家族の絆から生まれたオマスのとある筆記具【OMAS A.M.87 ブライヤー トスカーナラスト ボールペン】レビュー
2021年になって早くも一月が経とうとしています。早いものですね。
コロナが流行りだして1年になりますが、いまだ収まる気配を見せません。自由に出かけることもままならない状態は続きますが、去年末は帰省して正月は家族と団欒を過ごされたという方も多いのではないでしょうか。
皆さんにとって家族と過ごす時間はどんな時間でしょう。
慌ただしく過ぎる毎日に安らぎを与える時間でしょうか。
それとも気持ちが引き締まる時間でしょうか。
たとえ距離が離れていても家族は心の片隅にいて、自分の生き方や考えた方の軸になっていたり、つらい時には支えになってくれたり、そういう存在ではないかと思います。
今回記事にするボールペンはそんな家族の絆を感じる筆記具です。
私としては初めてとなるオマスの筆記具。
「A.M.87コレクション ブライヤー トスカーナラスト ボールペン」。
オマスはアウロラやモンテグラッパと同じイタリア発で、創業は1925年という老舗の高級筆記具メーカーです。オマスというと12面体や三角軸などエッジの効いたデザインの筆記具が思い浮かびますが、A.M.87コレクションは丸軸で王道なデザイン。
そしてブライヤーの木軸は手作業で丁寧に作られたことが感じられる、どこか味わいのある佇まいをしています。
このオマスA.M.87コレクションのどこに家族の絆を感じるかというと、創業者アルマンド・シモーニ氏の後継者で1987年に他界したアンジェロ・マグラッチ氏へ捧げるコレクションとして、息子のジャンルカ・マグラッチが発表した筆記具であること。
書き方がかなりややこしいですが、A.M.とはアンジェロ・マグラッチ氏の「A.M.」で、1987年に亡くなっていることから「87」のナンバーが付けられています。
亡き父に息子が捧げたコレクションであるA.M.87ブライヤーは、まさに家族の絆が生んだ筆記具と言えましょう。
それでは、オマスのA.M.87コレクション ブライヤーを比較を交えつつ見ていきたいと思います。
A.M.87コレクション ブライヤーのデザイン
まずはA.M.87コレクションの美しいデザインと素材から見ていきましょう。
こちらのA.M.87ブライヤーのカラーは「トスカーナラスト」。ブライヤーと言えば木軸ですので本来であれば赤茶色をしているのですが、トスカーナラストは濃紺の表面塗装が施されているモデルです。
胴軸には「OMAS A.M.87」の刻印が彫られていて、この文字だけが本来のブライヤーの色となっています。
紺色の塗装の下には薄らとブライヤーの杢目が見え、まるでマーブルレジンさながらの深みのある色合い。
私がトスカーナラストを選んだ理由はこの紺の下にあるブラウンの美しさに惹かれたため。
手触りはツルッとしているため取り扱いの際は落下に注意する必要があります。(冬場で手が乾燥しているからかもしれませんが…)
この「OMAS A.M.87」の刻印はペン先を繰り出すと胴軸が180°回転するため裏側にまわります。
重量は22gと、最高の重量バランスであるモンブラン#164ボールペンとほぼ同じ。モンブラン#164を使い慣れている身からすると違和感なく手に馴染んできます。
キャップリングは3連となっていて、真ん中の太いリングにはオマスの筆記具ではお馴染みのグレカパターンが。濃紺色と控えめなゴールドパーツの調和も見事。
製造過程において加工がレジンより難しいとされる木軸、しかもブライヤーであることを忘れさせるような精巧なキャップリングの造り。
キャップを外した時にその美しい手作業を垣間見ることができます。
キャップは薄く削られ、リングと木材が交互に寸分の狂いもなく嵌め込まれていることが分かります。
個人的に一番気に入っているのがクリップのラインと天冠の形。クリップリングは無く、キャップからにゅっと生えたクリップの形はオマスの筆記具ではよく見る形状です。
天冠のつるんとした形。透明感のある塗装の内側には、ブライヤーの複雑な模様が控えめにも主張しているようです。
オマスA.M.87ブライヤーの丸みを帯びた暖かいデザイン、オマス筆記具の誇りを感じる装飾やクリップ、そして使う者を優しく包み込むような深みのあるカラーは、まるで亡きアンジェロ・マグラッチ氏の人柄を表しているようではありませんか。
リフィルの換え方と対応リフィルについて
オマスA.M.87ブライヤーは回転繰り出し式のボールペン。
リフィルの換え方についても、モンブランのマイスターシュテュックをはじめとする他メーカーの回転繰り出し式ボールペンと同じとなっており、芯をしまう方向にキャップを回して行います。
艶やかな本体に収まっているリフィルは、少し珍しい形をしています。この手の回転繰り出し式ボールペンは大体がパーカータイプのG2規格芯か、メーカー独自の規格かで大分されますが、オマスは後者のため、他メーカーのリフィルとは互換性がありません。
他のメーカーのリフィルと並べてみました。
▲左から、カランダッシュ、ヤード・オ・レッド、オマス、モンブラン、アウロラ(パーカー互換)。
挿してはないですが、ヤードに対応するリフィルも長さと芯先の形状からオマスで使えそうな気がします。
他のメーカーの芯についてはペン先の径が太いため、ペン先から芯を出すことができず使うことができませんでした。
まだオマスのこの形のリフィルが買えるのか調べたところ、シュナイダーからこれと同じ形のリフィルが発売されていました。
変わった形のリフィルですが一安心です。
軽くて美しいブライヤー軸の握り心地
オマスA.M.87ブライヤーはその名の通り軸がブライヤーウッドでできています。
胴軸内部に真鍮があり補強されている他の木軸ボールペンと違って、オマスA.M.87ブライヤーの胴軸は口金パーツとバネ以外 金属が使われていないため非常に軽く、男性だけでなく女性の手にもフィットする握り心地。
口金はオマスのオリジナリティーに溢れていて、長さはモンブランとペリカンのちょうど間くらい。上から、モンブラン#164、オマスA.M.87ブライヤー、ペリカンK720。
ペン先はリフィルの細さもありかなりコンパクトにまとめられています。
この3本、軸径が同じくらいなので私にとってはとても使いやすいですね。
ダイレクトな杢目の模様は封印されていますが、表面には高級な喫煙パイプのようなツヤがあります。
黒に近い紺はビジネス用途にも向いており、ここぞという時に内ポケットから取り出すと格好いいかも。
同じブライヤーウッドが使われているプラチナのブライヤーと並べてみました。プラチナブライヤーはダイレクトに杢目を楽しめるデザインで、こちらはツヤ消しの胴軸です。
オマスA.M.87ブライヤーは塗装により杢目は永遠の輝き、プラチナブライヤーのツヤ消しは指紋で削られることにより経年変化を楽しめそう。
同じ木材が使われているとは気付きにくい見た目ですが、奥に潜む複雑な杢目は共通しています。
木軸の良さは一つとして同じ模様がないこと。
表面の強度については塗装のオマスA.M.87ブライヤーの方がキズがつきやすく、無垢のプラチナブライヤーの方がキズには強いです。
モンブラン#164等とデザインやサイズを比較
さて、最後は恒例の他メーカーボールペンとのサイズ感の比較をしていきましょう。
クラシカルなデザインが共通点のモンブラン#161ル・グランとクラシック#164、同じイタリア出身のアウロラオプティマ、国産ボールペンのパイロットカスタム74。
そして真ん中がオマスA.M.87ブライヤー。いずれも回転繰り出し式のボールペンです。
全長はカスタム74とほぼ同じで、モンブラン#161と#164の間くらいのサイズ。こう並べるとオプティマがやけに小さく見えますね。
デザインとしては同じクラシックなボールペン達ですが オマスのデザインは独特で、クリップリング無しでキャップエンドが絞られておらずストレートなシルエット。短めのクリップの先は丸型でも玉でもなくスパッと切ったようなスクエアなデザイン。
そして口金は小さめでブライヤーを主張した全体的なデザインを崩さず、胴軸の真ん中の「OMAS A.M.87」の刻印もシンプルな軸に良いアクセントをもたらしています。
重量が似ている3本で比較。
左から、
モンブラン#164:21g
オマスA.M.87ブライヤー:22g
アウロラオプティマ:25g
サイズの割に軽く思えるオマスA.M.87ブライヤー。逆にサイズの割に重めなのがアウロラのオプティマです。オプティマは胴軸側のネジ切りにも真鍮パーツが使われています。そのため少し重めなんですね。
リフィルはそれぞれ互換性無し。アウロラはペリカンやパーカーと同じリフィルが使用可能。
胴軸部分の長さはオマスとアウロラがほぼ同じ。
オマスA.M.87ブライヤーのキャップは構造上素人の分解が不可能となっています。その分、万一壊れた時の修理やメンテのし易さはモンブランのボールペンが一番かも知れません。
最後はイタリア軸のグレカパターン比較。
イタリア軸と言ってもアウロラとオマスだけの比較ですが…。
(しまった…!そういえばモンテグラッパもグレカパターンあった…)
グレカパターンって、ラーメンマークのようでよく見ると全くラーメンマークとは全く違う柄なんですよね。
オマスとアウロラを比較すると、アウロラの方の柄を横向きにしたものがオマスの柄のようだったりしますので、渦巻きと言うよりは波が重なったような柄なのです。
ということで、今回の記事では「オマスA.M.87 ブライヤー トスカーナラスト ボールペン」を見てきました。
息子が亡き父に捧げたコレクション。
とても深みのある美しい軸に職人の技術が詰まった造形、丸みのある全体のシルエットからアンジェロ・マグラッチ氏の人柄が覗える逸品です。
オマスというと日本ではまだまだマイナーなメーカーかも知れませんが、イタリア軸らしからぬ(失礼な)木材を使った丁寧な造りや凝ったデザインから、個人的には他のモデルも気になるメーカーです。
マイナーだからこそ、人と被ることが少ない筆記具をお探しの方にも良いかも知れません。
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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