ペリカン M101N レビュー【特別生産品の柔らかな書き味の秘密を探る】
皆さんこんばんは。
久しぶりにペリカンの万年筆を買ってしまいました…。
ペリカンの万年筆はペン先の乾きが最小限に抑えられていて、デザインや筆記バランス等筆記具としての完成度も高いため好きな万年筆なのですが、私の筆記感覚に対してドンピシャかというと そうとも言えない万年筆。
しかし、それでも買ってしまった理由としては個人的にデザインが120点だからに他なりません。
クラシックペリカンのデザインが大好きな私が憧れていた万年筆。
どうも歳を重ねると、渋い万年筆に興味が湧いてきてしまうようです。
ペリカンと聞いて、鮮やかなストライプ軸の「スーベレーン」が思い浮かぶ方もいるでしょうが、今回の一本は落ち着き払った静かなる万年筆。
シルバートリムにダークなカラーの万年筆が、当ブログの「ビジネスにも使える筆記具」の紹介というコンセプトに嵌まるというのも、好きである要因なのかも知れません。
ということで前置きも短めに、今回購入したペリカンの万年筆とは、
2013年の特別生産品「ペリカン M101N リザード」。
大人の渋さを纏った万年筆。
800本の国内販売数と言われていますが、1930年代から1950年代にかけて発売されていた過去モデル「101シリーズ」の復刻モデルとなっています。
ラインナップは他に、トータスシェルブラウン、トータスシェルレッド、ブライトレッド、グレー/ブルー。
いずれも美しい万年筆なのですが、自分が使うならリザードかグレー/ブルーかな、と思っていました。
調べてみるとこの「100」や「101」シリーズは、かなり人気のあったモデルということで、尻軸の形状とキャップの色や柄でモデル名が違うらしく、簡単にまとめてみると下の図のようになるようです。
この復刻モデル「M101N」のオリジナルは「101N」で、丸い尻軸にカラー(ブラック以外)のキャップ柄だそう。
他にも、尻軸がフラットの101を復刻したリミテッドエディションの「1935シリーズ」もあり、そちらはオリジナルと同素材であるセルロイド+エボナイトを使っているという拘りよう。
(国内販売が300本程度と少ない)
とにかく、1930年代当時のシルエットが再現された、お洒落な万年筆と言えるでしょう。
それではペリカンの復刻モデル「M101N リザード」を詳しくレポートしていきます。
ペリカンM101Nのデザイン
まずは私も惚れているデザインを見ていきます。
リザードと名が付くだけあって見るからにトカゲ柄の万年筆。
トカゲのレザーが使われているわけではなく、幾重にも重ねられたセルロース・アセテートがトカゲ柄を形成しています。
ペリカンの樹脂製万年筆の中でも、頭抜けて複雑な柄だと言えるでしょう。
この複雑な柄ゆえに、同じものが一本と無いのがペリカンの万年筆の良いところでもあります。
見える部分によって表情が変わるというのもこの万年筆の醍醐味。
トカゲの鱗か、蛇の模様か。
手元の個体はグレーみが強いカラーですが、青みが強い・黄みが強いなど、柄意外にも色味の個性が楽しめるのも面白い。
キャップリングはシンプルに2本のラインが入ります。
これも当時のデザインそのまま。
1920~1930年代の筆記具のデザインの特徴として、このような湾曲したクリップが挙げられます。
これはペリカンに限らず、モンブランやカヴェコといった歴史あるメーカーが一度は通ってきたクリップデザインではないでしょうか。
現代のペリカンのフラッグシップモデルであるスーベレーンの「ペリカンクリップ」がない、クラシカルだけれど、ある意味新鮮なM101Nのデザイン。
大きく伸びた天冠が印象的です。
天冠部分の刻印は、表に「Pelikan」裏に「Germany」。
クラシックだけどモダンなフォントにも注目。
最後にペリカンというメーカーを天冠で語っている部分。
こちらもクラシックな方法で刻印されたペリカンロゴ。
スミイレ無しのシックな仕上がりです。
ヒナの個数は1羽。
こちらは現行のものよりもシンプルなデザインとなっています。
さて、デザインを見てきましたが、とにかくリザード柄が私の感性にピッタリというか、シックなペリカンが好みという方には嵌まるデザインではないでしょうか。
これで、私の手元にある爬虫類モチーフの筆記具は、モンブランのヘリテージ「ルージュ&ノワール」、シェーファーのレガシー「ルックオブレザー」に続き3本目となります。
日が暮れたあとに使いたくなる万年筆。
皆さんのお気に入りはどんなコンセプトの筆記具でしょうか。
M101Nとスーベレーンのサイズを比較
まず、このM101Nを手に取ってみて気付くことが、意外と小さな万年筆だということ。
写真で見ると重厚感があり結構太めで大きな万年筆に見えますが、実際は携帯時の全長が123mm程と非常にコンパクト。
キャップを外すと全長は117mm。
このまま筆記すると 少し心許ない感じがします。
尻軸にキャップをポストすると全長157mm。
一般的な万年筆の筆記モードと同じくらいの長さとなり、筆記にも安定感が出てきます。
スーベレーンより大きく見やすいインクビューはスモークグレー。
ペリカンの万年筆として優れている点が「インクの残量が見える」という、当たり前ですが痒いところにしっかり手が届く仕様だということ。
尻軸を捻り、ピストンが降りてきているのも確認でき、もちろんインクの吸い上げも見て取れるためペリカンの万年筆は初心者にも優しいのではないでしょうか。
ピストンの操作も滑らかそのもの。
尻軸と胴軸の堺に設けられたローレットがクラシックな印象を与えています。
さて、第一印象がコンパクトなM101Nをスーベレーンシリーズとサイズ比較してみましょう。
▲左から、M215(カスタム)、M400(旧モデル)、M101N、M400(現行)、M800
両脇のスーベレーンM400と比べると、全長が2mmほど短いですがキャップがM400より長くなっており、胴軸が短いという事が分かります。
デザイン面では、スーベレーンのペリカンクリップの存在感に負けじと、リザード柄の軸と大きなキャップ(天冠)が際立っています。
キャップを取った場合のサイズ比較。
見所はやはり短い胴軸とインクビューの見やすさ、あと、ペン先のデザインでしょうか。
インクビューはこの中では断トツで見やすく(インクが入っていないということもありますが…)、スーベレーンはストライプの隙間から確認する感じとなり、M215はスモークブラックのためM101N程の視認性はありません。
※M215とM400(青縞)のペン先は変更してあります。
M400の胴軸をギュッと縮めたような軸の形状は、スーベレーンに比べ樽型で手のひらへの収まりが良いです。
軽快なピストン機構の操作感と保持しやすい軸径・サイズで、インクの吸入もラクラク。
リザード柄の渋い万年筆にはエーデルシュタインのタンザナイトがよく似合います。
柔らかなペン先と筆記感について
続いて、M101Nの書き味について。
こちらも現在手元にあるスーベレーンとの違いについてがメインの比較となります。
結論から言うと、M400に比べてもタッチが柔らかだと感じます。(個人的な感覚を含む)
※手元のモデルではM215に現行M400のペン先を着けています。
M400とM101Nのペン先はどちらも14金。
字幅も同じEFですが、なぜか柔らかく感じるM101Nのペン先。
ニブのデザインは当時の刻印を再現しており現行とは180°違う物ですが、形状はM400と同等に見えるM101Nのニブ。
ちなみに刻印は見ての通り「Pelikan 585 14KARAT EF(字幅)」となります。
14Kではなく14KARATというところに歴史あり。
ロジウムプレートが施されています。
Pelikanの刻印が格好良すぎて震えますね。
これを拝むだけでも手に入れた甲斐があるというもの。
現行M400のニブと並べて見てみると、一見全く同じように見えるのですが、若干ペン先が反っている(スリットの部分が凹んでいる?)ように感じるM101N。
ニブ横側のアーチも若干M101Nの方が浅いような気もします。
うーむ、ファーストオーナーではないので以前の使われ方でそうなっているだけかも知れませんが…。
ニブを前から見て比較してみます。
これ、ニブ形状の比較云々の前に、M101NとM800は調整が必要なくらいペン先のズレとペン芯のズレがあることに気付いてしまいました。笑
まあ 一旦それは置いておいてニブの形状ですが、やはり若干ニブサイドの壁がM101Nの方が浅いように見えます。
M800に至ってはニブの形状自体がM400とは大きく違うことが分かります。
ニブサイドのアーチが浅いということは、それだけペン先にかかる抵抗も減ると考えられますので、必然的にM101Nの方が書き味が柔らかいということになるのではないでしょうか。
ニブを上から見比べても、左の旧M400の全金ニブに形状は近い気がします。
切り割りの長さも現行のニブより長い(ハート穴までの長さに注目)ことが覗えます。
旧ニブの2本と別角度から。
うーむ、やはり似ている。
これらを踏まえて、1930年代モデルの復刻であるM101Nはニブの形状もしっかりと復刻していると言えます。
あえてM101Nの気になる点を書くと…
デザインやサイズはかなり好みなものの、この万年筆の全てが気に入っているかというとそうでもないのが難しいところ。
それはただ一点だけ。
軸の重量が私には軽すぎること。
初めてスーベレーンM400を買って手に持ったときと同じ感覚が蘇りました。
見た目に反して、ちょっと軸が軽すぎやしないか?ということです。
もちろんスペックを調べてたうえで買っているので、重量が15gだということは分かってはいましたが、見た目の重厚感とのギャップがあまりにもありすぎて拍子抜けするくらいに軽い。
M101Nとペリカンの主要モデルを重量の順に並べると、
ペリカンM101N…15g
スーベレーンM400…16g
スーベレーンM800…28g
トレドM700…35g
トレドM900…40g
と、M400よりも更に軽い…。
希望小売価格55,000円の万年筆にしては軽すぎまいか。
これも当時のスペックで忠実に再現していると言えばそれまでですが、復刻するにあたり せめてピストン吸入機構を真鍮にするなどして重量を足してほしかった。
ペン先が柔らかいうえに軸がここまで軽いと、個人的にですが逆にコントロールが難しく感じます。
それでもデザインが120点なので乗り切れてしまうのですが、もうちょっと重かったらいいのになーと感じてしまうのです。
他の筆記具メーカーに比べ、ペリカンの万年筆は軽いという前提の中で、あえて「軽い」という感想は野暮なのかも知れませんが、私が唯一気になる点ということで挙げさせて頂きました。
さて、今回はペリカンの復刻モデルにして特別生産品「M101N」をレポートしてきました。
最後の項で「軽い!」と気になる点を述べたものの、かなり気に入っているM101N リザード。
やはり筆記具の所有満足感に対するデザインの割合は大きいということを再認識しました。
デザインだけでない、柔らかな書き味も特筆すべき点で、忠実に再現されたペン先を含め これぞ「ペリカンの伝統」とも言える部分ではないかと思います。
このシリーズを集めたいかと聞かれると、これ一本で十分満足。
という回答なりますが、スペック比較のため色々調べて知った中に トレドM700やM900の素晴らしい重量感があり、そっちが気になり出すという始末…。
M101Nはもちろん素晴らしい万年筆ですが、M10Nを知ることでまた別の方向に派生する危険を含んでいるということで、改めてペリカンの万年筆は恐ろしいなと感じます。
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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