ビック(Bic)ボールペンの最高峰、創立40周年限定 ブライヤーモデル「RADICA」レビュー
皆さんこんばんは。
社会人となりどこか歴史の長い会社に属すると、デスクの引き出しの奥やオフィスのどこかに一本は転がっているBic社のオレンジ色のボールペン。
そんな懐かしい姿をしたいわゆる「オレンジビック」と呼ばれるキャップ式ボールペンが、2021年の8月に廃番となったことも記憶に新しいのではないかと思います。
(当ブログでも廃番直後に記事を上げています)
「オレンジビック」は現在、胴軸がクリアーオレンジとなり総筆記距離も伸びた「ビッククリスタルオレンジ」となって販売が続いており、日本のオフィスではジェットストリームがよく使われる傍ら、根強い人気を誇っているボールペンです。
私の祖父や父の書斎、居間のペン立てに刺さっていた記憶のあるオレンジビック。
当時の油性ボールペンとして安価であったことや、安定した書きやすさでビジネスシーンでも信頼を得ていたBicのボールペンは「オレンジビック」が1961年発売。
さらに約10年前の1950年代に、原点である使い切りのボールペン「ビック・クリスタル」が発売され、遡ること会社の設立は1944年(フランス)となっています。
1984年に、そのBic社創立40周年のリミテッドエディションが発売されました。
フォルムは初代から続くビック・クリスタルそのものであり、キャップと尻ビスにはバーメイル、軸には高級パイプの材料でもあるブライヤー材が使われた たいへん豪華な仕様となっています。
“信頼できるボールペンを低価格で”のキャッチフレーズで知られるBic社が発売した、これぞ究極のBicボールペンとなります。
「RADICA」という名がついた豪華なBicボールペン。
RADICAの語源は「RADICAL」で、意味は「革命的な、急進的な」。
リーズナブルなボールペンとして一世を風靡したBicボールペンに相応しい名前ではないでしょうか。
専用のケースにはその「RADICA」の名前と、下には「VERMEIL 925%」の文字が見えます。
VERMEIL(バーメイル)とはシルバー925の素材にゴールドコーティングを施したもの。
この個体は経年(使用か変化か)によりキャップ及び尻ビスのゴールドコーティングが剥げ、見た目はほぼシルバー925素材通りの銀色になってしまっています。
同じ40周年記念モデルかは定かでないですが、このブライヤー軸のボールペンの他に、シルバー925のキャップ×エボニー(黒檀)のモデル、そしてバーメイルのキャップと軸全体がシルバー925のモデルも確認しています。
どちらもなかなか見ない代物で、ここ数年においてエボニー軸のものはebayで1回のみ、シルバー925の軸はヤフオクで2回のみ確認しています。
(私が見ていないだけで、実はしばしば出品されている可能性もありますが…)
デザインを見ていくと、いつものビック・クリスタルと同じフォルムのキャップに、しっかりとエッジの効いたブライヤー軸というデザイン。
軸にはゴールドに輝く「Bic」のプレートも。
贅を尽くした仕様は、正にBic社のフラッグシップとして世界中の人に愛され続けているボールペンへの感謝が形になったようです。
キャップを外すといつものBicボールペンのペン先。
約40年前の製品になりますが、リフィルは現行のものが使えるため安心です。
スペックは、
全長(携帯時):156mm
全長(筆記時):145mm
軸径:8mm
重量:24g
通常のBicボールペンと比較してみます。
左から、オレンジビック(グリーンカスタム)、40周年ブライヤーモデル、オレンジビック、ビッククリスタル(ブルー)
胴軸(筆記時)の全長は通常のBicボールペンと同じですが、キャップが嵌まる深さが異なるため、携帯時の全長は異なります。
通常のBicボールペンの携帯時の長さは150mm。
また、バーメイルキャップは通常版のようにキャップ先がカットされていないことが、全長の違いの要因でもあります。
キャップ、リフィル共に互換性があるビックボールペン。
それは40周年記念モデルのブライヤーも同じです。
クリア軸は中のインク残量が見やすく、オレンジビックはブラック×オレンジのカラーで机上でも目立ちます。
そして高級感があり存在感抜群のブライヤー軸。
歴史を感じるBicボールペンのラインナップ。堪りません。
シルバー925のずっしりとしたキャップは、それだけで11gあり、胴軸部分は13g。
そのため、尻軸にキャップをポストして使うとかなりのリアヘビーとなるため、意図して指を鍛えている方以外はキャップは外して使うのが一般的。
キャップをポストして使うと、まるで長くて重い槍を構えているような感覚に陥ります。
ビッククリスタルやオレンジビックの重量がわずか5gということを考えると、素材の凝縮感を感じざるを得ません。
通常筆記はこのスタイルでしょう。
シンプルなデザインに13gの心地良い重み。
しっとりとコーティングされたブライヤー軸の握りやすさは格別です。
ダークブラウンの軸はいつものビックとはまた違った落ち着いた印象で、ビックなんだけど高級感があるというギャップが楽しい。
程良い重量の理由として、ブライヤー自体の重さに加え、内芯に真鍮が使われていることが挙げられます。
芯材はペン全体の重さを調整する意味でも重要で、真鍮という素材は打って付けではないでしょうか。
キャップと軸を分けて見ていきましょう。
シルバー925のキャップ兼クリップの内側には刻印が打たれています。
右の「楕円に925」の刻印はかろうじてわかるものの、左側の四角い囲みには何が打たれているのか分かりません。
こちらのアニバーサリーモデルの製造がイタリアである事を考えると、四角い囲みの中はホールマーク。
残念ながら文字は潰れているため、Bic社の純銀の識別刻印は不明です。
キャップの内側には樹脂製のインナーキャップが巻かれており、ブライヤーの木軸を傷めないような造りとなっています。
嵌合式ですが、嵌め心地もしっかりホールドされていることが分かり安心感あり。
ちなみに、Bicボールペンのキャップと言えばキャップの先には穴が開けられていますが、アニバーサリーモデルのバーメイルキャップには穴はありません。
杢目が美しい胴軸のブライヤー。
エッジが立っており、表面もコーティングにより保護されています。
まるで高級パイプのような滑らかな触り心地です。
軸にある「Bic」のゴールドプレート。
文字の横にはBic社のペンを背負った「ビックボーイ」が刻印。少しマッチョなビックボーイです。
キャラクターのビックボーイは、オレンジビックが発売となる1961年に当時の広告を手掛けていたポスター画家、レイモン・サヴィニャック氏にてデザインされています。
尻ビスにもシルバー925が使われています。
カラーバランス的にこちらもバーメイルだと思われますが、ゴールドコーティングが跡形もないため定かではありません。
Bicのゴールドプレートの対面の真ん中辺りにはボールペンのインクの出を良くするための空気穴が設けられています。これは他のBicボールペンと同様。
ペン先のボール径はミディアム(1.0mm)とファイン(0.7mm)の2種類。
ブライヤーには1.0mmが装填されていますが、リフィル交換をする事で0.7mmに変更することも可能。
世界的な規格ではこのように1.0mmか0.7mmが主流ですが、日本のように複雑な漢字を書く場合、より細い字幅が好まれる傾向にあります。
そのため日本ではボールペンだとジェットストリーム(0.5mmや0.3mm径)が人気なのでしょう。
リフィル交換はペン先を引き抜くことで手軽に行えます。
ノック式でも回転繰り出し式でもない、キャップ式だからこそ可能な実にシンプルな構造。
オレンジビックがクリアに変わったように、やはり中のインク残量が見える方が便利と言えば便利です。
いや、高級ボールペンにおいてデザイン的にインク残量確認窓は必要ないのです。
たまにペン先を引き抜いて、インクが減っていないか確認するあるのみ。
RADICAが発売された当時のインクと現行のインクを、簡単に書き比べてみました。
昔の油性ボールペンインクは良くも悪くも粘度が高く、書き始めのかすれや筆記中のダマはご愛敬。
(このインク自体、発売から約40年ほど経っているのもありますが…)
現在のBicボールペンインクは「イージーグライドインキ」で、粘度が抑えられていて現代風な書き味になっています。
新しいビッククリスタルには0.8mmの字幅が採用されており、リフィル先の黒い樹脂部分はゴールドに。
日本の低粘度インクがサラサラ過ぎて書きにくい、という方には丁度良い粘度のインクではないでしょうか。
私は好みです。
同じ素材が用いてあるプラチナ#3776センチュリーブライヤー(万年筆)と。
独特な杢目はどちらも同じですが、仕上げが異なる2本。
Bicの40周年記念モデルは光沢塗装が施されており、センチュリーはツヤ消し(拭き漆)となります。
皆さんはどちらがお好みでしょう?
さて、今回はBicボールペンの限定モデル「創立40周年記念モデル ブライヤー RADICA」をレポートしました。
かなりレアな存在のボールペンかも知れませんが、見つけたときは即確保必至のボールペン。
高級油性ボールペンというと、ノック式や回転繰り出し式のものがほとんどですが、昔ながらの嵌合式のシンプルなキャップに鉛筆のようなフォルム。
このノスタルジーが高級素材を纏っていることのギャップや面白さが分かる方向けのニッチなボールペン。
あまり見かけないペンが故に、今回情報を残しておきます。
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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