伝統的シャープペンシルの魅力・後編 システム化【クロス/クラシックセンチュリー】
前回に引き続き、今回は後編としてクロス/クラッシックセンチュリーをレポートしていきます。
筆記具の歴史として古いクロス。その中でも創業100周年を記念して誕生したクラシックセンチュリーは代表的なモデルといえます。発表後約60年ほど経ちますがほとんど姿が変わっていません。
歴史の長いクラシックセンチュリーは、今でも様々な種類がラインナップされています。一番スタンダードなクロームにはじまり、10金張、14金張、18金無垢、クラシックブラックなどラッカー塗装されたもの、ゴールドとシルバーのコントラストが美しいメダリスト、艶消し仕上げのブラッシュ。
今回のレポートで使うのは一番スタンダードなクロームです。
クロスの記憶
一番最初に使った海外メーカーのシャープペンシルが、中学の時に母からもらったクロスのものでした。そのペンを気に入ってかなり長い間使っていたのを覚えています。(確か大学生の時くらいまで)
軸は紺色で少しずっしりとしていて、しかし何のモデルなのか今改めて調べてみても分かりません。
それ以降、海外メーカーのシャープペンは手にしていなかったのですが、クロスという名前だけは使いやすいペンという記憶とともに頭の片隅にありました。
働くようになってから、自分で何か少し良いペンを買おうと決めたとき出てきたメーカーがクロスでした。そして、値段もそこそこリーズナブルでワイシャツのポケットに挿せる細軸、エレガントな回転繰り出し式、何より金属軸ということもありクラシックセンチュリーを選んだのです。
これも何かの縁なのか、それ以降ちょくちょくクロスのボールペンを買い足しています。
そんな私のクロスファーストボールペンでしたが、ある日ネットで「スイッチイット」なるものを知り、シャープペンシルへと姿を変えていくのでした。
クロス/クラシックセンチュリー
クラシックセンチュリーは昔から姿を変えないペンです。
以前記事にしたものでパーカージョッターがありますが、このクラシックセンチュリーも負けていません。大まかなシリーズのバリエーションは前述しましたが、軸のバリエーションも多岐にわたります。
バリエーションの主として、ロゴ(刻印)・素材に分けられます。
ロゴは、クリップ部のcrossのメーカーロゴが筆記体のものやブロック体のもの、製造国がUSAのものやアイルランドのものなど様々です。これは作られた時代に由来しています。
素材は、クロームやラッカー塗装、スターリングシルバー、金張りなど。
クラシックセンチュリーの天冠には円錐の黒いプラスチックがデザインされていて、コニカルトップと呼ばれています。軸の素材が高級になるほど、このコニカルトップの部分の面積が少なくなるという面白い仕様です。
この二つの要素が絡み合い、新旧含めてかなりのバリエーションが存在します。
長軸やクリップ無しなどの変わり種を含めると相当な種類になるのではないでしょうか。私は今のところクロームと10金張りの軸しか持っていないのですが、収集癖があるのでこのバリエーションの多さにうずうずしてしまうのです。
さらに、クロスと言えば永年保証。自然故障に関しては無償修理(もしくは交換)してもらえます。私も何度かお世話になっているのですが、現行の同等品と交換されて帰ってきます。これはかなり太っ腹な対応、そして商品に対する自信の表れといえます。
ただし、ヴィンテージ軸を気に入ってお使いの方は注意が必要。あくまで現行品と交換されるため、旧ロゴや旧デザインの軸を出しても現行品と交換されて帰ってきてしまうのです。
そのため、クラシックな字体のロゴのものや、珍しい刻印を気に入って使っているという場合は永年保障の修理については出そうか迷うところかもしれません。
さて 前置きが長くなりましたが本題に入りたいと思います。
通常クラシックセンチュリーにはボールペン・シャープペンシル・万年筆と種類があります。ボールペンとシャープペンシルは別々にラインナップされているのですが…、「スイッチイット」という特殊なリフィルを使うことで、ボールペンをシャープペンシルに変えることができるのです!
これには感動しました。
軸によって互換性はあるものの、クラシックセンチュリーについては規格が同じなためほぼ使えます。これは他の筆記具メーカーにもぜひ採用してほしい機構ですね。ペンのシステム化というやつですね。
では、どのようなものか見ていきましょう。
スイッチイット
キャップを引き抜くといつものボールペン芯の頭が姿を現します。
それを時計回りにクリクリとねじって抜き、スイッチイットに差し換えるだけ。なんとも簡単です。
青いほうがボールペンリフィル、黄色いほうがスイッチイットです。
それでは、スイッチイット自体を詳しく見ていきましょう。
先端はガイドパイプになっています。
対応する芯は0.7mm。先端をつまんでバネ側にスライドさせると芯が出てきます。しかしクラシックセンチュリーはノック式ではなく回転式。おそらくキャップの回転時、軸側の内部構造と触れることで先端のユニットを動かし、芯を出していると思われます。
反対側には消しゴムユニットが設置されていて、こちら側にもバネが付いています。
本体にはこの黄色いユニットのネジで固定されますので、このバネの役割はガイドパイプ用のクッションと思われます。実際、ガイドパイプのみを繰り出した状態でガイドパイプを押すと軸内にバネの力で引っ込みます。
しかし筆記時にはこのバネは働きません。落下破損防止のクッションでしょうか。
黄色い消しゴムユニットには当然ですが消しゴムがついています。
この黄色い消しゴム、指で撫でただけでも粒子が削れていくほど繊細です(笑)。消し字力には期待しない方が良さそうですね…。
消しゴムを外すと芯補充用の穴が見えます。かなり小さい穴で収納力は3本ほどとなりますが、これはスイッチイットの構造上(細さ上)仕方がないですね。
芯の繰り出し方
芯の出し方は回転式に準じます。
こちらが何も出ていない状態。
そして、こちらがガイドパイプが出た状態。
キャップ部分を反時計回りにまわすと、まずこのガイドパイプが出てきます。
一度キャップを時計回りに少し戻し、もう一度、反時計回りにひねると次は芯が1mmほど出てきます。
この、「ひねる」と「戻す」の動作を繰り返して芯を出していきます。気をつけなければならないところは、最後までキャップを回しきった状態で保持していないと、芯がパイプに引っ込んでしまう点です。
逆に芯をしまうときは少しキャップをひねり戻した状態で芯を指で押し込みパイプに戻し、そのあとさらにキャップを時計回りに回し戻して次はパイプを収納していきます。
キャップを大きめに回転させることを「回す」、小さく回転させることを「ひねる」と表現しました。
写真と文字では分かりにくくてややこしいですが…。実際手にしていただくと感覚でご理解いただけるかと。
このようにクラシックセンチュリーが、まさに一粒で二度おいしいシステムペンへと変わるわけです。
自宅にインク切れでしまったままのクラシックセンチュリーがある場合、スイッチイットでシャープペンシルとして復活させてみてはいかがでしょうか。また、スターリングシルバーやメダリストなどのお気に入りの軸に使うのもいいですね。
さて、2回にわたり伝統的なシャープペンシルをレポートしてきました。
オレンズネロのようにハイテクなシャープペンシルが注目される中、このようなローテクでありながらも高い質感にこだわったもの、リフィルを換えることでペンとしての役割を変更できるものなど、伝統的なペンシルに再度目を向けるのも良いかと思います。
クロスのようにリーズナブルに軸を手に入れることができ、かつ、リフィルの入れ替えだけで簡単にカスタマイズできるモデルは希少かと思います。筆記具の中古市場もまだまだ賑わっていますし、クロス含め、新旧合わせれば星の数ほどあるペンシルの中から「自分とってコレ!」という一本が見つかるかもしれません。
それではまた。
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