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手の平に心地良く収まるモンテグラッパ オクタゴナル(八角軸)のすすめ【モンテグラッパ レミニッセンス ポケット スターリングシルバー パラディオ レビュー】

2024年10月20日

皆さんこんばんは。
今回はイタリア軸のデザインの魅力に迫ってきたいと思います。
 
イタリア筆記具の特徴である、アウロラやデルタに代表されるような色鮮やかなマーブルレジンの美しい軸。
まるでヨーロッパの温暖な気候や国民性を反映したかのような、明るい色合いの製品が思い浮かびます。
 
そんな華やかな軸の印象が大きいのか、イタリア軸=美しいレジン軸というイメージが固着しているようにも思えないでしょうか。
 
しかしながら、筆記具の沼の奥地に足を踏み入れば踏み入れるほど、レジンだけでないイタリア軸が見えてきます。
 
それこそ2023年現在、日本でブームとなっている希少木材を素材に取り入れた筆記具や、トリムやクリップにシルバー925を惜しみなく使った筆記具、今や生産にコストのかかるエボナイト素材を使った軸等々。
そしてもちろん、イタリア軸ならではの色とりどりの美しいレジン軸も…。
 
イタリア軸の魅力はどこにあるのかをひと言で表現するのは難しいですが、ものづくりに対する「拘り(コンセプト)」や「情熱」を具現化し、そのためにはコストがかかる素材も惜しまず使う、ヨーロッパ軸にしかない凝ったデザインに尽きるのではないかと思うのです。
 
そんな素材に妥協しない化け物級の筆記具が普通にゴロゴロしているのがイタリア軸で、私が今特に注目しているイタリアの筆記具メーカーが、
 
オマス
スティピュラ
マーレン
そして、今回記事にするモンテグラッパの筆記具。
 
イタリアには古くから銀細工が盛んな地域もあり、銀細工を取り入れた筆記具も数多く存在しています。
上記メーカーも新旧含め、クリップなど軸の一部にシルバー925を使った筆記具が多くラインナップされているのです。
 
そのような職人の技を取り入れた軸を日本で作ったとしたら、発売される筆記具はとんでもない値段になるのですが、上記メーカーの過去モデルはどちらかというと国内では玄人向けのメーカーのためか、値段も熟れていて運良く安く手に入れられることも…。
 

 

ということで今回の記事は、モンテグラッパの「レミニッセンス ポケット スターリングシルバー パラディオ ボールペン」をレポートしていきたいと思います。
 

 
レミニッセンスはシルバー925製の軸に地中海縁のメアンドロス模様が施された、モンテグラッパのユーズド品の中で比較的安価に入手できる軸となります。
 
モンテグラッパの歴史の中では初期のデザインとなりますので、比較的球数も多く見かけることが多いからかも知れません。
レミニッセンスのバリエーションとしては、メアンドロス模様が着いていないプレーンなモデルもあり。
また、全体的なデザインがほぼ同じで八角軸でなく丸軸の「ヘリテイジ」も存在します。
 
「レミニッセンス」とは、想起改善や潜在的記憶といった意味で、記憶した事柄が一定時間を置いて後、明確に想起されるという事を差します。
 
筆記具についた名前ですので、「潜在的記憶」が相応しいのではないかと。
テスト勉強はテスト直前よりも、少し前の期間にしておいた方が良いのかもしれませんね。
 

 
名前に着く「パラディオ」は、イタリアのパラディオ建築から来ているものと思われ、対称性や調和比例を意味しているものと考えます。
 
そのコンセプトは、実際にレミニッセンス パラディオの特徴であるオクタゴナル(八角軸)、キャップや首軸のリング(兼ネジ切り)、キャップと胴軸の比率に見られると感じます。
 

 
1915年に発売されたレミニッセンス。
手元にあるものは1990年代に復刻されたものだと推測されます。
 
その判断理由として、軸に刻まれているホールマーク。
イタリアにおいてホールマークに「☆」が使われ始めたのが1968年、この星マークはイタリアの銀製品共通のマークとなります。
 

 


▲レミニッセンスのキャップに刻印されているホールマーク
 
ついでにイタリアのホールマークの意味を紐解きましょう。
「ITALY」…国名刻印
「(925)」…銀の純度を表す刻印
「☆1055VI」…モンテグラッパの識別刻印
 
識別刻印において「VI」が地域を表す刻印となり、モンテグラッパが VI=ヴィチェンツァ(イタリアの地名)で1055番目に認可された証となります。
 
流石、古くから銀細工が盛んな土地ということもあり、筆記具界では重鎮のモンテグラッパでも認可されたのが1055番目というのが驚きです。
 
他のメーカーでは、デルタが「☆1CE」(カゼルタで1番目に認可)やアウロラ「☆5TO」(トリノで5番目に認可)等、色々調べると数字の桁数でその地域の銀細工の歴史も見えてきそうで面白いではありませんか。
 

 
レミニッセンスの刻印はキャップ、首軸、胴軸の各パーツに刻印されています。
 
銀軸モデルをレポートするときは大体書いているのですが、これらの小さな刻印がペン自体の精密感を増す役割も果たしており、これを見たり調べたりすることも銀軸モデルの愉しみ方となっているのです。
 
ついでにモンテグラッパ ユーズド品のシルバー925首軸によく見られる症状がありますので記しておきます。
 
手元にあるモンテグラッパの筆記具では「ミクラ」の万年筆があるのですが、レミニッセンスも同じく、古いものだと胴軸と首軸の接合部のネジ切りがシルバーの硫化か腐食で固着している場合が多く、回すのに一苦労します。
 
豆知識として、そういった場合は両手にゴム手袋をはいて力一杯捻ることで外すことができます。
そういった個体をお持ちの方はぜひお試しを。
 

 
キャップのクリップ側には「Montegrappa」の刻印。
この時代の刻印はレーザーではなく打ち込みで行われているため味があって好みです。
 

 
それにしても美しい、軸全体に施されたメアンドロス模様。
オクタゴナル(八角)の軸とこの模様が非常によくマッチしています。
 
どこか民族的でありながら未来的でもあるデザインではないでしょうか。
映画で例えるなら、SF映画「プレデター」の世界観のような不思議な魅力があります。
 

 
メアンドロス模様と言えば、カランダッシュのエクリドール「マヤ」にも施されていますね。
意図してか偶然か、金属の表面に刻印されたメアンドロス模様は、光の射す方向によりもう一つの模様が浮かび上がるようになっています。
 
エクリドールであれば菱形、レミニッセンスはギザギザの波が見て取れます。
 

 
こちらはエクリドール。
四角を模ったようなメアンドロス模様が、菱形の並びに変わります。
 

 
そしてレミニッセンス。
メアンドロス模様も様々で、少しパターンが変わるだけで浮かび上がる模様も大きく変わりそう。
色んなパターンを見てみたいものです。
 
レミニッセンスには通常サイズ(太め)、スリムサイズ、ポケットサイズの3種類があり、手元のボールペンはポケットサイズになります。
 

 
手の中にすっぽりと収まるサイズですが、重量が31gと重く、八角軸と相まって存在感というか圧力が凄い。
剛性のある八角軸の握り心地が堪りません。
 
ポケットサイズはキャップ式のボールペンで、筆記時は基本的に尻軸にキャップをポストして使うのがベスト。
普段はコンパクトに、筆記時にはこのように通常筆記し易い長さになるのがポケットサイズの魅力と言えましょう。
 
スペックは、
携帯時全長:111mm
筆記時全長:139mm(キャップを尻軸にポストしない場合は110mm)
重量:31g
軸径:10mm
適合リフィル:G2タイプリフィル
 

 


 
同じモンテグラッパのキャップ式であるミクラ(万年筆)と比較します。
携帯時のサイズはミクラがさらに短く109mm。
 
ミクラもレミニッセンスと同じで八角軸で、素材はレジン×シルバー925となります。
全身柄のレミニッセンスの存在感が凄い。
 

 
キャップを尻軸にポストすると全長は同じとなります。
同じポケットサイズですが、この辺りのサイズ合わせはさすがモンテグラッパ。
 
重量はミクラが22gでレミニッセンスよりも約10g程軽くなっています。
 

 
レミニッセンスの天面はフラットで、他のモデルのような「1912のロゴ」はありません。
1915年に発売されたモデルの「復刻」ということでロゴが着いていないものと思われますが、モンテグラッパのロゴは2020年発売されたモデルより、この「1912」から新しいロゴへと変わっています。
 

 
モンテグラッパと言えば美しい湾曲クリップ。
イタリア製の軸にはこういった優雅なデザインが採用されています。
 

▲モンテグラッパのレミニッセンス(左)とデルタのマリーナグランデ(右)
 
クリップの先にはポケットの生地を傷めないようローラーが配置されています。
同じイタリア軸であるデルタのフラッグシップモデル(ドルチェビータやカプリコレクション等)にもローラーが配置されていて、正にイタリア軸の顔とも呼ぶべき仕様となっています。
 

 
キャップ式のボールペンということもあり最初はローラーボールかと思いましたが、G2リフィル対応というところがポイント。
リフィルを選べば、油性インクやゲルインクなど様々なインクを装填することができます。
 
入っていたモンテグラッパのリフィルはブルーインクでしたが、固着していたためファーバーカステルのものに交換しました。
ファーバーカステルの油性インクは粘度が高く、重めの金属軸でぬらぬら書くのに適していると感じたからです。
そうした書き心地の好みや軸とのマッチングに合わせて選ぶことができる、汎用性の高いG2タイプのリフィルが使えるというのは非常に大きいです。
 

 
リフィル交換時は、リフィルの先に嵌めるバネを無くさないように注意しなければなりません。
このバネは錆びついていますが、リフィルの首にピッタリと嵌まる特殊なサイズっぽいです。
 

 
とにかくデザインのバランスがいいレミニッセンス。
キャップを尻軸にポストした際の美しさは目を見張るものがあります。
 
六角軸は軸径10mm以上に太く手に馴染み、スターリングシルバーの剛性感、31gの心地良い重量感もあって書きたいという気持ちが加速します。
 
そして汎用性のあるG2リフィル。
今やどこでも手に入るメジャーなリフィルといって良いでしょう。
 

 
レミニッセンスのデザインを見る上で欠かせないのがネジ切りの形。
通常のネジのように尖っておらず、山が丸いのが特徴でデザインとしてしっかりと確立されています。
 
このネジ切りをキャップ、胴軸と首軸の間、尻軸にバランス良く配置する事で、単なる必要な部分からデザインへと昇華させているのです。
 

 
デザインが凝縮されたポケットサイズのボールペン。
鏡面仕上げの軸に比べて、指紋がつかない(ついても目立たない)のも嬉しいところ。
 

 
筆記具好きを魅了してやまない多角軸。
表面に彫られた彫刻は製品の密度を上げ、所有する喜びへと繋がっていきます。
 
スターリングシルバーの鈍い輝きも銀軸モデルに共通する手放せなくなるポイントではないでしょうか。
 

 

今回はモンテグラッパのポケットサイズボールペン「レミニッセンス スターリングシルバー パラディオ」をレポートしました。
 

 
コンパクトながらも存在感のある一本で、八角軸・湾曲クリップとローラー・メアンドロス模様など様々なデザインの凝縮が堪りません。
 
中古市場でも見かけることが多いため、多角形の軸が好きな方や、一生モノとして使えるボールペンをお探しの方は入手されてみてはいかがでしょう。
 
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

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