検証!インク窓内壁の積年のインク汚れを液体だけで落としてみた【with モンブラン モンテローザ O42G レビュー】
皆さんこんばんは。
今回の記事はピストン吸入式万年筆のインク窓清掃のお話です。
万年筆を買い始めると、必ずといっていいほど通るであろう吸入式(ピストンフィラー)万年筆の道。
万年筆を使い始めたばかりの方や、あまり詳しくないよという方向けに簡単に説明すると、現行の万年筆において万年筆にインクを補充する方法は主に4種類となります。
(ヴィンテージの万年筆も加えるとかなりの数のインク吸入方法となりますが…)
一番手軽なカートリッジ式はその名の通り、対応する規格のカートリッジを差し込むだけで手軽に使えるというもの。
初心者でも敷居は低く、カートリッジで用意されている ある程度の色幅のインクが使えます。
続いてコンバーター式。
カートリッジと両用式になっている万年筆がほとんどで、カートリッジの代わりに「コンバーター」と呼ばれる吸入器を首軸に差し込み、インク瓶から好きな色のインクを吸入することができます。
万年筆に慣れてくるとはやり色々なインクを試してみたくなるもの。こちらもメンテナンスがし易く、始めたばかりの方でも敷居が低い仕組みとなっています。
そして、ピストン吸入式およびプランジャー式。
こちらは万年筆の胴軸そのものがインク吸入器を兼ねており、その軸一本でインク吸入、筆記、洗浄メンテナンスを行う万年筆です。
これも特別敷居が高いわけではないですが、インクを入れたまま長期間に渡って放置すると 分解洗浄などの必要が出てくることもあります。
要は、少し気をつけておかなければならない吸入機構です。
ざっくりと4種類説明しましたが、今回の記事はそのピストン吸入機構を持つヴィンテージ万年筆のインク窓内壁に付着した積年のインク汚れを、なんとか本体(首軸)を分解せずに液体だけで行いたい!という少し無茶な企画となります。
万年筆に、巷で噂されている「コレ使うと綺麗になる」という液体数種類を吸入してみて、万年筆に対してどれが効果があるのかを検証していきます。
中には万年筆を使っている方からすると目を背けたくなるような液体を吸入しますので、心臓の悪い方はブラウザバックも念頭に置いて頂きたいと思います。
そして、今回その検証に付き合ってもらう万年筆というのが、私のお気に入りの万年筆。
「モンブラン モンテローザ O42G」です。
この万年筆を使うことでこの検証が私にとっていかに本気であるか、ということを分かって頂けるかと思います。
まあ、「目を背けたくなるような液体」とは書きましたが、万年筆にとって明らかに害となるようなものは吸わせませんので、その辺りはご安心を。
それでは、早速検証していきますが、まずは「モンブラン モンテローザ O42G」のレポートからお付き合いください。
モンブラン モンテローザ O42Gとは
まずは、モンテローザ O42Gについて見ていきたいと思います。
私はモンテローザを単なる廉価モデルというより、マイスターシュテュックに匹敵するスペックを持った妹分のような位置づけと認識しています。
手元にある14金ペン先を搭載したブラックのモンテローザの製造年月は、1954年~1956年という短い間に製造され、その後もデザインを変えながら1970年あたりまで製造されていました。
キャップリングが雪山のデザインをしているのが、初期のモンテローザの最大の特徴。
後にも先にもこのキャップリングのデザインを持つ万年筆はモンブランからは発売されていません。
非常にノスタルジックで、かつ大胆なデザインの万年筆と言っていいでしょう。
モンテローザはイタリアとスイスの国境にある山群「モンテ・ローザ」から取られており、モンブランが西ヨーロッパの最高峰なら、モンテ・ローザはアルプス山脈で2番目に高い山という位置づけです。
モンテローザ O42Gのスペックは、
全長(携帯時):127mm
全長(筆記時):115mm
重量:16g
インク補充:ピストン吸入式
ペン先:14金ペン先(同じ形の「O42」はスチールペン先)
ピストン吸入ノブを兼ねた尻軸には「O42G」の刻印。
スペックにもあるように、同じ見た目のスチールペン先搭載モデルもあり、そちらは「O42」。
金ペン先を搭載したモデルには「G(GOLD)」が付きます。
ピストン吸入機構を備えた胴軸のインク窓はブルー。
吸入式のモンブラン万年筆といえば、このインク窓である程度グレードが分かれており、ブルーは比較的安価なモデルにつくことが多いです。
インク窓があることでインク残量は一目瞭然。
コンバーター式は胴軸を外して確認が必要となるものがほとんどです。
この辺りがインク吸入式万年筆のメリットではないでしょうか。
ご覧の通りインク窓の内壁が積年のインク汚れで濁っており、これを何とかしたいというのが当検証のキッカケとなります。
こちらの検証は後の項でやっていきたいと思います。
キャップには「MONTBLANC Monte Rosa」の刻印。
個人的にキャップにこういった刻印があるモデルは大好きで、この万年筆についてもオリジナルな字体の「Monte Rosa」が非常に格好良いと感じます。
クラシックな湾曲クリップもモンブランの伝統を感じられるものとなっています。
キャップを尻軸にポストすると全長が143mmとなり、軽量且つ丁度良い長さでの筆記が可能となります。
胴軸が尻軸に向けて急激にシェイプする独特な樽型シルエットとなるため、軸の膨らみに無理なくキャップが収まり、キャップをポストすることで どこか完成されたデザインとなるモンテローザ。
ペン先は14金。
左が1954年~1956年製のモンテローザ「O42G」、右が1967年~1970年製の「401GS」。
ニブのデザインにも違いがあり、「雪山マーク」と「MONTE ROSA」の刻印があるのは1950年代のニブだけで、1960~70年代年代のモンテローザは「MONTBLANC」の刻印のみとなります。
こちらの1970年代のモンテローザは嵌合式ですが、ネジ式キャップを搭載したものなどバリエーションがあります。
ちなみにO42Gと401GSのデザインの違いはこちら。
モデルチェンジにより大きくデザインを変えているモンテローザ。
1960~70年代のモンテローザは、ステンレスの嵌合式キャップにホワイトスターのついた天冠、ダイヤ型のインク窓が特徴的で、全体的なシルエットも細くスタイリッシュになっています。
こちらのモデルはピストン吸入式となりますが、「401PS」というカートリッジ/コンバーター両用式のモデルもあり。
とても軽く、14金ペン先の性能も良い1950年代のモンテローザと近代モンブランのデザインへと変貌を遂げていく途中の1970年代モンテローザの2本。
正直この2本がかなり使いやすくて重宝しています。
詳しい比較は別の記事で後々行っていこうかと思いますので、そちらもお楽しみに。
インク窓の汚れに「ビタミンC」を試してみた
さて、それではここからが本題です。
私が試したいのは、首軸や胴軸を分解することなくインク窓の中を液体のみで綺麗にすること。
ちなみにですが、今回検証で使うモンテローザ。
予め水とぬるま湯を使って入念にインク室内の洗浄を行っています。
また、水を吸入して丸3日寝かせた状態も試しており、それでも落ちない頑固なインク汚れであることをお伝えしておきたいと思います。
早速、幾つかの液体を試していくわけですが、まずは、ネット検索にも出てくる「ビタミンC」はどうなのかを、ビタミンCの代表とも言える商品で試していきたいと思います。
ということで、来て頂いた「ポッカレモン100」。
ビタミンCと言えばレモンでしょう!という安易な考え方ではありますが、なるべく軸に負担を掛けないオーガニックなもので試したいという切なる思いの結果です。
(本当はもっとビタミンC含有量の多いものもあるのでしょうが…)
酸性の食品となりますが、ニブに使われる金は酸への耐性があることにも注目したいところ。
まあ、万年筆は様々に調合されたインクを使うわけですので、これしきのことで腐食しては話になりませんよね。
早速吸入してみました。
インク窓の中の液体(ポッカレモン100)はうっすら白濁していますが、ほぼ無色。
この状態で約一日寝かせたあと、ポッカレモン100を使って何回か吸入と排出(ピストン洗浄)を繰り返します。
期待した割にはあまり効果が見られなかったポッカレモン100。
インク窓内の積年のインク汚れをスッキリ取るには至りませんでした。
うーむ、インク窓内壁の汚れはかなりしつこそうです。
※余ったポッカレモン100は、唐揚げにかけたりしておいしく頂きました。
インク窓の汚れに「例の炭酸飲料水」を試してみた
続いて試すのは炭酸飲料水。
炭酸飲料水と言っても様々な種類がありますが、巷で掃除のお供としても名高い「コカ・コーラ」を試してみます。
なんでもコーラに含まれるクエン酸が黄ばみや黒ずみに効くとか。
ネットの情報ではトイレ掃除にコーラが効くという話や、金属の錆にも効くとのことで洗浄力にはかなり期待ができそうです。
それでは登場して頂きましょう。
「コカ・コーラ ZERO」。
なぜZEROを選んだかというと、砂糖の成分で万年筆の内部がベタベタになることを恐れたため。
砂糖不使用ということでベタつかないのでは?ということでZEROコーラです。
早速、コップのコーラZEROにペン先を浸し…。
ぐぬ。気が進まない…。
しかし、これはインク窓内壁洗浄のための検証です。
ペン先がシュワシュワと音を立ててコーラに沈む異様な光景。
自然と指にも力が入ります。
インク室にコーラが満たされました。
こちらも約一日置いてから、コーラのみでインク室内洗浄をしてみようと思います。
と、思いきや、炭酸の影響なのか万年筆がコーラでハイになったからか、ペン先から自然とコーラがにじみ出てきてしまいます。
これは一日寝かせる事が難しいと判断し、その場で何回かインク室内洗浄を試みます。
アフターがこちら。
意外と効果があったかもしれません…!
前回のポッカレモン100がジワジワと効いてきている可能性もあるため、これが100%コーラの性能とは言い切れませんが、多少綺麗にはなっています。
コーラの洗浄力伝説は本物かも知れません。
しかし、まだまだ汚れているインク窓内壁。
次なる液体を試します。
※余ったコーラは冷やしてからおいしく頂きました。
インク窓の汚れに「各種洗浄液」も試してみる
最後に、王道というか普通の洗浄液(汚れを落とすために生まれてきた商品)は試しておかなければいけません。
洗浄液で試すのは2種類。
・JOY…弱アルカリ性洗剤
・ミクロマジック…中性洗剤
油汚れに効く台所のお供「JOY」。
薄いグリーンで香りのある綺麗な液体です。
こちらは弱アルカリ性洗剤ということで、プラスチックを分解してしまう程強力ではないものの、心配なので水で薄めて使用します。
そして、「ミクロマジック」はCITIZENの商品で、超音波洗浄液用の洗浄液。
通常は600mlの水に対して5mlを入れて使用しますが、ダイレクトに原液で試してみたいと思います。
まずは「JOY」からやっていきましょう。
薄いグリーンの液体が綺麗なJOY。
結構匂いがキツいため、検証後は丁寧に水洗いする必要がでてきそうです。
こらも例によって約一日寝かせたあと、JOYのみでピストン洗浄を行っていきます。
既に効果があるような感じがしますね。
念入りにピストン洗浄を行います。
ここで気付いたのですが、ピストン先端はインク窓内壁全体を舐めるわけではないので、よくよく考えたら首軸に近い部分はこのやり方で完全にインク汚れを落とせないということ。
洗浄液の成分がインク汚れを分解してくれれば問題ないのですが…。
目に見えて劇的な効果が得られなかったこともあり、ミクロマジックの方も試します。
こちらは原液そのままでの検証です。
もともと無色無臭の液体ですが、数回吸入させるとすでに青いインクが落ち出ていることが覗えます。
原液を入れたままで一晩寝かせます。
細かな泡が効いていそうな予感。
一晩後、さらに数回ピストン洗浄を行い、水でしっかりと濯いで今回の検証は終了です。
それではビフォーアフターを見てみましょう!
結果としては完全に落ちきったかというとそうではないですが…。
はじめの状態と比べて、かなり落ちたのではないでしょうか。
一番効果が見られたのはやはり洗浄液の類い。
匂いや色が無い分、ミクロマジックのような中性の洗浄液がお勧めです。
しかし、「綺麗サッパリ」というところまでは落ちなかったため、落ちやすい洗浄液としてご参考程度にお考え頂ければと思います。
やはり積年のインク汚れを完全に落とそうと思うと、首軸分解を行い、綿棒で物理的に磨くのが一番なのかも知れませんね。
モンテローザ(今回出てきた2モデルとも)については首軸にカニ目があり、工具を使うことでペン先のユニットは比較的簡単に外せそうです。
今回はやりませんが、また必要が出てきたらペン先を外して綿棒で掃除したいと思います。
一番良かった事は、ニブが綺麗になったことでしょうか。
まあ、これだけの洗浄液をくぐり抜けてきたニブですので当然かも知れませんが、クロスでゴシゴシ磨いて傷がつくよりは良いのかもと思いました。
コーラを吸わせたあたりで一度インクを入れて試筆してみたところ、とんでもないインクフローになっていたため少し心配でしたが、全ての液体で検証後、再度インクを入れて書いてみたところ正常に戻っていて安心しました。
こういった肝が冷えることもあるため、検証や分解メンテナンスを行う場合はあくまで自己責任で。
字幅はM~Bあたりでしょうか。
今は落ち着いて良好な書き味を提供してくれています。
(インクはペリカンのブルーブラック)
この辺りの年代のモンブランのペン先は「ベルベットタッチ」と言われるように、タッチが柔らかく、軽い軸とも相まって非常に快適な筆記感を味わうことができます。
ということで、今回はなんとかインク内壁の頑固なインク汚れを液体のチカラだけで落とせないかの検証を行ってきました。
ある程度までなら自分だけで、安く綺麗にできることが分かりましたので参考にして頂ければ幸いです。
しかしながら、ヴィンテージの万年筆を入手した際は前オーナーの書き癖リセットやペン先調整、軸のメンテナンスという意味でも、腕のある調整師に出すのがベストかと思います。
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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