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時間を豊かにする一生モノの万年筆とは。【ファーバーカステル クラシックコレクション エボニー 万年筆】レビュー

2021年7月10日

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様々なジャンルにおいて「一生モノ」という言葉があります。
皆さんは一生モノのアイテムはお持ちでしょうか。

 

一生モノというとたいてい値段が高いもの・質が良いもの=生涯にわたり手元に置いておけるような物質的かつ財産的なものを指します。

 

身の周りでいうと最近はデジタル機器の使用が日常で、ひと昔前まで一般的だったアナログが特殊なもの(趣味性の強いもの)に変わってきていますよね。
ただ、デジタル製品に対して一生モノという言葉はあまり耳にしません。

 

アップデートを続けるソフトに対してハードが数年でついて行けなくなるデジタル製品と違って、アナログ製品は正しいメンテナンスをすることで、何十年も使い続けることができます。

 

というより、アナログ製品は性能がシンプルがゆえにそれが可能で、カメラが分かりやすい例です。

 

今ではアナログカメラとも呼ばれる銀塩カメラ(フィルムカメラ)は、写真を撮るという機能しか備わっていません。
シャッターボタンを押した瞬間レンズを通った光はフィルムに焼き付き(化学反応)記録されて、またフィルムを送ることで次の写真が撮れるという一発勝負の繰り返し。

 

デジタルカメラのようにその場で画像を確認し気軽に撮り直したり、適切な露出(その場にあったシャッタースピード・絞り・ISO感度)を自動で決めてはくれませんし、動画が撮れたり動画をクロップして写真にしたり、カメラの中で画像を加工したりなんてもちろんできません。

 

ひと言で言うと「不便」なんですよね。
しかし、「不便や手間」は裏を返せば「愉しみや趣き」なんです。

 

一発勝負の撮影は写真を撮るということへの集中力を高め、最高の瞬間を切り取ることができた時の満足感や爽快感は他では味わえないものがあります。(どのように撮れたかは現像しないと分からない)
露出を合わせることや1カット毎にフィルムを巻き上げる動作も、最高の写真を自分で撮るための儀式とも言えます。

 

そして機械式の銀塩カメラは「最高の写真を撮る」という行為だけを実現させるために存在し、その機能性能の全てが小さなボディに詰め込まれているのです。

 

あー、ライカを持ち出したくなってきました…。

 

 

盛大に脱線しましたが話を筆記具に戻しましょう。

 

皆さんが日常的に使っている筆記具や時計も一番身近に感じる一生モノの例ではないでしょうか。

 

万年筆ならインクを使って紙に文字を書く。
機械式時計は時を刻む。

 

万年筆においての一生モノは、もちろん金額的に高価ということもあるでしょうけど、実用するにおいて造りがある程度堅牢であること、継続的に修理が可能であること。
そして何より大切なのが、その万年筆と自分のフィーリングが合うこと。

 

一生使い続けたいというモチベーションが湧かなければ、その万年筆は自分にとっての一生モノの万年筆にはなり得ないのです。

 

その一番大切な「フィーリングが合う」という部分で、大半の筆記具愛好家が今回ご紹介する万年筆に対して当てはまるのではないかと思います。
 

 
ということで今回レポートする万年筆は、
「ファーバーカステル クラシックコレクション エボニー 万年筆」です。

 

これは私にとってもアガリの万年筆(のうちの一本)という位置付けで、フィーリングも合うため他の万年筆に対する物欲を大きく失うことになっています。

 

それではいつも通り比較を交えながら見ていきましょう。

 

 

【クラシックコレクション万年筆のデザイン】

ファーバーカステルクラシックコレクション(伯爵コレクション)はなぜこんなにも人を魅了するのか。
デザインという面から考察していきたいと思います。

 

クラシックコレクションの万年筆は新旧含めて木軸とシルバー925とプラチナコーティングがラインナップされています。

 

木軸を選んだ理由としてはすでに愛用しているボールペンとメカニカルペンシルに合わせる形で持ちたかったこと。
クラシックコレクションという製品のイメージで、やはり持つなら木軸でしょ!という訳のわからない自分の中の決めつけがあったというのも理由の一つ。
 

 
クラシックコレクション エボニーは文字通り漆黒の木材である黒檀(エボニー)という希少木材が使われており気品のある出で立ち。

 

木軸のラインナップでは他にも、グラナディラ、ペルナンブコ、スネークウッド、マカサウッドがあり、エボニーを選んだ理由としては黒×シルバーの色合いが好きであること大きいです。
仕事で使うのに一番良い意味で目立たないのがエボニーではないかと。
 

 
高密度で堅牢製のある素材が見た目からも伝わってくる表面のリブ加工。

 
エボニーは手持ちのファーバーカステルでは3本目となり、左からボールペン、万年筆、ボールペン(アネロ)。ペルナンブコ等の色目の薄い木軸のような経年変化は望めませんが、逆に変化しないことに対する安定感もあります。

 


 
キャップの天冠にはファーバーカステルのエンブレム。
こちらは旧型のエンブレムで、現行品は盾に王冠のエンブレムとなっています。

 

思えば手元にある伯爵コレクションはすべて旧型エンブレムのものばかりです。
この盾に塔と伯爵そして両側の獣という情報量が好みなんですよね。
 

 
尻軸の金属パーツも手作業で細かなギザが彫られています。
ここがつるんとしているかギザがあるかで、全体のバランスが大きく違ってくるように思います。
天冠のローレットとまではいかない絶妙のキザ具合い。

 

続いてキャップリングの刻印を見ていきます。
 

 
コスト削減が図られてくるとレーザー刻印が一般的となってきますが、キャップリングの「GRAF VON FABER-CASTELL」の文字の周囲の盛り上がりを見て頂くと、レーザー刻印ではなくしっかりと打ち付けで刻印されていることがお分かり頂けるかと思います。

 

ヤードの純銀製筆記具もそうですが、この打ち込まれた事が分かる文字際の盛り上がり具合いが所有満足度を上げていると言えます。

 


 
クリップと反対側には「GERMANY」の刻印。
この刻印も打ち込みのもの。
現行品では「HANDMADE IN GERMANY」と刻印が変わっています。

 

使っていて気に入っている部分が、キャップの締め加減。
他の高級筆記具と同じで、キャップの中にはインナーキャップが仕込まれているのですが、キャップを閉める際、まったりとした動作が愉しめます。
何というか、ちゃんと密閉されていると分かる、グッと閉まる手応えからも造りの良さが伝わってくるのです

 

【クラシックコレクション(伯爵コレクション)の良さとは】

私が伯爵コレクションを愛してやまない理由はいくつもありますが、デザインや素材といった物質面以上に「使うと背筋が伸びる」という精神的な理由が大きいです。

 

やはりこれを使うとなると、使っている間は少なくとも伯爵になる(?)わけですので、しゃんとしないといけないな。…と、思ってしまうのです。

 

完成されたものを扱うという緊張感から来るのか、はたまた「伯爵コレクション」という名前がそうさせているのかも知れません。

 

黒×シルバーの筆記具はどのようなシーンでも合わせやすく、無論仕事で人前に出す際も仰々しくなく嫌みな印象を与えません。
しかもこちらは一時的と言えど伯爵になっている(?)わけですので、何かよく分からない自信のようなものも満ちてきます。

 
字も自然と綺麗に書こうと意識するようになります。

 

それはもう、単なる筆記具の枠を超えて人の行動を変える力があると考えても良いでしょう。
(完全にプラシーボ的な何かを含んでいますが…)

 

さて、現在手持ちのクラシックコレクションの黒×シルバー軸は、亜種のアネロを除くとこの3本。
 

 
▲左からボールペン、万年筆、パーフェクトペンシル。

 

パーフェクトペンシルはエボニーではありませんが、軸には同じようなリブパターンが施されていて統一感があります。

 

キャップの太さは筆記モードによってそれぞれで、万年筆が一番太く、次にパーフェクトペンシル、そしてボールペンとメカニカルペンシルと続きます。
 

 
手元の万年筆は金属部分がシルバーコーティングで、プラチナコーティングが施されていない仕様のもの。
やはりプラチナコーティングと比べると少し鈍い輝きとなりますが、くすんできたら磨くを繰り返すことでまた愛着が増していきます。
 

 
軸の太さは違うもののクリップの形状は同じ。
湾曲したクリップはアウロラ、カランダッシュ等と同じく、非常に優美でヨーロッパ的な美しさ。
 

 
天冠のローレットも万年筆が一番幅が広くどっしりとした印象に。
ギロシェの天冠もシンプルで良いですが、クラシックの重厚感のある天冠は気を引き締めさせてくれます。
 

 
土屋鞄のトーンオイルヌメロールペンケースに包んで持ち運び。
これだけで、レザー・ウッド・金属という経年変化好きには堪らない3点セットを携帯できる。
これぞ大人の筆記具と呼ぶに相応しいコンビではないでしょうか。
 

 
デスクの上に置いたペンケースから当日使う物を引き抜く。そして書く。
この一連の流れが豊かな時間へと繋がり、その時間はまさに一生モノと言えます。

 

【インクの吸入方法、ペン先と書き心地について】

多くの高級筆記具は吸入機構を胴軸に備えた構造(吸入式)を持つものが多いです。
クラシックコレクションはというと、カートリッジ/コンバーター両用式。
 

 
どちらが良い悪いというのは無くそれぞれメリットがあります。
カートリッジ/コンバーター両用式は手入れ・メンテナンスのし易さ、また、カートリッジでは首軸をインクに浸けることがないので、ペン先や首軸金属部分の腐食を抑えられるというメリットがあります。
 

 
精密感のある首軸と同時の接続部部分。
ネジ切りは多めですが、中でインク漏れがあった時のことを考えるとしっかり締まっているに越したことはありません。

 
インクはペリカンのエーデルシュタイン「サファイア」/カートリッジを入れています。
欧州ロングタイプのカートリッジも使用可能。
 

 
首軸のデザインはペン先に向かって細くなっており、くびれがある優雅なものとなっています。
胴軸の太さに対して少し細めに感じる首軸はこれはこれでバランスが良く、ペン先のコントロールはしやすいです。
 

 
もともと尻軸にキャップをポストする癖のない私からすると筆記時の重みはキャップ無しで丁度良いと感じるのですが、キャップをポストして使う場合はかなりリアヘビーとなり扱いが難しくなります。
尻軸にキャップを着けると見た目にも長すぎるため、キャップ無しで書くのがベストかと。

 

グリップポイントは丁度ネジのあたりになりますが、ニブサイズがそれほど大きくはないためペンポイントまで遠いという感覚はなく、小さめのニブも相まって筆記にストレスを感じません。
 

 
ニブを拡大してみました。
ストライプの刻印にファーバーカステルのエンブレム。(現行品もエンブレムは同じ配置)
字幅を表す「EF」の字体も伯爵に相応しくエレガント。
下部には18金ペン先を表す「750 18ct」の刻印も見られます。

 

ファーバーカステルの良いところが、伯爵コレクションのエントリーモデルである「ギロシェ」でも18金ペン先を搭載していること。

 

例えばモンブランではマイスターシュテュック#149は18金ペン先、#146(通常モデル)は14金ペン先などグレードによってペン先の違いがありましたが、ファーバーカステルではギロシェもクラシックも18金ペン先。

 

違いはバイカラーなのかロジウムコーティングなのかだけです。(旧モデルのギロシェには全金タイプもあり)

 

ペン芯について、何かのメーカーに似ているなーと思って探していたら、カヴェコスポーツの旧タイプペン先にありました!
 

 
カヴェコはペン芯の種類が年代によってかなり豊富ですが、その中での珍しいペン芯と類似しています。

 

と言ったものの、実際に並べてみたらそこまで似ていなかったというのが本音。
 

 
ついでにカヴェコのペン先とも比較しておきましょう。
首軸のくびれは似ていますが、ペン先の素材は18金とスチール。

 

カヴェコのニブはかなり小さめなのですが、それと比べても大きさにそれほど差がないことから伯爵コレクションのペン先がそこまで大きくないことが分かります。
他メーカーのフラッグシップ万年筆とのペン先比較は次項で詳しく見ていくことにします。
 

 
カヴェコスポーツとの携帯時全長比較。
以外と身長のあるクラシックコレクション。カヴェコスポーツはその4分の3程です。
 

 
さて、実際に筆記してみた感じは、紙あたりはソフトでありながらペリカンのようなフワフワ感ではなく、しっかりと芯を感じる書き心地。
EFは日本製万年筆のM程度の太さに感じました。

 

ファーバーカステルデザインシリーズの「アンビション」を使っていた時はペン先ユニットが交換できる仕様でしたが、おそらくクラシックコレクションも同じような構造をしているものと思われます。
(もし伯爵コレクションのペン先のみが入手できたら試してみます!)
 

 
個人的にコシのある筆記感が好きで思ったような字が書けるクラシックエボニー。
これがフィーリングが合うということなんでしょう。やっぱり万年筆は字が書きやすくてナンボです。

【他のフラッグシップ万年筆と比較】

最後は、クラシックコレクションエボニー万年筆と他メーカーのフラッグシップモデルとの比較をしていきましょう。

 

私がクラシックコレクションの万年筆を初めて持って気付いた点として、想像以上に太く長いということでした。
予めクラシックコレクションのボールペンやメカニカルペンシル、パーフェクトペンシルを使っていたためそのサイズ感がずっと頭にあったというのもありますが…。

 

手元にある各社のフラッグシップ万年筆との全長比較です。
 

 
▲左から、パーカーデュオフォールドセンテニアル、ペリカンM800、ファーバーカステルクラシックエボニー、モンブラン#146、モンブラン#149、セーラープロギアKOP。

 

並べてみると軸径はそこまで太くはないですが、全長はデュオフォールドセンテニアルとほぼ同サイズ。
樹脂軸の中に金属&木軸の存在感。

 

スペック表は以下です。
 

 
※表のモンブラン#149は1970年代のモデルでピストン機構が樹脂となるため現行より軽い。

 

スペックから見えてくるものは、クラシックエボニーの重量が一番重いこと、全長はデュオフォールドセンテニアルと同等となりこの中では短めであること。
しかしながら筆記時の全長は#149と並ぶサイズ感であること。

 

重量は素材が関係している部分が大きいですが、他の大型万年筆と比べても一回り小さいクラシックコレクションエボニーの凝縮感を感じて頂けるかと思います。
 

 
続いてペン先の比較。
万年筆の並びは先ほどと同じ。

 

前項のカヴェコとのペン先サイズ比較ではクラシックエボニーのサイズが少し上回っていましたが、この面子で並べるとかなり小さく感じます。

 

左の2本もかなり大きなニブなのですが、それよりもさらに大きな右2本の超大型ペン先。
クラシックエボニーはモンブラン#146と比べても一回り小さなニブとなっています。

 

【おまけ/ペリカンエーデルシュタインインク サファイア】
最後の最後におまけとして、今回のレビュー記事のファーバーカステルクラシックコレクションエボニーで使用しているカートリッジインクのエーデルシュタイン「サファイア」の色が素晴らしかったのでおまけ記事として追加で記しておきます。
 

 
エーデルシュタインはレギュラーラインナップと、その年々に発売された限定インクがあります。
サファイアはレギュラーインクのため機会を逃して手に入らないということは起こりません。
専用の缶ケースに入ったロングタイプのカートリッジとなります。
 

 
缶ケースのデザインがかなり可愛く、カートリッジを全て使い終わった後でも他のカートリッジ入れやコンバーター入れとして使えます。
※コンバーターによっては斜めにしないと入りません。

 

色味はパープルとブルーの間のようなかなり鮮やかな色で、かつケバケバしくなく上品な色合い。
宝石をイメージしたカラーだということも頷けますし、ファーバーカステル伯爵コレクションにもピッタリではないでしょうか。
 

 
文字の濃淡も分かりやすく、万年筆で書いているという実感が湧きます。
いや-、ペリカンのインクはモンブランのインクと比べて長時間万年筆に入れていても煮詰まることが少なく、私の中では一番信頼性が高いです。

 

さて、今回は至高の万年筆の中の一本。
ファーバーカステルのクラシックコレクション エボニー 万年筆をみてきました。
アガリの一本に相応しい、エレガントでありながら万人に使いやすい万年筆ではないかと思います。
 

 
シルバープレートやプラチナコーティングの金属部分はジュエリーで、かつ、木軸が持つクラシカルで温かみのある触り心地、誰もが慣れ親しんだニブサイズからもたらされる滑らかな書き味など魅力に溢れています。

 

万年筆好きならばいつかは通る道ではないかと考えるクラシックコレクション。
まだお使いでない方にはいつか持って頂きたい万年筆です。

 

それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

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