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モンブラン Pix #172 ペンシルはマイスターシュテュックのルーツである 【モンブラン ヴィンテージ ペンシル レビュー】

2021年5月19日

皆さんはヴィンテージのペンシルはお使いですか?

 

今回の記事は、かなーーり前に買っていたもののなかなか記事にできていなかったペンシルのレポートです。

それもそのはず、このペンシルの記事を書いても正直あまりニーズ無いだろうな…と思ったからです。

 

しかし、たとえそれがたった1人のための情報になっても残していくのが当ブログのコンセプト。

詳しくレポートしていこうではありませんか。

 

 

最近、モンブランの筆記具を入手することが多いのですが、現行のモンブランマイスターシュテュックのキャップリングやクリップ裏に刻印されている「Pix®」という刻印。

 

これってもともとペンシルにつけられていた名前だというのはご存じでしょうか。

 

MONTBLANC-MEISTERSTUCK-Pix®

 

Pix®」がマイスターシュテュックに付き始めたのは東西ドイツが統合された後からですが、ドイツ統合前の「PIX」はペンシルに対してつけられていました。

 

今回見ていくのは1950年代のモンブランペンシル。

「モンブラン Pix #172 ペンシル」です。

 

 

 




 

現在のマイスターシュテュックにPix®が付く意味は「モンブランの高品質の証」とされています。

 

また、モンブランの公式HPを見るとエントリーモデルで「PIX(※全て大文字)という筆記具もラインナップされています。(価格帯は3万円前後)

 

どうして今更「Pix」という名前を復活させたのかは定かではありませんが、モンブラン  Pix #172 ペンシルを詳しく見ていく中でその謎に迫れたらと思います。

 

それでは見ていきましょう!

 

 




 

 

 

 

 

 

 

【モンブラン Pix #172 ペンシルのディティール】

(2020)から6070年前に作られたペンシルですが、そのデザインには古くささを感じません。

 

 

ブラックとゴールドのコントラスト、バランスの取れたトリムの配置、そのクラシカルな出で立ちは、パッと見るからに現役で活躍するモンブランのマイスターシュテュックそのものです。

 

ヴィンテージモンブランであることが一目で分かるクリップの形状。

 

 

クリップの付け根は美しい「なで肩」、クリップ先は「おにぎり」のように三角形になっています。

マイスターシュテュックのヴィンテージを求める方には、このクリップ形状がたまらなくアイコニックに感じるのではないでしょうか。

 

 

胴軸の三連リングには大きめの字体で「MONTBLANC-PIX-」の刻印。

何となく手作業の温かみを感じる刻印です。

 

ここのデザインを見て気付くことは、Pix #172にマイスターシュテュックのような「キャップ」はなくノック式であること。

クリップ部からペン先までがひとつに繋がっていて剛性感があることが特徴です。

 

 

ノックキャップとクリップの間の丸みのあるゴールドトリムが良い仕事をしています。

それによりもたらされるノック部から胴軸にかけての流れるような美しいライン。

 

 

 

真上からノック部分を見るとまるで勲章のようですね。

アイボリーのホワイトスター(アイボリースター?)とゴールドトリムが上品でとてもマッチしています。

 

 

サイズは#165より少し短めで、21gの重量は適度な重みを感じさせてくれます。

 

太めの字幅と相まって鉛筆で書いているような、紙の上を走る黒鉛のザラつきを指で感じることができ、それはまるで「書くとはこういうことだ」とペンに言われているようです。

 

 

 

 

 

【軸の素材について】

軸の素材は現代のモンブランでお馴染みのプレシャスレジンではなくセルロイド。

この素材もヴィンテージの筆記具ではお馴染みかと思います。

 

もともと象牙の代用品としてデビューしたセルロイドは、その後様々な用途に用いられましたが燃えやすいという欠点から需要を減らし、現在は万年筆の軸や眼鏡のフレーム、ピックなど一部の商品に使われるだけとなっています。

象牙の代用品だけあって、しっとりとした触り心地やツヤはレジンとはまた違った趣があって良いですね。

 

 

セルロイドという素材の特性上、熱に弱いということもあり保管には気を付けなくてはなりません。

また、この軸もそうですが特有の痩せで表面が凸凹になっている箇所もあります。

 

これはこれでヴィンテージの味として楽しめるのですが、入手した当初は軸の真ん中の三連リングの一番上がクルクル回って大変でした。(筆記中あまりに気になるので接着剤で固定しましたが…)

 

 

ノックボタンのホワイトスターも真っ白ではなくアイボリー。

さすが象牙に似せている素材だけあって、色も「ivory(=象牙)」なんですね。

 

 




 

 

【手応えのあるノック感と口金の構造】

このPix #172の気に入っている点は見た目や素材だけではありません。

 

 

ガチッとした手応えのノック感もヴィンテージペンシルの醍醐味です。

これはモンブランに限らず、ペリカンやパーカーのヴィンテージペンシルも同様なのですが、モンブランが一番ノックに手応えがあるように思います。

 

ノックキャップも丸くなめらかな指触りで押しやすい。

 

 

ノックキャップを引き抜いて芯を補充します。

使う芯径は1.18mm。太いように思えますが書き方によっては細字から太字まで、意外と字幅はコントロールできます。

 

今のマイスターシュテュックは、キャップを外した後ペンシルユニットのキャップを抜いて中に芯を入れ、キャップを回して芯を繰り出すと手順が多いですが、Pix #172はノックキャップを抜いて芯を入れノックボタンを押して書くという、非常にシンプルな使い勝手。

 

高級なペンシルはたいてい回転ノック式や繰り出し式ですが、もともとペンシルってこういうシンプルなモノだったなーと、改めて感じます。

 

 

ペン先を正面から見てみると3本のスリットが入っていることが分かります。

今のペンシルには見られない機構ですが、一体どのような意味が…。

 

 

 

スリットが入っているということは芯の動きに口金が対応できるようにするためではないかと考えます。

つまり「保持チャック」と「口金」が一体となった機構。

 

芯折れを防ぐためか、あるいは口金から出る芯を保持しつつ柔らかな筆記感を得るために重要な役割をしているのではないでしょうか。

 

 

口金を外すと見えるのが芯ホルダーのような精密感のあるチャック機構。

しっかりと芯が固定されているのが分かります。

 

ペンシルの内部メカニズムを構成する部品が精密な金属パーツのみで構成されているのも、ヴィンテージペンシルならでは。

樹脂の細かなパーツがメインでなかった時代のペンシルはロマンがあって良いですね。

 

 

 

 

 

【マイスターシュテュックとの比較】

デザイン上の後継モデルであるマイスターシュテュック#165他と比較を行っていきましょう。

 

 

 

まずは各モデルのサイズと字幅の比較から。

モーツァルトからル・グランまでを並べてみました。

 

Pix 172は右から2番目ですが、現行のマイスターシュテュックシリーズと並べても遜色なく、デザインのマッチングも素晴らしいものがあります。

 

 

クリップの下に見える三連リングやクリップの形状、口金に向かうラインなど、まさにマイスターシュテュックの原型となったペンシルだということが覗えます。

 

字幅はモーツァルトが0.7mm、マイスターシュテュック#1650.5mm0.7mmから選べます。

ル・グランは0.9mmと太め。この太文字が太軸とこれまたマッチしてるんですよね。

 

そしてPix 1721.18mm芯を使います。

この中では一番太い芯を使うのですが、次の比較を見て頂くとそこまで太いという印象を受けないかと。

 

 

それぞれの筆記比較ですが、Pix 172に比べて0.9mmのル・グランの方が太いように感じます。

これは芯の硬度の違いによるもので、ル・グランの芯の方が柔らかい(濃い)ため。

 

ちなみに芯は最初から本体に装填されているものを使用しています。

右の○gはそれぞれのペンシルの重さ。

Pix 172はちょうどマイスターシュテュック#164ボールペンと同じくらいの重さとなっています。

 

 

 

さて、今回はモンブラン Pix #172ペンシルをレビューしました。

セルロイド軸というのはレジンに比べて密度感がありなめらかで非常に所有満足感が満たされます。

 

デザインも現在のマイスターシュテュックシリーズに通じるものがあり、どのように最高傑作のデザインが完成されていったのか、モンブランの歴史そのものを垣間見ることができます。

 

なぜ、現行のモンブラン筆記具において「Pix」の名が付けられているのか。

172が発売された1950年代、筆記具に対しての技術革新がコストを惜しまず展開されていた時代です。

 

最高の筆記具を作ろうとしたモンブランという会社の理念や技術をPix #172ペンシルからは感じることができます。

 

現行モンブランに冠せられた「Pix」という文字、それはこの先も最高のモノを作ろうというモンブランの「原点回帰」に思えて仕方ありません。

 

最新のモンブラン筆記具も良いですが、ヴィンテージのモンブランに思いを馳せるのもまた一興ではないでしょうか。

 

それでは今回はこの辺で。