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LAMY2000万年筆 初期モデルのピストン機構を直してじっくり使う

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皆さんこんばんは。
 

ついに手に入れた万年筆。
タイトルにあるように、今回はおそらく皆さんもご存じの万年筆「LAMY2000」について書いていきます。
 

冒頭で“ついに”と書いた理由は、これまた使ってみたいと思ってから入手までの期間が長い筆記具の一つだから。
 

もうかれこれ三年くらい経つでしょうか。
地元の文房具店のショーケースにずっと飾られていたのは見ていましたが、様子見を続けてきた万年筆。
 

当時、そこまで食指が湧かなかった理由として、剣先型のニブにハマっていた、人気モデルだからレビューする必要はないのでは…?といったものがあたっため。
優先順位が低くなっていました。
 

しかしながら、書きやすいと定評のある万年筆で、デザインも現代のファッションやシンプル化されてきている身の回りの道具とも合わせやすい、ということでいつかは買おうと決めていた万年筆です。
 

LAMY2000は、4色ボールペン→0.7mmメカニカルペンシル(通常モデルとプレミエステンレス)と使ってきましたが、やはりそのシンプル且つ機能的なデザインは使う者の気持ちを高ぶらせてくれる逸品。
 

この度オークションに転がっていたくたびれたLMAY2000の万年筆とボールペンの初期型。
 

どうせ買うなら 手元のメカニカルペンシルと同じで、現行品ではなく今では手に入らない初期型を持ちたい。と思っていたこともあり、落札して早速見てみることに。
 

某オークションの画面内、しかも数枚の写真から現状の判断は難しいのは分かっていましたが、今まで手にした万年筆の中でも一番よろしくない状態でした。
まあ、予想以上に安価に落札できたので文句は言えませんが…。
 

これがオークションの面白い所でもあり注意点でもあります。
まあこれも、くたびれた筆記具を使える状態にして使うという楽しみが付加されたと考えれば良しとしましょう。
 

それではLAMY2000初期型のレポートを行いながら、初期モデルのデザインや感じた点をまとめていきたいと思います。
 

 

 

 

LAMY2000各部のデザインと現行品との違い

LAMY2000の魅力は、なんと言ってもそのミニマルなデザインに乗った実用性。
 

1966年に発売が始まったLAMY2000は、ゲルト・アルフレッド・ミュラーがデザインした筆記具。
デザインの年齢にすると実に57歳(2023年現在)になりますが、流石「西暦2000年になっても通用するデザイン」がコンセプトだけあって、まったく色褪せていないどころか、今も尚若い世代にも取り入れられるデザインとして筆記具界に浸透しています。
 

 
今回、万年筆とボールペンを入手したことで、3つの筆記モード(MP・FP・BP)を揃えることができた初期型のLAMY2000。
 

私が初期型に拘る理由として、デザインに今はなき1960年代のトレンドが取り入れられていること。
そのデザインから感じるノスタルジーが堪らなく好みなため。
 

上記のコンセプトにより、発売以降ほとんど変わらないデザインではあるものの、しっかりとその時代のトレンドや機能性を追加しながらアップデートしているLAMY2000。
 

万年筆を中心に、そのデザインの違いをまとめていきましょう。
 

 
LAMY2000のデザイン上で 私が一番気に入っているポイントであり、現行品との一番の違いであるクリップ。
 

ステンレス無垢材からの削り出しであるこのパーツは、携帯時にも見られるLAMY2000の顔。
ボディの樹脂部分とマッチするヘアライン加工が実に美しい。
 

初期型と現行品の違いはクリップ先。
現行品は矢印を半分にしたようなデザインですが、初期型はサイドから見ると真っ直ぐなラインで、内側に半球が埋め込まれたような形をしています。
 

また、クリップ全体のシルエットも真にストレートな現行品に比べると、軽く湾曲しているのが特徴。
 

パーツの違いの詳しくは、過去記事の「LAMY2000 ペンシルの新旧モデル比較から見えるデザインのアップデートとその考察」をご参照下さい。
 

 
クリップの根元に「LAMY」の刻印が無いもの初期型の特徴。
現行品と比べて「四角いステンレス材から手作業で削り出しました」感が強い初期型のクリップ。
この職人魂が宿ったようなデザインが堪りません。
 

 
横から軸を見ると全体がヘアラインですが、天冠は美しく磨かれています。
こうした遊び心のある斬新なデザインも、LAMY2000から野暮ったさを消す重要な部分なのかも知れません。
 

 
ボディに施された刻印は、初期型のLAMY2000に見られる部分です。
手元の万年筆には「LAMY2000 West Germany」の刻印。
面白いことに、同じLAMY2000初期型の万年筆には「LAMY2000 W.Germany」という「West」が簡略された表記のものもあります。
 

 
私の手元のボールペンとメカニカルペンシルは「W.Germany」の表記。
もしかするとこの万年筆は、西ドイツ時代の最初期にあたるロットなのかも知れません。
 

こういった小さなバージョン違いを見つけるのも、ヴィンテージ筆記具を発掘して使う楽しみと言えます。
LAMY2000初期型をお持ちの方、お手元の一本の刻印はいかがでしょうか?
 

 
初期型万年筆の外観的な違いとして、クリップの次に分かりやすいのが尻軸の「L」のメタルシールではないでしょうか。
 

一見「ルイージ帽のL」のような字体ですが、間違いなく「LAMYのL」です。
 

現行品にはLの文字は無く、一面シルバーのメタルシールとなっています。
 

 
外観の各部に設けられたLAMY2000を知らしめるための刻印やマークは、今となってはうるさい仕様かも知れませんが、発売当時はLMAYのフラッグシップとなるべき筆記具のプロモーションも含めた販売戦略だったのでしょう。
 

続いて、ペン先のデザインと初期型の見分け方。
キャップを外した状態で判別できる部分として、首軸裏側のデザインがあります。
 

 
初期型も現行品もニブの裏に見えるペン芯はプラスチック製となりますが、初期型は首軸の裏の一部がプラスチックパーツとなっています。
 

インク吸入/排出用の穴がある部分が現行品はステンレス、初期型は写真のようにプラスチック。
比較的見分けやすい特徴ではないかと思います。
 

 
そして、初期型には首軸裏側の樹脂部分に「字幅の刻印」があります。
手元の個体は「F(細字)」。
 

これは現行品ではオミットされた刻印。
あった方が分かりやすいのですが、デザイン上の変更かはたまたパーツの流用が目的かで無くなっています。
 

 
LAMY2000万年筆の初期型デザインの特徴をまとめると、
 

・クリップ先の形状が違い、先端内側には半球が着いている
・クリップ根元の「LAMY」刻印が無い
・キャップに刻印「LAMY2000 W.Germany(West Germany)」がある
・尻軸の「Lシール」がある
・首軸裏の一部の素材がプラスチック
・首軸裏に字幅刻印がある
 

となります。
初期型の万年筆をお探しの方はご参考に。
 

 

初期型を入手する際の注意点

私は入手までに期間を要しましたが、数ヶ月に一回はユーズド市場で見ることができる初期型のLAMY2000。
リサイクルショップなど実際に手に取れるという環境で遭遇できたらラッキーかも知れませんが、大体は某オークションやフリマサイトで、画面越しの状態判断となります。
 

私のように多少の難があっても自分で直して実用する方であれば気にすることはありませんが、コレクションとして狙う方や、ミント品並みの状態を希望される方は注意が必要です。
 

出品者が意図的に撮影してくれていれば話は早いですが、状態の良い初期型のLAMY2000を入手するうえで見ておくべきポイントを解説しておきます。
 

 

①ボディのヘアラインの状態(万年筆・ボールペン・ペンシル)
これはそのままですが、なるべくスレの少ないものを買いたいものです。
また、初期型には亀裂が入っているものが多く、縦の亀裂だとボディのヘアライン加工に隠れて見逃す可能性があります。
 

 
私の手元の万年筆もキャップに大きめの亀裂がありました。
キャップに亀裂があるということは、携帯時のペン先の気密性が損なわれている可能性があるということ。
LAMY2000も他の万年筆同様にインナーキャップが設けられているため、よほどの状態でなければこのままでも通常使用は可能です。
 

先ほどの亀裂であれば、流し込みタイプの接着剤と大きめの洗濯バサミかプライヤーがあれば素人でも補修は可能です。
 

 
私はタミヤの流し込みタイプの模型用接着剤とプラリペアの微粒子のプラスチック粉末を使って補修しました。ご参考までに。
 

それでも補修後はわずかに残ります。
ボディ全体のヘアライン加工が良くも悪くも、仕上げとして表面を磨くことができず、補修には向いていません。
 

また、ボールペンとペンシルについては持病といっても良いくらいの欠陥が見られるのが初期型LAMY2000の悲しいところでもあります。
 

 
LAMY2000初期型のボールペンとペンシルですが、全く同じ箇所に亀裂が入っています。
(ペンシルの方は補修しています)
 

これは個人的に「LAMY2000初期型の持病」と呼んでいて、かなりの個体で見られる現象。
この部分に亀裂が入っていない個体を探すのが難しいほど。
 

亀裂が入ってしまう原因の考察ですが、クリップ利用の有無があるのではないかと考えています。
 

その考察の裏付けとして、LAMY2000のブラックウッドと初期型を比較してみます。
 

 
手元に現行品のLAMY2000ボールペンがないのでブラックウッドでの比較なのですが、写真の赤矢印の部分。
クリップを可動させるための隙間の有りなしが確認できるかと思います。
 

ブラックウッド(おそらく現行品のLAMY2000単色ボールペンも)はクリップを可動させるための隙間が十分に用意されているため、軸にかかる負荷が軽減されているのに対して、初期型は隙間が少なく余裕がありません。
そのため、クリップを使う(可動させる)ことでクリップの根元からボディ上方にかかる付加が大きく、結果亀裂が入るものと考えられます。
 

初期型の構造上、スプリング入りのクリップで可動範囲が広い反面、べーすである軸にその力を逃がす術がないため発生してしまう現象と言えます。
 

初期型においてこれを避けるには、クリップの利用をなるべく控えるか、クリップ部を一度分解して、クリップが可動するに必要な隙間を作る(削る)かの2択になると考えています。
 

 
ちなみにLAMY2000単色ボールペンの初期型はノックするとノックボタンが沈み込む仕様。
ブラックウッドや現行品はノックしてもペン自体の全長は変わりません。
また、ノック音も大きめとなっているため、静かなノック音がお好きな方は上位モデルのブラックウッドを選びましょう。
 

 

 
②ペン先の状態(万年筆)とピストン機構
これは万年筆に限るのですが、初期型のように発売から50年以上経過している筆記具の場合、インクが充填された状態で数十年放置されていたケースも珍しくありません。
 

手元の初期型万年筆においても、キャップされた外観だけの判断では難しかった部分として、実際は下記の症状がありました。
 

・ペン先の曲がり、ズレ
・首軸の金属部分の錆び、インク個固着
・ピストン機構のインク固着による不動
 

ペン先について、筆記可能な多少のズレはまだいいものの、重度の曲がりは私のような素人には調整不可能です。手元の個体は少しだけ指で曲げて直る程度だったので助かりました。
重度の曲がりは調整師さんの手助けが必要となります。
 

手元の個体の首軸の錆は、経年放置によるインクの固着によるものでした。
LMAY2000は、通常であれば首軸からペン先(ニブとペン芯)を抜き出すのは比較的容易な万年筆ですが、手元の万年筆は今のところそれができません。
 

一番酷かったのがピストン機構でした。
大の大人がフルパワーで捻っても回すことができない尻軸(=下りないピストン)。
 

こういうときはひねり潰してお釈迦にする覚悟で、両手にゴム手袋&全身全霊をかけた捻りに限ります。
どうせピストンが下りなければジャンク品ですので、思い切ってやりましょう。
 

次の項ではそのピストン機構の修理・メンテナンスについて書いていきます。
※ジャンク品を一か八か直すという行為以外で、無理な操作や本体の分解はまったくお勧めしません!
 

同じようなジャンク品に出くわした場合の参考として呼んで頂ければ幸いです。
 

 

ピストン吸入機構の修理

それでは、あくまでジャンク品をどうにかしたいという場合に基づいた修理法方ですが、ピストン機構の直し方(兼メンテナンス方法)を書いていきます。
 

 
まず、LAMY2000の胴軸ですが、写真の2箇所でパーツが分かれているため分割線があります。
この分割線についても、さすがLAMY2000というだけあって極力目立たないように仕上げてあるのが良いですね。
 

万一落下させてしまった時のために、ボディを弄る時は首軸は外しておきましょう。
 

 
尻軸を思い切り捻ると 固いながらも何とか可動し、ピストンが一杯まで下りたのを確認。
尻軸を回してピストンが下りるという仕組みはなんとか生きているということが分かりました。
 

一番下まで下りたピストンに対して、更に尻軸を回し尻軸を外していきます。
ピストン先端のゴム部分の柔軟性を借りて、写真の倍くらいまでネジを引き出します。
 

 
尻軸部分(黒い樹脂パーツ)のみ外れ、中から透明の筒が顔を覗かせます。
この部分を真っ直ぐ引き抜いて、ピストンユニット自体を取り出していきます。
 

 
少し緑がかった透明のパーツがLAMY2000(初期型)のピストン機構で、主に3つのパーツからなっています。
バラしたピストンユニットは組むときの順番のまま並べています。
 

A…ピストン部:これが上下してインクを吸入/排出します。先端にはシリコンゴム製の栓。
B…軸内固定用パーツ:ピストンユニット自体を軸内に納め、固定するためのパーツと思われます。
C…ピストン操作部:Bを持ってCを回すことでAが上下する仕組み。尻軸と連結する部分。
 

この状態で各パーツを綺麗に洗浄して、胴軸内のインク汚れを綿棒などを使って除去しておきましょう。
特に胴軸の内壁とピストン部のシリコンゴム栓は念入りに。
 

 
サイドパーツを組むと、このようなまとまりになります。
幸運にも各パーツに破損やねじ切れが生じておらず、直すことができそうです。
 

軸内へ戻す前に、胴軸内壁とシリコンゴム部に潤滑油となるものを塗布する必要があります。
 

いつもはシリコンスプレーを使うのですが、やってみたところあまり効果がなかったため、今回は白色ワセリンを塗布してみます。
 

 
綿棒の先端に少量ずつ取り、丁寧に塗っていきます。
シリコンスプレーより明らかに効果がありそうなワセリン。
軸の内壁にも塗ります。
 

軸内にピストンユニットを戻す際ですが、
 

①A・B・Cを組んだ状態で軸内に差し込む
②Cのパーツを捻って、シリコンゴム部が胴軸内に目一杯下りた状態(胴軸のインク窓から確認します)、且つ、Cが抜けてしまわない位置にする
③尻軸を胴軸に嵌めて捻る(ピストンを上げる)
 

の手順で元通りとなります。
 

尻軸を抜き外す時とねじ込む時は少し力が要りますが、壊すつもりで思い切ってやりました。
何回か分解してコツを掴むと簡単に行えるようになります。
 

※何度も書きますが、分解はジャンク品なりどうしようもない場合に自己責任でお願いします。
 

 

LAMY2000の書きやすさ

最後はLAMY2000の書きやすさについて分析します。
とても長い記事になりましたが、ここまでお付き合い頂きありがとうございます。最後の項です。
 

LAMY2000はその秀逸なバウハウスのデザインに裏付けされた使いやすさも魅力。
万人受けする要因として、シンプルなデザインの他に握りやすい流線型のシルエットと軸の軽さがあると考えます。
 

 
キャップを外したときの全長は124mm。
グリップ部の軸径は太めで11mm(写真の持ち位置くらい)。
 

ヘアライン加工のため、筆記時はもう少し滑るのかと思いきや 樹脂軸の滑らなさは偉大であり、そんな心配は無用でした。
 

味気なくも見えるフーデッドニブですが、18金のペン先(現行品は14金)はしっかりとした弾力を感じ、非常に良好な書き心地と紙へのタッチを与えてくれます。
 

 
キャップをポストすると全長は153mm。
重量は21g。
 

通常、個人的には万年筆はキャップをせずに書く派ですが、LAMY2000についてはキャップをした方がバランスが良いように感じます。
 

ただデザイン上、キャップを尻軸にポストすると「キャップ痕」が着く表面仕上げのため、気になる方は注意が必要かと。
 

 
このデザインとサイズ感で、さらにピストン吸入式、インク窓ありで金ペンというフルスペックが嬉しい万年筆。
 

キャップは嵌合式ですが、先にも書いたとおりインナーキャップがしっかりしているため、実際に使ってみてペン先の乾きが気になるということはありませんでした。
 

 
とにかく握りやすいことが書き心地の良さと直結しているLMAY2000。
グリップ部からペン先までがシームレスなデザインのため筆記に集中できます。
 

用紙はロディア、インクはエルバンのエンパイアグリーンを使用。
本当に書きやすいです。
 

万年筆でもボールペンでもペンシルでも、普段通りの字が書けるというのが書きやすさの基準。
その意味でもLAMY2000は正に「折り紙付き」の万年筆ではないでしょうか。
 

 

 
さて、今回は「LAMY2000 万年筆 初期型」について、ピストン機構の修理メンテナンスを踏まえてレポートしてきました。
 

かなり長い記事になってしまいましたが、少しでもLAMY2000初期型の魅力をお感じ頂けたなら幸いです。
ここまで飛ばさず読んで頂いた方、本当にお疲れ様でした。
 

そして、最後まで読んで頂き ありがとうございます。
それではまた次回、筆記具の沼でお会いしましょう。

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