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ヒビ割れたボールペンを「簡易金継ぎ」で直してみた。【パイロットグランディー22KAGMとモンブラン マイスターシュテュック#164の修繕】

2024年9月23日

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皆さんこんにちは。
 
お気に入りのペンを使って仕事や勉強をするのは楽しいですね。しかし、毎日使っていると注意で落としてしまったり、取り扱いを間違えて破損してしまうこともあるかと思います。
芯が出なくなった、大きな傷が入った、軸が割れてしまった、等々…。
 
内部機構が壊れてしまうと私のような素人では手の施しようがないですが、外観の破損等は分かりやすいです。何より筆記具としての機能が生きていれば、外観さえ何とかすればまた使いだすことができるからです。
 
こんな時、修理に出すという選択の前に「自分でなんとかしたい!」という感情が湧いてくる方もいらっしゃるかと思います。
 
かく言う私もそちらの人間。
かといってプロ級の修繕の腕前があるわけでもなく、修繕するための専門的な知識や道具があるわけでもありません。
 

 
そこで注目したいのが、タイトルにもある「簡易金継ぎ」。
昨今流行ってきている、傷を隠すのではなく、見せる(魅せる)修理方法。
これなら私のように専門的な知識や技術がなくてもなんとか筆記具を蘇らせることができそうです。
 
その前に、一般的に言う「金継ぎ」と「簡易金継ぎ」の違いは把握しておいた方が良さそうです。(簡易金継ぎは金継ぎとは呼ばない!というのが一般的な常識らしいです)
どちらも手順は同じなのですが 使う材料や技術が違うため、混同しないようにしましょう。
 
伝統的な「金継ぎ」は純漆などの天然素材のみを使うことから、食器やカップなど口や肌に直接触れる物に施しても安全だということ。
さらにそれを行うには熟練した技術が必要とされます。
 
一方、簡易金継ぎは手先がある程度器用であれば だれでも気軽に楽しめるもので、材料や道具も簡単に手に入る物が多く技術的な敷居も低いです。
 
今回、私がチャレンジするのは「簡易金継ぎ」の方。純粋な漆を使うのではなく、樹脂と漆が混ぜられた「合成漆」を使うところが一番の違いです。
 
逆に、メインの素材がレジン(樹脂)である筆記具は、「簡易金継ぎの方が手法的にも向いている」と考えることもできます。
 
プラモデルに接着剤を使うように(いや、最近のは接着剤無しで組めたりしますが…)、筆記具の外観破損を直すには同じ合成樹脂系である接着剤の方が良い、とういうことにしておきましょう。
 
それでは早速、皆が楽しめるDIY「簡易金継ぎ」を試してきましょう!
 

 

 

 

破損したグランディー22KAGMのボールペン

正直、自分の手先は器用な方だと思ってはいますが、なにぶん初チャレンジとなりますので失敗することも視野に入れながら、慎重に行わなくてはなりません。
皆様も温かな目で工程を見守って頂ければと思うのです。
 
今回、実験材料(失礼!)になっていただく筆記具は、こちら。
 

 
「パイロット グランディー 22KAGM」。
 
これね、本当に好きなんですよデザインが。
すでに数本を保有するまでとなったグランディー22KAGM。ボールペンは2本所有しているのですが、そのうちの1本は半ジャンクとなっています。
おっと、ついでにグランディー22KAGMのボールペンは万年筆とはサイズが異なりますので、そのあたりをレポートしてから進めていくことにしましょう。
(どれだけニーズがあるか分かりませんが…)
 

 
左がボールペン、右が万年筆です。
まず、軸の太さやサイズがまるで違うことが見て取れます。
 
これはパイロットの筆記具に限らず、一般的な筆記具のラインナップではそうなっており、手元にあるものではプラチナのセルロイド ミッドナイトオーシャンや、パーカーのデュオフォールド等も同様です。
 
ボールペンのシンプルな機構とペンポイントが細いことを考えれば、万年筆のように太く大きくする必要が無いのです。
 

 
天ビスもデザインは同じですが、サイズが異なります。
一回り小さいのがボールペン。
これはこれで、2本揃えたくなるというもの。
 

 
左がボールペンで右が万年筆です。
 
グランディー22KAGMは万年筆のサイズとしても大きめなため、ボールペンとの比較ともなるとそのサイズの違いは顕著です。
しかしデザインは同じツヤ消しのボディに凝ったキャップリング。
うーむ、この和風なデザインに惚れ惚れします。
 

 
パイロット グランディー 22KAGMはキャップノック式のボールペン。
1970年代のボールペンですが、使用するリフィルは現行品でも活躍する油性インク「BRFN-30」。
パイロットのインクは黒が濃く 粘度もジェットストリームほど柔らかくないため、軽すぎない書き心地が好きな方に特にお勧めです。
 
スペックは、
 
全長:133mm
重量:18g
胴軸径:9mm
 
となっています。
 

 

さて、筆記具の修繕に話を戻しましょう。
 

 
今回修繕するボールペンは右側のグランディー。
ぱっと見は同じですが、よく見ると外観の至る所に破損があります。
 

 
ペン先には目立つ亀裂が入っており、口金のガタつきはないにせよ このままだとペン先の強度が心配です。
 

 
キャップにも亀裂。
特にクリップ根元の亀裂が致命的で、これによりクリップの左右への力に耐えられず クリップが左に傾いてしまうという状態になっています。
 
こちらは某オークションで安く売られていたものを入手。
各部のくたびれ具合いからも ビジネスやプライベートで酷使されてきたことが覗えます。
 
これはこれで筆記具の使命を全うしていますが、このペンを受け継いだからには クリップや亀裂を修繕して使いたい!
 
まずはボールペンを分解して作業しやすいようにパーツ毎に分けます。
キャップと胴軸を分けるのは簡単ですが、今回の修繕においての問題点はキャップの分解。
 

 
胴軸側からキャップ内部を見ると「カニ目」が確認できます。
カニ目レンチがある場合はそれを、無い場合はマイナスドライバーでも代用可能。
 

 
カニ目を外してノック機構を取り出します。
こういった内部機構は修理ができるように接着されているものは無く、大体がネジで取り外し可能なのです。
 

 
クリップはキャップの中で天ビスとマイナスネジで固定されているものがほとんどですので、細めのマイナスドライバーを突っ込んでネジを回していきます。
 

 
分解できました。これで樹脂パーツの作業がし易くなります。
クリップを固定するネジにバネを挟むことでクリップを稼働させる仕組みとなっていますね。
 

 
改めて破損部を確認すると、クリップが動くことにより起こるキャップの削れと亀裂。
ペン先の亀裂。
 

 
クリップが左に動いてしまう原因の亀裂と根元部分の削れが確認できます。
分解すると内部の状態や原因の特定ができて面白い。
 
状態はだいたい分かりました。
ということで、レッツ修繕していきましょう!
 

 

「簡易金継ぎ」に必要なものを準備

まずは簡易金継ぎに必要な道具ですが、主にこの3点でいけます。
何なら耐水ペーパーは無くてもいけるかもしれません。
 

 
右から、
・合成漆(簡易金継ぎセット)
・100均の樹脂用接着剤
・耐水ペーパー(2500#~10000#)
 
合成漆と耐水ペーパーはAmazonで。
接着剤は容量も少なく余ることがない100均のものがお勧めです。
 
欠けた部分がある場合は、さらに穴埋め用にパテ等があると良いでしょう。
今回、塗り作業には爪楊枝を使います。
 
他にあれば良いかなという道具は、
・面相筆
・テープ
・金属磨きクロス
 
面相筆は細かな塗り作業に。
筆記具自体が細く小さい物のため、なるべく細い筆の方が良いです。
(今回の記事は爪楊枝のみを使用して塗っています)
 
 
補修の手順としては、
 
①軸を磨く(小傷も直したい場合)
②接着剤で破損部分の補修(傷を埋める)
③補修部分に合成漆(金)を塗る
 
です。
 
簡易金継ぎを行う前は、金粉を混ぜた合成漆で傷を補修するものだと思っていました。
実際は、破損部分の接着→接着部分を金で保護する という手順になります。
 
①の工程については、ついでに軸を綺麗にしたいというかた向けですので割愛します。
しかしペン全体を美しく仕上げたい場合は、必ずやっておいたほうが良いでしょう。
 
特に忘れがちなのが、トリム部分の保護。
基本的にトリムには合成漆を塗ることはないので、マスキングテープを貼って保護しておくことをお勧めします。
 

 

実際に「簡易金継ぎ」で修繕してみよう

それでは工程②の「破損部分の補修」から。
 

 
プラモデルを組み立てるように、普通に接着剤を使ってヒビ割れを修復していきます。
ここで重要なのが、傷口をなるべく平らに直すということ。
 
くっつけたとしても割れた部分が凹んだままだと合成漆を塗ったあとも凹みが目立ってしまいます。
 

 
クリップの亀裂部分も傷埋めと裏側の補強を行います。
ここはクリップ稼働の負荷に耐えられるように念入りに、接着剤を多めに塗布。
 
接着剤はしっかりと乾燥させましょう。
塗りすぎて補修面が膨らんだ場合は、カッター等ではみ出た部分を削ってから耐水ペーパーをかけて慣らします。
 
 
③の「補修部分に金を塗る」工程に進みます。
 

 
合成漆と付属の金粉を混ぜます。
合成漆は琥珀色。
金粉を適量混ぜます。金粉は少し多めに出して、様子を見つつ足していくのが良いでしょう。
入れすぎるとダマになるので注意です。
 

 
途中まで爪楊枝を使って塗り塗りしていたのですが、塗る方法についても2種類あることに気付きます。
 
A:写真のようにダイレクトに塗る方法
B:マスキングテープ等を使って塗りたい部分をピンポイントに塗る方法
 
Aはフリーハンドかつ爪楊枝を使っていますので、塗りムラが出てしまいます。
味として捉えればそれで良いのですが、商品のように綺麗に仕上げたいという場合はあまり向かないかも知れません。
面相筆を使ったほうがいいのは間違いないので、本気で仕上げたい場合は筆を使いましょう。
 

▲爪楊枝のみで塗った場合
 
Bは直線的に仕上げたい場合や、何かの絵柄として仕上げたい場合。
私はAのやり方で何かしっくりこなかったため、一度やり直して マスキングテープを使いました。
 

▲マスキングテープを使って爪楊枝で塗った場合
 
テープを使ってガイドを作るにあたり、注意することは2点。
 
1点目はテープの種類により仕上がりが異なるということ。
私はマスキングテープを使ったのですが、簡易金継ぎの塗装面にマステの繊維が触れるため、剥がす際に毛羽立ってしまいます。
 
セロハンテープのような樹脂系テープの方がシャープなラインが作れると思います。
※テープも無色透明の物よりは半透明の白など、色がついている方が作業しやすいと考えます。
 

 
2点目は傷の部分だけを隠すというよりは、傷の部分を利用した柄に仕上げた方が良いということ。
よりセンスが問われる作業ですが、やっぱり補修後を美しく見せる(魅せる)ためには、単なる線より柄になっていた方が全体的な完成度も上がるのです。
 

 
今回は思いつきで普通の簡易金継ぎに突っ走りましたが、綿密に設計図を書いて、全体的な仕上がりのイメージをつけた上で臨む方が より満足できる完成品を作るポイントだと思います。
 

 

もう1本やってみた!そして気付いたこと

さて、手元にはもう1本破損したボールペンがあるのでした。
 
それはモンブランのマイスターシュテュック#164。随分と前に壊れていない部分のみを集めて完全なる1本を作成した際、余った方のパーツ群です。
捨てずにとっておいて良かった。
 

 
キャップに2箇所の亀裂、天ビスの一部欠け、クリップの小傷によるゴールドプレート剥がれも気になります。
 
今回は亀裂の部分は少し広めに金を塗ってみることにしましょう。
クリップは耐水ペーパーで表面を削り、ゴールド→シルバーにしようと思います。
 
胴軸のパーツは大きな破損がないため、小傷を耐水ペーパーで削り取ったあとクロスで磨きます。
 

 
こちらもグランディー22KAGMと同じように分解して処理をしやすくします。
モンブラン#164の分解はグランディーに比べて簡単で、ホワイトスターのある天ビスをネジって外せばキャップは分解可能。
 

 
レジン部分を耐水ペーパーで磨いたら、マスキングテープを貼ります。
亀裂が分かれていますので、金に塗る部分も二股に。
 
セロハンの方が良いといっておきながら再度マステ…。
マステの繊維を剥がしたときの予測不能な柄を楽しみたいと思います。
 

 
キャップはこのようになりました。
うーむ、今回も爪楊枝を使って塗りましたが、塗りムラが酷いです笑
これはこれで良しとしましょう!
 

 
先ほどの各破損部はこのようになりました。
オリジナリティのある仕上がりとなっています。
 
一番大変だった部分は意外にもクリップで、耐水ペーパーの目を段階的に細かくしつつ、あとは根気でツヤが出るまで磨くしかありません。
もう腕がパンパンです。
 
あとは元通りに組み上げるのみ。
 

 
握ってみました。
なかなか良い具合いに出来たのではないでしょうか。
胴軸とキャップのレジン部分を念入りに磨いたお陰で、全体的にツヤのある仕上がりとなりました。
 

 
上から見ると反対側にある二股のラインがチラリと見えます。
ラインとして塗るのもいいですが、マイスターシュテュックカリグラフィーのように斑模様に仕上げても面白いかも知れません。
 

 

さて、いかがだったでしょうか。
今回「簡易金継ぎ」をやってみて気付いた点がいくつかあります。
 
傷(亀裂や割れ)の部分だけを直すと貧弱な仕上がりになってしまいます。かといって、塗り範囲を広げ過ぎると デザインとして大袈裟になってしまうことが分かりました。
加減が難しいところですが、キズや破損を利用してより自分らしい筆記具にするために、全体的なバランスを考えて柄を作ることが一番重要だと感じました。
 
そういう意味では少し短時間で作りすぎたかな、と。
合成漆の乾燥にはほぼ丸一日の時間がかかりますので、じっくりのんびりと作業する方がいいですね。
 
あと、次にやるときは絶対に面相筆を使って塗りたいと思います。均一に塗る方が完成度は高くなりますし、塗り面のツヤも出ます。
そのためには下地作り(割れの修復と軸磨き)も重要となってくるのですが…。
 

 
感想としてはとにかく楽しかった「簡易金継ぎ」。
ボールペンを直すにはちょうど良い作業となります。
 
壊れた筆記具を自分で直すことの愉しさ、そしてまた愛着を持って使い続けることができることへの喜び。
手元に破損した筆記具がある場合は、この記事を参考に是非ともチャレンジして頂きたいと思います。
 
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

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