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ヤード・オ・レッドの樹脂軸「アストリア」ボールペン レビュー

2023年9月12日

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皆さんこんばんは。
 

至高のボールペンを求めて、筆記具を巡る旅はまだ続く。
 

LAMY2000ブラックウッド、そして前回の記事のファーバーカステルのイントゥイションプラチノウッドで、ある意味自分が使う木軸ボールペンの終着点を見たような気がするこの頃です。
 

樹脂軸のボールペンについても、有名どころのメーカーのフラッグシップモデルは大体体験することができたかと思います。
 

ただ、まだまだ自分が知らない、書いたことがない筆記具は山ほど存在することでしょう。
 

 
今回は銀軸で有名な「YARD・O・LED(ヤード・オ・レッド)」から、珍しい樹脂軸の「アストリア」をレビューしていきます。
 

ヤード・オ・レッドはイギリスの筆記具メーカーで、職人が手作業で造る銀軸の筆記具が魅力。
以前にも銀軸のボールペン「バイスロイ」をレポートしましたが、ヤード・オ・レッドの魅力溢れるペンは銀軸だけではありません。
 

 
美しく磨かれたレジンが使われたアストリア。
ヤードのレジン軸は、「アストリア」の他に、パールレジンの「パールアストリア」、ブラックレジンにギョーシェ模様が施された「レトロ」があります。
 

そのどれもに共通して、胴軸と天冠はレジン、クリップと口金がスターリングシルバーという仕様。
 

 
レジン部分はセルロイドではなく、アクリルのようなグリップ感の良い樹脂。
パーカーのデュオフォールドに近い触り心地です。
 

「アストリア」という名前はギリシャ神話の女神から取られているものと思われます。
「星のごとく輝く者」という意味があるそうで、名前を紐解くだけで使いたい欲が増してくる不思議な筆記具です。
 

現在はラインナップからは消えている当モデルですが、某オークションや国内外のフリマサイトを根気よくチェックすることで出逢うことができます。
 

私はブラックレジンのレトロを「いつかは入手したいリスト」に加え、随分前からマークしていたのですが、偶然発見したアストレアに惚れてしまい…気付けば入手。
 

べっ甲のような渋さがあり 仕事でも使えるな、ということで毎日持ち出しています。
 

自分が次に買う眼鏡はべっ甲柄にしよう!と、ペンとアイウェアを揃えたい欲が発動するくらい素敵な軸柄です。
 

私がこのペンを気に入っている理由として、そのデザインはもちろんのことですが、軸径などのサイズ感が自分の手にしっくりくること。
 

 
左から、アストリア、バイスロイ、ディプロマット(アンティークのMP)。
銀軸のヤードと比べても1.5倍ほどの軸径を誇り、個人的にはその分持ちやすさも増しているように感じます。
 
モンブランならホワイトスター、パーカーなら矢羽クリップ、ペリカンならペリカンクリップというシンボルがあるように、ヤード・オ・レッドもシリーズを通してシンボリックなクリップが着いています。
 

 
堪らない、アンティークな雰囲気を纏ったクリップ周り。
2つのリベットで固定されたクリップはスターリングシルバーで、「YARD・・O・・LED」の刻印と、シリアルナンバーである数字(桁数は4桁~5桁)、そしてクリップリングにはスターリングシルバーを表す刻印等ホールマークが並びます。
 

 
クリップの左右側面には、メーカーマーク(YOL)、デイトレター(l)、メタル&ファインネスマーク(925)、アッセイオフィスマーク(錨)。
 

デイトレターから年代を読むと、2010年に刻印が押されたことが分かります。
これ、ややこしいのですが、アルファベット小文字のl(エル)なのです。
 

デイトレターは、様々な字体のアルファベット大文字・小文字が 盾や四角枠の中に押され、かつ他の刻印の向きと合わさることで、何年に刻印が押されたものかが分かるという仕組み。
 

錨のマークはバーミンガムのアッセイオフィスを表します。
アッセイオフィスマークも同様に2000年からは横向き(錨の頭が右)の錨となっています。
 

横向きの錨+四角枠の角が取れた小文字のl(エル)ということで、2010年に押されたものと判断できるわけですね。(ホールマークのハンドブックを見ないと、とてもじゃないけど覚わりませんが…)
 

 
そしてクリップの反対側には、コモンコントロールマーク(天秤に925)とライオンパサント。
どちらも純度92.5%であるスターリングシルバーを表す刻印です。
 

アストリアのクリップリングは十分なスペースがあるため、大きめの刻印が嬉しいです。
ライオンパサントもディティールがくっきり!
たてがみもしっかりと描かれています。
 

 
銀軸ヤードのホールマークと。
真ん中のバイスロイは同じく横向きの錨とデイトレターが「q」であることから2015年製造。
奥のディプロマット アンティークペンシルには少し見難いですが、レオパード(ロンドンのアッセイオフィス)の刻印と、小文字の「d」が見えることから1959年製造。
 

うーむ、ヨーロッパの純銀製品は面白いです。
 

 
横から見ると美しく湾曲するクリップを愉しめます。
ヤード・オ・レッドのシンボルと言ってもいい、職人の手仕事を感じることができるクリップ。
 

クリップにはバネ等は設置されていませんが、しっかりと生地を挟み込むことができます。
 

 
ボールペンは回転繰り出し式で、天冠がペン先繰り出し機構操作部を兼ねています。
天ビスには「Y」のエンブレム。
 

これは樹脂軸モデルでしか見たことなく、銀軸モデルには無いものと思われます。
回転繰り出しのストロークは180°。
 

アストリアはユーズド品を入手したのですが、手元に来た個体はこの回転繰り出し機構が緩い、というか軽かったことに加え、回転繰り出し動作の際にキュルキュルと異音がしたため 手直しをしています。
 

 
キュルキュルという異音はボールペン上部の回転繰り出し機構から発せられていたため、ペン先を外し、シリコンスプレーのノズルを目いっぱい突っ込んで一吹き。
 

これで改善しています。
やり方が正しいのかはさておき、金属が擦れる音には注油が一番効果的。
後から知ったのですが、どうやら天冠は外せそう(多分…)。
 

回転繰り出し動作の緩さ(軽さ)は、回転繰り出し機構がどうこうではなく、動作にテンションをかけるバネの問題のため 口金の中のバネを外して交換します。
 

 
バネを摘出して、合うものと交換します。
 

初めから入っていたバネは、針金が細くバネの幅も広いため あまりテンションがかかりません。
初めからこういうものなのか、それとも交換されたものなのかは分かりませんが、私の操作感覚には合わないため、違うバネと交換。
 

 
ジャンク品から摘出したモンブラン#164のバネは、長すぎる&テンションが強すぎるためアストリアには合わず、過去にコンビニで買った(確か…)ペンの中に入っていたバネがいくつかあったため、これを使います。
バネの長さ、幅、巻きの数、テンションがなかなか良い感じです。
流石日本製!(多分…)
 

 
とは言え、アストリアの口金に入れるには長いため、適度な長さにラジオペンチでカットします。
何回か、アストリアの口金に戻し、繰り出しのテストを行いつつ納得のいくテンションになるよう微調整。
 

結果、アストリアに入っていたバネに比べ短くなっていますが、針金が太いことによりテンションは丁度良い塩梅になりました。
 

 
目指したのは銀軸ヤードの操作感!
適度に抵抗を感じる繰り出し感となり、大成功です。
 

私は経験則に基づいて調整をしていますが、もちろん自己責任が伴います。
 

ついでに、バネが元々緩い「理由」を考えてみましょう。
 

口金と胴軸の接続部(ネジ切り)が金属×樹脂であることから、強度的な問題が考えられます。
 

バネの抵抗を強くするとペン先を出している時・収納している時に関係なく、軸の内部から外側に向けてある程度の力が働く事になります。
(無論、ペン先繰り出し時の方が外向けにかかる力は増します)
 

バネを強くする=樹脂部分に少なからず負担をかけることになりますので、何事も程ほどが重要です。
アストリアの樹脂軸は中に真鍮等の芯材が入っていませんが、樹脂自体の厚みがかなりあるためおそらくバネの強度を上げても問題ないと判断しました。
 

改めて「使いたくなる操作感」というのはデザインと同じくらい重要だと感じます。
 

 
分解ついでに、銀軸とアストリア(樹脂軸)では対応するリフィルが違うことにも触れておきましょう。
 

銀軸モデルは国内ではあまり馴染みのないリフィルに対応しており、手元のバイスロイに入れているのも確かヴァルドマンのリフィル。
 

一方、アストリアをはじめとした樹脂軸モデルはG2タイプリフィル対応となります。
前回のイントゥイションと同様に、お気に入りのパーカークインクフローを装填。
 

 
リフィルの違いによる筆記ポイントの違い。
銀軸モデルは伝統的なヤード・オ・レッドのメカニカルペンシルのような感覚で筆記が可能というボールペン、アストリアのような樹脂モデルは汎用性のあるG2リフィル対応でより多くのインクを手に入れたと言って良いでしょう。
 

このような一つのメーカーのボールペンで、メインとなるリフィルが4Cタイプ芯以外にあるメーカーは珍しいと思います。
 

ともあれ、これでアストリアにおいて自分好みの操作感と好みのインクによる快適な筆記感を手に入れる事ができました。
 

 
アストリアの重量は30g。
ファーバーカステルのクラシックコレクションと同じく 口金は長細く設計されていますので、グリップポイントは胴軸のペン先寄りか口金の端になります。
 

10.5mmの軸径は握りやすさも申し分なし。
指紋に吸い付くようなアクリル樹脂かつ、このデザイン。
堪りません…。
 

 
アストリアの優れている点として「重量バランス」も挙げられます。
全長が139mm(筆記時は142mm)という少し長めであることに加え、口金の重量、クリップと回転繰り出し機構の重量がうまくバランスを取っています。
 

胴軸内に金属の芯材を設置しないことで重量を30gに抑えていることにも注目したい。
廃番となっていることが惜しまれるモデルではないでしょうか。
 

 
私の好みのボールペンの傾向が分かってきた気がします。
グリップ部の軸径が10mm~11mm、重量は25g~32g。
 

手元に置いて使い続けたいボールペンを並べると、デザインの中に見え隠れするそれぞれのペンの共通点が見てきて面白い。
 

 

さて、今回はイギリスはヤード・オ・レッドの樹脂軸ボールペン「アストリア」をレポートしました。
 

なかなか見かけることが少ない樹脂軸ヤードですが、デザイン、重量、筆記感は目に見張るものがあります。
私のレポートはどうしても廃番品が多くなりますが、現行品は文房具店やブティックで実際に見て、触ることができるため。
廃番品は店頭で見かけることが難しいことから、まずは存在を認知することが第一歩となります。
 

そういった、過去に発売されていた中の素晴らしい筆記具を発掘すること、またその一本に出逢えた時はこの上ない喜びに…。
 

この記事が、皆さん一人一人にマッチする「至高の一本」探しの参考になれば幸いです。
 

それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

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