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モンブラン 1970年代後期のポルシェコラボボールペン「turbo」のレビューと回転繰り出し機構の修理方法

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皆さんこんばんは。
 

今回の記事は、久しぶりに書くモンブランのボールペンについて。
それも特殊なモデルの修理について書いていきたいと思います。
 

作家シリーズでもドネーションペンでもない、特殊なモデルとは「コラボモデル」。
 

筆記具メーカーにおいて、他社とのコラボ商品というものを見かけることがあります。
もちろん、現在に至ってもそうした形で発売されている商品もあるのですが…。
 

最近では「LAMY サファリ×NANGA(ナンガ)」のレビュー以来でしょうか。
 

モンブランの他社コラボモデルも例外なく出ており、絵本で有名な「星の王子さま」や、ソムリエナイフメーカーの「フォルジュ・ド・ライヨール」とのコラボ、ジュエリーブランドの「TIFANY」とのコラボ等々。
 

その中で筆記具業界とモータースポーツがコラボする機会もあるようで、モンブランも「BMW」や「Porche(ポルシェ)」とコラボしています。
 

具体的なメーカーとのコラボ以外でも、モンブランのスターウォーカー(スピリット・オブ・レーシング)や、カランダッシュのエクリドールレーシングなど、モータースポーツから着想を得た製品も出ているほど、モチーフとして密接な関わりがある筆記具界とモータースポーツ業界。
 

今回見ていくモデルはそんなコラボ製品の中から、モンブランが1970年代にポルシェとコラボしたモデルのボールペン「turbo(ターボ)」。
 

 
1970年代のモンブラン×ポルシェ モデルというと「Carrera(カレラ)」の方が有名かも知れませんが、忘れてはいけない「turbo(ターボ)」。
 

これが格好良いのです。
 

発売時期は1970年代後期~80年代の初めまでで、製造本数は多くはないと考えられます。
直線的なシルエットにレーシングマシンを思わせる各パーツ、今見ても十分に通用するデザインではないでしょうか。
 

手元のターボは、外観の状態は良いものの回転繰り出しが壊れていて修理が必要でした。
 

モンブランコラボモデルの一つである当モデルの、回転繰り出し機構の構造と修理の記録としても書いていきたいと思います。
 

 

 

 

モンブランturboの回転繰り出し機構故障の原因

モンブランのボールペン、特に1970年代のものは 万年筆にしてもボールペンにしてもメカニカルペンシルにしても、樹脂素材が弱いという欠点があると思っています。
 

まあ、今と違って大量生産・大量消費の時代でしたので、耐久性が今ほど気にされていなかったという背景と、あまり頑強なモノを作ってしまうと、それはそれで次の商品が買ってもらえなくなり、儲からないという大人の理由もあったでしょう。
 

結構な数のモンブランのペンを触っていると、今のモデルも昔のモデルも、正しい操作が行われなかった時の弱さといいますか、樹脂パーツの脆さみたいなものに薄々と気付いてくるわけですが、このターボもしかり それが顕著に表れていると思うのです。
 

 
▲非常に格好良い。でも大人の力をもって操作を間違えると意外とあっさりと壊れます。
 

手元のターボは回転繰り出し機構に難があり、回転繰り出し動作を行ってもペン先が繰り出されない(正確にはリフィルの先が少ししか出ない、さらにキャップと胴軸が分離してしまう)というもの。
 

 
理由は簡単で、キャップの内部パーツの一部であるグレーの樹脂パーツがパックリと割れているため。
 

本当は右下の黒い樹脂(胴軸)と繋がっている金属パーツから上は、キャップの中に収まっていないといけない部分。
 

 
▲樹脂パーツが抜けた状態の金属パーツ。
 

グレーの樹脂パーツに亀裂が入ったことで金属パーツとの結合力が無くなり、回転動作が空回り、少しの力で金属パーツから樹脂パーツが抜けてしまうという始末。
 

こうなる原因は もちろん経年劣化もあるでしょうが、例えば、ペン先を繰り出した後も強い力でペン先繰り出し側に回してしまったか、またはリフィル交換の際 間違えてキャップを引き抜いてしまったか…。
 

原因は何にせよ、こうなってしまうとボールペンとして使うことはままならなくなるのですが、うーむ、もう少しグレーの樹脂パーツの強度を増せなかったものかと。
 

樹脂パーツ自体の厚みも薄いうえ、プラスチック自体も良いものが使われていないのか、構造に問題があるのか…。
 

 
キャップの中の回転繰り出し機構をバラすと、このようなパーツ構成となります。
※金属パーツには胴軸をつけています。
 

「樹脂パーツA」の頭の金属部分を回すとリフィルが繰り出される構造で、その動作をリフィルに伝えるのが「樹脂パーツBとスプリング」。
 

 
▲樹脂パーツAの金属部分を回すと、中に設置された樹脂パーツBが押し出される
 

回転動作によって押し出された樹脂パーツBが、「金属パーツ」内部のリフィルを押し、ペン先が繰り出されるという仕組みです。
 

樹脂パーツAの金属部分を逆回転させると、スプリングの力で樹脂パーツBが戻され、結果 リフィルが収納されます。
 

 
図解で示してみました。
(①と②は断面図)
 

樹脂パーツAとB、そして金属パーツは図のようにキャップ内に収まっています。
 

①の金属パーツの赤枠の部分が固定できれば、回転繰り出し時にかかるテンションを受け止めることができます。
 

ここがしっかり保持できないと樹脂パーツBがスプリングの力に負けて金属パーツから抜けてしまうんですね。
 
次の項で行う修理としては、この金属パーツと樹脂パーツAを完全に固定すること。
図解の金属パーツ赤枠箇所の接着、および亀裂の補修をしていきたいと思います。
 

 

特殊モデルの回転繰り出し機構を修理する

ターボの回転繰り出し機構の仕組みが分かったところで、樹脂パーツAと金属パーツを繋げる修理へと移っていきます。
 

 
▲改めてモンブラン ターボのパーツ構成を見てみましょう。
 

モンブラン回転繰り出し式ボールペンのフラッグシップである「マイスターシュテュック#164」の回転繰り出し機構と比べてもシンプルな作りと言えるターボの内部機構。
 

 
長いキャップの中にある細長いパーツ群。
マイスターシュテュック#164の内部機構よりは幾分頼りない印象です。
 

金属パーツと樹脂パーツを接続する作りは、モンブランのメカニカルペンシルとも似た構成。
メカニカルペンシルもそうですが、この樹脂パーツは本当に脆いので注意が必要です。
 

マイスターシュテュック#165等のメカニカルペンシルの内部機構で、ターボと同じように樹脂パーツに亀裂が入っているものをしばしば見かけますが、メカニカルペンシルの場合は亀裂が入っても使用可能なところが大きな違い。
 

 
樹脂パーツAがどれほどのテンションに耐える必要があるかを確認するため、胴軸にリフィルを入れ、金属パーツをねじ込みます。
 

ちなみに 樹脂パーツAが接続される部分は、金属パーツの赤枠の部分。
 

 
▲テンションを確かめるための樹脂パーツBとスプリング。
スプリングが金属パーツ側(=胴軸側)です。
 

樹脂パーツBの上部には出っ張りがあります。(赤丸矢印の部分)
これは樹脂パーツAの中で樹脂パーツBの向きを固定するための出っ張り。
 

 
金属パーツの先端の穴に樹脂パーツBを差し込み、指でテンションをかけてみます。
細くて小さなスプリングですが、結構力が要りますね。
 

かなり強固に接着する必要がありあそうです。
 

 
▲修理によって接続された樹脂パーツA+金属パーツ
 

樹脂パーツAの中に樹脂パーツBを入れ(前述の出っ張りを合わせる)、そのうえで瞬間接着剤を塗布した金属パーツを嵌めます。
 

亀裂の部分にもたっぷり目に瞬間接着剤。
接着剤が落ち着くまでは指でしっかりと固定し、良い感じに固まってきたらその上から これまた強力な粘着テープでテーピング。
 

この状態で丸一日放置。
接着剤を完全に固化させます。
 

 
今回修理に使った粘着系の補修剤は、3Mの粘着テープ(これ本当に強力)とセリアで買ったセメダイン2種(耐衝撃とハイスピード)。
セメダインは金属にも効果があるものを選んでいます。
 

耐衝撃は粘度が高いですが乾燥は緩やか、ハイスピードは粘度が低く速乾性があります。
この2種を使い分けて、かつ上から3Mを巻くことで絶対にパーツ同士が外れないようにします。
 

※樹脂パーツBと金属パーツを接着してしまわないように注意!
 

 
あとは内部機構(樹脂パーツA in 樹脂パーツBとスプリング+金属パーツ)をキャップ内に押し込めば完了。
樹脂パーツAは上部の金属部分がキャップと圧着されているのみで、ビス止めは必要ありません。
 

樹脂パーツAと圧着された金属部分で繋がっているキャップを回すことで、結果的にキャップを回転させてペン先を出すということになります。
 

ちなみに、キャップに圧着されている樹脂パーツAや、樹脂パーツA内から樹脂パーツBを取り出すのに使った道具がこちら。
 

 
ファミマのお箸(竹製)と竹串。
これらは分解工具としてはめちゃくちゃ優秀なためお勧めです。
 

 
樹脂パーツA内から樹脂パーツBを取り出すのに箸先がピッタリですし、箸頭側に粘着テープを巻けば耐久性としなりを兼ね備えた粘着棒が完成します。
竹串は細いので、樹脂パーツAの中に樹脂パーツBを戻す時に使えたり…。
 

粘着棒は太さが良い塩梅になるまで3Mのテープを巻いて、キャップ内から樹脂パーツAを引き抜くのに使いました。
(差し込んだ後しばらく放置して、粘着面を十分効かせることが重要)
 

 
美しく蘇ったモンブラン ターボ。
次の項ではポルシェとのコラボで生まれたそのデザインをじっくりと見ていきます。
 

 

turboのデザイン

さて、蘇った、というより元々見た目は美品だったターボのデザインを見ていきます。
 

ポルシェとコラボしているというだけあって、各部にスポーティなデザイン要素が盛り込まれているターボ。
名前の由来はもちろんポルシェの「ターボエンジン」で、1970年代前半から搭載されたターボはポルシェ911で世に名をしらしめたそうです。
 

そんなポルシェとモンブランのコラボモデル。
モンブランがポルシェのスポンサーだったということでしょうか?ワクワクするお話です。
 

 
全体的にモノトーンなカラーリングでまとめられたボディ。
美しいヘアライン加工を纏ったキャップのデザインは、どことなくLAMY製品のような印象も受けます。
 

マットでシルキーな仕上がりのキャップ、シンプルなクリップ、ディンプルが効いたグリップ、車のクロームパーツを思わせるペン先。
 

寸胴なシルエットでありながらも、異素材・異加工の組み合わせで退屈な感じがしません。
 

 
一列に10個、整然と並んだグリップ部のディンプルが美しい。
一見ラバーっぽく見えますが素材はプラスチック製で、ベースとしてマットな加工が施されていることもありグリップ感も良好。
 

ラバーじゃないので経年劣化でベタつくこともありません。
ペン先へと繋がるシルエットも秀逸。
 

 
キャップはシルキーで、非常に触り心地の良いヘアライン加工が施されたマットステンレス。
そして、この年代のポルシェ純正シフトノブを思わせるような シンプルな丸クリップ。
 

携帯モードから筆記体勢へシフトチェンジする、という意味でもピッタリなデザインではないでしょうか。
 

 
クリップの下には「MONTBLANC GERMANY」の刻印。
ヘアライン加工に読めるか読めないか、くらいのさり気ない刻印がまた渋い。
 

 
反対側には「turbo」のロゴ。
ポルシェの社名ロゴ(PORSCHE)は大文字ですが、turboは小文字。
その小文字を社名ロゴのフォントに近づけたような、ポルシェらしいスポーティなデザインのフォントです。
 

 
天冠はモンブランの独壇場。
漆黒のドームに輝くホワイトスターが美しい。
 

後にも比較しますが、このホワイトスターのサイズはフラッグシップモデルのマイスターシュテュック#164と同等サイズ。
 

このデザイン、そして回転繰り出し機構を搭載しているうえ、ホワイトスターも大きめということろが、ただのコラボモデルの域を超えていると感じさせるのです。
 

 

turboの書き心地と、1970~90代モンブランの関係

モンブラン ターボの堪らないポイントはデザインだけではありません。
 

 
直してでも使いたいと思わせる、サイズ・重量・軸径。
これこそが、ターボが使いやすいボールペンであることの全てだと考えています。
 

まず、スペックですが、
 

全長:135mm
重量:22g
軸径:10mm
 

という、マイスターシュテュック#164にも通じるようなスペックであることに注目したいです。
 

筆記バランスにとって重要な「重量」をパーツ別に見ると、キャップ部が12g、胴軸部分が10gという内訳。
キャップが長いため、重心はクリップの下辺り(ペンの真ん中)となり、程良い重みは指先の無駄な力を抜いてリラックスして筆記に臨めるように調整されています。
 

 
また 前項でも書いたとおり、グリップ部のディンプルが握りやすさに一役買っており、さしずめペンのステアリングと言ったところ。
指先の細かな動きに対しても、思い通りのレスポンスを返してくれます。
 

この適度な重みとグリップのし易さ、そして、忘れてはいけない軸径。
10mmの軸径は1970年代モンブランのボールペンとしては太めの設定ですが、それがまたいい。
 

 
軸径10mmというと、一般的には太軸なデザインとなりがちですが、ターボは寸胴が幸いしてか非常にスタイリッシュにまとまっています。
 

モンブランにおける1970年代のどのボールペンよりも、コンセプトが明確でデザインにブレがない。
さらに上位モデルと同じ回転繰り出し式ということで、ペン先繰り出しの所作もエレガントです。
 

最後は、同じ70~80年代のボールペン2本と、フラッグシップモデルの#164と並べて、サイズや重量を比較していきたいと思います。
 

 
▲左から、No.49、692、turbo、P164、クラシックステンレスソリテールドゥエ(STEEL)、クラシックスターリングシルバーソリテールドゥエ(SV925)。(共にボールペン)
 

それぞれのスペックは、
 

No.49:全長133mm、重量14g
692 :全長133mm、重量17g
turbo:全長135mm、重量22g
P164 :全長137mm、重量23g
STEEL:全長136mm、重量30g
SV925:全長136mm、重量32g
 

軸径はいずれも10mm、となっています。
 

ターボはマイスターシュテュック#164(P164)とほぼ同等のスペックとなり、回転繰り出し機構の構造こそ違うものの、筆記バランスも含めて非常に高いレベルにまとまっているのではないでしょうか。
 

デザインは、クラシックなデザインのボールペンに1本だけモダンなデザインが混ざっているような感覚です。
右の2本はノック式、ターボから右3本は回転繰り出し式。
 

重量は、当たり前ですが素材に金属が使われている部分が多くなるほど重く、No.49はほぼ樹脂のため14gと軽量。
 

ターボは軽すぎず重すぎず、22gという絶妙な重量と 軸の中心を重心バランスとした快適な筆記が楽しめます。
 

 
同じ並びでホワイトスターの比較です。
ノック式のボールペンの場合 ノックボタンの先という制限上、どうしても小さくなるホワイトスターですが、回転繰り出し式となると十分なサイズを確保できます。
 

ターボのホワイトスターは#164と同等、そして、私がたいへん気に入っているドネーションペンとも同サイズとなります。
 

半円を少し潰したような艶やかなドーム型の天冠に輝くホワイトスター。
モータースポーツの色気を感じますね。
 

 

 
さて、今回はモンブランの1970年後期~80年代初頭にかけて発売されていたボールペン「turbo(ターボ)」をレポートしました。
 

ポルシェとのコラボということで、洗練されたデザイン、各部に散りばめられたスポーティーなデザインは男心をくすぐる名品。
もちろん、女性が使っていても非常に格好良いボールペンです。
 

私が特に感動したのが重量バランス。
長めのキャップが金属で ペン先の金属部分も#164のように大型のため、重量が分散されコントロールがし易いと感じます。
 

(内部機構の樹脂以外は)少し褒めすぎでしょうか。
 

マイスターシュテュックの筆記感が好みの方、モノトーンでモダンなデザインが好きな方はピッタリとハマるのではないかと思います。
 

そしてもちろん、ポルシェやモータースポーツが好きな方も。
 

それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

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