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細字でも文字に抑揚がつけられる万年筆【パイロット 初代カスタム ストライプ(PILOT CUSTOM STRIPE)】

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久しぶりの和製万年筆のレポートとなります。
前回、パーカー75の上級モデル「パーカー プリミア」をレポートしましたが、改めて細字・極細字の万年筆は書きやすい!と感じました。
 
やはり普段仕事でも日本語を書きますので、昔から書いている「自分の字がいかにうまく書けるか」というところが、その万年筆が自分の手に合うか合わないかの判断基準になるように思います。
 
イラストを含めとなると中字(M)以上の字幅も使いやすいのですが、「日本語を書く」というニーズに特化すると、あぁ、やはりパイロットのカスタムは書きやすい、となるわけです。
 
現在のところでいう「パイロットのカスタム」というと、バランス型(キャップの端、尻軸の端が共に丸い形をした万年筆)のカスタム74を思い浮かべるのではないでしょうか。
 
私も万年筆を使い始めた頃は、パイロットのカスタム=カスタム74という認識でしたが、実際にカスタムシリーズが現在のような形になったのは1992年から(厳密には前身のカスタム67が発売された1985年から)であり、遡っていくと、1978年のグランディー、1972年以前の首軸一体型のカスタム、と歴史があります。
 

 


 
今回レポートする一本は、1971年から発売されていた初代カスタムの中のモデル「カスタム ホワイトストライプ」。
 
カスタム(CUSTOM)とは「個性に合わせたオーダー品」という意味があり、18金ニブを搭載した首軸一体型ペン先の首軸をベースに、異なる素材・加工のボディを合わせたいくつかのモデルが発売されています。
 
・カスタム ストライプ(ストライプはブラックとホワイトのバージョン有り)
・カスタム スターリングシルバー
・カスタム カエデ
・カスタム(樹脂軸)
 
手元にあるストライプの他に、パーカー75のような細かな格子模様のスターリングシルバー軸、現在も発売が続いているイタヤカエデを使用したカスタムカエデなど。
その後に発売された樹脂軸のカスタムも合わせると、必ず自分のスタイルに合ったカスタム万年筆を使えるというラインナップでした。
 

 
私は万年筆を使うにあたり軸に重さが欲しいので、初代カスタムを手にするにしても金属軸かな、と考えていました。
そして、どうせなら少し珍しめなホワイトストライプを…、となったわけです。
 
ホワイトストライプ(ストライプ)は、ステンレス軸に細い縦縞の柄がエッチングされたエレガントなデザイン。ブラックの方は溝の部分にブラッククロームが施されています。
 

 
軸の表面を拡大するとこのような加工。
ステンレス無垢のサラッとした表面に無数の縦溝が入る事で、鈍い光を放つと共にグリップ感向上にも一役買っているといった表面。
 
前面に入った「PILOT CUSTOM」の彫りも味のある字体でパイロットの歴史を感じると同時に、本体に入るロゴはこれくらい控えめで良いんだよ、と改めて感じるのです。
現在の高級筆記具のメーカーロゴは車と一緒で大型化の傾向にあるため、個人的にはペンでもペンケースでも逆にこういった控えめのロゴに新鮮さを感じてしまいますね。
 

 
前回のパーカープリミアもそうですが、カスタムストライプを手に取って、改めて万年筆はこれくらいのサイズ感が持ちやすいな、と感じます。
 
左から、グランディー22KAGM、カスタムホワイトストライプ、シルバーン(ともにPILOT)
それぞれのスペックは、
 
グランディー22KAGM
全長(携帯時):139mm
全長(筆記時):127mm
重量:21g
 
カスタム(ホワイト)ストライプ
全長(携帯時):135mm
全長(筆記時):122mm
重量:24g
 
シルバーン
全長(携帯時):137mm
全長(筆記時):123mm
重量:35g
 
※いずれもコンバーターを含んだ重量
 
グランディーは樹脂軸のためこの中では軽め、といっても存在感のあるキャップリングが高重量で21g。
カスタムストライプはこの中ではコンパクトですが、金属軸のためしっかりとした重量があり、握ると安定感・安心感を感じます。
 
左の2本は廃版モデルですが、現在も継続して発売されていたらいったい価格はいくらになったのだろう、という作りの良さ。
ユーズド品なので予算が1.5万もあれば十分良いものが手に入るところも見逃せません。
 

 


 
初代カスタムのキャップは現在のカスタム74のような「玉クリップ」ではなく、シンプルでありながら誠実さが溢れ出るストレートタイプ。玉クリップは苦手という方でも持ちやすいデザイン。
 
私個人としてもこちらのクリップの方が好きで、特に初代カスタムやグランティーシリーズのクリップが一番格好良いと思うのですが、皆さんはいかがでしょう?
 

 
天冠には初代カスタム、次期モデルのグランディーではお馴染みのPILOTロゴ。
「水先案内人」を意味したコンパスのマークです。
たまにこのロゴが傾いている個体も見られますが、初代カスタムの天冠はキャップの内側からマイナスネジで止められている仕様ですので、長めのマイナスドライバーがあれば簡単に調節可能です。
(分解する場合はあくまで自己責任ですが…)
 

 
万年筆としての仕様は、カートリッジ/コンバーター両用式。
写真ではコンバーターの「CON-40」を着けています。
 
うーむ、パイロットコンバーターの個人的な惜しい点がこのコンバーター。
CON-40はデザインがチープなうえ、実際のインク吸入量も少ないように感じますし、インク吸入量が大容量のコンバーターである「CON-70」は初代カスタムには使えません…。
 
レバーを回してインク吸入できるCON-40。それは良いのですが、デザインは廃番となった「CON-50」の方が遙かに良かったのと、インクを誘導する役割があるコンバーター内のステンレス球(?)は、インクが減ってきた万年筆を持ち上げる度にカチャカチャとこれまたチープな音を鳴らすため好きになれませんね。
(この音が鳴るとインク減ってきたなと分かるのは良いのですが…)
 

 
カスタムストライプをはじめ、初代カスタムのキャップの嵌合に使われる板バネが非常に優秀で、造りの良さを感じます。何でしょう、この各筆記具メーカーにおける1970年代モデルの造りの良さは。
 
キャップは嵌合式で、シルバーン並みにパチンと気持ちよく嵌合がキマります。
このキャップ開け閉めの気持ちよさは、キャップ式の筆記具である万年筆やローラーボールの一つの非テータスのようなものだと認識しています。
ひとつひとつの動作の気持ちよさにもパイロットフラッグシップモデルの「拘り」を感じずにいられません。
 

 
ペン先は18金ホワイトゴールドで、刻印は「PILOT〈字幅〉JAPAN 製造コード(手元のはH573)JISマーク」 。パイロット旧モデルのニブのハート穴は画像のような楕円形。手元の個体は若干ペン先に曲がりがあり、少しインクフローは渋めです。
ペン先のインク汚れはご愛敬。
 
ただ、やっぱりこのペン先一体型のデザインがめちゃくちゃ格好良い。
最近の万年筆ではメンテナンス上や製造上の都合からか減ってしまった首軸一体型ニブ。
パイロット製品ではシルバーンのみが現行で買える唯一の首軸一体型となります。
万年筆の多様性という意味では他のモデルとして復活してくれると嬉しいです。
 

 


 
続いてニブのサイズですが、私はカスタムストライプを手にするまではニブサイズはシルバーンと同じだと思っていました。
 
筆記時の胴軸サイズはカスタムストライプ(初代カスタム)とシルバーンはほぼ同じですが、ニブのサイズがかなり違うことが分かります。シルバーンは初代カスタムの1.2倍くらいでしょうか?
それに伴い首軸の太さも一回り大きく、書きごたえがあるのがシルバーン。
手元のシルバーンは字幅が中字ということもあり、書斎でゆったり文字を書きたい時に使用しています。
 
カスタムストライプとグランディーは中太軸となり、20g前後の取り回しやすい万年筆。
ニブのサイズは共通しており、このサイズでもしっかりとしたコシ、紙面へのタッチの柔らかさが使っていて気持ちのいいペン先です。
 

 
ニブに寄ってみました。
初代カスタムのニブは18金WG(ホワイトゴールド)。「ホワイトゴールド」とは何ぞ?という方のため説明すると、金にパラジウムやニッケルなどの金属を混ぜた合金となります。
 
色合いが若干スターリングシルバーのような、プラチナよりは少し黄色めな印象。
右のシルバーンが18金にプラチナプレートと思われますので、そちらと比べても色の違いが楽しめます。
グランディーは18金そのままの色合いですね。
 
パイロットの極細(EF)をまだ持っていなかったこともあり、カスタムストライプはEFにしてみました。
書き味はWG特有のしっかりとしたコシを感じる細字に向いた書き心地。
非常に私の好みですね!
 

 
それぞれで書き比べてみました。
字幅が太くなるにつれて紙面へのタッチがはっきりと分かるレベルで変化していく、パイロットのペン先は愉しいです。
 

 
カスタムストライプとグランディーは字幅は違いますが、字の太さは同じくらい。
固さがある分筆記時の弾力も増し、18金WGのカスタムストライプは文字に抑揚がつけやすく感じました。
もう何回も書いていますが、文字の書きやすさはニブに使われる金の含有率に必ずしも左右さるわけではなく、ニブの形状や切り割りの長さや幅が大きく関わっていると言えます。
 

 
筆記時全長122mmのカスタムストライプ。
グリップ部が樹脂製ですので握り心地も良し。上品なストライプ柄はビジネスシーンでも十分に活用できるデザインかと思います。
 

 
キャップを尻軸にポストしても様になる。
キャップ内の板バネがしっかりしているため、キャップを尻軸に差す際にも安定しており、バランス的にも書きやすさがアップします。
普段尻軸にキャップを差さない派の私も、カスタムストライプを使う際はポストして使っています。
それほどバランス的にも優れた万年筆と言えます。
 

 

さて、今回は1970年代のパイロット万年筆「カスタム ホワイトストライプ」をレポートしました。
本当にこの年代の万年筆は各社造りが良いと感じます。今のところ、手にしてきた1970年代の万年筆やボールペンにハズレがありません。
 
年々、万年筆に使われる素材の高騰で、万年筆自体の価格も上がる傾向にあります。
現代の最高の製造技術が使われた万年筆を手にするも良し、それでも値段が高くてなかなか手が出しにくいという方は、1970年代の万年筆をお勧めします。
なかなか新品同様のものを探すとなると難しいですが、ユーズド品に抵抗がない方は一度味わって頂きたい完成度です。
 

 
パイロットのEFは、コシがあり特に文字に抑揚がつけやすく感じました。流石はパイロットといった書き味で、ファンが多いのも頷けます。
現行の18金を使ったEFニブも気になるところですが、それはまた追々手にした際に比較レポートできればと思います。
 
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
 
 
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