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ギミック満載の小型万年筆!モンブラン ボエムの使い方とその魅力

2021年6月13日

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皆さんこんにちは。

 

「好きな筆記具メーカーは?」と聞かれたら皆さんなら何とお答えになるでしょうか。

 

私は自分に合った筆記具探しや比較研究のきっかけとなった「モンブラン」に深い思い入れがあるのですが、そのモンブランの筆記具の中で人気はあるけどよく知らない、謎な筆記具というのがありました。

 

 

 

それが今回レポートする「モンブラン ボエム 万年筆 ブルー」です。

 

マイスターシュテュックの真贋比較の記事を書いている頃から、ボエムは人気がある、ボエムにも偽物があるそうだ等のネット情報から、気にはなっていたもののなかなか機会に恵まれず手にすることがありませんでした。

 

それから数年経ち、手に入れたのは最近のこと。

 

使ってみるとその人気の理由も頷ける、万年筆としての面白さと楽しいギミックが満載でした。

 

記事が長くなりそうですので前置きは短めに、それでは「モンブラン ボエム」を見ていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

【ボエムのデザイン・スペック】

ボエムはトリムの配置こそクラシックですが、ずんぐりとして短めのシルエットやクリップのストーンからモダンも感じるデザイン。

 

ラインナップは3タイプで、青いストーンにシルバートリムの「ブルー」、赤いストーンにゴールドトリムの「ルージュ」、スモーキークリスタルのストーンにローズゴールドトリムの「マロン」。

 

 

私はシルバートリムが好きなので「ブルー」に飛びついた訳です。

 

 

クリップの先にはボエムのシンボルとも言えるストーンが配置されています。

このストーンのカットが丸ではなく四角い(クリップのラインを妨げないデザイン)ところも、万年筆全体を引き締めて魅せる、かつラグジュアリーな雰囲気に一役買っていると言えます。

 

 

クリップ裏には「metal Pix®」。

もはやモンブランではお馴染みとなっている刻印です。

 

 

天冠の形は台形で、パイロットのカスタムヘリテイジのように尻軸の形と対を成すデザイン。

ホワイトスターの形状も平らですが、大きさはマイスターシュテュックと同サイズ。

 

 

ボエムのキャップを、同じくスモールサイズの万年筆マイスターシュテュック#114と並べてみました。

クリップの長さ・ストーンの付いたデザイン、胴軸の太さ、つるんとして刻印のない太めのキャップリングなど、純クラシックなマイスターシュテュックシリーズと比べ愛嬌のあるキャップです。

 

 

クリップリングの刻印はマイスターシュテュックでもお馴染み、「シリアルナンバー」と「GERMANY」。

シリアルナンバーの桁数はおそらく年代によって変わっていると思われ、手持ちのモンブラン筆記具を見てみても2000年代以降のモデルには9桁、90年代のモデルには8桁付くことが多いようです。

 

 

キャップを外して首軸のデザイン。

ボエムは首軸と胴軸の間に3連リングがあり、キャップリングではなくこちらにモデル名の刻印が施されています。

刻印は「MONTBLANCBOHEME・」。

BOHEME(ボエム)」とは「規制にとらわれず自由に生きる人」を表し、語源は「Bohemian」ではないかと思われます。

 

筆記時にのみ現れるこの3連リングはなかなかお洒落。

まさに自由な発想から生まれたデザインではないでしょうか。

 

 

尻軸の形は独特で、むき出しているのはキャップをポストするためのネジ切り。

これも単なる黒い樹脂ではなく、金属製で堅牢な造りをしています。各パーツを縁取りされたシルバーのトリムも高級感があって良いですね!

 

 

 

ペン先は14金。

モデルによってペン先の処理が変わり、ブルーはロジウムコート(全銀)、ルージュとマロンはバイカラーとなっています。

 

ニブは#145と同じデザイン・大きさとなっていますが、#145はバイカラーですのでロジウムコートされた全銀色のニブは新鮮。

プロフェッショナルギアKOPはじめ金ペンロジウムコートニブにハマりつつあります。

 

 

ペン芯は#144や#145と同じプラスチックペン芯。

ペン先も綺麗に磨がれてるのが分かりますね。

 

 

サイズ・重量のスペックは、

全長:携帯時106mm、筆記時135mm。

重さ:25g(うちキャップが5g)

カートリッジ専用万年筆

 

このサイズでこの重量=精密感!

ボエムを持ってみて感じるのが、小さいのに造りが精密で凝縮感があること。

 

詳しくは最後の項で他の万年筆と比較しますが、ひとことで言うと「小さいのに頼りになるヤツ」。

 

 

さて、ボエムのデザインを見てきましたが、キャップや尻軸、首軸にいたるまですべてのデザインが機能とリンクしているのです。

次の項ではボエムのギミックについて掘り下げていきたいと思います。

 

 

 

 

 

【ボエムに隠された数々のギミック】

モンブランのボエムが、モンブランユーザーをはじめ万年筆ユーザーを虜にしてやまない理由が「多彩なギミック」ではないでしょうか。

 

 

この全長106mmの小さな万年筆にどのような機能が隠されているか見ていきます。

 

まずボエムと言えば、その小さなボディに搭載されたペン先収納する機構。

これが1つ目のギミック。

尻軸を回すことでペン先が首軸から繰り出されてきます。

 

 

この動作がかなりクセになる滑らかさ!

ボエムの人気そのものと言っていいほど楽しいペン先繰り出し。にゅっと出てきて最後はクッと固定されます

 

このペン先繰り出しのための一連の動作はとても合理的で、携帯モードからキャップを外し筆記モードへ移る際、尻軸にキャップをポストする(ネジ込む)と同時にペン先が繰り出されるという仕組み。

 

 

首軸側とキャップ側の内側はこのようになっています。

 

首軸にはキャップレス万年筆のような蓋はなくペン先が格納されているのみ。

まあ、キャップがあるのですから当然と言えば当然なのですが、そのキャップに2つ目のギミックが見られます。

 

キャップの中、インナーキャップの奥から真ん中に伸びる一本の金属棒。

この棒はキャップをした状態で尻軸を回してもキャップの中でペン先が展開(=ペン先の破損)してしまわないように設けられたストッパ-。

 

 

これがどのように機能しているかというと、秘密はペン芯の“くぼみ”にあります。

ここがキャップのストッパー受けとなりペン先が誤ってキャップの中で繰り出されるのを止めるのです。

 

マイスターシュテュック#145のペン芯もこれと同じくぼみがありますが、ボエムと同じペン芯が使われているだけでくぼみはボエム以外では機能しないものとなっています。

 

 

3つ目のギミックは尻軸。

 

 

カートリッジ交換の際には尻軸を開けます。

他の万年筆のようにネジ式で胴軸と首軸を分離させるのではなく、尻軸を開けて行うカートリッジ交換。

 

ガスライターの蓋のように「キンッ…!」という小さな音を立てて開く尻軸。尻軸と胴軸のネジ切り部分は金属製です。

 

 

(尻軸)の内側には「DO NOT REMOVE」とホワイトスターの形をした穴。

文字通り「尻軸を取り外さないで」という意味でしょう。

 

次はそのカートリッジ交換の方法を書いていきます。

 

 

 

 

【ボエムのカートリッジ交換方法とペン先の洗浄方法】

先にも書いたとおり、ボエムのカートリッジ交換は尻軸を開くことからスタートします。

そしてボエムはその胴軸の構造上、コンバーターは使えずカートリッジ専用の万年筆。

 

 

カートリッジ交換手順はこのようになります。

 

ペン先の繰り出し及びカートリッジ交換といった内部機構にアクセスするために起点となるのが尻軸のネジ切り部分。

 

写真にもあるようにカートリッジ交換は、

 

①尻軸を開く

②ネジ切り部分を持つ

③胴軸を回す

④カートリッジを交換する

 

という4つのステップで行います。

 

このカートリッジを繰り出す動作もペン先と同様に、まるでリップクリームの先を出すかのようなスムーズな動きを見せてくれます。

 

胴軸内にはカートリッジ1本がピッタリ収納されるスペースしかないため、どうあがいてもコンバーターは使用不可となります。

 

 

ペン先収納とカートリッジの動作の関連性がこちら。

実にうまく出来ているではありませんか。

 

ペン先を出した状態でカートリッジ交換を行うことができないため、通常のモンブランコンバーターやペリカンのコンバーターを利用したペン先洗浄が不可能な状態。

(装着できたとして、コンバーターの操作部大半が胴軸内に隠れてしまうため)

 

試しにモンブランのコンバーターを挿そうとしましたがささらず。

おそらく、胴軸内部はカートリッジのサイズに最適化されており、コンバーターの接続部分の形状が太すぎてマッチしないものと思われます。

 

万年筆界において一番コンパクトなコンバーターである「カヴェコのミニコンバーター」も試してみましたが、こちらは小さすぎてすっぽり胴軸内に隠れてしまい操作できない始末。

 

ボエムが発売された当初は専用の洗浄スポイトのようなものがあったそうですが、今はありません。

 

ボエムのペン先洗浄についてモンブランコンタクトセンターに問い合わせたところ、

「ペン先の洗浄はペン先の表裏をかるく流水ですすいで行ってください」とのこと。

ペン芯内部のインクを洗い流す術は無いようです。

 

さらに、「本体の構造上、絶対に胴軸内には水が入らないように」と仰っていたので、間違っても開けた尻軸から水を流し込んではいけません!

 

また、なるべくインクが中で固着しないようにインクを通し続けてくださいとのことでした。

中古のボエムを購入しようとする際は、ペン先(首軸部分)にインクの固着が見られないか注意する必要がありそうです。

 

 

ボエムの筆記感について、14金ペン先ということもあってかなり滑らかでしなる感覚です。

 

携帯時がほぼ同サイズのマイスターシュテュック#114(モーツァルト)と比較しても。書き味はボエムの方が断然柔らかく感じます。

 

 

▲左がボエム、右がモーツァルト(114)

 

ペン先のサイズはボエムの方が大きく素材は同じ。

書き味の硬さ・柔らかさを左右しているのはむしろニブの形状で、#114は横幅がなく切り割りも短いためボエムに比べて書き味が固く感じるのだと思います。

(それでもモーツァルトも十分柔らかいのですが)

 

 

キャップを外したサイズ比較。同じく左がボエム、右が#114

ボエムの書きやすさの理由として胴軸の太さが挙げられます。尻軸に向けて太くなる胴軸は重量もあるため筆記が安定。

 

 

キャップがないと取り扱いが難しい#114に対して、キャップ無しでも運用可能なボエム。

まあ、キャップがあった方が書きやすいんですけどね。

 

 

小型の手帳とも相性がいいボエム。

プロッターの手帳と併せてコンパクトな万年筆を3本持ち歩くのが最近の主流。

 

機動力のある万年筆は自然と出番も増えていきます。

 

 

【2020年9月11日追記:以下から次項まで】

 

モンブランボエムのペン先洗浄について、首軸のパーツが取り外せることが分かりましたので洗浄方法について追記します。

もともとそういう仕様なのかどうかは分かりませんが、これで少し洗浄が楽になりそうです。

 

 

まず、首軸パーツの外し方ですが、3連リングの辺りから連結を外すことができます。

通常のネジ切りですので胴軸に対して反時計回りに回すと外れます。

 

 

このようにペン先のユニットがあらわになります。

この状態で尻軸を回すと、かなりペン先を露出させることができます。

 

 

この状態でコンバーターを着けたら楽にペン先の洗浄ができるーーー

 

と、思いきや。

結果から書くと答えは“No”でした…。

 

 

首軸パーツを外したボエムとモンブランの空カートリッジ、カヴェコのミニコンバーター、欧州共通規格のコンバーターです。

バツがついてある通り、これらを使ってもペン先内部の洗浄は不可能でした。

 

 

原因として、空カートリッジと差し込み口が酷似しているカヴェコのミニコンバーターは、やはり全長が短すぎてコンバーター内に水を吸い上げる動作ができません。

 

そして欧州共通規格コンバーターはそもそも差し込み口の金具と若干太くなるタンク部分がボエムへの差し込みを邪魔して差すことすらままなりませんでした。

 

ミニコンバーターの差し込み口+欧州共通規格コンバーターの長さがあればペン先内部の洗浄は可能ですが、そのような都合の良いモノがあるわけもなく…。

 

まあしかし、ペン先が大きくむき出しになるのですから、付け置き洗浄は可能となりました!

 

 

カップに少な目に水を入れ、ペン先を浸してみます。

見る見る出てくるペン先内部のインク。付け置き前にはやはり流水でペン先を軽く流した方が効率がよさそうです。

 

注意点として、首軸の金属パーツより上の部分を水に浸けないこと。

金属パーツの上は柔らかい樹脂パーツとなっていて、なにやらあまり触れてはならなさそうです。

 

 

私はペン先を軽く洗い流した後、この付け置き洗浄で水替えを3回くらい行い洗浄完了しましたが、まだ若干ペン芯内にインクは残っていそうでした。

 

ただ精神衛生上にも良くなったペン先洗浄。

ボエムをお持ちの方は試されてみてはいかがでしょう。(各パーツの取り扱いには十分ご注意を!)

 

 

 

 

【他のモンブラン万年筆とサイズ比較】

それでは最後の項では他のモンブラン万年筆との比較、および他の小型万年筆とのサイズ比較をしていきます。

 

 

まずはモンブランの筆記具でサイズ比較です。

左から、ボエム、モーツァルト(114)、#144、ショパン(145)、スターウォーカーアーバンスピード、#146、#149スターウォーカーのみローラーボール

 

一般的なサイズの万年筆が真ん中の3本。

そう考えるとボエムと#114はかなり小さな万年筆。全長だけで言うとボエムが一番小さい万年筆となります。

 

 

ペン先の比較。

ボエム、#144、#145は同サイズのペン先。

ボエムのペン先が長く見えますが首軸に繰り出し機構(銀色の部分)が見えているため。

 

並べると#149のニブの大きさが際立ちますね。

114のニブも横幅が狭く縦に長い形状だということが分かります。

 

ボエムの首軸~胴軸は#145と#146の間くらいの太さ。

書きやすさという点でこの首軸の太さは重要で、ボエムのように小型の万年筆となると握りやすさとのバランスが難しいところうまく調整されていると思います。

 

 

続いて手元にある小型万年筆で比較してみます。

 

 

小型だけで並べると小ささが分かりにくいですが、左から、モンブラン#114、モンブラン ボエム、モンテグラッパミクラ、カヴェコALスポーツです。

 

胴軸の太さはボエムが一番太く、キャップ・クリップの長さも最短。

携帯時の全長はカヴェコスポーツが一番短くなっています。

 

 

各モデルキャップを外したところ。

 

胴軸のサイズだけで見るとボエムはミドルサイズの万年筆と言えますが、携帯時にコンパクトに収まっていられるのはペン先が収納できる機構によるところが大きいです。

 

114、ボエム、ミクラは尻軸にキャップをポストできる構造で、ALスポーツのみ嵌め込み式。

 

 

最後はキャップを尻軸にポストした状態の比較。

 

ミクラは尻軸の端にネジ切りがあり、キャップの長さをダイレクトに足せるため一番長くなります。

長さは、続いてボエム、ALスポーツ、#114と続きます。

 

コンパクトな万年筆において、筆記時の全長の長さはそのまま書きやすさへとつながりますので、ボエムやミクラは小型万年筆の中で大きなアドバンテージがあると言えます。

 

 

小さい万年筆の最大のメリットは携帯性の良さ。

カヴェコスポーツ用の小さなペンケースにすっぽりと収まりコンパクトに持ち運べます。

 

 

 

さて、今回は「モンブラン ボエム 万年筆」をレポートしました。

 

クラシカルモダンなデザインの小さなボディに隠された様々なギミック。

 

キャップを外し尻軸にセットする、その流れでペン先が繰り出され軽快に書き始めることができる。

滑らかなペン先は太めの軸と相まって、指先の繊細な動きを文字に伝える。

 

そして鞄やポケットの中でかさばらず、筆記時には本格的な万年筆を楽しめる。

 

 

まさにボエムの名の通り、規制にとらわれない自由な生き方を体現したような万年筆。

それがボエムの最大の魅力であり、ファンが多い要因ではないでしょうか。

 

それでは今回はこの辺で。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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