ボールペン・万年筆・メカニカルペンシルなど、文房具好きの購入記を写真多めで比較レビュー。
たまーに気になったガジェットのレポートも。
物欲のままに手に入れたアイテムをレビューしたりしなかったり。

セーラー万年筆値上がりの背景と今買わないといけない理由【セーラー ダンディ18 スターリングシルバー レビュー】

2026年1月27日

スポンサーリンク

皆さんこんばんは。
 
2026年1月5日、私たち筆記具ユーザーにとって一つの大きな節目ともなろう知らせが飛び込んできました。
それは、日本三大万年筆メーカーの一つである、セーラー万年筆の「製品価格改定のご案内」。
セーラーの主力製品(万年筆)の価格が約2倍、そして、21金ペン先のモデルは3万円台から7万円台にまで値上がりする製品もあるなど、非常に大きなニュースとなっています。
 
皆さんはこれをどのように受け止めておられるでしょうか。
 

 
値上げは、我々消費者にとってはかなりの打撃となる一方、近年、嗜好品の類いであった書き味の良い高級万年筆はさらにその色を濃くし「資産価値のある製品」としての位置づけがますます強くなっていると感じます。
 
そして、現代の最新技術および最新のデザインで製造・発売される万年筆の価格改定に引っ張られる形で、中古市場における過去モデルの万年筆も価格高騰の傾向にあります。
某オークションにおいても特に金ペンを搭載したモデルは、じわじわと過去の落札相場を超えてきており、おいそれと落札できる状況ではなくなってきているのも事実です。
 
様々な万年筆を気軽に愉しめる時代から、自分にとって本当に必要な万年筆だけを取捨選別していく時代に変化してきていると思わざるを得ません。
 
今回の記事では、セーラー万年筆の価格改定を目前に控え、セーラー製万年筆の書きやすさを過去モデルのレポートとともに行っていこうと思います。
 
当記事で扱う万年筆は、「セーラー ダンディ18 スターリングシルバー」。
1970年代~80年代にかけて発売されていた万年筆で、現在の「世界の銘木シリーズ」の前身となるモデル。18金ペン先を搭載し、かつ胴軸やキャップにスターリングシルバーを用いた、現代であれば生産コストの高さから企画倒れになりそうな万年筆です。
 

▲ダンディシリーズ(左)から世界の銘木シリーズ(右)へ。ダンディ18には黒檀等の木軸モデルも存在する。
 
このような豪華仕様の万年筆が過去に発売されていたことにも驚きますが、万年筆が書くために必要な道具だった時代、万年筆を使うことがビジネスマンのステイタスだった時代、そして、資産価値としての万年筆という時代へ移ろう中で、背景にあるものはいったい何なのか。
 
ダンディ18の詳細を見ていく前に、まずは万年筆業界値上げの背景から紐解いていかなくてはなりません。
 

 

 

万年筆業界に相次ぐ値上がりの背景

製品の値上げ幅からセーラー万年筆が特段目立っているように感じますが、セーラーに限らず、パイロットやプラチナ万年筆もここ数年間(特に2023年以降)で相次いで製品の大幅な値上げを行っています。
3社の万年筆価格改訂の推移については後の項で詳しくやりますが、2022年から大きな価格改定が始まり、2024年に各メーカーが揃って値上げ、そして2025年から2026年にかけて再び大きな価格改定が行われています。
 
その要因として顕著なのが、世界における「金の価格の急騰」。
特に、国内の1グラムあたりの金価格は2019年までは5,000円台で推移していたものの、2020年以降はその壁を越え7,000円台に突入、2023年には10,000円台を突破し、今も尚 歴史的な高騰を見せています。
それにつられる形で、今年2026年には銀価格も1グラムあたり500円台を突破する高騰を見せており、これはかつてない水準となっています。
 

 
過去10年間における金価格と銀価格の1グラムあたりの最高値の推移を表と折れ線グラフにまとめました。
(数値は、田中貴金属工業の小売価格を基準にしています)
 
近年の金銀価格高騰の要因として、2022年の地政学リスク(ロシアのウクライナ侵攻)にはじまり、中東情勢の悪化や米中貿易摩擦などが引き金となって、金の安全資産としての需要が高まったこと。
グラフからも分かるとおり、当記事執筆時点の2026年1月23日には1グラムあたり27,000円台となり最高値を更新しています。この先どこまで金の価格は上がっていくのか…、万年筆を使う身としては先行きが不安になるような状況です。
 
銀については、太陽光パネルやEV(Electric Vehicle)のような産業需要が急増する一方で供給が追いついていないことが価格高騰の要因として挙げられます。要するに、現代の「産業メタル」としての価値が非常に高いのが銀です。
銀は、高級筆記具のトリムなどの一部部品や胴軸・キャップそのものに使われたりと、万年筆と切っても切り離せない関係。
特にイタリア製万年筆はスターリングシルバーがふんだんに使われる傾向にあるため、銀の供給不足はイタリア万年筆値上げにも関わる大きな不安材料となっています。
 

▲セーラー万年筆の金ペン先。左から、プロフィットスタンダード(14金)、ダンディ18(18金)、プロフィット21(21金)、世界の銘木シリーズ(23金)。
 
それに伴いペン先に金を使う万年筆は大きな影響を受け、特に18金以上の素材を使う高価格帯のモデルが軒並み値上げとなっているのに加え、ペン先に限らず、銀をはじめとした金以外の金属類や樹脂素材についても価格が上昇していることから、総合的な原価増が万年筆値上げの背景となっているのです。
 

 

日本三大万年筆メーカーの価格改定の今後

そのような背景があり、2020年を越えたあたりから徐々に価格とそれに伴う物質的な価値が上がっている万年筆。
前述したように、単なる書くための道具から嗜好品へ、そして物的資産へと明確に歩み始めているわけですが、今回のセーラー万年筆に限らず、日本三大万年筆メーカーについてどのように価格改定がおこなわれてきたのか。
そのスパンや金高騰との関係性を知っておくことは、今後の値上げ幅を予測することにも繋がります。
まあ、金や銀の価格が大きく暴落していくことはよほどの代替素材が見つからない限りありえないため、我々万年筆を使う消費者は「欲しいと思った時になるべく早く入手する」に越したことはないのですが…。
 

 
セーラー万年筆の主要モデル値上げ推移表です。
ここでは、私も愛用するプロフィットスタンダード、プロフェッショナルギア、KOPモデルの3種で比較します
 
今回の価格改定で特に衝撃だったのが、38,500円から77,000円というプロフェッショナルギアの大幅値上げ。
今となってはこの値上げも金価格急騰の流れをみると致し方がないと思えてきますが、我々ユーザーにできることは、欲しいのであれば今すぐ(2月までに)買うべし!という行動一択。
 
KOPモデルについても44,000円の値上げとなりますので、ますます手が届きにくくなる前にこれも「買っとくべし!」となります。
特にKOPモデルは書き心地もさることながら、資産価値としても十分で、今買っておく理由としては大いにありかと。
 

 
続いてはプラチナ万年筆の主要モデル価格推移。
プラチナと言えば、#3776センチュリー。コスパの高いフラッグシップモデルのセンチュリーも44,000円と価格は大台に乗ります。
 
プラチナはUEF(超極細)をはじめ、細字はカリカリとした筆記感、中字以降は柔らかな紙面へのタッチが愉しめる筆記具メーカー。
4万円台は手が出せないよ、という方は一旦お試しでオークションやフリマサイトでユーズド品を探してみるのもいいかもしれません。過去のモデルですが、スターリングシルバー軸の「プラチナ・プラチナ」などは中古価格もある程度熟れており、気軽にプラチナの書き味を試せるお勧めモデルとなっています。
 
私はそのプラチナ・プラチナに加え、センチュリーのブラックダイヤモンドとセルロイドモデル、そして出雲(空溜)を愛用していますが、字幅による紙面タッチの違いには感動すら覚えます。
 

 
最後に、パイロットの主要モデル価格変動の推移。
パイロットの主要モデルといえば「カスタム74」。去年の10月に33,000円に価格改定がされましたが、まだ3万円台で金ペンを愉しめる貴重な万年筆と言えます。書き心地も滑らかで非常にコスパが高いモデルではないでしょうか。
 
「カスタム845」は15号ペン先を搭載したカスタムシリーズの上位モデル。国産で最も大きな万年筆として名高い、30号の超大型ペン先を搭載した「カスタム URUSHI」の弟分のような万年筆。
 
845もついに10万円を越えてしまい、なかなか手が出せなくなりました。
金価格の急騰に加え、エボナイト等の樹脂素材の高騰も相まって10万超えとて避けようのない流れですが、845の場合は、2024年1月に一度価格改定で88,000円になったものの、さらに同年10月に22,000円のアップとなっている過去もあり、昨今の金価格の上がり幅を踏まえると「2026年中の値上がりは妥当」と言わざるを得ません。
 
基本的なパイロットの書き味はカスタム74でも十分に愉しめますが、より大型で迫力のあるペン先でヌラヌラと快適な筆記を試みたい方は、金価格の情勢からほぼ確定と読める値上がり前に買っておくというのが賢明かもしれません。
 

 

セーラー ダンディ18 スターリングシルバー

さて、金価格高騰の流れが大きく影響し 金ペン先を搭載した過去モデルであるマイナーな万年筆が再度脚光を浴びる日もそう遠くはないと考えるこの頃。
 
たまに中古市場に出てくる銀軸モデル、ダンディ18について見ていきたいと思います。
 

 
ダンディ18という名前が否応なく1970~80年代を彷彿とさせます。今ではあまり「ダンディ」という言葉も使われなくなっているのかな、と。
名前からも分かるとおり、万年筆が単なる書く道具からビジネスマンのステイタスに変化していく頃の製品で、この頃の万年筆は素材に拘り、多少コストがかかってもトレンド最優先で売れるものを出す、という方向性だったのではと考えます。
 

 
スターリングシルバーの胴軸にキャップ、そして18金ペン先というハイスペック。
今思えば相当贅沢な仕様で発売されていた過去モデルですが、これを今作ろうと思うとどれくらいの価格設定になるのやら…。
 
キャップと胴軸には細かな溝が螺旋状に彫られ、全体として女性が持っても似合いそうなエレガントなデザイン。
ただ、個人的にはこのダンディ18のクリップにはあまり馴染めない、というかコンセプトが分かり難い形だと思うんです。
根元から胴軸に向かってストレートに延びると思いきや、途中で内側に曲がってよく分からない穴が一つ空いている。謎デザイン。
 
発売から40年~50年ほど経っている万年筆ですので、クリップの点状劣化も顕著に現れています。
このモデルでメッキが劣化していない個体を探すのは大変かもしれません。
 

 
天冠には旧型の錨マーク。以降のリアルな錨ではなく、なんとなくアイコニックというか抽象的な錨です。
セーラーは2021年に新たなブランドマークに変わっていますが、この時代を感じる錨マークもなかなか可愛いですね。
(それにしても天冠周りの劣化が激しい…)
 

 
キャップリングにはクリップ側に「Sailor」のロゴと反対側に「STERLING SILVER」の刻印。
この刻印から、このダンディ18はスターリングシルバーが使われていると分かるのですが、私たちが一般的にスターリングシルバーの「硫化」としてイメージする黒ずみとは対象的な、表面には錆びのような汚れのような変化が起きています。
 
個人的にはコレ本当にスターリングシルバーなの?という感想なのですが、ダンディ18が製造された時代はおそらくスターリングシルバーの定義が厳密ではなく、曖昧な部分があったのではと推測します。
今となれば、スターリングシルバーは92.5%の銀、7.5%の銅の事をいうのですが、おそらくこのダンディ18は銀以外の7.5%が銅ではなくアルミニウムかニッケルだと思われます。
(7.5%の銀以外の金属を混ぜる理由は製品としての強度を上げる(純銀だと製品として柔らかすぎる)ため)
 
うーむ、金属に詳しくはないのですが、表面のサテンぽい仕上がりからアルミニウム混合なのではないかと考えます。
加えてこの溝の、汚れなのか硫化なのかを綺麗にしようと思うと超音波洗浄とかが必要なのかもしれません。
 

 
ダンディ18はカートリッジ&コンバーター両用式。
もちろん現代のコンバーターも使えます。
 
国産メーカーの万年筆は吸入式であることが珍しく、今も昔も合理的なカートリッジ&コンバーター両用式。
カートリッジで手軽に筆記でき、コンバーターで好きなメーカーのインクを吸え、そして首軸の洗浄にもコンバーターを使えるという、メンテナンスのし易さではこれに勝る仕組みはないでしょう。
 
スペックは、
全長:135㎜
重量:33g(胴軸:19g、キャップ14g)
軸径:12㎜(グリップ部:10㎜)
と、程よい重量とサイズ感となっています。
 

▲左から、プラチナ・プラチナ(プラチナ万年筆)、シルバーン(パイロット)、ダンディ18(セーラー万年筆)
 
日本三大万年筆メーカーの過去銀軸モデル。
全長はパイロットのシルバーンとほぼ同等ですが、重みや質感はシルバーンに軍配が挙がります。
やはりスターリングシルバーの質感が他の2本と比べて明らかに違う…。
 
硫化も他の2本は保存状態によっては真っ黒にまで変色しますが、もう買ってから1年くらい経つものの、今のところダンディ18が黒くなることはありません。
もしかすると、銀無垢ではなく別の貴金属でコーティングされているという可能性もありますが、スペックや仕上げの詳細が不明のため あくまで考察の粋ということになります。
 
何にせよ、軸表面の溝の汚れは落として使う方が格好良い万年筆だということは間違いありませんね。
 

 

セーラー万年筆の書きやすさ

最後に、なぜセーラーの万年筆を値上げ前の今買っておくべき万年筆なのかを書いていきたいと思います。
 
私自身、国内メーカーの万年筆で一番稼働率が高いのがセーラー製品。その理由は他ならぬペン先の紙面へのタッチの安定感と軸のバランス(サイズ、重量)です。
 
セーラー万年筆のペン先は、一言でいうと「芯の通った書き心地」。
ニブに刻印されているペン先表記の「H-○」(例えばH-FであればHARD寄りのFINE)、これこそがセーラー万年筆の書き心地の特徴と言えます。
サリサリと音が出る程の、少し硬めでありながらブレない安定した書き心地。私はこれのファンだと言っていいでしょう。
 
何というか、ペンポイントが紙面でツルツルと滑ることなく、いい塩梅に引っかかりを感じ、それと同時に金ペン先特有の素材の弾力を指先で感じることができるのです。
 

 
文字にするとなかなか表現が難しいですが、幼少期から鉛筆を使ってきた我々日本人にとって「鉛筆のように指先の感覚を生かせるペン先」と言いますか、とにかく文字通り安心して書けるペン先。
 

 
ニブには「Sailor」のロゴと、素材が18金であることを表す「18K」、そして今はなき「JISマーク」。
セーラーにしてはかなり小さめでシンプルなデザインのペン先です。
 
ペン先に字幅の表記はなく、筆記してみるとだいたいM(中字)くらいだと気付きます。
国産メーカーのM(中字)は海外製のF(細字)程の字幅で書けるため、単に中字と言っても太すぎず漢字も非常に書きやすい。
 

 
ペン芯はプラスチックで、フィンは太く数は少なめ。
ペン先はもともとフーデッドニブ用なのかとも思えるこじんまりしたサイズで、どことなく、モンブランの「イカペン先」と呼ばれるものにも似ているような気がします。(モンブランのNo.22や24のペン先の正体がイカペン先という認識)
 

 
新旧の銘木シリーズとのペン先比較。左の2本は過去のモデルで、現在のニブ(右)の形と大きく異なります。ペン先の形としてはダンディ18や旧銘木シリーズのような、剣先型以外のニブも復活させてほしいと思うのですが皆さんはいかが思われますか。
 

 
キャップは尻軸にポストすることもできますが、ダンディ18 スターリングシルバーに限っては首軸が樹脂製かつキャップが重いことから、ポストせずに使う方が書きやすいと感じます。
キャップをポストするとスターリングシルバーの胴軸に傷跡が付きますので、キャップポスト派はご注意を。
 

 
ペン先に弾力があるからこそ、日本語が書きやすい。
セーラーの万年筆で書く文字はいつもの「自分の文字」。これが自分の指に、そして感覚にフィットしていることの証明でもあります。
 
そして、中字のよいところはインクの濃淡がはっきりと分かること。
いつもの自分の文字に華を添えるインクの濃淡。これぞ万年筆を使う喜びであり、油性インクを使うボールペンにはない醍醐味なのです。
 
やっぱりセーラー万年筆は使いやすい。
人の好みはありますが、日本人で日本語をメインに書く人であれば、日本三大メーカーの万年筆のどれかは必ず自分の感性にフィットするはず。
 

 
さて、今回はセーラー万年筆の価格改定報道に伴い、いつもより時間をかけて記事を書く形となりました。色々調べて書いているうちに、2月の価格改定まで一週間を切ってしまいましたが…。
各社の金ペン先万年筆の購入を検討している方は急ぐ必要があります。
 
近年の金価格急騰を背景に必然とも言える値上げですが、我々消費者は自分が使いたい万年筆をより吟味する必要が出てくると言えるでしょう。
 
日本語を書くならば、日本語を愉しむならば国産の万年筆。
2026年2月以降もさらなる金価格の高騰が予想されます。今後においても欲しかった万年筆が値上がりを繰り返す前に、反応反射音速光速でショップに走りましょう。
 
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂き ありがとうございました。

◆当ブログは人気ブログランキングに参加中です◆

クリックしていただけると
ブログ更新の励みになります!
人気ランキングチェックはこちら↓


文房具ランキング