和とスターリングシルバーの融合が美しい!パイロット カスタム切子(碁盤) レビュー
突然ですが、皆さんはスターリングシルバー製のボールペンと聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
私は「パーカー75」なのですが、細軸のパーカー75に対して太軸のスターリングシルバー製ボールペンと言えば思い浮かぶのがコレ。
パイロットの「カスタム 切子」。
個人的にですが、パイロット製のボールペンの“あがり”モデルは、
①カスタムウルシ
②カスタム槐(エンジュ)
③カスタム切子
ではないかと考えています。
いずれも言わずと知れたパイロット油性ボールペンの上位モデルですが、漆軸・木軸・スターリングシルバー軸と、購入意欲を特に刺激する3種類の上位モデルを用意しているところ、パイロットという会社はなかなか侮れません。
今回はその中の一本である「カスタム 切子 碁盤」をレビューしていきます。
ウルシでもなく槐でもなく、なぜカスタム切子を選んだかというと、よくよく普段使うペンケースの中を見てみると結局入っているのはシルバーの軸かシルバー×ブラックのコンビ軸がほとんどで、仏壇カラーのボールペンは非常に少ないということ。(万年筆は仏壇カラーも良く持ち運びますけどね)
ボールペンは仕事で使うのがメインですので、必然とシルバー系かブラック×シルバーの出動が多くなるわけで…。
ということで、手元のボールペンは増えていますが私はコレクターではなく実用派ですので、実際に仕事で使えないと…。
という理由からカスタム切子を選んだわけです。
これまた個人的な意見になるのですが、今まで様々な国産ボールペンを使ってきて思うこととしてパイロット製のボールペンが書きやすく国産では一番ではないかということ。
(国産の万年筆ではセーラー製が私の手に一番合っているな、と。)
とにかく優秀なのがパイロットのボールペンで使われる「アクロインキ」。油性ですが固すぎず、ヌルヌルとペン先が走ります。
インクの柔らかさから、筆記時に余計な力の入らない太くて重量のあるボールペンとの相性が良く、今回レポートするカスタム切子ともマッチングは完璧かと。
というか、太軸のボールペンはインクが固くても柔らかくてもどちらでも合ってしまう万能なボールペンと言えます。
さて、前置きが長くなりましたがパイロットボールペンの上位モデル「カスタム 切子 碁盤 ボールペン」の詳細を見ていきたいと思います。
カスタム切子はカスタムヘリテイジ91のカスタム
カスタム切子のシルエットを見た時、真っ先にカスタム91と比較したくなりました。
と言うくらい、シルエットや各パーツが似ています。
ここでは、カスタム切子のデザインとカスタムヘリテイジ91との比較をしていきます。
と、その前にカスタム切子についてですが、
スペックは、
携帯時の全長:141mm
重さ:43g
胴軸径:12mm
で、ボールペンの中でもかなり大きめ且つ重みのあるモデルとなっています。
素材にスターリングシルバーを使っているにも関わらず、価格が30000円(税抜き)とハイクオリティでリーズナブルなのは日本製品ならでは。
海外メーカーで同じスターリングシルバー軸であればこの値段ではききません。
(海外メーカーはブランド料が高いのか、または様々な審査機関を通すからなのか…)
そして、カスタム切子はガラス細工の切子模様をモチーフに、スターリングシルバー軸に彫刻を施したモデル。日本の伝統的な模様のため、どこかノスタルジックな雰囲気も漂うボールペンです。
切子模様は「格子」「菊篭目(きくかごめ)」「碁盤」の3種類。
どれも魅力的ですが、菊篭目などは「鬼滅の刃」に登場する竈禰豆子(かまどねづこ)の着物「麻の葉文様」にもちょっと似ていて美しいです。
私はビジネス用途ということもあり「碁盤」をチョイス。
こちらは言うまでも無く囲碁の碁盤がモチーフ。
太軸のでっぷりとしたシルエットとこの大きめの「碁盤」柄は非常に良くマッチしています。
さて、カスタムヘリテイジ91との軸比較ですが、随所に見られるデザインの相似。
まず目に入るのがクリップの形状ではないでしょうか。
パイロット臭さを感じる玉クリップとは対象的な、剣先のようなシンプルなクリップ。
デザインは同じなのですが、横から見るとキャップの形状の違いから全く同じ部品では無いことが分かります。
キャップの長さや素材も違うため、カスタム切子のクリップはカスタムヘリテイジ91のクリップよりさらに目立たず控えめな印象。
うーむ、奥ゆかしい。
キャップリングのデザインも従来のカスタムシリーズのような膨らみは無く、フラットなデザイン。
正面にはシンプルに「CUSTOM」の刻印。
ヘリテイジ91のようにスミイレは無く刻印のみです。
キャップリングの刻印を拡大して、じっくり見てみます。
溝にはクスミが見られますね。(溝をクロスで掃除するの楽しそう…!)
背面にあたる場所には「PILOT JAPAN STERLING SILVER」の刻印。
日本製のスターリングシルバー軸には海外製軸のような複雑な刻印は無く、「STERLING SILVER」のみというのが多いです。
この若干黄みがかったぬくもりのある色としっとりとした手触りからクロームメッキ軸との違いを感じます。
やっぱり所有満足感が高い!
ヘリテイジ91との比較に戻りますが、実は同軸の形状にも違いがあります。
カスタム系ボールペンの胴軸はグリップポイントに若干の膨らみを持たせてある、極端に言えば「樽型」の胴軸が特徴ですが、カスタム切子はモンブランのようなストレート形状からペン先に向かって緩やかに細くなるシルエットが採用されています。
これは憶測ではありますが、歪みのないまっすぐな胴軸にすることで「切子柄」を正確により美しく見せるためではないかと考えます。
キャップからペン先までの段差の少ないシルエットが、美しい文様を際立たせる役割を担っているのではないでしょうか。
似ているようで似ていない箇所として、天冠のデザインがあります。
ヘリテイジ91はトップに段差のあるデザインでした。
一方、カスタム切子はクロームシルバーのパーツにラインがデザインされています。
あとはクリップリングがありません。
プリン型の天冠にシンプルなラインの彫り込みのみ。
これもまた切子柄を際立たせるひとつの要因なのかもしれませんね。
ところで、切子碁盤と格子はどこが違うのか
さてここで、カスタム切子の「切子柄」とパーカー75等に採用される「シズレ」のようなチェック柄との違いはどこなのかを見ていきましょう。
まずはパーカーソネットシズレのシズレパターンを拡大してみます。
細かいチェックの溝には黒いスミ入れが施されてる事が分かります。
私も愛用しているパーカー75はこのようなスミ入れは無く彫り込みのみ。
同じパーカーシズレでも年代により若干の違いがありそうです。
そしてよく見ると横向けのヘアライン加工が施されていることも確認できます。
パーカーのシズレに見られるグリップの良さは、細かなチェックパターンと下地のヘアライン加工が深く関係していそうです。
続いてカスタム切子「碁盤」の柄を拡大してみました。
つるりとした下地に大きく大胆な彫り込み。
その溝をよく見てみると、彫刻刀の三角刀で彫ったような美しい溝だということが分かります。
「碁盤」以外の「菊篭目」と「格子」の彫り込みについては未確認ですが、切り子ガラス好きにも納得のデザインではないでしょうか。
こちらのグリップ感はシズレほどではないものの、大きめの彫り込み+スターリングシルバーのしっとり感+太軸により良好。
軸の美しさと素材感が絶妙にマッチしていると言えます。
やっぱり書きやすい「アクロインキ」は太軸とも相性抜群!
書きやすさという点で言うと、軸の性能ももちろんですがインクの性能も忘れてはなりません。
毎回書いている気がしますが、飛ばし読みも恐れずに再度書きます。
パイロットと言えば「アクロインキ」。
最初から装填されているアクロインキ「BRFN-30」はMの字幅でヌラヌラとした筆記を楽しめます。
余談ですが、日本の三大筆記具メーカーであるパイロット・セーラー・プラチナのボールペンはそれぞれ独自のリフィル規格を採用しているため互換性はありません。
アクロインキを楽しむにはパイロット一択、ということになります。
スペックで紹介したとおり、カスタム切子は回転繰り出し式。
ここでもカスタムヘリテイジ91と比較してみます。
回転繰り出し機構自体はヘリテイジ91と同じものが使われていそうですが、感触はカスタム切子の方が若干重めに感じます。
並べてみるとキャップ側のパーツは同じ。
それ以上に目が行くのが、胴軸側の素材の分厚さ!
シルバーン(万年筆)のときもそうでしたが、リーズナブルな値段の割にコストカットしている節が無く、惜しみなくふんだんにスターリングシルバーが使われていること!
43gという決して軽くはない軸ですが、その重みは贅沢使われたスターリングシルバーの賜なのです。
さらにただ重いだけで終わらないのがパイロットのボールペン。アクロインキとの相性が本当に良い。
パイロットグランセのレビューの時に細軸との相性が良いと書きましたが、太軸とも相性が良いのがアクロインキの凄いところ。
まさに「パイロットにアクロインキあり」と言えます。
コレ本当に快適なのです。
そして、パイロットのカスタムシリーズボールペンを語るうえで省けないのが、回転繰り出し機構のなめらかさとねっとり感!
回転繰り出し式というのは親指ワンプッシュで済むノック式に比べ ペン先出しに手間がかかりますが、その所作の優雅さや機械感・精密感はノック式メカニズムよりも遙かに優れて(?)いて、意味も無く回してしまうこともしばしば。
文字は書かないけどキャップを回すんだぜ!という方も少なくないのでは。
私もその一人で、この「回転繰り出し式」にある意味ロマンを感じ、キャップを回すことに喜びを感じてしまうのです。
そう、簡単に言えば病気なのかもしれません(笑)
ただ、ボールペンをチェックする時にそれが「ノック式」か「回転繰り出し式」かという切り分けはまず最初に行う方です。
皆さんは如何でしょう?
おまけ比較&まとめ
最後におまけで同じ太軸のボールペン、セーラープロフィット21ボールペンと、同じスターリングシルバー軸のパーカー75シズレの大きさ比較画像を。
▲左からセーラープロフィット21、カスタム切子、パーカー75、いずれもボールペン。
胴軸~グリップポイントの太さはセーラープロフィット21と同クラス。
シルエットも近いため、プロフィット21ボールペンを持っている方は太さのイメージがしやすいかも知れません。
また、特に記事中にも出てきたパーカー75との大きさの違いですが、これだけ違います。
▲左からパーカー75、カスタム切子、シルバーン(万年筆)
素材は同じですが、パーカー75シズレは少しシルバーをくすませて使うのが粋に感じます。
一方、カスタム切子はシルバーの硫化を味として楽しむよりは、いつもピカピカに磨いて透明感のあるまま使いたいです。
写真のシルバーンは若干くすんできていますが、キャップリングやクリップ、天冠の変化しないクローム部分との表情の違いも面白い。カスタム切子も同様に口金とクリップ、天冠はクロームのため変化せずスターリングシルバーとの素材の違いが楽しめそうです。
異素材、異なる太さのボールペンで書き味は様々ですが、どれも書きやすい愛すべきボールペン達。
使えるボールペンは何本あっても良いものですね。
さて、今回はパイロットのカスタム切子「碁盤」を、カスタムヘリテイジ91と比較しながら見てきました。
比較していて非常に楽しかったです。
スターリングシルバーの贅沢な軸も、切子ガラスをモチーフにした美しい彫刻も、アクロインキの書きやすさも全てにおいて満足度が高い。
私にとってパイロットボールペンの“あがり”と言える一本でした。
とはいえ、同じ“あがり”軸として定義している「カスタム槐」と「カスタムウルシ」。
こちらもパイロット至高のボールペンとして、いつか切子と比較できれば良いなと思います。
今回も長くなりましたが、この辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
そして、Twitterでフォロー頂いている皆様、いつも記事についてのコメントや情報交換ありがとうございます。
ディスカッション
コメント一覧
主様の記事をみていつもウットリしています。
この記事を読んでカスタム切子の碁盤がどうしても欲しくなり、アマでポチって本日受け取りました。
めちゃいいですわ!これ!最高です!主様の記事読んでよかったです。
パイロットは大好きなメーカーです。
また楽しみにしています^^
あ さん
コメントありがとうございます。
そして当ブログサイトをご愛読下さりありがとうございます。
カスタム切子「碁盤」を入手されたとのことで、おめでとうございます!
微力ながら、素晴らしいペンを選ばれるお手助けができて光栄です。
碁盤はパイロットのペンの中でもデザインが飛び抜けて格好良いと思います。日本製筆記具にありがちな野暮ったさというのが無い。
記事中ではピカピカに磨いて使いたいと書いていますが、黒くなった時どんな表情になるのかも見てみたいと思い、現在は磨かず使って絶賛黒化中です。
この先も喜んで頂ける記事を楽しみながら書いていけたらと思います。
それでは良い筆記具ライフを!
たにけん様有難うございます!
ものすごく恐縮です。
もうこのブログにずっぽりハマってしまって
ファーバーカステルのスタシル+ペルナンブコ
カランのアンモナイトも買ってしまいました笑
あとパーカーのスタシルシズレも持ってます。75じゃない方。
その後でカスタム切子を買いましたが
前のものを買った後だから余計、パイロットのサービス精神というのかな
国産の良さをものすごく感じてしまって思わず書き込みしてしまいました。
たにけん様の記事を読むと文具への愛情をすごく感じて
関係ない自分もなぜかすごく嬉しくなります。
次はオプティマ狙ってます笑
初めまして。上質な文房具が欲しくてネットを徘徊中に発見し、紹介されている文房具がどれも素敵なので沼にハマりかけてしまっている者です(笑)
今年、このカスタム切子は廃番になってしまったのですね。パイロットに確認しました。
お陰でどこにも売ってない状態で、手に入れるのが大変になりそうです。
実店舗で発見したら即買いしようかなと思っています。
いつまでも普通に売られていると思ったら、いつの間にか廃番に・・・そして余計に欲しくなるという物欲循環・・・カランダッシュのスターリングシルバーがちょっと重さに対して細軸なので、カスタム切子でそれが改善できればなと思っています。
3Bさん
コメントありがとうございます。
(3B…結構濃い目ですね)
私の紹介する筆記具はスタンダードな物も多いですが、ちょっと他の人とは被らない物も多いかと。
そういった記事に魅力を感じていただけるということは好みが合うのかも知れません。
さて、カスタム切子の廃番は知りませんでした…。
良い筆記具だけに残念です。
やはりスターリングシルバーをふんだんに使った軸だけにコストがかかるのでしょう。
このご時世、数百円のボールペンでも十分な書き心地を手に入れることができます。
それはそれで良いことですが、メーカーは軸に良い素材を使う価値というものも失わないでほしいな、と思います。
エクリドールの軸が細く感じられるということであれば、きっとこのカスタム切子は気に入られることでしょう。
どっしりと太軸で、インクはベストな粘度のアクロインキ。
そして、ペン先とクリップは素材が違いますので、シルバーがくすんできた時にそのコントラストを楽しむことができます。
これも愛用するひとつの楽しみになるのではないでしょうか。
是非とも入手していただき、この軸を使う価値を共有できればと思います。
はじめまして。
記事を楽しく拝見させて頂きました。私もボールペンが大好きで、PILOTさんのものを5本程度所有しています。
ちなみにカスタム切子の菊篭目を所有しておりますが、最近はほとんど使っておりませんでした。そんな中、こちらの記事を読ませて頂き、やはり実用で使わないともったいないと思った次第です。使っていなかった理由としては、シルバー軸はどうしても酸化で色がくすんできてしまい、見た目も少し悪くなっていたので、使うに当たりモチベーションが下がってしまっていたからです。
差し支えなければ教えて頂きたいのですが、たにけん様はシルバー軸のお手入れをどのようにされていますでしょうか?
参考にさせて頂き、菊篭目の出番を増やしていきたいです。以上、よろしくお願いいたします。
shinさん
コメントありがとうございます。
PILOT製のボールペン5本とは、かなりハマっていらっしゃいますね!
軸の造りもさることながら、PILOTのボールペンはインクも秀逸です。
菊篭目をお持ちなんですね。
カスタム切子の中でも、最も「和」を感じるデザインだと認識しています。
これはぜひ日常使いしていただきたい名品です!
カスタム切子の経年変化は、カランダッシュ等他のスターリングシルバー軸に見られるような黒い変化と比べて、若干黄色みがかった変化をすると感じています。
これはカスタム切子もそうですが、手元にあるシルバーンも同じですのでPILOTの銀軸特有と言えるのかも知れません。
銀無垢ペンに黒ずみはつきものですが、きれいに磨く楽しみもあるとプラスに考えましょう。
私の銀軸メンテナンス方法はやっぱり「銀磨きクロスで表面を撫でる」でしょうか。
あまり力を入れると良くないので、本当にやさしく磨いています。
一切の小傷も付けたくない、という方には向かないメンテナンス方法かもしれませんが、使っていればいずれ小傷は付きますので、それより丁寧に磨くことで得られる愛着や相棒感、見る見る奇麗になっていく楽しさを大切にするようにしてます。
お勧めの銀磨きクロスは「KOYO」の「ポリマール」という製品。
クロスの色によって磨く素材が違いますので注意しましょう。
(銀磨きは水色のクロスです)
他にも、消しゴムを使う方法やアルコールティッシュを使う方法、また、小傷を消すためにサンエーパールを使うなど、他にも幾つか方法があるためshinさんに合った方法でお試しください。
(当ブログ内でも「メンテナンス」で記事検索していただくと幾つかヒットしますのでご参考に!)
shinさんの菊篭目がまた美しく輝きを取り戻し、毎日の相棒になることを願っております。
たにけんさん
コメント頂き、ありがとうございます!
また、クロスの紹介までして頂き、ありがとうございました。小傷は使用しているうちに付きますので、あまり気にしておりません。ご紹介頂いたクロスで磨き、実用的に使っていきたいと思います。やはり使わないともったいないですもんね。アドバイスありがとうございました。