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お勧めの極細・超極細万年筆!とにかく日本語が書きやすい【PARKER 75 & Premier】レビュー

皆さんこんばんは。
久しぶりに万年筆の記事を書くような気がします。
 
普段仕事では主にボールペンですので、どうしてもボールペンの記事が多くなる傾向。
そんな状態でたまに万年筆を使うと、何というか、その愉しさに震えてしまいます。
万年筆の何がそんなに愉しいかというと、その手に取った直後からの所作に始まり、インク瓶からインクを入れ、美しいペン先で紙面を撫でる、その全てであると言えます。
 
軸からキャップを取り外すことから始まる一覧の流れは、軸をノックするか捻るかで書き始められるボールペンと比べると速記性には欠けるものの、万年筆を扱う優雅な所作は気分の高揚を伴い、どこか心に余裕が生まれるような感覚を覚えるのです。
 
これぞ万根筆が人を惹きつけてやまない部分なのではないでしょうか。
 
さて、今回の記事で取り上げる万年筆は、過去の記事でもちょくちょく登場しながらも、メインとして取り上げていなかった(すっかり失念していた)万年筆。
個人的に使う機会が多い、日本語がめちゃくちゃ書きやすい万年筆です。
 

 
それは、「パーカー75(PARKER 75)シズレ」
おそらく使っている方も多いのではないでしょうか?
今更ではありますが、パーカー75の細字・極細字の書きやすさに焦点を当て、それに加え最近入手した派生モデルの「パーカー プリミア(PARKER Premier)シズレ」への首軸流用をレポートしていきたいと思います。
 
それでは始めていきましょう。
 

 

 

 

パーカー75 シズレ(XF)の書きやすさ

いきなり結論ですが、普段から万年筆を使いこなしている方、そしてこれから万年筆を使ってみようかと思っている方どちらにでもお勧めさせて頂きたいパーカー75。
もっとも、既に万年筆の沼にいらっしゃる方はパーカー75を使われたことがあるかも知れませんが…。
 
パーカー75は1964年に販売がスタートし、マイナーアップデートが行われつつ実に30年近く製造された万年筆。そのため、万年筆としての完成度が非常に高く、かつ日本語が書きやすい。
特にパーカーのXF(極細字)は絶対に使った方が良いと断言できるほど書きやすく、万年筆ビギナーにありがちな海外製万年筆の「買ったはいいが、字幅表記以上に字が太い」という問題にも無縁という、頼りになる万年筆。
 
また、ドイツなど欧州諸国のように幼少時から万年筆を使うことに慣れてこなかった(使う機会が少なかったまたは無かった)日本人の、強めの筆圧にもしっかりと対応してくれる、心強い万年筆なのです。
万年筆に慣れていない人が万年筆を始めて使う時、起こりうることにも触れておく必要があります。
 
日本人は義務教育において「鉛筆」を使うことが一般的。
子供の筆圧のコントロールを手助けするという役割と、環境に優しいということからそうなっていますが、鉛筆からシャープペンシル、ボールペンと使う筆記具が移っていっても、筆圧をかけて書くという習慣はついて回ります。
 
そういった筆記具の中にあって、万年筆は「筆圧をかけずに寝かせて書く」ことが必要とされます。
(※全ての万年筆が当てはまるわけではありません)
万年筆に不慣れな状態で万年筆を使うと、意図せずペン先を曲げてしまったりすることも…。
 
また、万年筆の紙面への柔らかいタッチは、今まで指が経験してこなかった感覚ですので、いつものような字が書けず文字が走ってしまったり、力加減が分からず「書きにくい」と感じてしまうかもしれません。
 
そのような背景があったとして、まずお勧めすべきは頑丈なスチールペン先の万年筆なのですが、一生モノを最初に手にしたいという方にも対応できる万年筆として、お勧めの「パーカー75」となるわけです。
 

 
なぜ国産万年筆ではないのかというと、紙面へのタッチの「丁度良さ」と言いますか、パーカー75=金ペンで文字を書くのですが、下記の理由から肩を張らずに軽い気持ちで使えること。
 
・軸径が誰にでもマッチする(グリップ部が8mm~10mmと握る場所で調整できる)
・三角形の首軸が握りやすい
・軸がシルバー925でシズレパターンなので高級感と持ちやすさが備わっている
・ペン先は硬めだが紙面へのタッチが柔らかい
・扱いやすい嵌合式キャップ
・中古の球数が多い
 
他にもまだありそうですが、ざっとこれくらいのアドバンテージがあるかと思います。
 

▲とにかく書きやすいパーカー75のXF(極細)ニブ
 
一番のお勧めポイントはこのXFニブ。
素材には14金が使われていますが、ニブの形状から柔らかすぎることがなく、ペン先を紙面に当てたときしっかりとした弾力があります。
 

 
それでいて紙へのタッチはひっかかりを感じず、滑らかに紙面を滑っていくのです。
しかも、しっかりと細い。これが重要で、鉛筆やシャープペン、ボールペンを使ってきた人間が「いつもの自分らしい文字」を書くには、それ相応の字幅であることが第一。
 
いきなりボールペンでいうところのB=ボールド(太字)で書けと言われても、画数の多い漢字には容易に対応できなかったりします。
海外製の万年筆によくある事として、日本製万年筆よりも字幅が太い傾向にあること。
F(細字)で書いているつもりがM(中字)のような太さであった、という事はよくあります。
 

 
パーカー75が長きに渡って製造され、人々に使われてきた一番の要因はこのF(細字)やXF(極細字)の使いやすさにあると考えています。
ということで、まだパーカー75を使ったことがない方は、騙されたと思って一度で良いので使ってみて頂きたいと思うのです。
 

 

75の高級モデル「プリミア」

さて、パーカー75の書きやすさの要因は前項で書いたとおりになりますが、ここからはそのパーカー75をすでに使っている、または使っていた方向けの内容となります。
 
もし、皆さんが既にパーカー75をお使ったことがあり、使うのを止めてしまっていたとしたら、その原因は何でしょうか?
 
・他に使いたい万年筆ができた
・壊れてから使わなくなった
・もっと使いやすい国産万年筆に乗り換えた
・自分には合わなかった
 
というような理由が考えられるかも知れません。
 
他では、パーカーのヴィンテージ万年筆って、何となくリアルな矢羽クリップがオヤジくさいと感じる方もいるかもしれませんね。まあ、パーカーのデザインが自分のフィーリングに合わなければ、そもそもパーカー自体を使わないのかも知れませんが…。
 
私も、パーカー75はシルバー925でコンパクトで、しかもXFが書きやすいということで大好きなのですが、最上級の筆記具として見ると もうひと超えできる何かが足りない気がするのです。
 
そこで、何となくオークションを見ていた私の目に飛び込んできたのが「パーカー プリミア(PARKER Premier)」。
何だこれは、と。
 
パーカープリミア?
プリミエじゃなくて??
という感じです。
 

 
そう、パーカーには現行モデルでフラッグシップモデルのデュオフォールドの次のランクに位置する「プリミエ」というモデルがあります。
「Premier」というとプリミエともプリミアとも読めてしまいそうな感じですが、今回のはプリミア。
しかも胴軸はシズレパターンでパーカー75とも似た出で立ち。
 
調べていくとどうやらパーカー75の上級モデルとして数年間販売されていたモデル、ということが分かりました。
 

▲パーカー プリミアの位置づけ
 
パーカー75の上級モデルとして、いくつかの軸バリエーションが用意され、その後はソネットに派生していったようです。
しかも販売されていた当時はすこぶる高価なモデルだったらしく、それもありどんどん市場に出て行くようなモデルではなかった模様。
個人的にはどこか丸いソネットよりも、この角張ったプリミアの方がデザインは好みです。
 

▲パーカー75との体格差は、プラチナ・プラチナのスリムと通常 と同じよう。
 
しかも、パーカー75よりも軸が大きく、重く、18金ニブまで搭載されているではありませんか。
重量とか軸のバリエーション的に、プラチナの「プラチナ・プラチナ」のスリムモデルと通常モデルのような、丁度そんな感じの体格差と使い勝手。
 
パーカープリミアのスペックは、
全長(携帯時):136mm
全長(筆記時):125mm
全長(キャップポスト時):151mm
重量:33g
軸径(グリップポイント):75と同じで8mm~10mm
と、パーカー75を一回り大きくしたようなサイズです。
 

 
手元のプリミアは状態としてはあまり良くなく、首軸に一部割れがあり、キャップがスカスカ。
そのため、通常は黒いマスキングテープを首軸と胴軸の間に巻いているのですが、今回は分かりやすくベージュの腹巻き(マステ)です。バカボンのパパか…
 
首軸はパーカー75のようなアルミ製ではなく、プラスチックベースのゴールドリングとなっていて、この仕様については賛否両論あったようです。
考えてみれば明らかにコストカットになるわけですし、実際に強度も下がっているとなるとそう思われても仕方がないところではありますね。
 
首軸の一部割れはインクボタ落ちのような不具合があるわけではないためそのまま。キャップスカスカはペン先のドライアップに繋がるため、マステで密閉度を上げています。
キャップについては、内側にベルベットを貼るなどしても良いかもしれません。
 
次の項ではプリミアの美しいデザインと付属する18金ペン先について見ていきます。
 

 

プリミアのデザインと18金ペン先

プリミアと75を並べると、所々にアップグレードを感じることができます。
渋い矢羽クリップはそのままに、一番目立つところはサイズアップでしょうか。
 

 
75とプリミアのスペック差は、
携帯時の全長:128mm→136mm
筆記時の全長:120mm→125mm
重量:21g→33g(共に純正コンバーターの重量含む)
 
となっていて、個人的に一番嬉しいのが重量アップ。
シルバー925の金属軸と言えど、私的に結構軽いと感じていた重量ですが、サイズアップに合わせて胴軸やキャップの肉厚化が図られています。
 

 
キャップリングにはハンマートーンのようなファセット装飾(多角的な平面のカットを組み合わせること)が施されていて、とてもエレガントなデザイン。
文字が刻印される中央部分はマット加工でこれまた落ち着いた雰囲気です。
 

 
リングにはお馴染みの「PPマーク」や「FRANCE」の製造国印が彫られています。
このわずか2mm程の幅に打ち込みで刻印されている様は、パーカー75のキャップリングの刻印よりも文字が小さく精密感たっぷり。
ピカピカに磨くのも良いですが、私はこのくらいくすんでいた方が渋くて好きですね。
 

 
キャップと胴軸部分には925の素材刻印が打たれており、これは後継モデルである「Sonnet」と共通している部分でもあります。これは逆にパーカー75では見られない刻印ですね。
もともと素材刻印が打たれた丸軸に、上からシズレパターンを刻んでいるためこのような見た目となっています。
 

 
天冠には黒い宝石である「オニキス」が埋め込まれフラットな天冠。
この部分のフラットなシルエットは 後継モデルのSonnetではなく、その先の世代であるプリミエのような印象です。
オニキスには、持ち主の性能を引き出し成功に導く効果や、ネガティブな影響から身を守るといった効果があるようで、こういった石が筆記具に用いられることは昔はよくあったみたいです。
 

 
この天冠をパッと見たときに初期型のデュオフォールドを思い浮かべました。
デュオフォールドの黒丸も、もしかするとオニキス?と思ったりして…。軽くネットで調べましたがデュオフォールド側の素材は分からず。
 

 
クリップはゴールドの矢羽。
これはパーカー75、プリミア、ソネットへと引き継がれ、今も形を変えながらパーカー筆記具のアイコンとして認知されています。
 
このパーカー75のやけにリアルな矢羽クリップ。
非常にオヤジくさいのですが、不思議なことに見慣れてくるとめちゃくちゃ格好良いと思うのです。
いや-、クリップから天冠にかけてのシルエットはプリミアが一番美しいと思うのですが、皆さんはどうお感じですか?
 

 
プリミアのペン先は18金ニブ。
パーカー75が14金でしたので、こちらもグレードアップということになるのでしょうか。
ニブ自体のデザインは同じで、18金の方はニブの長さが1mm長くなっています。
 
この金の含有率とニブの全長が書き味に影響しているかというと、実際に書いてみた感覚では大きな差は感じず、どちらかというと14金の方がタッチが柔らかく、書きやすいように感じています。
 

 
18金の方はニブに打たれた刻印が多く、個人的にはこれが18金ペン先を気に入っている要因でもあります。
「手作業で打ちました!」と言わんばかりの「PARKER 750 FRANCE 18K」の刻印。
マークの刻印は、ここにも「PPマーク」と半分打ててないですが、パリのアッセイオフィスを意味するホールマークが打たれています。
 

 
白い矢印の部分。右半分がしっかりと打ち込めていないのですが、間違いなく18金以上の金属に打たれる「鷲の横顔」であると思われます。
鷲の横顔は、パリの検査場で検査されたことを意味するマークで、フランスらしく格好良い刻印ではないかと思います。
 

 
手元のプリミアの字幅はF(細字)となっていますが、先に書いたように正直14金のペン先の方が書き心地は良く、このニブの形が影響してか硬い書き味は変わっていないように感じます。
 

 
字幅も18金のFで書いた文字と14金のXFで書いた字幅がほとんど変わらないことから、あくまで字幅や書き心地に影響するのはニブの形状によるところが大きく、素材はさほど影響しないということがよく分かります。
 

 
14金のXF(極細)と18金のF(細字)の2本で書いた文字を並べてみました。
これからも分かるように、パーカー75の細字・極細字はどちらも字幅通りの細い文字が書けて、それは漢字を含めた日本語が書きやすいことを意味していると言えます。
 
ということで文面にもあるように、首軸に互換性があるこの2本の万年筆を使って「最高のパーカー万年筆」を作っていきたいと思います。
 

 

完成したおすすめの超極細万年筆

それでは、最後の項で私が一番お勧めするパーカーの極細字幅万年筆を作っていこうと思います。
 
先ほどチラッと触れたように、パーカー75とプリミアの首軸部分には互換性があり、この2本があれば18金ペン先のパーカー75を作ったり、14金ペン先のプリミアを作ったりする事ができます。
 

 
胴軸から首軸を外すとこのように同じ首軸であることが分かります。
※写真を撮った後に気付いたのですが、プリミアのコンバーターが奥まで差し込めていませんでした…
 

 
首軸を入れ替えて胴軸に戻します。
手元のプリミアの首軸はプラスチック部分が磨り減っているためキャップスカスカでしたが、マステを貼ることでパーカー75に対しても安定した密閉キャップとして使うことができました。
 

 
これぞ究極のパーカー プリミア万年筆。
XFの最高に書きやすいニブにアルミ製の堅牢な首軸。軸はズッシリと重く手応えが有り、キャップも豪華。
うーむ、パーカー社はこのデザインで吸入式の万年筆を作ってくれないでしょうか。
シズレパターンの胴軸は吸入式の尻軸ともデザイン的にマッチすると思いますし、面白いと思うのですが…。
 
ということで、最後はほとんど自己満足になりましたが、「パーカープリミア」というパーカー75の高級モデルはあまり認知されていないようにも思いますので、パーカー75が好きな方やこれからパーカー75を使ってみようかと考えている方は、より高級かつ書き心地が同じ「プリミア」を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
 
最後に細字・極細字の各社万年筆とペン先と字幅を比較して終わりたいと思います。
 

 
比較するのは写真左から、
パーカー75(14金・XF)
パーカープリミア(18金・F)
モンブラン#146(14金・EF)
ペリカン M101N(14金・EF)
パイロット GRANDEE 22KAGM(18金・EF)※写真はFニブのものでした…
セーラー プロフィット(14金・H-F)
プラチナ #3776(14金・UEF)
 
海外製4本と日本製3本ですが、いずれもお勧めできるメーカーです。
このラインナップでいうと書き味は、パーカー2本とプラチナとパイロットが硬め、モンブランとペリカンとセーラーが柔らかめの紙面タッチとなります。
 
字幅はいずれも細字から極細字ですが、モンブランとペリカンは少し太め、国産メーカーの3本は細く、それに負けじと細い字を吐き出してくれるのがパーカーの万年筆。
 

 
書き比べた文字がこちら。
パーカー75系と書き味が似ているのはパイロット。芯があるけどタッチが柔らかという、個人的には一番書きやすいと感じる書き心地です。
 
毎回出てくると書いていますが、プラチナ#3776のUEF(超極細)は 本当に針の先で書いているかのようなカリカリの書き心地で、好きな方は堪らなく好きな書き味かと思います。
 
なるべく筆圧をかけず、ゆったりと万年筆を愉しみたい方や、万年筆に慣れてきた中級者にはセーラー、モンブラン、ペリカンあたりが良いのではないかと。
もちろん万人にお勧めしたいのはパーカー75ですが。
 

 
さて、今回は久しぶりの万年筆レポートで書きたいことが増えてしまって長い記事になってしまいました。
パーカー75とプリミアの魅力は伝わったでしょうか?
 
手元に2本ある方は、ぜひ首軸を入れ替えて使ってみてほしいのと、まだパーカー75やプリミアのどちらかを未体験の方は、一度使ってみて頂きたいです。
 
パーカー75の方は軸の生産時期やバリエーションにもよりますが、フリマサイトやオークションにて1万円前後で入手することが可能。
プリミアは少しレア軸ですが、これも1.5万~2万円の範囲で入手可能かと思います。
 
見つけたらぜひ狙ってみて下さい。
最高の書き味がそこにはあります(お勧めはXFかF!)
 
それでは今回はこの辺で。
長い記事になりましたが、最後までお付き合い頂きありがとうございました。

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