モンブランのMSTソリテールは道具でありアクセサリーであり芸術品である【モンブラン マイスターシュテュック ソリテール シルバーバーリー に関するレポート】
皆さんこんばんは。
ついに私のモンブラン マイスターシュテュック(油性ボールペン)の終着地点、シルバーバーリーのソリテールモデルを手にしてしまいました。
今回はその記事となります。
モンブランの沼広しと言えど、シルバー925(スターリングシルバー)をメイン素材として惜しみなく使ったマイスターシュテュックというのはそう多くはありません。
銀軸のマイスターシュテュック登場の変遷としては、1980年代後半~1990年代にかけて、初代となるシルバー925でピンストライプのマイスターシュテュック クラシックが発売されます。次いで、1990年代中頃にはクラシックサイズのソリテール スターリングシルバーのバーレイモデルが発売されました。
その後2000年に入って2009年にシルバーファイバーギョーシェ、2011年に今回の記事の主役であるシルバーバーリー、そして2016年にマルトレが発売となっています。
それにしても最新の総銀軸マイスターシュテュックであるマルトレも、発売からもう10年が経っているわけですね。
現在の金銀高騰や物価高騰という状態でもし総シルバー925モデルが出るとしたら、いったいいくらになるのでしょうか…。

モンブラン マイスターシュテュック ソリテール シルバーバーリー。
ラインナップはソリテールが#146サイズの万年筆と#161(ル・グラン)サイズのボールペン。そして、キャップのみシルバー925素材の#164(クラシック)サイズのソリテールドゥエが発売となっています。
それにしても美しい。
デザインの詳細は後ほど詳しく見ていきますが、素晴らしい精度で軸全面に彫刻されたバーレイのギロシェパターン、クリップにセットされたダイヤ、天ビスのマザーオブパール等見所の多い逸品となっています。

ところで、1990年代の「バーレイ」と今回(2011年)の「(シルバー)バーリー」、アルファベットの綴りを見ると「Barley」でどちらも同じになるのですが、全くの別モデルとなります。
初代バーレイの方は、カランダッシュのシルバー925モデルであるグレンドージュや、パーカーのパーカー75 プラスヴァンドームのバリエーションの一つであるグレンドルジュとおなじ「大麦の粒」で、細かなギロシェ模様が連なったデザインなのに対して、2011年のシルバーバーリーはバーレイ模様の中でもさながらヘリンボーンと呼ぶに相応しいデザインとなっています。

ソリテールの各サイズ比較。
左から、シルバーファイバーギョーシェ(#164クラシックサイズ)、トリビュート・トゥ・ザ・モンブラン(ミッドサイズ)、シルバーバーリー(#161ル・グランサイズ)
マルトレ(ミッドサイズ)が手元にある場合は真ん中に置くのですが、訳あって手放しまして、ビジネス向きのホワイトなマイスターシュテュックソリテールが代役となります。
#164サイズのシルバーファイバーギョーシェの発売が2009年、#161サイズのシルバーバーリーの発売が2011年。
モンブランの標準ラインナップとしてミッドサイズのマイスターシュテュックが追加されたのが2016年ですので、総銀軸としてのミッドサイズモデルが発売されたのは2016年のマルトレが最初となります。
そのため、#164サイズのいずれかの銀軸モデルと、ミッドサイズのマルトレ、#161サイズのシルバーバーリーが揃うと3サイズでのマイスターシュテュック シルバー925モデルはコンプリートとなるのではないでしょうか。(モーツァルトサイズのシルバー925モデルを加えるとフルコンプですかね)
さて、ここからはデザインや刻印を詳しく見ていきたいと思います。
というのも、過去にこのシルバーバーリーの偽物モデルを見たことがあるため、偽物回避という意味合いでもなるべく詳細に刻印の情報を残していければと考えています。
シルバー925モデルの醍醐味である、ペンの至る所に散りばめられた刻印やホールマーク。
この小さく緻密な情報こそがペン自体の価値と所有満足感を高めているといっても過言ではありません。
そして、いの一番に注目したいのキャップのホールマーク。
このモデルのホールマークを調べるうちに、どうやらこの部分は製造年代によるバリエーションがあるという結論に至ります。

まずシルバーバーリーは、キャップのクリップに向かって右側面に刻印用の小さなスペースがあり、手元の個体には4つの刻印が打たれています。
一つ目はセントバーナードの刻印。
これはスイスのアッセイオフィス(貴金属検査所)で検査された場合に付くホールマークで、カランダッシュのシルバー925軸で見かけるものと同じ。カランダッシュの場合、セントバーナードの横顔の刻印に「G」(ジュネーブ)の刻印が見られますが、こちらは「★」マークとなっています。
調べてみると、「★」マークはスイスのキアッソの検査場だということが分かりました。
スイスは貴金属の流通に対して世界で最も厳しい法律を持っています。

▲マイスターシュテュック マルトレの天ビス刻印
モンブランと言えばドイツを代表する筆記具。通常のドイツ国内製造のシルバーバーリーは、上の写真のマルトレの刻印と同じ「楕円に剣のような925刻印」が打たれています。しかしながら、本体のキャップに打たれている刻印はスイスの検査場。
考察すると、このシルバーバーリーはクリップにダイヤが付いたジュエリーコレクション寄りのソリテールのため、
①キャップ部分等パーツの製造をスイス国内で行い、刻印された後ドイツ本国で組み上げ
または、
②ドイツ本国で組み上げられた後にスイスに送られ刻印された(スイス本国またはヨーロッパ市場で販売のため)
と読むのが自然かと考えます。
モンブランの筆記具は一貫してドイツのハンブルク工場で行われているため、上記2通りのパターンが考えられますが、①の場合、モンブランの時計の製造工場(これはスイスにあったはず)または、リシュモングループ傘下の宝飾工房等ネットワークでパーツの製造を行っているという可能性が高いです。

その横には「天秤に925」のCCMマーク(コモンコントロールマーク)が打たれています。
このマークは、1973年にヨーロッパを中心に結ばれた「貴金属製品の検査および打刻に関する条約(通称:ウィーン条約)」の加盟国だけで使われる共通管理マーク(Common Control Mark)。
これが打たれているということは、条約に加盟している濃い的な検査所が厳格に成分を検査し、間違いなく銀純度92.5%であると認めたということになります。

▲1980年代、マイスターシュテュック スターリングシルバー(ピンストライプ)のホールマーク
さらに調べていくと、スイスは貴金属統制法を2000年頃に大きく改正していて、以前は「アヒル」の絵柄がスイス独自の銀証明刻印だったことが分かりました。
かなり前にマイスターシュテュック ソリテールドゥエの記事を書いたとき、ホールマークが水鳥になっていた事を思い出して再度引っ張り出してきたところ、確かにアヒル(水鳥)のマークでこちらも☆(キアッソ検査所)であることが改めて発覚。
このペンの製造年代(1980年~1990年)からも、法改正前の製品であることが合致します。

話を戻してシルバーバーリーの刻印ですが、モンブランのシルバー925素材が使われたペンでよく見かける「楕円にStOD」の刻印。これはモンブラン独自のメーカー責任マークとなります。
貴金属を国際市場で流通させる際、政府の検査マークだけでなく「どこのメーカーがこの金属の品質に責任を持つか」を登録された固有の記号で示す必要があり、「StOD」の由来として、モンブランの前身である会社名「Simplo touch Official Document」からとられていると思われます。

キャップリングには「MONTBLANC – MEISTERSTÜCK」と共に「Pix®」の刻印。
こちらももうお馴染みの刻印となりますね。
1997年頃から始まったマイスターシュテュックシリーズへのPix®刻印。
もともとは1995年頃から大量に流通し始めた偽物対策にと、過去のモンブランの主製品のペンシルであるPixシリーズのロゴを取って品質の証としたことがスタートです。
まあ、その後このPix®のロゴも模造された偽物が出回ることになるのですが、どんなに見た目を似せても偽物は偽物。手に取れば品質の違いは明確です。

シルバーバーリーのキャップリングはプラチナプレートとなっています。
ギロシェ模様が刻まれた部分はシルバー925、クリップとキャップリングがプラチナプレートという豪華仕様。
したがって、本体の銀素材による硫化はクリップとキャップリング以外の部分となります。
シルバー925の筆記具を使う上で一番の愉しみになるのが素材の硫化と小傷による味でしょうか。シルバーバーリーもどう変化していくのか非常に愉しみです。

モンブラン マスターシュテュック ソリテールの一般的な特徴として、ペン先が胴軸一体型パーツということが挙げられます。(マルトレやラッカー系ソリテールの一部に例外あり)
シルバーバーリーの面白い点として、柄をペン先側だけ無くすことでペン先を区別するようなデザインになっているところ。
この余白部分があることでペン全体を見たときにとてもバランスが良いと感じます。

シルバーバーリーの天ビスに輝くホワイトスターの素材はマザーオブパール。
写真の上がシルバーバーリー、左下がスノークオーツ、右下が通常の白樹脂の象嵌となります。
マザーオブパールを持つマイスターシュテュックのボールペンは数えるほどとなりますので、そういった意味でも希少なモデルではないでしょうか。
自然光下では透明感のあるナチュラルな七色に、蛍光灯下では鮮やかな七色の光を反射します。

クリップリングの刻印。
2000年代初頭のモデルということもあり、クリップに向かって左側に「GERMANY」、クリップ背面側に「METAL」、クリップ右側に9桁のシリアルナンバーがあります。
2016年のミッドサイズ投入による大きな動きの中で刻印にも変化があり、ソリテールやソリテールドゥエからこの「METAL」の刻印はなくなります。代わりにシリアルアンバーがクリップ背面側に移動する形となりました。

クリップの裏には「Pix®」のエンボス刻印。
通常、キャップリングにPix®が刻印される場合はクリップ裏には「made in Germany」の刻印が打たれますが、シルバーバーリーはキャップリングとクリップ裏のダブル刻印となっています。

クリップの先には本物のダイヤが1石セットされているという特別仕様。
ボックスとセットで入手する場合、ダイヤモンドの品質証明書が付いているという拘りよう。
個人的にはデザイン的にこのダイヤはあってもなくても…という感じですが、資産価値という視点で見るとそれはそれで良いのかもしれませんね。

このシルバーバーリーの面白い視覚的ギミック。
斜めから見ると陽の当たり具合により、ヘリンボーン柄の視覚作用でストライプが浮かぶように見えること。
特に自然光が射す環境で、角度的には筆記中に見られることが多く、まるでカランダッシュのエクリドールのような柄が浮き出る感覚には感動を覚えます。

ル・グランサイズのソリテールの油性ボールペンという仕様も珍しいのではと思います。
マルトレのように金属が詰まっている感があり、58gというマイスターシュテュックシリーズでは圧倒的な重量を誇っています。
全長は携帯時で149mm。大きく重い軸にはモンブラン純正のM(中字)かB(太字)のリフィルが良く馴染みます。
もともと指に吸い付くようなシルバー925の触り心地に、胴軸のギロシェ模様も加わりグリップ感は良好。
モンブランのインクは油性インクの本来の良さが体験できる素晴らしいインク。
具体的には、書き出しに擦れず、ダマにもならず、筆圧にも繊細に反応し抑揚のある文字が書ける。
カランダッシュのゴリアットリフィルよりもインク粘度は若干硬めだが書き味は重くなく、特にソリテールシリーズはペンの自重だけでも十分に筆記できるほど。
昔からビジネスマンを支えてきた「書きやすさ」は2000年代のモンブランのボールペンにおいても健在だと言えるでしょう。

モンブランのボールペンのペン先繰り出し機構は2020年頃までは基本的に同じ機構が引き継がれており、軸の細いマイナスドライバーがあれば分解も可能となります。
(この個体おいてはホワイトスターの位置ズレも無いため分解はしていませんが…)
近年製造されている特別生産品については内部機構に変更があり、上記のような方法では分解できないようになっています。
これも違法な複製を抑止するための仕様変更なのかもしれません。

さて、今回は私の現段階でのマイスターシュテュックの終着点「モンブランのマイスターシュテュック ソリテール シルバーバーリー ボールペン」をレポートしました。
このモデルは偽物の存在も確認されているため 刻印系は少し詳しく、ホールマークの持つ意味も踏まえて解説しています。ぜひ参考にして頂ければと思います。
マルトレ同様になかなか市場には出てこないモデルですが、出逢った際は入手を強くお勧めします。
太いシルバー925の胴軸に精巧なギロシェ模様、トリムはプラチナ、クリップ先にダイヤ、そしてホワイトスターはマザーオブパールという全部盛りのスペック…。
とにかく全体的な存在感がもの凄いシルバーバーリー。
次に発売されるマイスターシュテュックのシルバー925モデルがあるとすれば、いったいどのような仕様になるのでしょう。
最後に、ビジネスシーンでマイスターシュテュックを使うことは、自らの背筋を正すだけでなく、サインをしていただくお相手へ最大の敬意を払うことでもあります。
これまで数多の重要な契約の場に立ち会ってきたマイスターシュテュックであるからこそ、筆記のひとときは、双方にとって至高の瞬間となるに違いありません。
モンブランの筆記具への敬意と尽きないロマンを抱きつつ、今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。












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