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スティピュラの限定万年筆を使い倒す!【スティピュラ アメリゴ・ヴェスプッチの使い方とレビュー】

2021年6月9日

皆さんこんにちは。

 

どうも私は買ってはいけない万年筆を買ってしまったようです。

「買ってしまった」と言っても買ったのは少し前の事になりますので、しばらく使った上で感じることを書いてきたいと思うのですが…。

 

まずその前に何で買ったのか、というところですよね。

 

 

人が万年筆を選ぶ基準は様々ですが、ほとんどの方がデザインから入られるのではないでしょうか。

いくら書きやすい万年筆であっても、デザインが好みでなければ相棒として長く使い続けるというモチベーションは保てません。

 

あとは使う用途やシーンによってでしょうか。

例えばビジネスで使うのかプライベートで使うのかでは軸のデザイン選びも変わってきますし、TPOによって選ぶ万年筆自体のカラーも変わると考えます。

 

しかしそれらのケース以外で人は万年筆を買うケースがあります。

 

 

いわゆる「衝動買い」というもの。

 

 

あらかじめ欲しいと感じていた筆記具が目の前に突然現れて衝動買いするのはまだいいです。

問題なのは、大して下調べや知識が無い状態で出合い、そして直感で買ってしまうというケース。

 

この直感とうやつが実に厄介で自分の感覚だけが頼りですので、その感覚が間違っていたりすると単なる誤爆になってしまうという…。

 

今回記事にする万年筆は衝動買い中の衝動買い。

目の前に現れてからできる限りの時間で調べて買ったつもりですが…、これは自分の直感どうこうというより「興味が湧いたからポチってしまった」という方が正しそうです。

 

 

というわけで今回は、

 

「スティピュラ アメリゴ・ヴェスプッチ 万年筆」を見ていきたいと思います。

 

 

 

私自身この万年筆を全く知らなかったわけではありません。

しかし、市場に出る個体数の少なさとその優れたデザインコンセプト、そしてコンセプトに基づいた素材や操作方法。

 

これらがまとまって押し寄せている状態(瞬間)で、ポチる衝動を抑え込むことができた人間がいるなら私は見てみたい。

 

しかし画面で確認できるのはあくまで「デザインや状態」であって、書きやすさや使い勝手は持ってみないと分からないのです。

 

ということで、前置きはこれくらいにしてスティピュラの素晴らしい限定万年筆を見ていきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

【アメリゴ・ヴェスプッチのデザインとディティール】

まず見ていきたいのが、探検家アメリゴ・ヴェスプッチを名乗るこの万年筆のデザイン。

 

大航海時代というとコロンブスが有名ですが、イタリアはフィレンツェ出身のアメリゴ・ヴェスプッチもアメリカ州を探検した探検家兼地理学者です。

 

▲一番左がアメリゴ・ヴェスプッチ。

 

そんな15世紀大航海時代のテイストをふんだんに盛り込んでいるのが、スティピュラの「アメリゴ・ヴェスプッチ」。

 

こちらは世界500本という限定モデルで、ペン先を首軸に収納するタイプの万年筆である「ダヴィンチ」というモデルがベースとなっています。

 

ベースモデルがダヴィンチで名前がアメリゴ・ヴェスプッチとは何ともややこしいですが、本体のあちらこちらにその時代背景を散りばめた素晴らしいデザインをしています。

 

 

胴軸と首軸の木材には、船舶や家具などにも使われる堅牢製と耐水性に優れた「チーク材」が使われ、重厚な雰囲気を醸し出しています。

 

 

持っただけでも硬いと分かるチーク材の手触り。トリムの部分はブロンズが使われ「AMERIGO VESPUCCI」の刻印と共に鈍い輝きを放っています。

全体的にブラウンにまとめられたカラーが何とも渋いです。

 

 

尻軸には大海原へ出るにあたり当時の必需品とも言える羅針盤のデザインがあしらわれています。

前オーナーがかなり使っておられたのかコーティングの剥げが見られますが、それもまた年期を重ねた渋さに変わっているように感じます。

 

 

尻軸周りには「Made in Italy」「Stipula」「○○○/500」のシリアルナンバー刻印。

木軸部分に刻まれている様は杢目と相まって良い味を出しています。

 

 

クリップには船乗りの知恵であるロープワークが。

ロープ部分の素材はスターリングシルバーという拘りよう。

調べてみると、この結び方は「REEF KNOT」と呼ばれるもののようです。

 

一見、船乗りの望遠鏡のようにも見える軸のデザイン。

細かく見ていくと、堅牢なチーク材、ブロンズのトリム、尻軸の羅針盤、クリップのロープワークと船乗りを連想させる素材に溢れています。

 

 

スペックは、

全長(携帯時):137mm

全長(筆記時):160mm(ペン先のみで23mm)

重量:71g

 

重量について、スペック上は68gでしたが実際計ったところ71gでした。コンバーターとインク(?)の分の重量でしょうか。

 

筆記感のところで詳しくレポートしますが、この70g超えというのがとてつもなく重い…!

存在感に見合った重量ですが、書くとなると意外と大変な万年筆です。

 

 

 

 

【特徴的なペン先の繰り出し機構と筆記感】

さて、前項では主にデザインや素材について触れてきましたが、ここからはペン先の繰り出し機構についてです。

 

 

先ほどまで見てきたアメリゴ・ヴェスプッチの姿はペン先が収納された姿。

しかし、これはキャップを着けた姿ではないということです。

 

「リトラクタブル式」と呼ばれるペン先繰り出し機構は、首軸にある半円形の窓を開きながらペン先が繰り出されてくるという複雑な構造をしています。

 

 

早速、ペン先がゆっくりと繰り出されていく様を見てみましょう。

 

 

半円の窓は左から右にゆっくりと回転し、それに連動してペン先がせり出してきます。

この窓の開く方向は胴軸の回転方向とは逆方向となっており、首軸にギアが組み込まれていて胴軸の動きに連動している事がよく分かります。

 

通常キャップレス系の万年筆はノック式が大半で、ノックすると同時に首軸の窓が畳まれる機構ですが、回転しながらペン先を繰り出す動作を要するのは、他にはモンブランのボエムくらいでしょうか。(ボエムはキャップ式ですが…、そして他にもあったらごめんなさい)

 

ペン先が完全に繰り出されるまでの胴軸の回転数は、3回転+45°とかなり回さないといけませんが、ゆっくりとペン先が繰り出されていく様は何とも面白いです。

 

 

別の角度から見てみます。

 

 

こういったカラクリもこの万年筆のコンセプトとも合っているのかも知れませんね。

 

ちなみに同じ機構を持つシリーズはダヴィンチと呼ばれていますが、アメリゴ・ヴェスプッチのように偉人の名前がついた限定の「レオナルド・ダ・ヴィンチ」というモデルもあります。

そちらは軸にオリーブ材が使われていて、各部のデザインも異なっています。

 

 

首軸を握るとこのような感じです。

これはこれで、まるでロウソクのようなシルエット。

かなり太軸で重さもあるため取り扱いが難しいタイプの万年筆です。

 

まあ限定モデルというと、どのメーカーのものも凝った装飾がメインでコレクション性が強く、実用向きでないものがほとんど。

 

正直アメリゴ・ヴェスプッチも例に漏れずそのようなコレクション系万年筆の仲間かもしれませんが、前オーナーは愛情を持って使い倒されていたようです。

やはり筆記具は使ってナンボですからね。

 

 

ここからは繰り出されたペン先を中心に見ていきましょう。

 

 

ニブはチタン製でコーティング無し。見た目もマットでニブとしては珍しい質感をしています。

刻印は「Stipula」「TITANIO」。そしてスティピュラの藁のロゴ。

字幅の表記はありません。

 

 

横から見るとかなり平たいペン先です。

それもそのはず、あの小さな半円形の窓から繰り出されてくるわけですので、太くどっしりとしたペン先を乗せるのは無理があるというもの。

 

ペン先の位置も横から見ると首軸の真ん中ではなく、窓がある上寄りに位置していることが分かります。

 

 

しかし、この平たいペン芯とチタン製の弾力のあるニブが良いコンビとなっていて、紙へのタッチは悪くありません。

 

 

ペンポイントの拡大。

先はかなり細く、筆圧をかけると切割はかなり開きます。

 

 

書いてみると不思議な筆記感。

胴軸が重く、首軸寄りに持ちすぎるとリアヘビーとなるため少しクリップ寄りを持つことになります。

 

そうすると筆記の感覚は紙から離れ、弾力のあるチタンニブのしなりと相まってまるで毛筆のような書き心地。

私個人の感覚ではパーカーのデュオフォールドのような、文字までのリーチが長い感じ。

いや、もちろんですがデュオフォールドの方が書きやすいですよ…。

 

アメリゴ・ヴェスプッチは書きやすい万年筆と言うより、筆記感が独特で唯一無二の面白い万年筆。

前オーナーはこの面白さの虜になったのでないかと推測します。

 

 

だたひとつ、このアメリゴ・ヴェスプッチを使っていて不便に感じるところ。

それはペン先が乾きやすいということ。

 

首軸の構造上気密性に優れているとは言い難く、仕方が無いところではありますが数日使っていないと呼び水が必要となります。

これも個人の感覚になりますが、以前レポートしたプラチナのブライヤーのようなペン先の乾き具合い。

 

幸い、日本列島は水に囲まれていますので呼び水が必要となったらすぐにでも用意できるのですが…。

(呼び水は水道水…いや、最悪は雨でも良いか)

 

 

一癖も二癖もある万年筆。

まるで荒れた大海原のような万年筆、と言えましょう。

 

 

 

 

【ダヴィンチタイプ万年筆のインクの換え方】

アメリゴ・ヴェスプッチはダヴィンチタイプの万年筆。(表記ややこしい)

「リトラクタブル式」のインク吸入方法をマニュアル代わりに載せておきたいと思います。

 

私自身、手にした当初はどうやって本体を分解しインク交換を行うのか検討がつきませんでしたが、色々弄っているうちに発見。ネット上に写真付きのマニュアルや情報が少ないのもこのテの万年筆の如何ともし難いところ。

 

 

それではインクの交換方法です。

 

 

まずは、首軸と胴軸を外します。

ちょうどクリップリングの下のところから2分割できるので、胴軸を真っ直ぐに引っ張って抜きます。

これが結構硬いのですが思い切って引き抜いてみましょう。

 

 

引き抜いた首軸側は、筒状の金属パーツにペン先が一体となったユニットが嵌め込まれた状態となっています。クリップの延長線上にある丸いポッチの部分がストッパーとなっています

 

 

丸いポッチを押しながらゆっくりとペン先ユニットを引き抜いていきます。

※この作業はペン先が収納された状態で行いましょう!

 

 

3つのパーツに分けることができました。

インクを洗浄する場合は真ん中のペン先ユニットの状態で洗ってください。

 

 

あとはペン先ユニットの状態でインク吸入を行うか、コンバーターを抜いてカートリッジと付け替えます。

 

戻す際は、これまでと逆の操作を行っていきます。

首軸にペン先ユニットをセット。このとき首軸側の金属筒に丸いポッチを合わせます。

 

 

胴軸を収める時は首軸側と胴軸側の凹凸を合わせるようにして嵌め込みます。

 

 

 

首軸側・胴軸側それぞれこの凹凸は一箇所のみですので、間違って凹凸を合わせることなく無理矢理ねじ込まないように注意してください。

 

 

元通りになりました。

インクの交換方法は以上です。

 

 

 

 

 

【おまけ:他の筆記具とサイズ比較】

最後に、アメリゴ・ヴェスプッチと他の万年筆のサイズやペン先の比較を行っていきましょう。

 

アメリゴ・ヴェスプッチ自体かなり大型の万年筆となりますので、比較もそれなりに大きい万年筆と。

 

▲左から、セーラープロギアKOP、モンブランマイスターシュテュック#146、同じくモンブラン#149、スティピュラアメリゴ・ヴェスプッチ。

 

セーラーやモンブランの太軸は太いといっても重量が30g程度ですのでまだ可愛いですが、アメリゴ・ヴェスプッチはその倍以上の約70g超え。

チタン、ブロンズ、チーク、SV925、真鍮という異素材の集合体です。

 

胴軸の太さ自体はそれほど変わりませんので、約40gの鉛をまとったモンブラン#149サイズの万年筆だと思ってください。

 

 

ペン先を比較します。

 

▲左から、セーラープロフィット21、モンブランマイスターシュテュック#146、スティピュラアメリゴ・ヴェスプッチ、モンブランマイスターシュテュック#149、そしてセーラープロギアKOP。

 

アメリゴ・ヴェスプッチのニブサイズ自体は、プロフィット21やモンブラン#146と同等。

右の2本は万年筆の中でも最大級のニブを有しています。

 

ニブの素材は、セーラーが21金、モンブランが14金または18金、スティピュラがチタン。

このチタンニブはかなり見た目も書き味も独特です。

 

スティピュラのダヴィンチタイプを検討されている方は、ぜひこのサイズ感をご参考になさってください。

 

 

さて、今回はスティピュラのアメリゴ・ヴェスプッチを見てきました。

 

今まで使ってきた万年筆の中で断トツに使いにくくて面白い万年筆。

 

しかし、コレクションになりがちな限定万年筆に惜しみない異素材の組み合わせと、とにかく楽しい書き心地のチタンニブ等を盛り込んで、単なるコレクションではなく装飾的でありながらも「万年筆を使う」という行為を改めて考えさせてくれた万年筆。

 

多少、スティピュラの攻めすぎな部分も出てしまっていますが、私も前オーナーのようにこの万年筆を使って使って使いまくりたいと思います。

 

皆さんも目の前に現れた限定の万年筆をいつポチってしまうか分からない状態ですが、スティピュラの「リトラクタブル式万年筆」、お勧めです。

 

それでは今回はこの辺で。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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