ウォーターマン ル・マン200 ローラーボールの汎用性【ル・マン200 ナイト&デイ シルバー レビュー】
日に日に増していくローラーボールへの信頼感。
ということで、万年筆のルックス(軸・キャップ)を持ちながら、ボールペンという手軽なシステムを楽しめるローラーボールが今、個人的に熱いです。
万年筆・ローラーボール・ボールペン・メカニカルペンシルとありますがそれぞれに一長一短があり、ようは使い分けていくことで長所をより楽しめ、短所はカバーし合えるということになってくるでしょうか。
今回の記事は前々回のアウロラと同様に、久しぶりに取り上げる筆記具メーカーとなります。
というのも、筆記具においてはクラシックなデザインのものを好む傾向にある私ですので、どちらかというと今はモダンなデザインが多いこのメーカーの筆記具をあまり持っていないというのが実情でした。
(ラインナップの中にはクラシックなデザインのペンもありますが…)
そのメーカーはというと「ウォーターマン」。
フランスの筆記具メーカーです。
過去にはカレンの万年筆やフィリアスの万年筆、チャールストンのボールペンなどを見てきましたが、今回は私自身でも初となるウォーターマンのローラーボール。
その中でも今は廃番となっていますが、クラシックなウォータマンを代表するペンである「ル・マン200」の、万年筆でも油性ボールペンでもなく、ローラーボールです。
いつかは欲しいと思っていた「ル・マン200」や「ル・マン100」。
ウォーターマンと言えば「カレンかル・マン」という思いがありました。
カレンは万年筆を持っていましたが、芯のある素晴らしい書き心地でした。
カレンについては現在 油性ボールペンが気になるところですが、これもまた機会があれば試してみたいものです。
カレン万年筆の記事はこちら
さて、手元のモデルはブラックラッカーとシルバープレートのコントラストが美しい「ル・マン200 ナイト&デイ シルバー」。
これは数年前に一目惚れして以来、ずっと探していたもの。
海外国内ともに数量限定のモデルです。
(万年筆は国内300本限定ですがローラーボールの本数は?です)
この軸に対しては筆記モードはもはや拘らないのですが、とにかく軸が美しい。堪らなく美しい。
このように書くと語弊があるかも知れませんが「ル・マン200 ナイト&デイ シルバー」は、特に“フランス筆記具らしい”と言いますか、多少仰々しくもある装飾は まるでフランス王朝の建築物を彷彿とさせ、その中にエレガンスをも感じさせる筆記具に仕上がっていると思うのです。
ル・マン200はル・マン100の小型バージョンとでも言いましょうか。
老若男女問わず取り回しのきく筆記具となっています。
また、ウォーターマンのローラーボールを調べていくと、意外なことに対応するリフィルが豊富だということが分かってきました。
これは既知の情報でもあるようですが「百聞は一見にしかず」ということで、今回の記事では国産メーカーのリフィルとの互換性検証も行っています。
それではウォーターマンのローラーボール「ル・マン200 ナイト&デイ シルバー」を見ていきましょう!
ル・マン200 ナイト&デイのデザインとディティール
冒頭にも書いたとおり、ル・マン200のデザインは これぞフランス筆記具といった感じの豪華且つエレガンスな仕上がりとなっています。
ウォーターマンの筆記具はカレンなど一部の筆記具を除いて直線的なシルエットが多いです。
ル・マンも例外ではなく丸みの少ないシルエットで、ナイト&デイは「night」=ブラックラッカーと、「day」=シルバープレートのストライプから、さらに直線的なイメージを加速させている逸品。
スペックは、
全長:約140mm
筆記時(キャップなし):約126mm
筆記時(キャップポスト):約164mm
軸径:11mm
重量:34g
となっています。
キャップを尻軸にポストすると150mmを超え、かなりロングになるタイプの筆記具です。
握ってみたところ。
とにかく筆記バランスが素晴らしい。
私はキャップを着けない派ですが、その状態で25gという非常に手にしっくりくる重量とグリップ部の安定した握り心地。
キャップをポストするとロングなボールペンに。
個人的にはやはりキャップはポストせずに使いたいです。
しかし、尻軸にキャップが嵌まる際の「コクッ」という嵌合具合いはとても気持ちの良いものになっています。
携帯時も筆記時も、キャップはしっかりと嵌合するように抜かりなく作られていることが分かります。
キャップリングの刻印を見てみます。
堂々たるフォントで「WATERMAN」の刻印が彫られ、裏面に向けて「MADE IN FRANCE」が続きます。
クリップはじめキャップリングの裏側、胴軸側の嵌合部に「P/W」マーク。
ナイト&デイはスターリングシルバーではなく、シルバープレートですのでこれはホールマークではないと判断します。(WはWATERMANの頭文字?Pは?)
こういった刻印はペン全体の情報量が増すので好きですね。
ガンプラで例えるところのマーキングシールのようなものでしょうか。
シルバープレートの上にコーティングは施されていないため、経年変化で“くすみ”が出てきます。
その“くすみ”もペンを長く愛用するうえで味へと変わっていきます。
ル・マンのクリップはU字型。
見た目をエレガントに飾るU字デザインは、挟む際の操作性にも一役買っており柔らかな挟み心地。
クリップが硬いとスーツのポケットなどの生地を傷めてしまいかねませんが、ル・マンに関してその心配は無さそうです。
天冠は無地でリングが嵌合されています。
万年筆にはウォーターマンのシンボルの「W」マークが嵌合されているのを見かけますが、ローラーボールだからマークが付いていないのでしょうか。
これに関する文献が見つからなかったため詳細は不明ですが、これはこれでシンプルなため気に入っています。
尻軸の樹脂は長めにデザインされていて、ル・マンの特徴的なシルエットの一端を担っていると言えます。
ダブルリングはデザイン的に優美であるほか、先にも書いたキャップの固定という機能的な意味でも役立っています。
流線型のカレンとは対極に位置すると考えている、直線的なデザインのル・マン200。
ル・マンというとブラックやマーブルラッカーのモデルが一般的ではありますが、シルバープレートとブラックラッカーの装飾品的なデザインも良いものですね。
実は汎用性が高いウォーターマンのローラーボール~互換性編
さて、ここからが本題なのですが、ウォーターマンのローラーボールを調べていて面白いのが「リフィルの互換性」です。
通常、海外製の高級筆記具メーカーというと各社が独自のリフィル規格を設けており、軸と同じメーカーのリフィルしか装填できないのが一般的な考え方です。
※油性ボールペンであればパーカータイプ(G2タイプ)、ローラーボールであればペリカンリフィルに互換性があるメーカーは多いですが…。
特に、モンブラン、ラミー、カランダッシュ、クロス、そしてウォーターマンあたりは 油性ボールペンのリフィル形状から見られるように、リフィルの互換性が全く無いものだと思っていました。
しかし、このウォーターマンのローラーボールは意外なことに「国産メーカーのリフィル」と互換性があります。
この項では一般的に認知されているPILOTのリフィルとジェットストリームの他、気付いたリフィルについて装着感などを検証していきます。
今回検証するリフィルがこちら。
ウォーターマンの純正リフィル+3本の国産メーカーリフィルです。
国産メーカーのリフィルは各社よりかなりの数のリフィルが出ているため、全て検証することは難しいのですが、純正を入れたこの4本で運用すればまあまずどんなシーンも乗り越えられるだろうというものを選んでいます。
左から、
パイロット:ゲルインキ(LG2RF-8EF-B)
ウォーターマン:純正リフィル(1964019)
パイロット:FRIXION BALL(LFBKRF30EF3B)
三菱uni:ジェットストリーム(SXR-38)
一つずつ詳しい情報を下記に記しておきます。
◆パイロット:ゲルインキ(LG2RF-8EF-B)
字幅はUF、EF、F、Mの4種類。
カラーは黒・赤・青。
※品番のLG3RF-8以降が字幅とカラーの表記となっています。
◆ウォーターマン:純正リフィル(1964019)
字幅はFでカラーはブラックとブルー。
Amazon価格で1本が税込み885円。
◆パイロット:FRIXION BALL(LFBKRF30EF3B)
摩擦熱60℃以上で色が消える(=消せる)
特殊なフリクションインキ。
字幅はF、Mの2種類でカラーはブラック、レッド、ブルー。
品番のLFBKRF30EF3Bは3本セットのもの。
(EF3B→極細の3本セットの黒)
※3本セットは3色展開ですが、1本展開のリフィルにはかなりの数のカラーが用意されています。
LFBKRF-12(EF、F、※ブルーブラックのみMあり)
カラーは、ブルーブラック、グリーン、ライトグリーン、オレンジ、ピンク、ライトブルー、バイオレット。
◆三菱uni:ジェットストリーム(SXR-38)
言わずと知れた低粘度インクの代名詞であるジェットストリーム。
軽い書き心地はファンが多い。
字幅は0.38mm、0.5mm、0.7mm、1.0mmの4種類。
カラーは黒・赤・青。
※品番のSXR以降の数字は字幅。
このように情報を書き連ねるだけでもかなりの種類のインクに対応していることが分かります。
特に、使っている人が多いであろうジェットストリームや消せるインクで手軽に使えるフリクション等、対応できるリフィルのバリエーションが豊富。
ここに載せているリフィル以外にも対応できるリフィルはまだありそうで、この4本に共通するリフィルの外観的スペックを調べてみました。
リフィルの首軸(インクタンクとなる太い部分からペン先にかけて)とインクタンクの長さや径がほぼ同じであれば、このデータに当てはまるリフィルは理論上使えるという事になります。
ル・マン200については胴軸にリフィルを収納できる長さの関係で、インクタンク部分の全長が約90mmを超えてしまうと首軸が嵌まらなくなる可能性がでてきますので注意です。
(ル・マン100は200より全長が長いためもう少し長いリフィルもいけるかも知れませんが未確認)
個人的によく装填するのがパイロットのゲルインキ。
極細が必要な場合はジェットストリーム0.38mm。
提出物ではなくノートにメモや自分で読むまとめを行う場合はフリクション。
そして太く濃いインクでハッキリとした文字を書きたい場合は純正リフィル、という具合いに使い分けができますね。
インク沼は万年筆のなかだけの出来事ではなく、同じ黒でも色味が違う、また字幅についても選ぶリフィルによって自由に変えられる、消せるインクが使える等、ウォーターマンのローラーボールにおいても「インク沼」が存在することが分かってきます。
実際に上記のリフィルを装填して書いてみてもペン先にブレはなく、とても快適な筆記感となっています。
ううむ…、対応するリフィルはまだまだありそうで奥が深いです。
実は汎用性が高いウォーターマンのローラーボール~筆記比較編
続いてはウォーターマンのローラーボールで使える国産メーカーリフィルをル・マン200に入れて筆記比較をしてみます。
前項にあるパイロットと三菱uniのリフィルはル・マン200の軸への収まりも良好で、筆記時にペン先がブレる事が無いのは前述した通り。
それではル・マン200において、どのリフィルが一番書きやすいのか。
結論から言うと、パイロットのゲルインキがル・マン200に一番合っていると感じています。
それはどこからくるのか。
以下ではその理由について書いていきたいと思います。
(個人的な感覚を含みますのでご参考程度に)
まず、国産メーカー3本の字幅や性能を比較します。
それぞれのリフィルをル・マン200に入れて書いたものです。
3本のインクを見比べてみると、フリクションについてはインクの特性上、黒というよりはグレーに近い色味で、どちらかというと万年筆のグレーインクを使っているような色味となっています。
書き味では紙へのタッチが3本の中では一番柔らかで、書き心地は悪くなく万年筆に近い感じ。
これはこれでインクを消す必要がある場合、例えば自分用のノートにまとめる場合やカラーをたくさん使いたい場合。書き間違えても消せるため安心感が半端ないです。
問題点があるとすれば、当然のことながら「消す用のゴム」がル・マンのペン自体には装備されていないため、別で専用のフリクション用イレイサーを持ち運ぶ必要があります。また、仕事において提出する書類は改ざん防止の観点からフリクションが使えないこと。
なので、時と場合を選んで使う必要があるのがフリクションボールリフィルとなり、私の場合はル・マン200で「常用する」には向いていないと感じました。
常用という観点からジェットストリームの0.38mmかパイロットのゲルインキかということになるのですが、これについても微妙な違いが明暗を分けます。ジェットストリームは字幅のラインナップとして極細以外に0.5mmや0.7mmもあり選択幅があります。
書き味は滑らかでさすがはジェットストリームと言ったところ。
私にとってパイロットのゲルインキなのかジェットストリームなのかの分かれ目は、インクの容量と黒色の濃度でした。
インクタンクの容量だけ見るとジェットストリームの2倍は入っているのではと感じるパイロットのゲルインク。インク切れが油性に比べて早いローラーボールだからこそ、使い続けられる安心感というのは大きいです。インク残量が見えるのもポイント高し。
また、一番良く使う黒色の濃度がパイロットの方が濃いこと。
書いた文字がハッキリ読みやすいというのは、文字を読まれる相手への気遣いでもあります。
ということで、パイロットのゲルインキを普段使いし、ジェットストリームは細かな文字を書く必要があるシーンで0.38mmを使うという運用に至りました。
あくまで個人的な見解や使いやすさを書いていますので、ご参考にしていただければと思います。
ちなみにこのパイロットのゲルインキ(LG2RF-8)は、リフィルの首軸がウォーターマン純正リフィルと形状が同じため、ウォーターマンのリフィルに着いているキャップがそのまま利用できます。
保管する際にインクのドライアップを防ぐという意味で、これは嬉しい互換性です。
ここまで読まれて、「アレ?そういえば純正リフィルは…??」と思われた方も多いかと思います。
そうです。
純正リフィルについては色々ありまして、次項で比較していきます。
各社のローラーボール書き味を比較
最後はウォーターマンのローラーボール用純正インクと他社のローラーボールインクを比較していきます。
ここまででかなり長い記事となっていますが、もうしばらくお付き合いください。
比較するローラーボールはこの4本。
いずれもシルバーと黒の色合いが美しいローラーボールです。
左から、
・モンブラン マイスターシュテュック ソリテールドゥエ シグナムクラシック
・ウォーターマン ル・マン200 ナイト&デイ シルバー
・ファーバーカステル クラシックコレクション スターリングシルバー
・クロス タウンゼント スターリングシルバー
良い感じに銀色軸のローラーボールが揃ってきました。
(集めている訳ではありませんが、手元に来るペンの傾向が似ているように思います)
ローラーボールも万年筆と同じくらいペン先(首軸)が美しいのですよ。
右の3本は筆記時の全長が似ていますね。
モンブランがやけに小さく見えます。
軸の素材や仕上げが違いますので重量もそれぞれですが、キャップ無しでの筆記バランスはいずれも優秀な4本。
書き比べてみました。
ウォーターマンの純正リフィルは、タイプとしてはクロスと同じで黒が濃くてインクフローが潤沢。
いわゆるインクドバドバ系リフィルですね。
0.5mmなのですが、通常のペン先角45°筆記だと0.7mmのクロスと同等の字幅になります。
ペン先を紙に対してなるべく垂直にして書くと本来の0.5mm幅となる少しクセのある書き心地。
※書き比べの画像では意識して45°筆記と90°筆記で書き分けています。
このクセをうまく使い分ければ2種類の字幅を一本で使い分けることができるため非常に強いのですが、常に立てて書くのを意識するのは正直しんどいです…笑
純正のローラーボールインクで優秀だと感じるのは、毎回書いてるような気がしますが、モンブランとペリカン。
この2メーカーの水性インクは裏抜けも少なく別格な書き心地。
(前の項で書いたパイロットのゲルインキも裏抜け少ないです)
ウォーターマンの純正インクは私にとっては決して使いやすいと言えず、主にパイロット製のゲルインクを入れての運用に至ったわけです。
さて、今回はウォーターマンのローラーボール「ル・マン200 ナイト&デイ シルバー」を様々な角度からレポートしました。
特筆すべきは軸のフランス筆記具らしい美しさと、互換性のあるリフィルの多さ。
シルバープレートの軸は少しくすませながら使うのが渋いと感じるデザインです。
リフィルは今回検証したもの以外で使えるものを探すのも面白そうです。
それはまるで万年筆のように、インクの色や字幅を自由自在に変えながら使うことができる、夢のある軸ではないでしょうか。
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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