四季織カートリッジで死角無し!セーラーの小型万年筆プロギアスリムミニが最高に楽しい【プロフェッショナルギアスリムミニ レビュー】
皆さんこんにちは。
一度小さな万年筆の魅力に取り憑かれると、次の一本が欲しくなりいつの間にかどんどんと数が増えていく…。そんな経験はないでしょうか。
もともと筆記具というのは手先で扱うものですので、かさばらずコレクションしやすいという側面も持っています。
万年筆となればもはや小さな工芸品と言っていいほど緻密な設計と細かな部品で成り立っているので「集めたくなる」という心理に駆られるのも仕方ありません。
小さな万年筆の入門モデルというのがあるならば、それは間違いなくカヴェコスポーツでしょう。
私はカヴェコスポーツ用の小さな3本差しペンケースに入る万年筆を探すうち、モンテグラッパのミクラに始まり、モンブランのボエム、そして今回記事にする日本製小型万年筆へと手を伸ばしてしまっています。
その「日本製小型万年筆」とは、
「セーラー プロフェッショナルギア スリムミニ」です。
※以下「プロギアスリムミニ」
個人的に日本製の万年筆とくれば、一番書きやすい(手に馴染む)のがセーラー万年筆。
手に馴染むと言えば軸の太さもそうですが、セーラーのペン先の“しなり”がたまらなく好きで、このプロギアスリムミニを加えたことでKOPモデルまでの一通りのサイズが揃ったことになります。
セーラー万年筆の書き味が好きな方なら、「手のひらにセーラーの書き味」と聞くだけで食指が動くのではないかと思います。
それでは前置きもほどほどに詳しく見ていくとしましょう。
【プロギアスリムミニのデザイン】
まず最初に、プロギアスリムミニのデザインをプロギア系最上位モデルであるプロギアKOPと比較しながら見ていきます。
スリムミニはプロギアの最小モデル。
携帯時の全長はわずか106mmで重量は17g。てのひらに収まる可愛い万年筆です。
左がプロギアKOP、右がプロギアスリムミニ。
プロギアの最大と最小。
小さいですがデザインは“プロフェッショナルギア”そのもので、小さくても使いやすさが損なわれておらず単なるダウンサイジングに止まっていないのがセーラーの凄いところ。
例えばモンブランやペリカンであれば、モーツァルト(#114)やM300に見るように「デザインをそのままに小さくした」感が否めないのですが、プロギアスリムミニは「使いやすさはそのままに持ち運びやすくした」と言ったところでしょう。
キャップを外すとさらに全長は短くなり93mm。
プロギアKOPの首軸までにも満たない長さとなります。
プロギアKOPがかのモンブラン#149よりも太軸なことを考えると、プロギアスリムミニの軸径はこのサイズでかなり頑張っていると言えます。
ようは、「小さいけど細すぎない」絶妙な太さ。
そのまま握ると本当に手のひらに隠れるほどの小さな万年筆。
確かにこのままでは太さは良いですが 長さが短すぎて書きやすいとは言えません。
プロギアスリムミニの使い方としてはキャップをポストして使うこと。
キャップをポストした時の全長は135mm。この機動性ですよ。
通常の万年筆のように尻軸にキャップを嵌め込むのではなく、キャップをポストして使うことを前提としたデザインが施されているのです。
それがこの尻軸。
尻軸のネジ切りはポストした時に長さを確保できるよう浅めの位置に施されています。
ちなみにキャップですが、手持ちのプロフィットスタンダードのキャップと互換性があり、付け替えることができました。
ということでおそらくですが、プロギアスリムミニはプロギアスリムともキャップの互換性があるということになるかと。(プロギアスリムを持っていないので断言できませんが…)
続いてキャップのデザインを比較します。
左がスリムミニで右がKOP。
キャップリングのデザインは違いますが、クリップとクリップリングのデザインが同じというところがミソ。
クリップリングの飾りラインのデザインなどを見ても、小さいですが簡易化されていないことが覗えます。
キャップリングはスリムミニがスタンダードなダブルリングに対してKOPはローレット入りの大きなシングルリング。
天冠の錨(イカリ)ロゴを比べるとクリップに対してイカリの位置が180°違う事が分かります。
これは仕様なのか個体差なのか…。
私がセーラー万年筆のメインをプロフィットではなくプロギアに置いている理由として、この天冠の「錨ロゴ」があります。
ナガサワロールペンケース等の上面が空いたペンケースから取り出す際、やはり天冠にロゴがあると無いとでは視認性が違いますし管理もしやすいのです。(そして使う前のモチベーションも上がる…!)
【スリムミニの性能と小さいことのメリットとデメリット】
「小さいことはいいことだ」とよく言われますが、人によって手のひらにしっくりくる万年筆の大きさはまちまち。
ここでは小さい万年筆のメリットとデメリットについて考えていこうと思います。
プロフェッショナルギアというモデルがあって、その中でKOPやスリムなど様々なサイズがありますが、スリムミニのメリットとは何なのか。
万年筆は小さくなるにつれて持ち運び易さは増すものの、書きやすさという点で大きな万年筆に劣ってしまう傾向にあります。
モンブランが良い例で、マイスターシュテュックというモデルには最大の#149から中型の#146、細めの#145、そして最小の#114というサイズが異なるモデルがあります。
それぞれデザインは同じものの、書きやすさという点でやはり最小の#114は最大の#149には勝てないんですよね。
(もっとも#114は手帳用に最適化されていますので方向性が違いますが…)
プロギアスリムミニはその点、小さいですが太さがあるため一般的なサイズの万年筆と同様の書きやすさを実現していると言えます。
プロギアとプロフィットを並べてみました。
左から、プロギアミニ、プロフィットスタンダード、プロフィット21、プロギアKOP。
ご覧頂くとおり、左の2本は軸径が同じ。
小さくするからといって軸まで細くしていないところにセーラーの拘りを感じます。
また、優秀なセーラーのペン先を搭載しているという点も大きなアドバンテージです。
プロギアスリムミニはコンパクトでありながらも14金ペン先搭載。
手元のものは旧モデルのニブです。
シンプルな飾りラインに大きめの錨マーク。
その下には「14K 585」「Sailor」と刻印が続きます。
そしてニブの側面にはセーラーではお馴染みの字幅刻印。
こちらは「H-F」ですのでハードファイン(硬めの細字)となります。
プロフィットスタンダードのペン先と並べてみました。
ニブのサイズは同じ。右のスタンダードの方は新ニブですので豪華な飾り模様が刻印されています。
首軸の太さを見ても分かるとおり、プロフィットスタンダード(またはプロギアスリム)とプロギアスリムミニの首軸は同じなのです。
つまり、万年筆の性能はそのままに、軸を工夫して持ち運びしやすくしたのがスリムミニとなります。
ついでにこの項の冒頭で出した4本のペン先比較です。
左2本は同じ通常サイズ、プロフィット21は大型のペン先、そしてKOPは超大型のペン先となります。
書きやすさはそのままに持ち運びしやすいプロギアスリムミニ。カヴェコのコンパクトな3本差しにちょうど収まるサイズです。
いつかこの3本のために特別なペンケースをオーダーするのが夢…。
色は濃いめのレザーで経年変化を楽しめるシンプルなものを…。夢は膨らみます。
それでは万年筆が小さいが故のデメリットとはどこなのでしょう?
それはスペックにもある通り、コンバーターが使用できないこと。
万年筆の醍醐味である、インク瓶からインクを吸い上げるという行為はデフォルトではできません。
このように首軸に嵌まりはしますが、胴軸の長さから軸内に収まらなくなっています。
有志の中にはこのコンバーターを改造して軸内に収めておられる方もいらっしゃいますが、なかなか難しい作業。
美しい中間色のインクを瓶から直接吸うことは難しそうです。
(ピナイダーのスノーケルを使えば出来ないこともないんでしょうけど…)
しかし!
その悩みもアッサリ解決できる商品が発売されました。
セーラーのお洒落インクと言えば四季織、それのカートリッジバージョン!
これはプロギアスリムミニ使いにとっては朗報です。
カートリッジのメリットは装填の簡単さと、インク瓶に入れないのでペン先が汚れないこと。
四季織のカートリッジが出たことで、プロギアミニのデメリットは見事メリットに変わりました。
今回は手元に四季織(SIKIORI)の「常磐松」と「海松藍」を用意しましたので、次の項で詳細を見ていきたいと思います。
【プロギアスリムミニに挿すカートリッジはやっぱり四季織】
セーラーの万年筆用カートリッジ「SIKIORI」は、ブック型の紙パッケージの中にカートリッジ3本がちょうど入るプラケースが収まっているなんとも可愛い仕様。
パッケージに使われる字体や色使いも、インク瓶の四季織とリンクしていてとても上品で洗練されています。
紙箱の底には製造年月日が見やすく記載されているのも良いですね。
紙箱を開けると右のような白いプラケースが出てきます。
これがまた安っぽさの無いちゃんとしたプラケースで嬉しくなります。
プラケースを開いたところ。
カートリッジ3本とクッションのスポンジ。
カートリッジにはカラーナンバー(海松藍は04、常磐松は02)と「SAILOR JAPAN」「Miruai(色名)」のレーザー刻印という懲りよう。
確かにこのような刻印があると使用中でも分かりやすいです。
さらにインクの容量は一般的な欧州規格のカートリッジに比べ1.3倍ほどの容量があるためコスパ高いです。
パイロットのインクもそうですが、差し込み幅がメーカー独自規格である代わりにカートリッジインクの容量が多くて好感が持てます。
プロギアスリムミニ四季織「海松藍」を装填してみました。
カートリッジのサイズもちょうどスリムミニの胴軸にピッタリサイズです。
プロギアKOPにもう一つの四季織カートリッジ「常磐松」を装填して書き比べてみました。
4色比較のうちの残り2本は、同じく「松」の漢字が付くパイロットのインク色彩雫「松露」と、エルバンの「エンパイアグリーン」です。
海松藍は黒に近いグレー混じりのグリーンで、さしずめブルーブラックならぬグリーンブラックといった色合い。プロギアミニの書き味は言うまでもありません。
常磐松は黒みがかった抹茶色のような、私が好むいわゆる「枯れた色合い」。
中字で書いているというのもありますが、インクの濃淡も出やすい色かと思います。
パイロットの松露は青緑色。書き始めはもう少し緑っぽい明るい色をしていますが、時間とともに青みが増し落ち着いた色へと変化します。
エルバンのエンパイアグリーンは、私の中でカヴェコ使用の定番となっています。
枯れた抹茶色は心が落ち着きます。カヴェコのスチールMニブとも相性が良いです。
【おまけ:他の万年筆とのサイズ比較】
最後におまけ記事として他の万年筆とのサイズ比較を載せておきます。
今までに当ブログで登場した小型万年筆の比較から。
左から、カヴェコ スカイラインスポーツ、カヴェコ スポーツルックス、セーラー プロギアスリムミニ、モンテグラッパ ミクラ、モンブラン ボエム。
プロギアスリムミニは携帯時はカヴェコと同サイズ。右の3本は尻軸にキャップ用のネジ切りを備えています。キャップの長さもされぞれなのが面白い。
キャップを外したミクラ、プロギアスリムミニ、スカイラインスポーツです。
同じ小型万年筆の中でも断トツで軸が短いのがプロギアスリムミニ。
軸の太さも樽型で太めなので手の中での収まりも良いです。
小さい万年筆だけだとサイズ感が分かりにくいので、通常・中型・大型サイズの万年筆と比較。
右の3本は、プロフィットスタンダード、プロフィット21、プロギアKOPです。
小型万年筆はいずれも通常サイズの万年筆の4分の3程の長さしかありません。
しかし筆記時には尻軸にキャップを着けることで通常サイズと同じくらいの長さになります。
鞄やポケットのスペースを有効活用されたい方にはまさに打って付けの万年筆と言えましょう。
さて、今回はセーラーのプロフェッショナルギアスリムミニ(プロギアスリムミニ)を、デザイン比較を中心に小型万年筆のメリットデメリットという観点から見ていきました。
他の小型万年筆とコンセプトが異なり、「使いやすさはそのままに小さくした」という感じがにじみ出ている、まさに日本製万年筆ならではの機能性への拘りが感じられる一本でした。
また、使用するカートリッジも新たに「SIKIORI(四季織)」が登場したことで選択の幅が増え、様々な色を楽しむことができるようになっています。
手元のプロギアスリムミニは黒×シルバーのオーソドックスなものですが、過去現在含めてカラフルなものや中間色のお洒落な軸が多いのもプロギアスリムミニの魅力。
小型万年筆に興味がある、もしくはスタンダードなサイズの万年筆を手軽に持ち歩きたい方は一度試してみるのもいいかもしれません。
それでは最後までお読み頂きありがとうございました。
今回はこの辺で。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません