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セーラー万年筆の細字の書きやすさ+木軸の温かみは筆記のモチベを上げる!【世界の銘木シリーズ 鉄刀木(タガヤサン) スタンダード レビュー】

2023年5月28日

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皆さんこんにちは。
最近また万年筆を使いはじめてきました。
 

一度弄りだすと止まらない万年筆病。
(弄るといっても戯れているだけですが)
 

私は仕事柄ボールペンをメインで使っていますので、仕事関係で万年筆を使うケースは自分のための勉強時くらいでしょうか。ボールペンよりモチベが上がって勉強が捗ることは体感済みです。
 

しかしプライベートで使い出すと止まらない万年筆熱。
国内外の万年筆を色々出してきて書き比べたりしますが、やっぱり日本語を書くには日本製の万年筆が書きやすいなぁ、とつくづく感じるのです。
 

特にセーラー製はお気に入りで、プロフィットやプロギアシリーズの安定した書き味は使っていて本当に気持ちが良い。
 

しかし手元の日本製万年筆は無難なデザインの軸がほとんどで、海外製のような遊び(と言っては失礼ですが…)のあるデザインの軸を持ち合わせていませんでした。
 

まあ、日本製万年筆の性能を120%味わうには、セーラーにおいては一番スタンダードなプロフィットスタンダード(もしくはプロギアスリム)やプロフィット21が良いのでしょう。
実際に軸にクセがなく扱いやすさは抜群です。
 

しかし日本製万年筆にも遊び心は欲しいところ…。
 

 
ということで、今回はセーラー万年筆から木軸のプロフィットスタンダードとも言える
「世界の銘木シリーズ スタンダード 鉄刀木(タガヤサン)」をレポートしていきます。
 

世界の銘木シリーズは既に廃番となったラインナップですが、ユーズドでもしばしば見かけるモデル。
特に14金ペン先を搭載した当モデルは出逢うことも多いかもしれません。
 

まだまだ衰えるところを知らない木軸ブーム。
万年筆の木軸は種類もそれほど多くないので、木軸大好きな方には大変お勧めです(プロフィットベースですし)。
それではセーラーの木軸万年筆を見ていきましょう!
 

 

 

 

世界の銘木シリーズ「鉄刀木」のデザイン

セーラー万年筆の中ではリーズナブルに楽しめる木軸万年筆である「世界の銘木シリーズ」。
ベースとなるモデルはプロフィットスタンダード。
 

2019年に廃番?となったようですが、まだまだ見かけることが多い木軸万年筆です。
今やセーラーの高級木軸万年筆の二大巨塔はブライヤーと木軸黒檀加賀高蒔絵という認識。
 

木軸万年筆の中ではエントリーモデル的な位置付けの鉄刀木。
 

 
デザインは、胴軸が細めでキャップが太いという少し変わった風貌です。
外観において、キャップリングとクリップの金属パーツ以外は天冠・尻軸に至るまで木製で、コーティングのないダイレクトな杢目を楽しめる逸品。
 

 
木製のプリン型天冠が可愛い。
角は滑らかに磨かれており、触り心地も良好です。
 

 
クリップは細身でプロフィットシリーズよりもさらにシンプルな構造。
鉄刀木(タガヤサン)はマメ科の広葉樹。
重くて硬いことは刀を連想させ「鉄刀木」と呼ばれているそうです。
 

木の色味はダークブラウンで、写真の通り黒と茶の斑模様となり個性が出る杢目。
メンテナンスオイルを含むと透明感のある表情も見せてくれます。
 

 
キャップを外すと胴軸側にビクトリアンな模様が刻印されています。
カランダッシュ好きの私にはエクリドールビクトリアンを連想させる美しい唐草模様。
 

 
ペン先はプロフィットスタンダードと同じものが着いています。
カラーはゴールド。
 

すいません、普通に使っているもののためペン先のインク汚れが激しいです。
現行のペン先はデザインが変更されているため、このデザインのペン先は旧タイプとなります。
 

錨にシンプルなラインのペン先が第一世代とすると、これは第二世代のペン先と言えましょうか。
個人的には現行のモダンなペン先デザインよりも、このクラシックなペン先デザインの方が好みですね。
 

インクに潜らせた時にニブの複雑な模様の溝にインクが伝い、なんとも美しいと感じるのです。
 

 
尻軸はリング等は配置されておらず、端に向かうにつれて細くなります。
キャップをポストせずに使う場合、もう少し尻軸が太い方が安定しますが、細くなっている方が胴軸の唐草模様のリングのデザインと相性が良いように感じますね。
 

ちなみにキャップを含む重量は21gで、キャップ無しの状態だと11g。
キャップをしない状態だと個人的にはかなり軽く感じる部類の万年筆で、首軸が樹脂のため重心バランスはややリア寄りとなっています。
 

 
普段はキャップを尻軸にポストしない派の私ですが、この銘木シリーズに関してはキャップをポストする方が安定します。
キャップをポストした状態で全長は152mmのため、そこまでロングにならないのも銘木シリーズの良いところ。
ベースがスタンダードサイズですので、コンパクトなのです。
 

 
インクの供給はカートリッジ/コンバーター両用式。
セーラーにはインク瓶・カートリッジ共にSHIKIORIという素晴らしいインクがありますので、ペン先を汚したくない場合はカートリッジを、ニブの溝にインクを吸わせたい場合はコンバーターを使うと良いでしょう。
 

さて、ベースはプロフィットスタンダードの世界の銘木シリーズですが、使用感はプロフィットとは異なります。
次項ではその部分を見ていきます。
 

 

プロフィットスタンダードと違う点

ベースモデルはスタンダードサイズですが、ここではプロフィットとの違い(デザインや使用感)を見ていきたいと思います。
 

まずデザインについてですが、
世界の銘木シリーズは天冠と尻軸がカットされたデザインのため、全長も短くプロフィットよりもさらにコンパクトに。
 

 
クリップリングで位置を合わせると銘木シリーズはキャップがずんぐりとしています。
 

また、キャップの閉め方は、プロフィットがネジ式、世界の銘木シリーズが嵌合式となっています。
嵌合具合いはセーラーらしくかっちりとした締まり具合い。
パチンという音とともにガタつきもなく閉まります。
 

 
キャップリングは文字が入るプロフィットと違い、唐草模様のみの銘木シリーズ。
旧モデルの銘木シリーズはキャップリングにセーラーの旧ロゴが入り、唐草模様はクリップに着くという仕様です。
 

 
尻軸も丸いプロフィットとは対象的な銘木シリーズ。
胴軸自体は若干ですがプロフィットの方が太いため、キャップ無しで握ったときの安定感はプロフィットの方に軍配が挙がるかと。(これは個人的な感想ですが…)
 

 
ペン先は全く同じで、14金ペン先。
写真にはないですが、ペン芯も同じものが使われています。
 

この2本はどちらも字幅が「H-F」。
ハードファインということで、EFに近い字幅となっています。
 

ユーズドで出てくる世界の銘木シリーズはペン先が14金のもの、18金のもの、21金のもの、23金のものが確認でき、それぞれ仕様も異なります。
そう思うとペン先の種類が多いモデルですね。
 

このプロフィットニブが着いたモデルは14金で、胴軸の木はコーティングされていないタイプ。
 

一方、18金以上のペン先を持つモデルは、ペン先が首軸一体型で象嵌デザインあり、軸はパイプ(喫煙具)のように木材に艶のあるコーティングがされていて高級感が漂います。
 

重さも18金や23金搭載モデルの方が重く、クリップのデザインも平型に唐草模様となっています。
経年変化を楽しむには今回のモデルですが、コーティングのあるモデルも気になるところ。
 

 
筆記感でプロフィットと大きく異なる点が、首軸(グリップポイント)の形状の違いです。
 

世界の銘木シリーズの首軸形状は寸胴となっていて、軸径はプロフィットスタンダードよりも一回り細くなっています。
 

私のグリップポイントは胴軸とのつなぎ目付近。
丁度金属リングの段差になっているところで、滑りはしないものの少し指に力が入ります。
 

この辺りの握りやすさはプロフィットシリーズに軍配が挙がり、首軸径~ネジ切り~胴軸にかけて緩やかな傾斜のため握りやすいのです。
 

世界の銘木シリーズが決して握りにくいというわけではないのであしからず。
ここはベースモデルと全く同じでは逆に面白くないというもの。
 

 
ペン先は相変わらず優秀なため、特にセーラーの細字はとめ・はね・はらいがしやすいスタンダードサイズそのままの書き味です。
手元にある個体はプロフィットに比べるとわずかにインクフローが渋いですが、これはプロの調整や書き慣れに委ねるとして、いや-、相変わらず本当に書きやすいのですよ。
 

インクの出が渋いのは一週間ほど書かずに放置してあったためか、もしかすると嵌合式のさだめであるペン先の乾燥によるものの可能性もあります。
 

 
鉄刀木には現在、SHIKIORIカートリッジの「海松藍」を装填しています。
黒に近い緑色は私の好みにドンピシャな渋い色合い。
堪りませんね。
 

じっくりと時間をかけて書くもよし、サラッと流すように書いても抑揚のある文字が書ける。
セーラー万年筆細字の性能の高さを感じます。
 

 
プロフィットスタンダードにはパーカーのブルーインクを。
パーカーのインクは粘度のバランスが良いように感じます。
紙への裏抜けも少ないと感じるインク。
 

どの万年筆に入れてもちゃんとヌラヌラ書かせてくれて、濃淡も十分。
本当に日本語が書きやすいと感じます。
 

セーラーの万年筆上位モデルはプロフィット21とプロギアKOPモデルを持っていますが、これら21金ペン先のモデルは、まるで毛筆のような書き味となっています。
 

次の項ではプロフィット21との比較を行います。
 

 

プロフィット21との書き味比較(H-M/H-F)と考察

プロフィット21と銘木シリーズ、プロフィットスタンダードを並べてみます。
 

 
サイズはこの中では一番コンパクトな銘木シリーズ。
クリップに至っても一番小さく、どこか女性の繊細な手指にもはまりやすそうな美しいデザインです。
 

 
キャップを外してみます。
尻軸までの長さはプロフィットスタンダードと同等ですが、プロフィットシリーズよりも首軸が長く、スリムな印象。
ネジ切りがない分、デザインとしてはスッキリとしています。
 

 
ペン先はプロフィット21よりも一回り小さく、ニブのカラーも単色とバイカラーの違いがあります。
うーむ、やはりバイカラーのニブは格好良いですね。
飾り刻印のデザイン自体は同じです。
 

 
先ほど書き比べた下に、プロフィット21(H-M)で同じ文字を書いてみました。
どっしりとした軸に、明らかに違いが分かる柔らかいペン先。
 

H-MとH-Fの違いでもありますが、紙へのタッチがまるで違います。
毛筆に近い書き味。
 

ううむ、見た目がほぼ同じに思えるこのペン先ですが、こうまで書き味が変わる理由は何でしょう?
 

まず、14金と21金という素材の違いはあるとしましょう。
そして、字幅もH-MとH-Fですので、これも紙のタッチや筆記感は変わるでしょう。
それ以外の要因は何でしょうか。
 

 
鉄刀木(スタンダード)とプロフィット21のペン先を前から見てみると、実はニブの形状も大きく違うことが分かります。※左が鉄刀木、右がプロフィット21。
 

スタンダードのニブはペン先からサイドにかけて丸いアーチ、プロフィット21のニブはサイドが切り立っています。
また、ペン先からハート穴までの距離もニブサイズの違いに伴いプロフィット21の方が長いという状態。
 

ちなみに手元のプロギアKOPモデルのニブ形状は、前から見るとスタンダードに似た丸形アーチ形状なんですよね。
 

プロギアKOPモデルの書き味はプロフィット21よりもさらに毛筆感が増すことから、柔らかい書き味を実現している理由は素材以上に「ニブの形状」と「切り割りの長さ」が関係しているのは間違いなさそうです。
 

技術的なことは何一つ分かりませんので、推測の域を出ませんが…。
 

逆にプロフィット21のニブ形状で素材が14金だとどんな書き味なのか、というのも気になるところです。
(凄く硬くなってしまうのではないかという予測ですが…実際はどうなんでしょう?)
 

 
普段、ボールペンで文字を書いている人間が、急に柔らかいペン先の万年筆を使うとこのような文字になります(笑)
一つの文字において、筆圧をかける部分と全くかけない部分の使い分けが難しいのでベタッとした文字になりがちです。
 

再び万年筆を頻繁に握るようになって、もっと抑揚をつけて書けるようになりたいな と思う今日この頃です。
 

 

世界の銘木シリーズ 鉄刀木 スタンダード まとめ

さて、今回はセーラーの「世界の銘木シリーズ」から14金ペン先を持つ「鉄刀木(タガヤサン)」を、プロフィットスタンダード、プロフィット21と比較しながら見てきました。
 

日本語を書くのに適したセーラーの優秀なペン先に加え、木軸の所有満足感。
廃番となっているのが惜しいですが、出逢える機会は多いはずです。
 

 
ポイントは女性男性問わず使いやすいスリムなシルエットと唐草模様からも感じる優雅なデザイン。
そして、コーティングのない木軸は気持ちの良い手触りと、長年の愛用により経年変化が楽しめそうです。
 

惜しいポイントも挙げるとすると、嵌合式だということでしょうか。
プラチナのブライヤーもそうですが、やはり嵌合式は気密性の問題かペン先のドライアップが気持ち早いように感じます。
(完全なる私の感覚なので個人差があります)
 

普段ガシガシ使う分には全く問題ないですが、何週間も使わずに置いた後に使うときは呼び水が必要でした。
それを思うと、セーラーのネジ式キャップはまた優秀だ、と言う話が出てきますが…。
 

それを置いておいても、セーラーの木軸というだけでテンションが上がることは間違いないです。
用も無く軸を指でスリスリしたくなります。(変態かもしれません)
 

私が所有するシルバーと黒のセーラー万年筆群に、ブラウンとゴールドの花が加わり、また書くモチベーションが上がりました。
 

2022年は早々に梅雨明けしたという発表ですが、これから暑くなるなか、涼しい部屋で木軸片手にのんびりと物書きに浸る休日も良さそうです。
 

それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

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