銀軸ボールペンの中でも最高峰と名高い「モンブラン マイスターシュテュック マルトレ」に関するレポート
明けましておめでとうございます。
本年も仕事で使える高級筆記具をはじめ、筆記具のデザインやスペックについての比較、考察や深掘り、そして自らの感性が刺激されたレザー製品を中心に様々な文房具をレポートしていければと考えています。
年始の記事は何にしようかと毎年頭を悩ませるのですが、今年に限っては去年末の銀軸筆記具レポートの流れで、2025年に購入して年を越してしまった銀軸ボールペンについて書いていこうかと。
ということで、2026年最初の記事はモンブランのボールペンから。
タイトルにもある通り、モンブランのボールペンの中でも、そして数ある銀軸ボールペンの中でも最高峰と名高い「モンブラン マイスターシュテュック マルトレ」について掘り下げていきます。
デザインや使用感について、モンブランマニアならず筆記具マニアまでもを唸らせる魅力はいったいどこにあるのか。このボールペンを購入したのが2025年の3月ですので、約11ヶ月間使ってみての私が感じたことやマルトレの加工についての考察、そしてデザインなどを中心に書いていければと思います。
それでは、どうぞお付き合い下さい。
モンブラン マイスターシュテュック マルトレ スターリングシルバーは、2016年末頃の発売と思われます。(発売日に関する正確な文献がない)
ある方に譲って頂き、手元に届いたのが2025年3月。それから約半年後の9月頃に撮った写真。
最初は眩いばかりの輝きでしたが、どこまで硫化で黒くなるのかを試してみたくなり、レザーペンケースに入れつつたまに持ち出して、いい感じに輝きが落ち着いてきた頃。
やはりスターリングシルバー軸はピカピカに磨いて使うよりは、渋く硫化させて使う方が好みに合います。
マルトレはモンブラン マイスターシュテュックシリーズの数あるバリーエションの中でも珍しい、キャップと胴軸のメイン素材がスターリングシルバーのモデル。
種類としては総金属軸の「ソリテール」にあたります。
どの角度から見ても美しい軸はジュエリーのようでもありながら、道具としての無機質で無骨な部分も感じる、マイスターシュテュックのフォルムを持つペンではまさに最高峰のモデルではないでしょうか。
ソリテールシリーズのキャップリングは、文字のある中央のリングの上下に梨地仕上げのリング、そしてそれを挟むようにグロッシーなリングが配置されています。
ソリテールシリーズのキャップを磨く際は、この梨地仕上げのリングを誤って磨かないように注意が必要。
コンパウンド系の研磨剤で磨いてしまうと美しい梨地が損なわれます。
天ビスのクリップ背面側にはスターリングシルバー(シルバー925)を表す緻密な刻印が刻印されています。
左上から、「StOD(Oに斜線)」「925に剣ようなマーク(公式検定刻印)」「Ag 925」。
「StOD」を分解すると、
St:Sterling(スターリング)
O(斜線にO):ドイツなど北欧圏で使われる「正式な規格品」や「管理番号付き」であることを表す表記
D:Deutschland(ドイチュラント)=ドイツ
となり、モンブランのドイツ工場(ハンブルク)で製造された、規格適合のスターリングシルバー部品、という意味合いとなります。
また、モンブランの筆記具につく一番複雑な925の刻印として、右上の楕円の中に小さな925と剣のようなマーク。
これはハンブルクの公的な検定機関の銀製品検定刻印(所謂ドイツのホールマーク)と思われます。
「Ag 925」はそのままスターリングシルバー(銀純度92.5%)を示します。
クリップリング(クリップの背面側)にはMBから始まる9桁のシリアルナンバー。(あえて一文字消してあります)この辺りの刻印位置は、2010年製造以降のモンブラン製品の特徴でもありますね。
クリップの裏には「Made in Geramany」「METAL」の刻印。
ということで、このクリップはシルバー925製ではなく地金の真鍮にシルバープレートを施したもの。
(クリップ自体も硫化しますのでおそらくシルバープレートという考え)
マルトレのボールペンはミッドサイズとなります。
同じミッドサイズの3本で並べてみました。
左から、トリビュートトゥザモンブラン、マルトレ、ウルトラブラック。
マルトレが他のマイスターシュテュックと比べて優れている部分が、このサイズであり、シルバー925の質感と重量感であり、そしてペンとしての密度感に他なりません。
筆記感については後ほど詳しく見ていくとして、やはり樹脂軸のマイスターシュテュックに比べて圧倒的に所有満足感と筆記の安定感を感じることができるソリテール系モデル。
さらに軸全体がスターリングシルバーとなればなおさらです。
▲左から、クラシック、ミッドサイズ、ル・グラン
ちなみにミッドサイズが、マイスターシュテュックでもどれくらいのサイズ感かというのがこちら。
ミッドサイズの全長は、実寸で141mm。重量は写真のウルトラブラック(樹脂軸)で27g、総金属軸のマルトレとなると重量は48gにもなります。
この重量感が心地良い。
クラシックサイズは男女問わず気軽に使えるサイズで、手帳運用にも合っていると感じますし、ル・グランは大切な書類に署名をする際などここぞという場面で使いたいところ。
成人男性が最もしっくりくるサイズがミッドサイズではないかと個人的には思います。
さて、その48gもの重量を生み出す胴軸とキャップのスターリングシルバー。
表面の加工について触れていきたいと思います。
この部分は、私がマルトレを手にして一番確認したかった部分。
マルトレの語源は「Martele(マルテレ)」フランス語で「槌で打つ」という意味。
その名の通りハンマートーンのような見た目なのですが、寄りの写真でも分かる通り 職人が一本一本を手打ちで仕上げているわけではなく、おそらく工程としては、精度の高い金型かロール形成により基本となる形状を作り、その後に職人が手作業で面取りを仕上げている。
というのが私の結論となります。
Webで見る他のマルトレと削りのパターンが一致するのもそのためですが、もし、これが完全な手作業での打ち付けであるなら、ピッチの微妙なズレや打ち付けの深さ等の個体差が出てきます。
分かりやすい例でいうと、カランダッシュ エクリドール ベネシアンの初期型。あれは完全なる職人の手削りとなっており、溝が全くのランダムとなっていますね。
その代償として「個体差」があるのですが、それが味であったり趣きであったりするわけです。
しかし、モンブラン マルトレの美学はそこにあらず。
モンブランは「銀無垢を手作業で削り出す」思想ではない、ということ。
モンブランが重視することは、工業製品としての精度、書き味やバランスの再現性、修理交換の際の互換性ではないかと考えています。
そのため、銀の塊を一本ずつ削るという方法は前述の再現性が低くなり、モンブランの思想とは合わないということになるのではないでしょうか。
精度の高い工業製品として、完成された道具を作るために職人の技術が生きる。
製造工程を見たわけではないため、あくまで私の考察であり外れている可能性もありますが、Ag925素材を金型かロール形成で製造、それを旋盤等で整え、最終的な仕上げを職人の手作業により行う(エッジの面取りや研磨ムラを無くす)。
形は機械を使い、表情は人の手で行う。
これがマルトレであると考えます。
角が立っていない事の理由としては、筆記具(書くための道具)としたときの触り心地や持ちやすさ、ポケット等への引っかかりの防止を考慮してのことだと想像できます。
マルトレの滑らかな触り心地と筆記感。これは工業精度と人の手作業の余韻が生んだ「道具として使い込める銀製品」を目指した結果であると言えます。
実際にマルトレを手に取った人だけが分かる、筆記時の良バランスと密度感、キビキビとした回転動作。
軸の重心はペンのど真ん中であり、マルトレにおいても、私がいつも書いている「重心バランスが重量を打ち消す」効果があります。
軸内にしっかりとした密度感を残したまま、指に負担をかけるような嫌な重さを感じない。
マイスターシュテュックがデザインのベースである事にも加え、モンブランの筆記具への拘りが随所に見て取れる、文字通りの「最高傑作」ではないでしょうか。
▲様々な銀軸ボールペン。左から、PILOTカスタム切子、カランダッシュ エクリドール(アンモナイトと80thアニバーサリー)、モンブラン マルトレ、ヤード・オ・レッド エドワーディアン、ファーバーカステル クラシック スターリングシルバー、CROSS タウンゼント スターリングシルバー。
銀軸の筆記具は様々あれど、モンブランの思想が形となったモンブラン マイスターシュテュック マルトレの存在感というのはひときわ大きく感じます。
使いつつ、保管しつつで良い塩梅に硫化してきたマルトレ(2026年1月撮影)。
この先どこまで硫化が進むのか。真っ黒になったマルトレもまた美しいのかもしれません。
さて、今回は銀軸ボールペンの中でも最高峰と名高い「モンブラン マイスターシュテュック マルトレ スターリングシルバー」をレポートしました。
銀製の工芸品でもあり質の高い筆記具でもあるマルトレ。
絶妙な本体バランスからくるペン自体の書きやすさもそうですが、ポイントとなるのは、モンブランがこのモデルの製造をどのように捉え、我々ユーザーに提供しているか。
何のためにスターリングシルバーを使うか、何のために名前をマルトレ(槌で打つ)と付けたか、なぜマイスターシュテュックがベースなのか。
それらは、工業製品としての高み、モンブランの筆記具に対する誇り、そしてなにより書く道具としての使いやすさを形にしたかったのだと思えてなりません。
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません