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万年筆のピストン機構を分解清掃して快適に!【モンブラン マイスターシュテュック #146のピストン修理】

2024年9月22日

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みなさんこんにちは。
今回は筆記具のデビュー記事ではなくメンテナンスの記事となります。以前に筆記具の外観メンテナンスについての記事は書きましたが、今回は一歩踏み込んでピストン機構のメンテナンス記事です。
 

 

ひとえにピストン機構を持つ万年筆と言ってもいろいろありますが、今回分解メンテナンスするのはモンブランのマイスターシュテュック#146
手元にある#1467080年代の全金ニブのものと90年代のバイカラーニブのもの。
 
このうちピストンが固い7080年代の全金ニブ#146のピストン機構分解清掃していきたいと思います。
 

 

 

 

ピストン機構分解に必要な道具など

まずはピストン機構の分解に必要な道具・工具を見ていきます。
 

 
用意する物は左から、
・万年筆(ここでは#146
・ピストン分解工具
・綿棒
・シリコングリス(シリコンスプレー)
 
に加え、
 
・ティッシュまたはアルコールティッシュ
・消毒用アルコール
 
があると便利です。
 
この中では専用工具である「ピストン分解工具」の入手が必須となります。
工具の細い側がモンブランマイスターシュテュック#146・#149用、太い側がペリカンスーベレーンM800M1000用となっています。
価格は某オークションサイトやフリマサイトで出ている物で1980円~5000円までと幅がありますが、その工具でできることは同じですので、見た目の判断にはなりますが精度の高そうな物を選ぶのが良いかと。
 
また、シリコングリスですがたまたま家にあったものがシリコンスプレーでしたのでこちらを流用しています。小型のケースに入ったタイプの塗るグリスもありますのでやりやすい方を選びましょう。
 
それではこれらの道具を使って#146のピストンを分解していきたいと思います。
 

 

固くなった#146のインク吸入

今回のピストン機構分解清掃の動機としては、#146(80年代)のインク吸入動作がかなり固く洗浄することが困難になってきたため。
まあ80年代の代物ということで、ヴィンテージとまではいかなくてもオールドな万年筆です。
 
前々からこの80年代#146はインク吸入動作が重たく、ピストンが上下する際の吸入量ももう一本の90年代#146に比べて少ない気がしていました。
 
ピストン機構の分解清浄となると少し踏み込んだメンテナンスのため、実際やろうか躊躇していましたが、このままでは使いにくくなる一方…。
考えてみれば、一本一本が手作業で作られていて手作業でメンテナンスが行われる万年筆のため、素人がやるといっても同じ「人間」がやるわけですし不可能な作業ではない。
ということで、思い切って工具を購入し実践してみるに至ったわけです。
 
146のピストン機構が固い理由は何なのか。
 

 
外観から気付く点として、ピストンの先端に見える黒い線。質感からしてインク汚れのようなものがあり、これが明らかに怪しい…。
もしくは、分解してからでないと分かりませんがピストンユニットそのものが何らかの問題を抱えているか…。
この2点が考えられそうです。
 
早速、某フリマサイトで入手したピストン分解工具を使って尻軸の可動部の間に差し込んでいきます。
 

 
尻軸側には2箇所の穴(カニ目)があり、そこに工具を噛ませて反時計回りに回します。
 

 
工具側はこのような形のカニ目レンチとなっています。#146と#149は軸の幅は違えどピストン機構のカニ目の幅は同じため、この工具一つで#146と#149どちらでも分解が可能。
※工具によって工具そのものの形は違いますが、カニ目レンチの幅は同じです。
 
それでは差し込んでいきたいのですが…
 
差し込むためのすき間が狭い…!
 

 
目一杯ピストンを下げてこのすき間です。これは何かおかしい…。
これ以上ねじ上げるとピストンを壊しそうなので、工具が入る最低限のすき間だけ確保します。
 
カニ目に差し込みさえすればこっちのもの…!
 

 
実際に回したところかなり固かったのですが、なんとか回すことができました。
ある程度回したら、あとは金属部分を持ってゆっくりと胴軸を時計回りに回していけばOKです。
 

 
最後はゆっくりとピストンを引き抜いて取り外し完了。
 

 

モンブラン#146のピストン分解図~どこを清掃するべきか

さて、無事にピストンユニットを外すことができました。
 

 
見るからに汚れているピストン先端部。ピストンについている白い糸のようなものは白いピストンの樹脂カス?かバリ?のようなもの。
放っておくと後々邪魔になりそうですのでプチッと取っておきました。
 
80年代の#146は樹脂製のピストンユニットを持っています。90年代以降の#146は金属製のピストンユニットになっているため若干重く、写真のものとは形が異なります。
 
それでは清掃開始。
 

 
まずは胴軸の中の汚れを綿棒を使って丁寧に拭き取ります。当然ですがこの胴軸内部はインクが直接触れる部分となりますので、積年のインク汚れが見た目以上に付着しているのです。
 

 
乾いた綿棒だと黒いすすのようなものが着くだけですが、アルコールを染ませた綿棒で拭くとかなりのインク汚れがあることに気付きます。
ここは念入りに掃除しておきましょう!
 
続いてはピストンユニット。
一番の汚れはインクに触れ、尚且つ胴軸内を移動するピストン先端部。この部分はアルコールティッシュを使い丁寧に拭き取っていきます。
 

 
ピストン部分を分解します。ピストン先端部を持ち、尻軸を回転させていくと3つのパーツに分けることができます。
ピストンユニットは写真のようにA・B・Cのパーツから構成されています。
 
Aは尻軸兼吸入操作部。螺旋のようなネジにはグリスがたっぷりと塗られています。
Bはユニットの軸となる部分。この軸が基点となり尻軸を回すことでピストンが上下する仕組みです。真鍮部分のネジは胴軸とピストンユニットを固定するためのネジ。
Cはピストン部。黒い樹脂部分の中はAのネジを受ける構造となっていてグリスで満たされています。
 
どこをどう掃除すれば良いのか迷いますが、
とりあえずはBの外観をアルコールティッシュと綿棒で掃除。
 

 
Aと螺旋ネジとCのネジ受けは綺麗な白いグリスで満たされておりしっかりと機能しているため、あえてこの部分のグリスは拭き取らずそのままにしておきます。
 
分解する前のイメージでは、尻軸の螺旋ネジが原因かと思っていたのですが、実際はAとCの動作は軽快そのもの。ピストンが固い一番の原因はどうやら先端部の汚れのようです。
 

 
一通り掃除が終わったらグリスを塗ります。
手元にあるのはシリコングリスのスプレー。慎重にピストン先端部に一周吹き付けていきます。
 

 
続いては綿棒にシリコングリススプレーを吹き付け、胴軸の内壁にもシリコンを塗り馴染ませていきます。
ここはインクが入るところですのでゴミなどが入らないよう慎重に行わなければなりません。
 
シリコングリススプレーの良いところはゲル状ではないため、グリスがべっとりと着きすぎないこと。薄く塗れてしっかりと機能するところがメリットです。
 

 

蘇った#146のピストン機構

分解→清掃まで行ったら、次は元通りに組み直すだけ。
パーツ構成を再度見てみます。
 

 
ピストンユニットを組み直す時の注意点として、AとCのパーツの嵌め方があります。
AとCをうまくBにセットしないと、ピストンを吸い上げる際に尻軸と胴軸の間にすき間ができたり、ピストンが最後まで上がらなかったりと弊害が出てきます。
 
まず、AをBに差し込み少しネジを締めます。その後にCをB越しにAと繋いで調整。
Aがピストンユニットの真鍮部にちょうど収まる時に、Cのピストン先端部がピストンユニットに最も近接するように調整しなくてはなりません。
 
この調整が難しくて何度かやり直しましたが、この微調整をしっかりやるかやらないかで胴軸内に吸入できるインクの量が変わってきます。
 

 
ピストンユニットをうまく組めたら、あとは胴軸に戻すだけです。
胴軸にピストンユニットをねじ込んでいきます。
 
最後は工具でしっかりとカニ目を締めて完成!
分解する時はすき間が狭かった尻軸の吸入操作部も、ピストンの調整をしたお陰でこの通り。
 

 
メンテナンス前は4回転ほどしか回せなかった尻軸も、メンテナンス後はその倍ほど回せるようになりピストンが目一杯上がっていることが分かります。
手元にある90年代の#146と比べても遜色ない程まで改善しました。
 

 
胴軸のインク窓も綺麗で、ピストンを下ろしてきても以前のようなインク汚れはありません。
非常に滑らかに動作するようになりました!
 

 
ピストン機構分解と聞くと敷居が高いように思えますが、仕組みを理解した上で行うことで素人でも修繕は可能です。調子の悪かった筆記具を自分の手で改善させることができれば、愛着もひとしお。
今回の件でマイスターシュテュックのピストン構造も深く理解できましたので、やってみて良かったかなと思います。
 
しかし行う場合はあくまで自己責任で。大切な万年筆を壊してしまう可能性も秘めているということは肝に銘じておかなければなりません。
最後に、修理については受付できる店舗に出すのが一番確実、ということも書き添えておきたいと思います。
 
今回もお読み頂きありがとうございました。
それではまた。

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