ボールペン・万年筆・メカニカルペンシルなど、文房具好きの購入記を写真多めで比較レビュー。
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最高の万年筆のための至高のペンケース!T.MBHの「グリマルディff」

2024年9月22日

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筆記具と革小物は切っても切れない関係…
かどうかは人によるかも知れませんが、私にとってはジャズとバーボン、日本人とコメ、日本酒とエイヒレ、そしてボケとツッコミ、と同じくらいかけがえのないものという認識です。
 
お気に入りの万年筆やボールペンは、お互いが干渉しない状態で、かつ最高の革小物で包みたい。
という考えから様々なペンケースを試してきましたが、人生を終えるまでに使ってみたい至高のペンケースを入手しましたのでレポートしていきたいと思います。
 
今回のペンケースは一本差し。
言わば、お気に入りの筆記具一本のためにだけに存在するペンケース。
 
自分専用のお箸や自分のサイズに合った服があるように、筆記具にも専用のレザージャケットがあるとすれば、そおらくこのプロダクトなのだろうと思います。
 

 
T.MBH(TAKUYA MADE BY HAND)の「グリマルディff」。
オーダーメイドで作られる至高のペンケース。
T.MBHは、代表の岡本拓也氏が2006年に自身が革職人となりスタートさせたブランド。
 
手元のものはお恥ずかしながら私自身がオーダーしたものではないのですが、たまたまオークションにて運良く入手できたため、私が使わせてもらうからには その魅力を余すことなくお伝えできればと。
(いつか当ブログの収益で、ある筆記具専用のペンケースをオーダーするのがかねてからの夢なのです)
 
私がペンケース「グリマルディff」を知ったのはもう十数ほど前でしょうか。
モンブランの#149に憧れを抱き始めた頃…。#149のような最高の万年筆に合う最高のペンケースは何かとネットで妄想を咲かせていた頃です。
 
一本用のペンケースというと、一般的にフラップタイプかつ絞り技法で作られたペンケースが多く、シルエットは「ル・ボナー」のペンケースのような美しいシルエットが好みでした。
(そういえばル・ボナーも2006年設立だったような…)
 

 

数年後、念願の#149を手に入れ、憧れだったル・ボナーのペンケースに入れて使い、満たされた万年筆生活!となったわけですが、#149以外の素晴らしいペン達にも出逢った事で一本差しペンケースの汎用性の無さに苦しむ事となります。
 
作りのいい一本差しペンケースは 大抵#149のような大型の万年筆に合わせて作られており、それより小さい万年筆に使うとペンが固定されず持ち運ぶ際にカタカタと音が鳴ったり、また大きなペンケースから出てくる小さな筆記具が何とも不格好なわけです。
 
すなわちダボダボのスーツを着た人間のようになってしまい、どこかまとまらない。
小さな筆記具達はまとめて収納できるペンケースにしか居場所がないのか?と。
 
そうなるとオーダーメイドのペンケースということになります。
今でこそ個人出店できるアプリが増え、オーダーメイドのペンケースをある意味気軽に依頼できる環境となっていますが、当時はそういう環境でもなく…。
 
色々なペンケースをネットで見ていると、とんでもなく斬新なデザインのペンケースがあることを知り、それがオーダーメイドであることを知ります。
ただ、如何せん価格が価格だけに気軽に注文ともいかず、いつかは手にしたい憧れのペンケースとして記憶に刻まれるのでした。
 

 
そのような背景からやっと入手できたグリマルディff。
ペリカンM400サイズのペンケースとして出品されていました。
 
ペリカンM400というと、携帯時のサイズが125mmほどのコンパクトな万年筆。
それ用に作られたグリマルディffも、約135mmほどとコンパクト。
 

 
左側面。丁寧に縫合されたグリーンのステッチ。
レザーは、ツヤ感・質感、フラップを開く際の操作音(革を動かしたときの音)から、おそらくブッテーロであると推測します。
 
ル・ボナーやQUIなど、堅牢なペンケースにはブッテーロが使われることが多いですが、滑らかな触り心地や経年変化など、ペンケースとして必要な要素を持ち合わせた素材と言えるでしょう。
 

 
右側面はガラッと表情が変わります。
まさにこのペンケースにおける色気の集大成。
ヴァイオリンのような鞘のデザイン、極限まで丁寧に磨かれたコバと厚い底面、美しくカットされたフラップバンド。
一つ一つのパーツや全体的なシルエット等、どれを取っても美しい…。
 

 
グリマルディffのアイデンティティーとも言える鞘の部分。
ヴァイオリンと同じサウンドホール(f字孔)が刻まれています。
これを生で見られる日が来るとは…。
 
グリマルディにはこちらの「ff(フォルティッシモ)」以外に、fのサウンドホールがないものやパンチングがデザインされたコンセプト「FUDE」もあります。
それらもめちゃくちゃ魅力的なのです…。(いつかは注文したい…!)
 

 
フラップを開くと見えるアシンメトリーな差し込み口。
クリップが収まる部分には大きくスリットが入り、フラップへと流れる優雅なラインに惚れ惚れします。
 

 
クリップを挟む部分の素材はクロコダイル。
牛革の10倍強いとされる素材ですので、一日に何回も抜き差しされるクリップに対して安心して使うことができます。
クロコダイルのようなワニ革はレザーというより鱗に近いですね。
繊維の密度が高く堅牢で美しい。高級な素材です。
 

 
驚くのが底の厚みと、Ω型と称される鞘部分の形状。
コバの部分は何枚もの革(4枚!?)が重ねられ、継ぎ目が分からないほどにピカピカに磨き上げられています。また、T.MBHの手仕事を感じる唯一無二のΩ形状は、万年筆の胴軸にピタリと合うように作られています。
 

 
マイスターシュテュック#149用に使っているル・ボナーの一本差しペンケースと。
ペリカンM400シリーズ用に作られたとされるグリマルディは万年筆に対して無駄なスペースがなく、ペンケース自体もコンパクト。
 

 
万年筆に対してピッタリなサイズのペンケースというのは良いものです。
王道ベーシックなル・ボナーとオーダーメイドだから成せるコンパクトなグリマルディ。
 

 
先ほどの鞘の部分のΩ形状も、こう並べてみるとさらに際立ちます。
ブラックのブッテーロレザーは最高に格好良いです。ペンケースはその経年変化の分かりやすさからブラウン系のカラーに人気が集まりがちですが、個人的にブラックはお勧め。
汚れが目立たないことに加えて、意外としっかり経年変化してくれます。
色が変わるというよりはツヤが増す感じ。
 

 
厚みのある底面には「T.MBH」の刻印。TAKUYA MADE BY HANDがブランド名の由来となっています。
ブランドコンセプトは「色気と技術と独自性」。まさにコンセプトがそのまま具現化されたデザイン。
T.MBHのブランドとしての始まりがこのグリマルディだそうで、現在は財布や名刺入れ、スマホケース等も展開されています。
 

 
ヴァイオリンのくびれにあたる部分は底面からも確認できます。こんな斬新なデザインは昨今見たことないです。
革が幾重にも重ねてあるためか、この部分からほつれてきそうな要素が微塵も感じられず、パーツの一部分が大きくえぐれているデザインにも関わらず、ひたすらに堅牢。まさに使用や経年によっても簡単に壊れることのない一生モノのペンケース。
 

 
早速ペリカンのM200(M400と同サイズ)を差してみると、クリップが最後まで進まないことに気がつきます。
この状態でも使えないことはないですが…、そうか、これはM400のために作られたモノではないと理解します。
 

 
M400と同じ軸径で、クリップの形状が違う万年筆。
手元にあるM101Nをはじめとする、クラシックペリカンの100や101Nといったモデル専用に作られたモノに違いありません。
 

 
鞘の内壁をなめらかに滑り、根元まで収まるクリップ。
このフィット感。これはまさにM101Nのための万年筆ケース。
ステッチがグリーンであることから、オーダーされた方はペリカン100のグリーンマーブルモデルか、復刻したペリカン1935あたりを利用されていたのでは…?と勝手に想像が膨らみます。
 

 
どこからどう見ても、ペリカンM101Nシリーズ他100系ペリカンのために作られたと思しきグリマルディff。
緑色のステッチがいいアクセントに。
糸のカラーや縫われた形ひとつを取っても独自性に溢れています。
 

 
くびれからチラリと覗く胴軸のリザード柄。岡本拓也氏が言う「色気のある革製品」とはこういう事なのだと。
ブライトレッドやトータスシェルレッドを入れても良さげではないでしょうか。
(今のところ持ってないですが…)
 

 
全長もピッタリで、尻軸から天冠まで無駄のないフィット感。
人間が着るスーツもそうですが、専用でサイズが合ったものはスッキリとまとまりがありいいものですね。
左右でここまで表情が違うというのも面白いです。

 

 
ちなみに他のサイズが近いペンを差してみるとこのようになります。
基本的にはクリップ用のスリットには奥までささらず、フラップを締めると天冠が少し窮屈。
フィット感は専用のペンを差したときの比ではありません。
 
グリマルディffのデザイン的にモンブランのドネーションペンがハマりそうということもあり、私がオーダーを出すときは愛用しているドネーションペンのボールペンを想定したペンケースを依頼する予定です。
 

 
さて、今回はT.MBHの至高のペンケース「グリマルディff」をレポートしました。
使ってみたい万年筆のゴールがあるように、私にとってペンケースのゴールがまさにこちらのグリマルディff。(と、コンセプト「FUDE」のペンケース)
 
T.MBHの製品は、構成するすべてのパーツや糸に至るまでがデザインであると言われるように、ペンケース単体でのシルエットや各パーツの配置バランス、ペンを差し込むときのフラップの動き・音、フラップを差すときの手応え、ペンを収めたときのクリップの見え具合いや、ペンを取り込んだペンケースの堅牢な佇まい、触り心地、その全てが計算されて作られています。
 
これをオーダーするにはしっかり貯金(あと家族を説得)しないと難しいので、気合いを入れないといけません。私のようなサラリーマンには覚悟が必要です。
しかし、価格が高くともこういった良い製品と生活するというのはお金以上の価値があると私は考えています。そして、そしてこの一本差しペンケースは価格にも見合った「T.MBH以外では作り出せない製品」だと思います。
 

 
一生モノの万年筆に一生モノのペンケース。
これはある意味 趣味の到達点ですが、絶対に後悔しない「モノとしての良さ」がさらに筆記具ライフを有意義なものにしてくれる事は間違いありません。
 
それでは今回はこの辺で。
また、深い深い筆記具沼の底でお会いしましょう。

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