1970~80年代のモンブラン マイスターシュテュック#146
みなさんこんにちは。久しぶりの記事更新となります。酷暑も和らぎ、朝晩は涼しさを取り戻してきました。万年筆を手に机へ向かうのに最適な気候になりつつありますね。
さて、以前の記事でイル・ブセットの三本差しペンケースを取りあげました。このときモンブランのル・グランシリーズを三本差そうと心に決めていたわけですが、真ん中に収まるべき一本であるマイスターシュテュック№146が未入手という状態でした。
少し前にその真ん中に入る一本を手に入れたのでレポートしていきたいと思います。
私が入手した146は、現行モデルではなく1980年代のモデル。特徴は全金の14Kニブ、エボナイト2段芯、インク窓はクリアグレー、ピストン機構はプラスチック製です。
オークションなどの中古市場でも比較的安価に美品が手に入る146。特に1970~80年代のマイスターシュテュック146は書き味も柔らかく、質の高いモンブラン万年筆を楽しむ事ができます。よくネットで149と146の書き味を比較して、149は固めで146は柔らかめと表現されていますが、実際に書いてみて、なるほど と。
私の手149と146と146も、同じ製造年代ながらも146の方が書き味が明らかに柔らかです。
私が体験したモンブランの万年筆の書き味でいうと、以前にレポートしたヴィンテージの№22の次に柔らかいと感じました。しかしペン先の柔らかさでいうと、№22の羽毛のような柔らかさの右に出るものはないと感じます。
現行の146を持ち合わせていないため現行品との比較はできませんが、後半では上位モデルの№149、エントリーモデルのクラシック145と比較しながらレポートしていきます。
146の外観~キャップ~
マイスターシュテュックの中ではミドルクラスの万年筆。太めの軸と相まってスタンダードながらも筆記バランスやインク吸入機構など、パンチの効いた一本となっていてファンも多いモデルです。さっそくキャップから見ていきたいと思います。
こちらの個体のクリップの形状は「いかり」、クリップ先は「いなり」型です。70年代~80年代のクリップ形状はクリップの肩が「なで」と「いかり」、クリップ先の留め具が「おにぎり」と「いなり」でそれぞれ2種類。
「なで+おにぎり」の組み合わせが70年代初期のもので、「いかり+いなり」が現行に近い組み合わせとなっています。厳密には「なで→いかり」の移行期にあたる形状のものや、「なで+いなり」もあるようですが。これを年代ごとに集め始めると、もうモンブラン沼に胸のあたりまで浸かっているということになるのでしょう。
クリップリングの背面方向に「GERMANY」の刻印。こちらについては「W-GERMANY」の刻印のものもあるはずです。90年以降のものについてはGERMANYに併せてシリアルナンバーの刻印がある個体も出始めますが、こ70年~80~80年製造のためシリアルナンバーはありません。
ちなみに以前のクレジットの「偽モンブランを掴まないための記事」に出てきた偽モンブラン164のクリップ裏に刻印された「MADE IN GERMANY」ですが、あれ以降そのような刻印が入った個体とは出逢っていないため、おそらくは偽モンブランオリジナル刻印(?)の可能性が高いです。
確かにクリップリングにGERMANYと打ってあるのに、クリップ裏にまでMADE IN GERMANYなんてくどくどと打たないような気がします。しかしながら、正確な文献は無いため参考程度にお願いします。
キャップリングの「MONTBLANC – MEISTERSTUCK №146 -」刻印は細字。Noのoの下にアンダーラインが入っていますね。キャップリングに若干変色があるので見にくいかもしれません。
※ちなみにイル・ブセットのペンケースですが、モンブランのペンを入れておいたところキャップリングに変色(腐食?)が発生しました。ペンケース内部底側のなめし剤?が作用している可能性があります。モンブランのペンを入れる場合はご注意ください。
ボールペンもそうですがベルリンの壁崩壊前のここの刻印は細字の個体が多いです。個人的に太字よりも趣があるため細字の刻印の方が好きですね。現行品はこの刻印が太くなっています。
146の外観~胴軸からペン先~
胴軸からペン先にかけて見ていきましょう。
70~80年代の146のインク窓は透明グレー。146は149と同じストライプのインク窓となっています。インクの視認性はもちろんのこと、ブラックやブルーブラックのインクを入れると窓が完全に消えるのもシブいですね。やっぱり吸入式はこういったインク窓があると便利です。
字幅はF。ニブのデザインは全金で、「4810」「モンブランロゴマーク」「14K」「MONTBLANC」「585」の刻印があります。全金ニブかバイカラーニブかで大きく印象は変わりますね。全金のニブは装飾柄などはなく非常にシンプル。
ペン芯はエボナイト製の二段。
70~80年代のペン芯はエボナイト製で、製造年によって段差があったりなかったりです。
ペン芯が二段になっているところに切り込みが入っており、インクフローの良さに一役買っています。エボナイトという素材はインクとの相性が良いらしいのですが、製造コストがかかるため現行品はプラスチック製のペン芯に変更されています。
太すぎず細すぎず。普通の1㎝幅のノートに書くと「夏」のような縦長の文字は潰れがちですが、万年筆で書いた文字の味は楽しめます。それにしてもこの字幅にはミッドナイトブルーがよく似合いますね。
手に持ったサイズ感はこちら。国産万年筆でいうとキャップを尻軸に差した長さがパイロットカスタム74とほぼ同じ。軸の太さはプラチナセンチュリー#3776に似ています。
カスタム74やセンチュリー#3776センチュリー#3776をお使いのかたであれば、柔らかい書き味も含めてヴィンテージの146も使いやすい万年筆ではないでしょうか。
尻軸にキャップを差さない場合はかなり軽くなります。現行の146はピストン機構の金属化にあたり、キャップを差さない場合でもバランスがとれているのではないかと思います。あぁ、現行146欲しくなってきた。(いかんいかん)
尻軸をひねるとピストンが下がります。
中に見えるネジが現行品だと金属に。それ以外はプラスチック製となっています。
※50~60年代初めのマイスターシュテュックはテレスコープという機構。個人的には寝かして書く派ですので、軸はもう少し重いほうがいいです。
ということで現行品の146も気になってくるわけですね~(いかんいかん)
ル・グランシリーズで比較
それでは、ここからは比較していきましょう。
他のル・グランシリーズと並べてみます。キャップだけ見るとどれがどれだか分かりませんね…笑。
軸全体で見るとこの通り。左からボールペン、万年筆、メカニカルペンシル。当然ですがこの統一感です。男女問わず人気があるのは、おそらくクラシック145だと思いますが、軸の太さ重さを踏まえた万年筆としてのバランスは間違いなく146だと思います。
ボールペンとメカニカルペンシルは結構重量があるので万年筆が軽く感じます。もっとも、軽いのは70~80年代の146であって、現行の146は胴軸のピストン機構が金属製のため、ボールペンやメカニカルペンシルと比べても遜色のない重さとなっています。
モンブラン万年筆で比較
次にマイスターシュテュック万年筆のシリーズで並べてみます。
▲左から№145、№146、№149。
面白いのが、クリップの長さが3本とも同じということ。
キャップを閉めたときの万年筆の全長もそれほど大差はありません。キャップリングの太さや尻軸のリングの幅も同じという統一感!比べてみて分かるのが、軸の太さと少しの軸の長さの違いだけで大きく印象が変わるということ。何年も続くモンブランマイスターシュテュックのデザインがいかに完成されたものかがうかがい知れます。
モンブランと同じくサイズ違いでグレードの変わるペリカンのスーベレーンシリーズだと、クリップの長さ・大きさは軸の大きさに比例して大きくなっていきます。どちらがいいというものでもありませんが、ポケットに万年筆を挿した時でも仰々しくならないというのは良いことです。
続いてホワイトスターの比較です。左から並びは先ほどと同じ。基本的にマイスターシュテュックのレギュラーラインは、軸の大きさに関わらずホワイトスターの大きさは同じです。私の持つ146と149の個体は少し小ぶりのホワイトスターのため、並べるとそれが目立ってしまいますが…。
ペンケースを開いたときにこの雪が並んでいると楽しくなってきますね!
最後はニブ比較です。146のみバイカラーではありませんが、ニブの大きさの違いは顕著です。ちなみに現行品は146がバイカラー、149が白帯(金・白・金)となっています。
グレードに合わせてニブの大きさも変わりますが、ここまで分かりやすいと気分がいいです。146のニブの長さはちょうどペリカン スーベレーンM800やセンチュリー#3776のニブと同じ。149のニブと並ぶと小さく見えてしまいますが、筆記するのになかなか絶妙なサイズのニブだということが分かります。
ニブのデザインですが、現行の146は145のような中白バイカラーとなっていて装飾柄も145と同じです。全金のニブもシブイですがやっぱり私はバイカラーのニブの方が好みですね。
まとめ
さて、さまざまな角度からモンブランマイスターシュテュック146を見てきました。
晴れてル・グランサイズの万年筆・ボールペン・メカニカルペンシルが揃ったわけですが、マイスターシュテュックという万年筆を調べれば調べるほど、次の一本が欲しくなってしまうという悪魔のループがあることに改めて気付かされました。かくいう私もすでに現行品の146が欲しくなってしまっています。(いかんいかん!)シリーズを揃えるだけでは済まない、恐るべしモンブラン。
やはり歴史が長いメーカーほど様々なバリエーションの万年筆が世に出ているため、いろんなバリエーションを手に取りたいという思いに取り憑かれてしまいます。
そうなってしまうと危ないので、色々調べたうえで、これぞ!という一本を選んでみてはいかがでしょうか。きっと長いモンブランの歴史の中から皆様に合う一本が見つかるはずです。自分の生まれ年代の一本を探すのもありですね。
それでは良い万年筆に出会えますよう!
今日はこの辺で。
ディスカッション
コメント一覧
こんにちは。
小学生の時に他界した祖父の遺品の中にモンブランNo.146の万年筆があり、10年前に社会人になった際に父より譲り受け、使う機会はないもののいつも胸元に入れておりました。最近やっとモンブランに興味が出始め、いろいろ調べていた際にこちらにたどり着いた次第です。
紹介されているNo.146は私が持っているものと全く同じでございましたので、大変勉強になりました。ちなみに私の名はヒロシ(164)で祖父に命名されたのですが、No.146のアナグラムになっているので少しうれしく思う今日この頃です(偶然だと思いますが笑)
また先日、旧祖父宅にて古いモンブランのインク(靴のような形)も発見しましたので、これを機に使用してみようとも思います。同年代では情報交換できる相手が全くおりませんので、こちらのブログのような先輩方から色々勉強させて頂きます。
長文失礼致しました。
164さん
コメントを読ませて頂き心が温かくなりました。きっとおじい様も生前は特別な思いで№146をお使いだったのではないでしょうか。
そして、靴の形のインク瓶(これ、かなり希少な物かも…)を見つけたのも、おじい様が164さんに胸に挿した№149を使ってほしいと仰っているように思えてなりません。
この世代のモンブラン№146は本当にペン先が柔らかく、造りも良く、まさに一生モノの宝物です。万年筆の一番のメンテナンスは「使うこと」だと思っていますので、ぜひその柔らかな書き味を体験してください。
ちなみに、モンブランマイスターシュテュックのボールペンに№164というモデルがあります。これ、運命じゃないでしょうか?(笑)