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美しい国産万年筆 パイロット シルバーンは書き心地も最高峰! 【シルバーン トクの比較レビュー】

2021年9月11日

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みなさんこんにちは。

新元号が発表されて久しいですが、最近は「新元号筆」なる言葉もちらほら聞こえ始めました。まーた都合のいい言葉が出てきたな…、と思いながら新元号筆は何にしようかと考えている自分がいて嫌になります。

今年になって早4ヶ月経つわけですが、今年の抱負に「国産万年筆を充実させる」という目標を挙げていました。その目標と新元号の発表が重なり、「新元号発表記念筆」は前々から気になっていた国産万年筆の中の一本にしようと考えたわけです。

今回レビューはそんな憧れの国産万年筆のひとつ、パイロットの「シルバーン」です。

 

 

 

シルバーンといえば現行品で、しかもレギュラーなラインナップで買うことのできる貴重なスターリングシルバー製の万年筆。万年筆の生産全盛期である196080年代までは様々なメーカーからスターリングシルバー軸の万年筆が発売されていましたが、職人による加工コストや世の中の趣向の変化により今や貴重な存在となりました。言わば時代を逆行しているとも言える現行のスターリングシルバー軸なのですが、やはり金属軸の王様と言っていいくらいの所有満足感があるのは確かです。

 

 

私が手にしたのはシルバーンのラインナップ中では珍しい部類の「シルバーン トク」。2019年現在のパイロットHPのラインナップでは、格子・つむぎ・石だたみの3種が確認できます。これはこれでかなり欲しいのですが、ちょっと変わったものやヴィンテージをレポートしていくのが当ブログのコンセプト。変化球を投げるという意味でもシルバーン トクにしました。トクは名入れ専用のシルバーンなのですが、たまに名入れや彫刻のないモデルが出回ることがあるようで今回幸運にも入手することができました。

それではシルバーンの詳細をみていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

【シルバーン トクのスペックと外観】

それでは、シルバーン トクの外観から見ていきましょう。まずはスターリングシルバーのこの外観に惚れたから買ったと言っても過言ではないくらい美しい軸。シルバーンはエリートを正統進化させたモデルなのですが、進化の過程で尻軸とキャップが平たいデザインから丸いデザインに変更され、樽型の胴軸とマッチしする完成されたデザインとなりました。

 

 

この軸の太さからくる手中への収まり具合いが心地よく、手中にあるだけで幸せを感じる万年筆です。金属なのですが不思議とスターリングシルバーは温かみを感じる素材ですね(体温が伝わりやすいだけかも知れませんが…)。

 

 

キャップからは余分な刻印が廃されていて、キャップリングの裏側に「STERLING SILVER CAP BARREL」と刻印があるだけととてもシンプル。これはシェーファーのインペリアルやパーカー75もそうでしたがスターリングシルバー軸お約束の刻印です。

 

 

クリップにはパイロットの刻印とお馴染みのティアドロップ型のクリップ。いつも見慣れている仏壇カラーのパイロットも良いですが、シルバー軸にシルバーのクリップというのもなかなかに格好良いです。

 

 

キャップの中には樹脂製のインナーキャップがあり気密性も十分に思われます。一昔前は嵌合式キャップが嫌いでしたがパイロットによる剛性感のある軸ということで嵌合式でも安心感があります。キャップを閉めると「パチンッ」と、まるで刀を鞘に収めたような余韻の残る音がします。こういった所も計算されて作られているのだなと感心しますね。

 

 

胴軸側のネジ切りですが、この写真からも分かる通り胴軸はかなり肉厚に作られている事が分かります。コストを惜しまず妥協しないパイロットのしっかり丁寧なものづくりは本当に好感が持てます。

 

 

キャップと首軸と胴軸を分けてみました。インク補給はカートリッジ/コンバーター式。ひとつ注意点として皆さんが大好きであろう大容量コンバーター「CON-70」はそのまま入れることができません。Twitterの有志の方にはCON-70のつまみの部分を削って使っていらっしゃる方もおられますので工夫次第では使用可能なのかもしれません。

ということで正式にはCON-40の方が合致するのですが、私はCON-40のデザインが好きになれないためカートリッジで使用しています。カートリッジも長くできていて容量も申し分なし。でもやっぱりCON-70が使えたらベストなのですが…。現状、CON-70はペン先を洗浄する際に使うだけに止まっています。

 

 

スペックですが、収納時の長さが143mm、胴軸径が13mm、重さが36gとなっています。一般的なモデルであるカスタム74との体格差がこちら。重量はカスタム74が17gなので約2倍。シルバーン トクはデザイン上尻軸にキャップを差して使うタイプでは無い(胴軸に傷がつきます)こともあり、いつもながらキャップを差さないで使っています。その場合、重量は20gとなるためさほど重さを感じること無く使うことができるのです。

 

 

 

【シルバーンのペン先とパイロット万年筆の書き心地について】

続いて、シルバーンのペン先を見ていきます。手にして使ってみて感じたことが首軸一体型のニブにしてはかなり大型だということ。今まで首軸一体型の万年筆をいくつか使ってきましたが、存在感の違いが明らかなのです。これについては最後の比較の項で触れていきます。

 

▲美しすぎるペン先

 

手元にあるシルバーンのペン先の刻印は「18K-750 PILOT <M> a1107 PPF刻印」。このa1107の刻印の意味は定かではないのですが、下2桁は製造年ということらしいです。この個体は「07」ですので2007年製ということになります。上の3桁「a11」が何なのか不明ですが、判明しましたら追記してきたいと思います。

 

 

横から見ても大きく美しいペン先。ウォーターマンのカレン デラックスと同等な形の首軸ですが、ニブの大きさから書き心地はまるで別物。大きなニブは筆圧をしっかりと受け止めるため筆圧をかければ太めの文字が、力を抜くと細めの字を書くことができます。

 

 

シルバーンの書き心地が良い要因として首軸の素材があります。首軸まで全てが金属製の筆記具のウィークポイントとして感じていることが筆記時のグリップ感の悪さです。その点、シルバーンはスターリングシルバー製であるものの、首軸はカスタムなどでお馴染みの握りやすい樹脂。この樹脂部分の幅が長めに配置されていることがポイントです。シルバーンを持ったとき指は自然にこの樹脂部分をつまむことになります。これが非常に持ちやすい。そしてスターリングシルバーの重みは人差し指と親指の股に預ける形となり筆記が安定するのです。

 

シルバーンで選べるペン先の字幅はFM。手持ちの万年筆は外国産も含めてEFF等の細字が多いので、シルバーンは中字をチョイス。パイロットの万年筆が愛され、多くの方に支持されている一番の要因は、万人の筆圧に応えるしなやかなペン先を備えているからではないでしょうか。書いていて気持ちが良いのがパイロットの万年筆。

 

 

 

 

【シルバーンの中字と出雲の中字を比較】

パイロットの書き心地が折り紙付きなのは言うまでもありませんが、シルバーン(パイロット)の中字と出雲(プラチナ万年筆)の中字を比較するとどうなのかを検証します。

 

 

筆記比較の前に見た目を比較していきましょう。シルバーンは収納時の長さが143mmと同じパイロットのカスタム74と比べてもコンパクトに設計されています。対して出雲はエボナイト製の漆溜塗り超大型万年筆。大きさも素材も対局にあるといっていい二本ですが、並べてみるとその体格差も際立ちます。

真逆の二本ですが所有満足感はどちらもメーターを振り切っています。

 

 

紙に書いてみた通りなのですが、シルバーン中字、というよりパイロットの中字は筆圧の変化に敏感に対応するペン先を持っていると言えます。力を入れれば太く、力を抜けば細く書くことができ、使い方によっては毛筆のように文字に抑揚を付ける事もできるのが強みではないでしょうか。文字を書いている時も柔らかいペン先がサポートし、弾むように文字を書くことができました。

 

一方、出雲のプレジデントニブは硬めの筆記感で中字でも中細字程度の文字が書けるペン先です。用紙にもよりますが、中字でもモンブランやペリカンといったドイツ産万年筆のEFくらいの字幅の文字が書けると言っても過言ではないです。

しなりの少ないペン先は筆圧が高めな傾向にある日本人の手に馴染むように作られているのでしょうか。これは2社の方向性の違いだと思うのですが、同じ国産万年筆でも明らかに書き心地は別で面白いです。

 

今回はパイロットとプラチナの中字を比較しましたが、上位モデルのセーラーを手にれた暁にはそれを加えてまた比較していきたいと思います。国産万年筆は筆記感の違いが非常に分かりやすいため、これから万年筆を使ってみようかと思っている方は必ず店頭で試筆することをお勧めします。国産万年筆は楽しいですよ!

 

 

 

 

【美しき首軸一体型の万年筆たち】

ここ数ヶ月の記事で立て続けに首軸一体型ニブを持つ万年筆を取り上げてきた気がします。最後は首軸一体型ニブをくくりにして美しいデザインを比較していきます。

 

 

左からウォーターマンのカレン デラックス、パイロットのシルバーン トク、シェーファーのインペリアルです。いずれも金属軸で嵌合式、同じ首軸一体型ニブなのですが首軸とニブを組上げる仕組みがそれぞれ違うのが面白い。

70年代のヴィンテージ万年筆では首軸一体型の万年筆が多く見られますが、現行品として買える首軸一体型ニブを持つ万年筆は限られてきました。

 

シルバーンのニブは首軸はめ込み式ということもあり大型にできていますね。インペリアルは象嵌(ぞうがん)ニブで形が特徴的。この三本のペン先の硬さを比較すると左(カレン)から右に行くにつれて書き心地が柔らかくなっています。

 

カレンは首軸に対してニブの占める割合が低くこの中ではガチガチの書き味。かといって先ほどのプラチナの出雲とも違う書き心地で独特なんですよね。ボールペンから万年筆に移行する方は最初ウォーターマンの万年筆を持つのが良いかもしれません。

シルバーンは先にも書いたようにこれぞパイロットという書き味。そしてシェーファーはペン先が反っているため柔らかいペンタッチが味わえます。三本が首軸一体型ニブですが書き味はそれぞれなのが万年筆の面白いところです。

 

 

さて、今回は「新元号発表記念筆」としてパイロットのシルバーン トクを迎えました。新元号筆じゃないところがポイント。

スターリングシルバーの鈍い輝きと太めの軸は常に持ち歩きたくなるほど満足度の高い万年筆です。さらに軸だけの満足感ではなく、書き心地も楽しめる万年筆はなかなかありません。その両方を備えているのがシルバーンはじめパイロットの万年筆だと思います。

シルバーンには現行モデルを含めかなりのバリエーションの軸が存在しているのも魅力。前モデルのカスタムエリートや彫刻違いを含めると相当な数のヴィンテージがあるので、オークションやフリマで探してみるのも楽しいです。現行品だと石だたみかつむぎが気になるので、また何かの記念に迎えることができたらなと思います。

それではまた次の記事で。

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