小さいけど本格派!アウロラのピストン吸入式ミニ万年筆【アウロラ ミニオプティマ レビュー】
今回は前回の予告通り万年筆の記事。
しかも、ものすごく久しぶりのアウロラ軸についてです。
いやほんと、アウロラについて取り上げたのは何年前だろうと思って確認したら2019年の3月で、もうかれこれ2年振りではないですか。
私が保有するアウロラ軸は、オプティマのボールペンと万年筆997/Vのグリーン、プリマベーラのローラーボール。
イプシロンのシルバー925 BPは後輩へプレゼント、同じくイプシロン赤のFPも手放し、手持ちのアウロラ軸の上位グレード移行は順調です。
ボールペン、ローラーボール、万年筆と一セット揃えて大満足だったのですが、ちょっと気になるオプティマ亜種があり、上記3本のアウロラ軸に新しくオプティマの万年筆を一本プラス。
その一本とは「アウロラ ミニオプティマ (ネロ) 万年筆」。
私の悪い癖というか、これはこのブログサイトの趣旨なので変えられない部分で、アウロラと言えば美しいアウロロイドの軸を求めたいところですが、反射的にビジネス(主に営業系)でも使える落ち着いたカラーの筆記具を選んでしまうのです。
ということで煌びやかなマーブル軸ではなく漆黒の「ネロ」となります。
地味なアウロラが手元に集まってくるのは何とも愉快なものです。
(美しいマーブル軸を期待していた方々、ごめんなさい…!)
それでは、ミニオプティマ万年筆について見ていくとしましょう!
【小型でも本格派!のアウロラミニオプティマ】
まずはミニオプティマの特徴からです。
小型万年筆にありがちな、単に小さくしてスペックダウンしました~という枠から外れるのがアウロラのミニオプティマ。
スペックは、
・全長(携帯時):114mm
・全長(筆記時キャップ無し):105mm
・全長(筆記時キャップ有り):137mm
・重量:16g
・14金ロジウムペン先
・リザーブタンク付吸入式
となっていて、メーカーの妥協が感じられない仕様です。
私的に小型万年筆の権化だと思っているのが「ペリカン スーベレーンM300」。
スーベレーンシリーズをそっくりそのまま小さくしたモデルがM300で、軸の造りや美しい胴軸のストライプ、吸入機構まで楽しめる万年筆となっています。
これからもペリカンM300を超える小型万年筆が登場するかは分かりませんが、生産終了となった今も万年筆界にとって唯一無二の存在ではないでしょうか。
うーむ、いつかは手に入れたいスーベレーンM300。
おっと、今回はミニオプティマの話でしたね。
M300は置いておいて、このミニオプティマについてもそれに近しい感覚で楽しめる万年筆となっており、スペックにもある通り、アウロラ吸入式万年筆の代名詞でもある「リザーブタンク」が装備されているのがポイント。
リザーブタンクとはメインタンクのインク切れ以降も、予備タンクからのインク供給によりしばらく書き続けることができるというもの。
便利な反面洗浄がしにくいという点もありますが、書くための道具という点で非常に安心できる機能です。
何よりこのサイズで吸入機構を備えているという稀有な万年筆。
尻軸を回転させる動作は通常サイズのオプティマと同じで、ねっとり&しっかりとした操作感。
このガタつかない安定性のある造りは小さくてもオプティマそのもの。
デザインについて、携帯時はオプティマをそのまま小さくしたような見た目ですが、キャップを外すと仕様の違いが見受けられます。
これは次項のオプティマ比較で詳しく見ていくとして、デザインの部分です。
アウロロイドのカラーは漆黒の「ネロ」で、トリムがシルバーとなっています。
よくある仏壇カラーでないという点も私がネロを選んだ要因。
尻軸とクリップのサイズは通常のオプティマと同じということもあり、見た感じ小さめのオプティマという印象。
手に収まるサイズというのが私的にかなりお気に入りで、カヴェコスポーツを一種類とすると手元の小型万年筆はミニオプティマを入れて5種類となりました。
次の項では通常サイズのオプティマと比較していきます。
【オプティマ997/Vとミニオプティマを比較】
アウロラでオプティマというと一番の人気モデルではないでしょうか。
オプティマはアウロロイドというアウロラが開発した美しいマーブルレジンを持つモデルが一般的であり至高なのですが、私の手元にあるのはソリッドなグリーンのモデル「997/V」。
オプティマ自体がそれほど大きなサイズの万年筆ではなく、携帯時の全長は127mm。
一方、ミニオプティマは114mmで、通常のオプティマとの差は13mm。
重量はオプティマが22g、ミニオプティマが16gですので6g差です。
114mmの全長に対して重量16gですので流石に軽く感じますが、モンブランでいうところのマイスターシュテュック#144のような感覚で扱えます。
キャップを外したところ。
ミニオプティマの筆記時の全長は105mmで、通常サイズのオプティマは124mm。
このままで書く場合は間違いなく普通のオプティマの方が書きやすいですが、キャップを尻軸にポストした場合はミニオプティマの書きやすさがグンと上がります。
やはり小型の万年筆は尻軸にキャップをポストしてなんぼなんですよね。
キャップが無い状態では合谷(親指と人差し指の間)への収まりが悪く筆記が安定しません。
こちらがキャップをポストしたところ。
オプティマは軸径が太くずんぐりとしているため通常サイズのものでもキャップをポストした時のバランスが良く、他の万年筆にありがちな大きくなりすぎるという事がないのです。
キャップをポストすることでミニオプティマも合谷にしっかりと収まるようになり、重量の軽さも相まってスラスラとペン先を走らせることができます。
軽めの万年筆がお好きな方や女性にもお勧めできます。
首軸部分の違いを見てみましょう。
首軸と胴軸の堺にはインク窓があり、インクの残量の目安を目視確認することが可能。
ミニオプティマのインク窓はサイズがサイズですので狭め。
キャップを固定するためのネジ切りの位置はミニオプティマがペン先寄り、オプティマが胴軸寄りとなっています。
そしてミニオプティマの首軸はペン先に向かって先細っており、樹脂の風合いもマットです。
先細りの首軸は個人的に持ちにくいと感じる方ですが、首軸がマットな手触りであることと、グリップポイントが丁度インク窓の辺りになるため、ミニオプティマにおいてはそれほど持ちにくいと感じません。
ニブの形状比較です。
オプティマのニブのシルエットはエッジが聞いていて私は大好きなのですが、ミニオプティマのニブ形状はイプシロンに似ていて少し残念なポイント。
しかし、しっかりと14金ペン先の書き味は楽しめ、典型的なアーチ型ニブのオプティマと比べても柔らかさを感じる書き心地です。
ちなみにミニオプティマのペン芯の形状もイプシロンと同じでサイドにフィンのある小型ペン芯となっています。(字幅はペン芯に記載されています)
キャップリングを比較してみると、文字の刻印やメアンドロス模様の表現が簡素化されていることが覗えます。
ミニオプティマは上下に2本のラインと正面にシンプルな字体で「AURORA」。そして単線彫りのメアンドロス模様が刻印されています。
ミニオプティマ(万年筆)とオプティマ(ボールペン)のキャップリングを比較すると派手さがまるで違いますね。オプティマのBPは豪華絢爛です。
クリップは面白いことに同じで先端の玉も同じサイズ。
キャップ径が違うため全く同じクリップパーツではないですが、キャップのサイズが統一してあることでシリーズを並べた時の統一感が出るようになっています。
▲左からオプティマ997/V(FP)、オプティマプリマベーラ(RB)、ミニオプティマ(FP)、オプティマ(BP)。
筆記モードが違うオプティマを並べてもこのシリーズ統一感ですよ。
【他の小型万年筆とのサイズ比較】
さて、この項はミニオプティマの小ささ検証ということで、他の小型万年筆と並べてサイズ感を感じてもらおうと思います。
金ペンを持つ小型万年筆4本。
左から、セーラー プロギアスリムミニ、アウロラ ミニオプティマ、モンテグラッパ ミクラ、モンブラン ボエム。
見事に個人的な好みが出まくっていて、無意識にブラック×シルバーで統一されていました。
金ペン以外でこのサイズの万年筆にはカヴェコスポーツもありますね。
全長はミニオプティマが一番長く、丁度天冠分だけ背が高いです。
しかし重量は一番軽く、重量スペックは下記の通り左から、
プロギアスリムミニ:17g
ミニオプティマ:16g
ミクラ:22g
ボエム:25g
ボエムはペン先繰り出し機構を搭載していることもあって一番ズッシリしています。
ミクラはトリムや首軸などの金属パーツにシルバー925を使用しておりこれもズッシリ。
軽量級はセーラーとアウロラ。
キャップを外したところ。
それぞれがアイデンティティ溢れるデザイン。
インクの吸入方式は、プロギアスリムミニとミクラがカートリッジ/コンバーター両用式。
ボエムがカートリッジ専用。
そしてミニオプティマがピストン吸入式です。
ペン先の拡大。
実は4本とも字幅が違っていて、
左から、MS(ミュージック)、EF(極細)、M(中字)、F(細字)。
ニブの素材はミクラのみ18金で、あとは14金となっています。
それぞれにキャップをポストすると、ほぼ通常サイズの万年筆に早変わり。
キャップの全長は左(プロギアスリムミニ)から右(ボエム)に向かうにつれて短くなっていますが、キャップが尻軸に差し込まれる深さによりだいたいどれも同じくらいの全長にまとまっているのが面白い。
やはり書きやすい長さというものは決まっているんですね。
【ミニオプティマの書き味は?】
最後はミニオプティマの書き味について。
オプティマの書き味といえば、よく「サリサリ硬め」などと表現されることがありますが(私も過去にそう表現していたような…)、ミニオプティマもその例にならってアウロラらしい書き味となっています。
芯が通った書き心地といいますか、紙へのタッチも柔らか過ぎず“しなり”も少ないニブ。
力の入れ具合いによって抑揚を出すのが難しく感じますが、一定の字幅で文字を書き続けるのに適した書き心地のように感じます。
“とめ”がしやすく、殴り書きにも向いたペン先。
インクはモンブランのペトロールブルーを入れていますが、字幅EFでもしっかりと濃淡が出ていることが分かります。
997/Vと書き比べてみました。
字幅はミニオプティマがEF、オプティマがF。
芯がしっかりしているお陰もあり、文字が暴れることなく画数の多い感じも読みやすく書くことができます。
なぜかグリーン系のインクを入れてしまうオプティマ。
文字を並べるとEFとFで結構違うように感じます。しかし、海外製の万年筆にありがちなFでもMやB並みに太い、ということはなく、国産万年筆と同じような字幅感覚で使うことができるニブと言えましょう。
アウロラオプティマと言えばピストン吸入式ですが、その首軸素材の掛け合わせと吸入式が仇となってか、たまにTwitterに流れてくる首軸と胴軸の間で軸折れしたオプティマさん。
その軸折れ理由について考察してみます。
軸に使われている樹脂「アウロロイド」の強度がどうか、というのは分かりませんが、取り扱いの方法によって軸折れはある程度防げるのではないかと思っています。
オプティマで一番もろい部分が首軸と胴軸の間「インク窓」であることは幾つかの軸折れ写真で判断できますが、その要因として、インク窓前後の金属パーツと首軸のアウロロイドの間で素材組み合わせ的な負荷がかかりやすいのではないかと考えます。
異素材の組み合わせによる強度低下。
そのため、キャップを閉める時に力を加え過ぎたり、インク洗浄の際 首軸と尻栓を持って操作すると負荷がかかり、その負荷の蓄積で軸破損へと繋がっているのではないでしょうか。
写真のように、首軸と尻軸(尻栓)を持ってピストン操作すると、異素材の組み合わせである矢印のリング部分に負荷がかかると思われます。
そのため、洗浄の際は胴軸と尻軸(尻栓)を持ってピストンを動かし、首軸と胴軸の間にかかる負荷を無くしてあげることで軸折れを防げると考えています。
キャップも同様にネジ切りが首軸側に付いているため、なるべく優しく操作してあげるのが良いでしょう。
人にも物にも、優しく接しないと機嫌を損ねてしまうというところがイタリア(軸)っぽいですね。
さて、今回は久しぶりのアウロラ軸「アウロラ ミニオプティマ ネロ 万年筆」をレポートしました。
小さいながらピストン吸入機構とリザーブタンクを備え、しっかりとオプティマな「ミニ オプティマ」。
私の手元にあるのは漆黒のネロですが、美しいマーブルアウロロイドのモデルも存在します。
(幾つかのモデルは限定品だったような…)
オプティマのサブに、また、小型の手帳のお供に活躍できそうなミニサイズオプティマ。
なかなか見かけない万年筆ですが、見かけたら確保してみてはいかがでしょう。
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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