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小さいだけではない!XSサイズの万年筆【カランダッシュ エクリドール XS マヤ 万年筆】

2024年10月4日

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今回は久しぶりに万年筆に記事です。
そして、久しぶりのカランダッシュ。
 
レポートする万年筆は新たに購入したものではなく以前から常用している一本なのですが、改めて使いやすいと感じる一本。
 
メーカー固有の変なクセがないといいますか。
指がその万年筆特有のクセを思い出す必要がない=いつ使っても安定した文字が書ける、ということです。
 
海外製万年筆の中でもこのスイスのカランダッシュとドイツのカヴェコは、スチールペン先がとにかく優秀だと思うのです。
(ニブの形も似ているので、まさかOEMメーカーのニブだったりして…)
 
硬すぎず柔らかすぎず。
丁度良い塩梅の書き心地はフィットするという人も多いのではないでしょうか。
 
かといってカランダッシュに関して、18金ニブとスチールニブの書き味の違いが分からないということも無く、金ニブは驚くほどしなやかで スチールとのハッキリとした違いが感じられるのです。
 
カランダッシュはボールペンをしばしば取り上げていますが、振り返ってみると所有本数はボールペンが15本に対して、万年筆は3本しか持っていません。
 
その3本の万年筆についても、比較を行うなど深く掘り下げるということをしていなかったように記憶しています。
 
ということで、今回取り上げる万年筆は、
「カランダッシュ エクリドール XS マヤ 万年筆」
 

 
エクリドールのXSシリーズは2021年10月現在、ボールペンのレトロ(ローズゴールドとパラジウムコート)のみ新品で購入可能ですが、過去モデルを含めそれ以外は廃番となっています。
 
手に入れるには某オークションやフリマアプリ経由となりますので、この記事を読んで気になったという方はぜひ探してみてください。
 
それでは、エクリドールXS万年筆の使い勝手や書き心地を、エクリドールのモデルと比較しながら見ていきましょう!
 

 

 

 

エクリドール「マヤ」の魅力とは

エクリドールはカランダッシュのフラッグシップモデル。
軸の柄は新旧含めると多岐に渡り、そのコレクション性と筆記モードを問わない書きやすさ(筆記具としてのバランスの良さ)に魅了される人は多いです。
 
数ある柄の中でも個人的に気に入っているのが「マヤ」と呼ばれる柄。
 

 
エクリドールの中には見る角度によって柄に変化が出るものがあり、このマヤもその一つ。
四角いマークが迷路のように連なっているように見えます。
 
よく見ると1本の線が織りなす模様だということが分かりますが、日本人がイメージしやすいラーメンマークとは全くの別物。(ラーメンマークは四角が2対となっている模様)
 
どちらかというとギリシャのメアンドロス模様に近く(と言うよりこれとほぼ同じ柄がある)、マヤ文明を連想する「マヤ」とは縁がないようにも感じます。
 
しかし、光の当たり具合いや見る角度によって様相を変えるというギミックにこそ「マヤ」という名前の由来が…!
 

▲見る角度により表れる菱形の模様
 
光の当たり具合で現れる別の模様。
これはメキシコのチチェン・イッツァ遺跡にある「エル・カスティーヨ」の年に2回だけ起こる不思議な現象を再現しているとも言われています。
 
正確な文献がないため真意のほどは分かりませんが、確かに光の当たり方を利用したギミックはマヤ文明の遺跡に通じるものがありますね。
 
エクリドールではマヤの他に「レトロ」も見る角度によって違う模様が浮き出る仕組みです。
こちらは過去の記事で紹介していますので、よろしければご参考に。
 

 

小さいことは良いことだ!

エクリドールXSは手のひらサイズ。
 
同じようなサイズの万年筆を挙げるとすれば、モンブランのボエム、カヴェコのスポーツ、セーラーのプロギアスリムミニ、そしてモンテグラッパのミクラ。
 

 
いずれも携帯時の全長が110mm前後の小型な万年筆です。
スモールサイズの万年筆を使っておられる方であればピンとくるサイズ感ではないでしょうか。
 
ただ それらと大きく異なる点として、軸径の違いがあります。
 
小型の万年筆は筆記時も通常の万年筆と同等の書きやすさ(ベースとなるモデルの筆記感)を担保するために軸径は太め(12mm前後)に設定してあるものがほとんどです。
 

 
一方、カランダッシュ エクリドールXSは軸径が10mm。
コンパクトで細軸なのがエクリドールXSの特徴と言えます。
 
エクリドールのボールペンとペンシルの直径が約8.5mmと鉛筆を少し太くした程度ですので、そもそもそれらの筆記感に合わせるために万年筆もそこまで太くする必要がないのです。
 
すなわち、万年筆としての機能を有しながら ボールペンやペンシルとも大きく違わない持ちやすさと筆記感を実現するためのサイズである、と考えられます。
 

 
うーむ、並べるとエクリドールレーシングのようなブラッククロームの黒いXSが欲しくなりますが、ラインナップにないため、どうにか作って頂けないでしょうかカランダッシュさん(笑
 
そして、エクリドールの万年筆を扱うという点で、XSサイズという、小さいことによる携帯しやすさ以外の恩恵も受けられることになります。
 
それがキャップとの連携。
 
万年筆というと大半がキャップ式。
筆記時にはキャップを尻軸にポストして使うという人も多いでしょう。
 
万年筆のデザインやコンセプトにもよりますが、キャップを尻軸にポストした状態だと通常かなりの長さになり、万年筆によっては重量バランスを大きく崩す要因ともなります。
 
私もその理由から基本的にはキャップをポストせずに使うのですが、小型の万年筆においてはキャップをポストすることでベストなバランスとなるように調整されているのです。
 

▲左からエクリドールXS(マヤ)、旧型エクリドール(レトロ)、ヘクサゴナル(キューブ)
 
XSは通常のエクリドールの全長と比べて約4分の3程のサイズ。
軸径については3モデルとも同じだということが分かります。
 
エクリドールの万年筆は万年筆としての機構(カートリッジやコンバーターを収納するためのスペース含む)と金属六角軸による道具としての強度を両立させていると言えます。
 

 
キャップを外すと主軸が現れ、このサイズ感。
通常のエクリドールやヘクサゴナルでこの状態での全長は120mm、XSは91mm。
ペン先から主軸にかけては3モデル共に互換性があり、エクサゴナルの18金ペン先をエクリドールに移植することも可能。
 

 
XS万年筆をこの状態で使うとお世辞にも使いやすいとは言えません。
この状態では同じXSのボールペンやペンシルよりもショートとなります。
 
キャップをポストするとキャップの長さ分だけ足され、ベストな重量バランスと長さに。
これが本当に絶妙な長さなのです。
 

 
キャップは嵌合式のため、尻軸にも押し込むという形でポストします。
尻軸とキャップの間に隙間はできますが、しっかりと固定されています。
 

 
通常のエクリドールのキャップ無しと長さを比較してみるとこの通り。
通常サイズの方にキャップをポストするとさらにキャップ分長くなり相当な長さになるのですが、XSだと全体で丁度良い長さに。
 
これがXSの使いやすさの秘密ではないかと考えています。
 
ついでにメーカーロゴ以外の新旧モデルのデザイン比較をしておきましょう。
 

 
万年筆において新旧での大きな違いは天冠のデザイン。
左が新型、右が旧型です。(旧型はアニバーサリーモデルのためクリップに仏語の刻印)
 
現行のエクリドール万年筆の天冠は尻軸と同じデザインをしていて横から見るとロゴの部分が絞られて段差になっています。旧型は真っ直ぐ。
 

 
また、天冠のロゴも昔は「CdA」がペイントだったものが今はレーザー刻印。
そして現在はペンシルマークのシンボルに変更されています。
 
この天冠のデザインについては好みが分かれますが、私は新型天冠派です。
皆さんはどうでしょうか。
 

 

エクリドールXS万年筆のインク吸入機構について

エクリドールXSは小型の万年筆。
小型でも万年筆とあるからにはその中にインクを溜め込めねばなりません。
 

 
おさらいすると万年筆のインク吸入機構は大きく分けて3種類。
 
①ピストン吸入機構やプランジャー吸入機構で直接ペン先から胴軸内にインクを吸入する「吸入式」
②主軸にコンバーターを装着してペン先からインクを吸入する「コンバーター式」
③各メーカーで用意されたインクカートリッジを装填する「カートリッジ式」
(②と③は同時に備わっているものがほとんど)
 
小型万年筆はサイズ的にもインク収納スペースに規制がありますので、スモールサイズのカートリッジ式が大半です。
小型で吸入式だと今は廃番となりましたがペリカンのM300くらいで、あとはカヴェコのミニコンバーターが使えるカートリッジ/コンバーター両用式モデルがちらほらでしょうか。
 
セーラー万年筆もミニコンバーターを新発売し、プロギアスリムミニがペン先から好きなインクを吸入できるようになったことは記憶にも新しいです。
 
エクリドールXSに話を戻すと、こちらは「カートリッジ式(専用)」となります。
カヴェコスポーツ並みに小さな胴軸スペースということもあり、ヨーロッパタイプのミニカートリッジにのみ対応。
 
それではインクカートリッジの変え方を見ていきます。
 

 
他の万年筆と同様に主軸を回すとインク機構にアクセスできます。
左がヘクサゴナル(通常サイズ)、右がXSです。
 
カートリッジを使い果たしたらこの状態でカートリッジを入れ替えます。
ご覧の通り、ヘクサゴナルに装備されているようなサイズのコンバーターは大きすぎてXSの胴軸に収まりません。
そのためカートリッジ専用となっています。
 

 
となると、汎用性のあるカヴェコのミニコンバーターは使えるのかと思い、差し込もうとしましたが不思議なことに嵌まりません。ちなみに現在インクカートリッジはカヴェコのブルーブラック。
 
おそらく差し込み口の樹脂の厚みが影響していると思われますが、ミニコンバーターを加工してまで使う必要性もないためこれはこれで受け止めましょう。
 
それにしてもこのカランダッシュエクリドール万年筆の主軸はOリングが設置されていて、気密性が素晴らしく良いです。
あとはキャップと主軸(胴軸)の気密性を上げるために私は主軸にセロテープを一周巻いています。
 
見てくれは良くないですが、こすることで携帯時にキャップがくるくると軽々しく回ってしまうのを防ぎ、またキャップの気密性も上げてくれるという一石二鳥な状態にすることができるのです。
 
セロテープのお陰なのかもともとそうなのかは分かりませんが、4ヶ月~半年くらいインクがドライアップせずに使えています。
 

 
改めてカランダッシュの主軸は格好いいなぁと眺めていたら、一つ新たな発見が。
通常サイズのエクリドールやヘクサゴナルにはないのですが、カートリッジの差し込み口に「CARAN D’ACHE + SWISS MADE +」の刻印があるではないですか。
 
ボールペンでいう所のノックボタンの刻印のような文字が主軸の内部に刻まれています。
これも製造年代における仕様なのでしょうか?少し興味深いですね。
 

 

カランダッシュのスチールペン先の書き味

さて、冒頭でも書いたように、実際に常用していてエクリドールに限らずカランダッシュの万年筆はスチールペン先の出来が非常に良いように感じます。
 

 
柔らかすぎず、硬すぎず。
絶妙なバランスのペン先ではないかと思っているのですが、最後の項はこのペン先についてレポートしていきたいと思います。
 
当記事で比較に使っている3本のカランダッシュ万年筆のペン先を並べてみました。
 

▲左からXS(M)、通常サイズ(M)、ヘクサゴナル(F)です。※()内は字幅
 
左と中の2本はスチールペン先。右は18金ペン先です。
素材に関する刻印以外のデザインは同じで、ニブの形状も変わりはないように感じます。
(真ん中のエクリドールレトロのニブだけわずかに短い気はしますが…)
 

 
順番が入れ替わってしまっていますが、ペン芯も比較します。
左から、ヘクサゴナル、エクリドールレトロ、エクリドールXS。
 
製造年代からすると、レトロ→ヘクサゴナル→XSマヤの順でしょうか。近年に向かうにつれ、ペン芯にフィンが見られるようになります。これはカヴェコの時と一緒ですね。
 
ペン芯のバリエーションも製造年代やモデル毎に違うと推測されますが、これも調べ始めたら切りがないというレベル感のものです。
まるで宇宙のように広い筆記具の世界。
 

 
いつも通りの走り書きで文字を書いてみました。
良い意味でスチール臭さを感じない、紙に対して柔らかなタッチのカランダッシュスチールペン先。
 
書いてある通りですが、キャップをポストした時のサイズがジャストなんですよね。
なので、通常サイズのエクリドールにキャップをポストして使いたいけど長すぎるんだー、という方にもお勧めできるサイズなのです。
 

 
字幅は中字(M)ですが海外製万年筆にありがちな太すぎることもない、国産の中字に近いベストな字幅。
ううむ…、なぜXS万年筆は廃番?になってしまったのでしょう。
主軸に互換性があるので小さい胴軸だけオプションで販売すれば売れるような気もしますが…。
 

 
おまけで「マヤ」の模様を新旧で並べてみました。
一番左は旧クリップのシルバープレートのマヤ、中と右はパラジウムコート。
 
シルバープレートはタンニン鞣しの手帳にセットしていることもあり、硫化で黒ずんできています。
(これはこれでこのまま磨かずに真っ黒にして黒マヤに仕上げる予定)
 
シルバープレートのマヤはパラジウムコートの近代モデルに比べると、菱形の模様変化は控えめで…というより菱形はほぼ見えないと言っていいかも知れません。
 

 
人気の柄は一度廃番になってからも日本限定の復刻モデルとして出てくる場合があるため、新旧ともに入手し違いを見つけてみるのもお勧めな楽しみ方です。
 
マヤが3本もありますが、改めて見てもこの模様はカランダッシュの六角軸と相性が良いと感じます。
偏光による柄のギミックを楽しみたい場合は、間違いなく購入候補となる柄の一つではないでしょうか。
 
 
さて、今回は久々のカランダッシュの記事で、「エクリドール XS マヤ」の万年筆を見てきました。
堅牢な金属六角軸の筆記具がコンパクトに持ち運びしやすく、筆記時には実用に耐える十分なスペックへと変わる、カランダッシュファンならずともお勧めできる一本です。
 

 
XSの万年筆・ボールペン・ペンシル3本で編成した専用のキャメルカラーのレザーケースが欲しくなってしまう、非常にコンパクトな筆記システム。
 
エクリドールではないですが、昨今、カランダッシュの主戦場である849シリーズに太軸のローラーボールペンが追加されました。
XSを含め、持ちやすい六角軸はそのままにあらゆる状況に合わせた筆記スタイルが選べるカランダッシュは今後も目が離せません。
 
それでは今回はこの辺で。
最期までお読み頂きありがとうございました。

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