白いモンブランの裏側、お見せします【トリビュート トゥ ザ モンブラン ボールペン レビュー】
皆さんこんばんは。
今回はモンブラン(ボールペン)に関する記事になります。
色々なボールペンを使ってきましたが やっぱり使いやすいんですよ、モンブランのボールペン。ついつい記事の数も多くなってしまうのです。
このサイトも今年の2月で開設から7年となりました。その中でもモンブランのボールペンに関する記事数が最も多く当記事を入れて33。(万年筆とペンシルの記事を入れると56!)次いでカランダッシュの22記事、そしてカヴェコの20記事と続きます。
欧州の筆記具に惹かれる傾向にあるのでしょうか…。
さて、モンブランはボールペンとしての種類が豊富(価格もピンキリですが…)でどれを持とうか迷うところですが、特にバリエーションに富んでいてお勧めなのがマイスターシュテュックシリーズ。
デザインもさることながら、ベースとなる4つのサイズから必ず自分の掌とフィーリングに合った一本が見つかるボールペンではないでしょうか。
私は前回のモンブランの記事で「ミッドサイズ」に触れたのですが、これがまた使いやすい。
比較的指が長めの私は、少しサイズが大きめで重い軸と相性が良いようです。
今回のレポートはミッドサイズのソリテール(総金属軸)となります。
「マイスターシュテュック トリビュート トゥ ザ モンブラン ミッドサイズ」
非常に長い名前のため、以下「トリビュート」と省略。
前半はトリビュートのレポート、後半はマイスターシュテュックの回転繰り出し内部機構の比較を行っていきたいと思います。
トリビュートは、黒軸が多いマイスターシュテュックの中では珍しい白いマイスッターシュテュック。
トリムはシルバーで清楚な印象。
ヨーロッパ最高峰のモンブラン山をオマージュしたモデルで、ペンの各部にモンブラン山をイメージさせるデザインが施されているのです。
▲白い筆記具は使う者に爽やかなイメージを与える
左から、CROSS「ソバージュ」、モンブラン「トリビュート」、ポルシェデザイン ボールペン、Leica「ボディクリーニングブラシ」、バログラフ「エポカ」
こちらは某オークションにて、超レア物出品物の中にひっそり埋もれていた傷ありの個体を破格で落札し、丁寧に磨いてからメンテナンスしたもの。
文字通り傷だらけで相当酷使されてきたことが覗える一本でしたが、磨いて綺麗になった手前、まだまだ私の手元で活躍してもらいましょう!笑
トリビュートモデルのボールペンにはミッドサイズとクラシックサイズ、そしてモーツァルトサイズがあります。(モーツァルトサイズのみホワイトラッカー×ピンクゴールドトリム)
クラシックサイズとミッドサイズは、ネット上ではとにかく見分けが付きにくい。
ホワイトスターの部分がこんもりしていて、キャップリングに「Pix®」刻印がないものがミッドサイズという見分け方になりますが、正直分かりにくいです…。
このペンの具体的な発売年を調べましたが、ネット上にも2011年や2012年、2018年といった様々な発売年が書かれているため、実際のところいつ発売されたのかよく分かりません。
ミッドサイズのボールペンが発売されだしたのが2016年あたりだとすると、手元のトリビュートは2018年発売と考えるのが妥当です。
今回の「トリビュート」と、前回のモンブランの記事で取り上げた「セラミックブラックプリズマ」を見比べると、同じミッドサイズのソリテールのはずが、トリビュートの方が背が高いことに気付きました。
セラミックブラックプリズマは、キャップ部分がミッドサイズで胴軸部分がソリテールのクラシックサイズとなっており、言わばクラシックサイズとミッドサイズのさらに中間のサイズとなっています。
(それでモデルナンバーが#164だったわけですね)
ということで、純然たるミッドサイズのトリビュートと他の3サイズのマイスターシュテュックを並べるとこのようなサイズ感となります。
※ル・グランについては写真の1990年代の個体より近年発売されている個体の方が大きく、全長は149mmとなります。
個人的にミッドサイズのボールペンが全長的にも一番掌にマッチし、さらにソリテールの醍醐味である重みがプラスされ、重量バランスが良く安定した書き心地。
48gの重量は 手元のマイスターシュテュックの中で最も重く、私が所有するモンブランのボールペン最重量のJFKモデル(57g)に次ぐ重さとなっています。
特別な白いモンブランでこの重量感、堪りませんな。
重心は胴軸とキャップの境目。どっしり安定した書き心地は、年中雪に覆われる、雄大な「白い山」を表現しているよう。
キャップ、胴軸共に真鍮がベースとなりモンブランのプレシャスホワイトラッカーが施されています。
プレシャスレジンもそうですが、モンブランが何かと「プレシャス」と名付けるのも、握ってみれば分かる気がするのです。
プレシャスレジンもそうですが、モンブラン独自の素材ブレンドにより、キュッと指紋に吸い付くような良好なグリップ感。
プレシャスラッカーは幾重にも重ねられたラッカー塗装が、表面の透明感と握り心地に繋がっているように思います。
なにか懐かしいこの握り心地は、以前所有していたウォーターマンのカレンデラックスにも近いように感じます。適度な重みと、指に力を込めたときにちゃんとペンが手と一体となるグリップ感。
ペン先にはトリビュートモデルだけの特別なエングレービングが施されています。
モンブラン山とその峰を共有する山々の名前と標高が打たれていますが、その中でも最高峰となるのが4810mの「Mont Blanc」。
ちなみにもう一つのホワイトラッカーモデルである「マイスターシュテュック ホワイトソリテール」との違いは この口金のデザインと、天ビスのホワイトスターの素材となっています。
トリビュートのホワイトスターは樹脂ではなく「スノークオーツ」。
内包物の影響で白くもやがかかったように見える水晶で、まさにモンブラン山の頂を閉じ込めたようなホワイトスターとなります。
通常のホワイトスターと並べてみても違いは一目瞭然。
透明感のあるホワイトスターは美しく、筆記中もつい見取れてしまいます。
ソリテールシリーズのキャップリングは、鏡面仕上げのトリムとエレガントなツヤ消しのコンビ。
ミッドサイズはキャップリングに「Pix®」の刻印は無く「MONTBLANC – MEISTERSTÜCK -」のみ。斜めに入ったラインは光の差し込みにより文字が浮き出て見える仕組み。
さて、ここからはソリテールを分解して、中身(裏側)を見ていきましょう。
胴軸とキャップを外し、さらにキャップも分解してみます。
ホワイトラッカーの金属軸は重みがあり、樹脂慣れしている私からすると新鮮です。
キャップには空気穴?のような穴が設けてありますが、おそらくクリップ先と重なることからクリップ位置のマーキングだと思われます。
元に戻す際はクリップ先をこの穴の位置に合わせて天ビスを締めることで、正しい位置でクリップが嵌まる形となります。
ソリテールだけあって胴軸側のネジ切りも金属製。
というより、通常モデルのル・グランも接続部分は金属のため、通常のミッドサイズもおそらく金属製だと思われます。
そして、今回注目したいのが一番右の「回転繰り出し機構」。
通常モデルのマイスターシュテュックの繰り出し機構は、年代毎に違いがあり大変興味深かったのですが、今回のソリテール、しかもミッドサイズもまた面白い形をしています。
基本的な構造はマイスターシュテュックを通して同じですが、派生モデルを含めキャップの長さに個性のある特別生産品の内部がモデル毎に微妙に異なっているのは面白い!
回転繰り出し機構のパーツのみを分け、他のモデルと並べてみます。
左から、ドネーションペン(バッハ)、#P164(クラシック)、トリビュートミッドサイズ、#P161(ル・グラン)。
一番右の#P161の内部機構は、今回 X(Twitter)で交流のあるZ氏からお借りしたもの。
胴軸と繋ぐためのネジ切りが破損してしまっていますが、今回ル・グランやミッドサイズの内部機構を知るきっかけとなった貴重な資料です。
(Z氏、貴重な資料ありがとうございます!)
こうしてル・グラン内部機構を出すまでは、私はモンブランのマイスターシュテュックに使われる内部機構の全てが同じものだと思っていました。
少なくともキャップのサイズが大きいミッドサイズとル・グランは同じではないかと。
しかし、実際はル・グランの内部機構は別物で、上部の黒い樹脂部分から天ビスを止めるネジに至るまで別パーツとなっています。
また、この内部機構の金属部分のカラーは軸のトリムのカラーとリンクしており、トリムの色と内部機構の色との関係は、
ゴールドトリム→内部機構は真鍮無垢のカラー(ゴールド)
プラチナトリム→内部機構はシルバー
ローズゴールドトリム→内部機構はブラックコーティング(PVBコーティング?)
となっているという拘りよう。
そしてさらに興味深いところは、サイズが近い#164(クラシック)とドネーションペン、ミッドサイズにおいても内部機構が違うということ。
真ん中のリフィルを上下させるためのピストン部分までは同じですが、上部の樹脂部分から天ビスを止めるネジ切りの形が各モデルで異なっています。
それぞれのモデルの天ビスを置いてみても、雄ネジと雌ネジの配置、ネジの太さに個性があることが覗えます。
同じ太ネジでもネジのストロークが違ったりと、パーツの流用が見られません。
天ビスの形からも分かるとおり、#164(クラシック)サイズの天ビスは過去のソリテールモデルを含め、ホワイトスター側に雄ネジが付いていますが、特別生産品やサイズの大きなモデルは回転繰り出し機構側が雄ネジ、ホワイトスター側が雌ネジとなります。
クリップリングのサイズについても違いがあり、クラシック、ミッドサイズ、ル・グランでクリップの全長は同じであるものの、クリップリングの径が異なるため互換性はありません。
特別生産品のドネーションペンはル・グランと同じ径となりますが、キャップに固定するための凹みの位置が90°違うため流用はできなくなっています。
この拘りよう、流石はモンブランと言うほかありません。
さらに面白いのが、同じドネーションペンでも年代やサイズによって内部機構が異なる可能性があること。
2001年発売のヨハン・セバスチャン・バッハモデルと2005年発売のゲオルグ・ショルティモデルでは、ペン自体の全長の違いからか、内部機構も異なります。
ドネーションペンは、2005年のショルティを境にボールペン自体の全長が伸び、それに伴い繰り出し機構上部の形も変わったと予想されます。
そのため、1996年のバーンスタインから2003年のカラヤンまではバッハと同じ内部機構、2005年のショルティから2022年(現行)のフレデリック・ショパンまでは同じ内部機構である可能性が高いです。
今回様々なパターンが見られたマイスターシュテュック(派生モデル含む)の内部機構ですが、ペンのモデルに合わせた内部機構を採用している事が分かり驚きを隠せません。
尚、ミッドサイズやル・グランやドネーションペンを分解するにあたっては工具が必要となりますので、壊れた際はむやみに分解せず、ブティックに修理に出されることをお勧めします。
さて、今回はモンブランのマイスターシュテュック特別生産品「トリビュート トゥ ザ モンブラン ミッドサイズ」のレポートと共に、派生モデルを含むマイスターシュテュックの裏側(内部機構)を見てきました。
扱いやすい樹脂軸がメインのモンブランボールペンにおいて、樹脂軸にラッカー塗装という仕様に少し抵抗があった私ですが、それは間違いで、素晴らしいグリップ感を生むプレシャスホワイトラッカーと総金属軸の重みが見事にマッチしたトリビュートモデルに、新たなモンブランを見せつけられた気分です。
そして、私の予想を遙かに超えてきた内部機構のバリエーションから、筆記具に対するモンブランの拘りが見て取れました。
総じて、連峰の白いモンブランは良いものだ!と添えておきましょう。
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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