」についての記事。
 

それも新しく買ったものではなくかなり前に買っていたのですが、なかなか使用機会に恵まれず、それに伴い記事のリリースも先伸ばしになってしまっていました。
 

タイトルにあるようにモンブランのスチールペン先万年筆、スリムライン(以下:Sライン)のレビューになります。
 

 
Sラインは80年代に発売され、それまでマイスターシュテュックが主流だったモンブランのラインナップに廉価版として変化をもたらしたモデル。
 

Sラインの兄貴分にあたるモデルとして70年代に発売された「ノブレス」があり、こちらは胴軸にラインカットを施したモデル等がある高級路線の筆記具になります。
 

よくSラインのケースセットにノブレスの取説が付いていたりしますが、ノブレスの廉価版ということで取説が流用されていたと考えるのが打倒でしょう。
 

“Sライン”という名の如く、細軸でエッジの効いたデザインはマイスターシュテュックとはある意味デザイン的にも真逆で、1万円程というモンブランとしては安価な価格設定もあり、発売当時の受けは良かったと聞きます。
 

しかしその後、モンブランのスチールペン先をラインナップから見かけなくなったことから、私たちがその書き味に触れる機会も減っていくことになります。
 

近年ではオークションサイトやフリマサイトが普及し、Sラインやノブレスといった細身のモンブランに出会う機会も増えてきました。
 

ユーズド市場では比較的安価に取引されているSライン。
しかし、あまりレビューを見かけないということはそれなりの理由があると考えます。
 

モンブランと言えば「金ペン」というくらい金ペンの書き味が良いため、普段の筆記シーンにおいてあえてスチールペン先を使うに至らないのです。
これはモンブランのスチールペン先の書き味がどうこうと言うより、金ペンの書き味が良すぎるため。
(これが核心なのかもしれません)
 

しかし改めて使ってみると、スチールペン先はスチールペン先で独特な書き心地があり、味わいがあると感じてきました。
 

というわけで、スチールペン先の「モンブラン Sライン 万年筆」を見ていきましょう。
 

 

 

 

Sラインの軸

まずはモンブランSラインの軸や仕様などを詳しく見ていきます。
 

 
デザインはいかにも80年代の筆記具といった細身のライン。
軸の仕上げは色々ありますが、こちらのゴールド×ブラックは「エポキシ仕上げ」というもので、ウレタン塗装のようなサラッとした手触りでマットな質感が細軸ながら握りやすいモデル。
 

カラーラインナップは、ブラックの他に、レッド、ブルー、ホワイト、ブラウンと5色展開していたことから、どちらかというと重厚感のあるマイスターシュテュックとは反対に、ターゲットに若年層や女性がイメージされていたことが覗えます。
(いずれのカラーも万年筆・ボールペン・ペンシルをラインナップ)
 

Sラインと言えば、某オークションやフリマサイトでもよく見る、仕上げがステンレスやゴールドやシルバーのモデルが目に浮かびます。
 

ラグジュアリーではあるものの、個人的には細軸にステンレス無垢等の表面がツルッとした仕上げのペンは「滑りやすい」経験があるため敬遠しがち。
 

その分、エポキシ仕上げのSラインは首軸に至るまで握りやすいため、書きながら「滑る軸に気を遣う」ことがないのです。
 

 
キャップには「MONTBLANC」「GERMANY」の刻印。
表面を拡大するとの「エポキシ仕上げ」がイメージして頂きやすいのではないでしょうか。
 

クリップ先にはモンブランのマーク(樹脂パーツ)が見えます。
 

同年代に発売されていたモンブランの筆記具に、ノブレスとチタノがあります。
万年筆に関してはノブレス・チタノ・Sラインで互換性があり、首軸を入れ替えて金ペンのSラインにアレンジすることも可能。
 

 
3モデルの見分け方はクリップの形状で、Sラインはクリップ先にモンブランのマーク。
ノブレスは先細りのクリップ、チタノはストレートで厚みのあるネクタイピンのようなクリップ。
Sラインは廉価モデルのためクリップも一番厚みがなく高級感は薄れます。
 

 
首軸と胴軸は精密に切られたネジで、首軸を着け外しする動作を行うときも密閉感を感じることができます。
ノブレスの廉価版と言えど、首軸胴軸間のゴールドリングと天冠、尻軸のゴールドパーツによりカラーバランスは良いと言えますね。
 

 
フラットな天冠にはモンブランのホワイトスター。
この辺りはハンマートリガーのボールペンも彷彿とさせるお馴染みのデザインです。
 

 
反対側の尻軸には金属パーツに樹脂製のホワイトスターが嵌め込まれています。
今となってはユーズド品を手にする機会の方が多いSラインですが、デザインに共通点の多いノブレス含め、この尻軸のホワイトスターが欠落したものをよく見かけます。
 

 
キャップ・首軸・胴軸を分けたところ。
インクカートリッジやコンバーターがギリギリ収納できるスペースしかない胴軸。
カートリッジは当ブログサイトではお馴染みとなった「カヴェコ スモーキーグレー」が嵌まっています。
 

コンバーターを着けてインク瓶からインクを吸うよりもカートリッジ運用がよく似合うSライン。
細身でスチールペン先の手軽な万年筆ですので、ミニカートリッジで色々なカラーを楽しみたいです。
 

 

マイスターシュテュックと比較

それでは金ペンの最高傑作「マイスターシュテュック」とサイズやニブを比較していきます。
 

 
クラシックなマイスターシュテュックとは対象的なモダンなデザインの80年代のSライン。
左から、#146、#144、Sライン。
 

Sラインの軸の直径は9mm。
全長は#144よりも長く、金属軸のため重量も24gと#146に次いで重くなっています。
(ちなみに#144は13g、#146は30g)
 

 
ペン先の比較。
左から、#146(14金)、#144(14金)、Sライン(スチール)。
 

#146が大型のニブを搭載している分 切り割りの長さは長くなり、結果一番柔らかな書き心地となっています。
次いで#144。小さくても高性能なニブで、こちらはB(太字)のペン先。
 

左のSラインはまるで#25Xシリーズのニブ(ウィングニブ)のような形状で、ハート穴も割愛され、クラシックとは見た目も書き味も180°違うSライン。
見た目や書き味については後の項で書いていきます。
 

 
キャップを尻軸にポストした状態。
Sラインは嵌合式キャップのため、ネジ式のマイスターシュテュックと違いキャップが尻軸にパチッと固定されます。
 

その辺りは嵌合式のアドバンテージではないかと。
嵌合式キャップの万年筆によくある、密閉具合が甘くペン先がドライアップしやすいといった症状も無く、このあたりは流石モンブラン。
 

 
キャップをポストしたときの全長は#146に匹敵するため とても長くは感じるのですが、細軸なぶん手のひらを圧迫するようなこともなくライトな持ち心地となっています。
 

 

Sラインのペン先・ペン芯

それではSラインのペン先をじっくりと見ていきましょう。
 

 
手元のSラインのニブには「モンブランのロゴ」と「MONTBLANC」の刻印。
前項でも書いたとおり、Sラインとノブレスとチタノの首軸には互換性があるためそれぞれを入れ替えて使うことができます。
 

例えば、デフォルトがスチールペン先のSラインにノブレスの14金ペン先の首軸を乗せて金ペン化したり、チタノの渋い胴軸に入れ替えたり…。
 

すでにオークション等に出品されている軸についてもすでに一部が入れ替わった状態で出品されている物もあるため、そういった金ペン付きのSラインを狙ってみるのも面白いかも知れません。
 

 
小型14金のペン先を搭載した#144と比較。
文字や飾り刻印の情報量はマイスターシュテュックでお馴染みの金ペン先の方が多いです。
 

一方、Sラインをはじめ80年代のスリムライン万年筆のニブ刻印はとてもシンプルで、他にも刻印が「MONTBLANC」のみの個体も見かけることができます。
 

ノブレスのペン先になると「MB」や「585」と刻印されたペン先も。
シンプルなペン先も良いですが、私はニブにモンブランのロゴがある方が好みですね。
 

 
ペン芯を見比べてみると、#144とSラインは同じペン芯が使われている事が分かります。
いや、実際にペン先をバラしたわけでは無いので、もしかすると細部が違っている可能性もありますが…。
 

このSラインのペン芯については写真のような縦溝のタイプの他に、溝のないタイプもあるようです。
 

 
ペン先を横から見てみます。
マイスターシュテュックに着いている金ペンに比べて若干ペン先がお辞儀しているスチールペン先。
 

スチールという硬い素材であることもそうですが、左右が大きく曲げられた形状にハート穴のない切り割りなど、見た目にも硬い印象を受けます。
 

このイカペンっぽいペン先が好みの方もいらっしゃるでしょうが、書き味はどうなのかということを次項で書いていきたいと思います。
 

 

モンブランにおけるスチールペン先の書き味

モンブランと言えば、金ペン先のしなりのある書き心地に定評がありますが、スチールペン先は実際どうなのか、というのがこちらの項。
 

見た目はモンブラン セカンドモデル(ナンバーが2から始まる旧モデルで、#250や#260等)に似ているような、そうでないような。
 

しかし書き味はというと、柔らかいイカペン ウィングニブとは真逆のガッチガチの書き味だったりします。
 

 
前項にも登場したマイスターシュテュックの#144および#146と書き比べてみました。
ペン先に字幅の表記が無いため、このスチールペン先の正確な字幅は不明ですが、おそらく細字~中字くらいかと。
 

紙へのタッチがまろやかな14金ペン先とは裏腹に、指に硬さが伝わるくらいに硬く感じるモンブランのスチールペン先。
 

各メーカーから出ているスチールペン先の万年筆ですが、個人的な感想ではその中でも上位に入るくらいの硬さではないかと。
Sラインの細身で硬質な素材とも相まって、一本の金属棒で書いているような感覚すら覚えます。
 

逆に、柔らかなマイスターシュテュックの金ペン先とは真逆の書き味が楽しめると考えれば、これはこれで良い味を出しているペン先と言えるのではないでしょうか。
 

 
ペン先裏側を拡大してみました。
ペン先に対して真っ直ぐな形は結構好みです。
 

ノブレスに着いている金ペンのニブはもう少しペン先が絞られている印象です。
Sラインはしっかりと首が太く、ガチガチの書き味なのも頷ける形状。
 

余談ですが、各メーカーのスチールペン先の中では私的にカヴェコ スポーツのペン先が一番柔らかく、お気に入りです。
 

 
ガチガチスチールペン先のメリットとして、ボールペン慣れしている方や万年筆を使ったことがない方にも扱いやすいこと。
 

ペン先が硬いということは筆記感はボールペンや鉛筆に近くなり、言わばいつもの感覚で書くことができるということ。
ペン先のコシが限りなく少ないため、筆圧をかけることができ、文字が無駄に暴れるリスクが少ないのです。
 

 
筆圧を含め多少ラフに取り扱うことができるのは、初めて万年筆を使われる方にも嬉しいところ。
これがスチールペン先の一番のメリットと言えるのではないしょうか。
 

スチールペン先と言えど、万年筆で書いている=文字に濃淡が出て味わいのある文章になる。
 

字幅が太くなるにつれてそれが顕著になりますが、そではスチールペン先でも同じように楽しめます。
 

この3本の中ではやはり#146のペン先が一番しなりがあり書いていて面白い。
字幅はF~EFです。
 

 
インクはカヴェコのスモーキーグレーを使っていますが、これがものすごくお勧め。
(過去の記事でも何回も書いている気がしますが…)
 

瓶の方はモンブランのパーマネントグレー。
こちらはオークションに安価で出ていたものを即ゲット。
 

あとは機会があればペリカンのムーンストーンも試してみたいと思っています。
 

と、言うくらいグレーのインクが好みですね。
(Sラインの記事としてはあまり関係無いですが…笑)
 

 

さて、今回はモンブランの1980年代を感じることができる万年筆「Sライン(スリムライン)」をレポートしました。
 

スチールペン先のガチガチの書き心地は、モンブランの万年筆ラインナップを知る上でもとても貴重な存在ではないでしょうか。
 

そういう意味では、すでにマイスターシュテュックを使っているよ!という方があえて買い、使ってみる万年筆なのかも知れません。
 

 
イカペンのような形状に細身の胴軸ですが、太軸のスチールペン先もあれば面白いのではないかと感じる使用感でした。
 

また、細身のSラインはマットブラックの胴軸とも相性が良いため、細身で金ペンが好きという方はノブレスの14金ペン先(首軸)を用意して入れ替えながら使ってみるのも一興です。
 

色々なアレンジが楽しめそうな80年代のスリムモデル。
マイスターシュテュックとはまたひと味違ったモンブランを楽しみたい!という方にはお勧めの一本です。
 

それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

◆当ブログは人気ブログランキングに参加中です◆

クリックしていただけると
ブログ更新の励みになります!
人気ランキングチェックはこちら↓


文房具ランキング