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これはもしかして両利き用!?異彩を放つセルロイド製国産ボールペン【プラチナ セルロイド ミッドナイトオーシャン ボールペン】

2021年9月12日

いよいよ夏も真っ盛りで毎日暑いですが皆さん如何お過ごしでしょうか。

 

コロナ禍のなか無事(?)に開催されたオリンピックも盛り上がりをみせていて、連日の日本勢メダルラッシュに元気をもらいながら仕事しているサラリーマンの方も多いのではないでしょうか。

 

私もその中の一人なのですが、オリンピックを楽しむには過去のオリンピック事情や選手の情報を知っているとより感情移入でき、応援にも熱が入るもの。

 

ということで「温故知新」という言葉もあるように、当ブログにおいてもオリンピックほどのスパンではないですが、何かのタイミングで過去の記事を振り返ったりしているのです。
過去の記事をもとに新たに分かったことは加筆する事もありますし…。

 

記事数が200近くになってくると、読み返さないと過去に書いた記事の内容を忘れかけてくる(というかこのボールペンの記事書いたっけ??となる)んですよね。
連日の暑さで私の脳が溶けてきているのかも知れませんが…笑

 

他のブログほど頻繁に更新している訳でもなく、のんびり4年半ほどかけて書いた200記事というのが多いのか少ないのか分かりませんが。

 

改めて自分のブログを読み直していると、ボールペンの記事が多いなぁと感じながらふと気付いたことがあって、そういえばプラチナのボールペンの記事をまだ書いてなかった…!と。

 

これはうっかりしていました…!

 

これだけボールペンの記事を書いておきながら、日本三大筆記具メーカーであるプラチナのボールペンの記事がないというのはお恥ずかしい限り。

 

確かに持っているのですよ、プラチナのボールペンは一本。
持ってはいるのですが、若干「これ本当にプラチナ製なのか…?」と疑問に感じる部分があり、自分の中でお蔵入りとなってしまっていました。
 

 
しかし今回、セルロイドミッドナイトオーシャンのボールペンを使い出したことでその機構の違い等々に気付き、再度引っ張り出してくることになっています。

 

お陰で現行のプラチナ セルロイドボールペンと比較できることになったのですが。
うーむ、売らずに仕舞っておいてよかったと感じる瞬間ですね。

 

ということで、ボールペンの記事が連投となりますが、今回はクオリティの高いセルロイド製国産ボールペンの話です。

 

「プラチナ セルロイド ミッドナイトオーシャン」を様々な角度から見ていきましょう。
 
 

 
 

【セルロイド製ボールペンの言葉にならない特別感】

前にも書いた事がありますが、万年筆についてはもともとセーラー派で プロフィットやプロフェッショナルギアKOPの柔らかなペン先に魅了されて国産はそればかり使っていたのですが…。

 

硬いUEF(超極細)ペン先ばかり使っていたプラチナ万年筆のセンチュリーから、#3776セルロイドでプラチナ万年筆の14金ペン先と滑らかなセルロイドの手触りを覚えて以来、プラチナの中字の出番が増えているのも確か。

 

プラチナのセルロイド製筆記具は一般的な樹脂の筆記具とは明らかに違う、言葉にならない特別感があります。
それはボールペンになっても同じで、単にセルロイドの滑らかな触り心地が良いから使いたい…というものではなく、筆記具としての完成度はもちろんのこと使う者を継続的に惹きつける何かがあるわけです。

 

この項では、それはいったいどこからくるのか を検証していきます。

 

まずはボールペンとしてのデザイン。
 

 
日本のメーカーの高級ラインにあたるボールペンは、ほとんどがクラシカルなデザインを継承しています。
ボールペンのデザインの概念ともいう言うべきでしょうか、キャップがあり胴軸がありペン先(口金)がある。
悪く言えばデザインにおける固定観念なのですが、良くも悪くも安価なボールペンにはノック式が多く、高級なボールペンになるほどキャップスライド式、回転繰り出し式を採用しているというのが通説です。

 

逆に、昔からあるスタイルであるがゆえに、操作感やデザイン的にも一番好まれるということになるのかも知れません。
 

 
プラチナのセルロイドも例外なく、天冠・クリップ・キャップ・胴軸・ペン先等のベーシックなパーツから成り立っており、これぞ日本の高級筆記具的な出で立ち。

 

書き忘れていましたがプラチナセルロイドボールペンの価格帯(希望小売価格)は税抜き1万~1.5万円で、ミッドナイトオーシャンは金具がシルバー(ロジウムプレート?)となるため、#3776セルロイドより0.5万高く設定されています。

 

やはり触り心地は格別で、主に筆記具に使われている3種類の樹脂の密度を調べてみると下記のようになります。

 

・セルロイド…1.4 g/cm3
・ABS樹脂…1.0~1.15 g/cm3
・アクリル…1.18 g/cm3

 

この数値が触り心地にどれだけ影響してくるのかというのはありますが、筆記具に使われる他の樹脂と比べて密度が高いことが滑らかな手触りに影響していると思われます。
 

 
セルロイドの発色について、透明感はアクリルほどではないものの明るい色から暗めの色までしっかりと出ていて、このミッドナイトオーシャンについてもディープブルーをベースにブラック/ホワイトが生み出す唯一無二の模様が美しい。
 

 
キャップリングに「#3776 Platinum Japan」の刻印。
万年筆もそうですが、キャップリングの形状がキャップに対してストレートではなくぽっこり丸みを帯びているのがセルロイドの特徴。

 

プラチナのボールペンを選ぶ上で気をつけたいことは、同じ#3776センチュリーでも品番によって「対応するリフィルが違う」ということです。

 

品番に5000が入る#3776センチュリー(BNB-5000)やプレジデント(BTB-5000)と蒔絵モデルはBSP-400と呼ばれるパーカーのようなヨーロッパG2規格のリフィルに対応している一方、品番が10000もしくは15000が入る#3776セルロイドモデルはBSP-200BやBSP-100Nという小さめのリフィル対応となっています。
 

 
▲#3776セルロイドはG2タイプリフィルには非対応なので注意。

 

同じ1.5万円のモデルである蒔絵がG2規格リフィルに対応しているのは、ベースモデルがプレジデントのため。
そもそもセルロイドモデルの軸のサイズが#3776やプレジデントと比べて「一回り小さい」というところが、対応リフィルの違いに由来していると言えましょう。
 

 
セルロイド軸の持つ「言葉にならない特別感」は、高密度なセルロイド軸のねっとり滑らかな触り心地と、専用リフィル対応からくる軸のコンパクトさ、それによるボールペン全体としての凝縮感。

 

このようにまとめられるのではないかと思います。
プラチナのリフィル(BSP-200B)は、油性インクですが粘度はジェットストリームに近い、日本人好みの書き心地。
黒インクの色はパイロットのアクロインキほどではないですが、クッキリと濃い黒で複雑な感じも見やすい濃度と言えます。

【プラチナ セルロイドボールペンの新旧(?)比較】

さて、冒頭で触れていたお蔵入りしていたプラチナのボールペン。
これが何を隠そう「#3776 セルロイド」の旧型ボールペンなのです。

 

もしかしたら過去の記事でちょこっと出番があったかもしれません(うーむ… あまり記憶に無いので出てないかもしれません、すいませんよく分かりません…笑)
それでは旧型のセルロイド ベッコウと思しきプラチナのボールペンとミッドナイトオーシャンを比較していきたいと思います。
 

 
2本を並べてみました。
キャップリングの位置を基準とした時、ペン先を出した状態だと旧型の全長が2mmだけ長いのですが、分解するとその要因が実は内部機構の違いによるものだということが分かってきます。
 

 
これを見てください…。
リフィル交換の図なのですが、使用するリフィルどころかペンを繰り出す仕組み自体が全く違うのです。
旧型は三菱のリフィル(CROSSと同じようなタイプ)を使い、現行はBSP-200Bという独自規格を使うという…。プラチナからはこの三菱タイプのリフィルが販売されていないことから、このセルロイドベッコウが本当にプラチナの物なのか確信が持てずにいたのです。

 

またキャップを外すときのの動作も、旧型はCROSSのようにキャップを真っ直ぐに引っこ抜くことで外れ、現行は通常の回転繰り出し式ボーイルペンと同じで半時計回しにキャップを回すことで外します。
この辺りの操作感も全く別物。
 

 
この機構の違いから、口金のデザインは同じものの繰り出されるペン先の量が違ってきています。
(旧型の方がせり出してくる感じ)
2本の重量についても内部機構の違いから、旧型が25g、現行が21gとなっています。
 

 
違いは他にもあり、これはデザイン的な違いになるのですがキャップリングの形状がストレート(旧型)なのが旧型、丸く膨らんでいるのが現行となります。

 

もう一つ、私が本当にプラチナのボールペンなのか疑いを持ったデザインがあり、それがキャップと胴軸の仕上げの違い。
キャップは現行のセルロイドベッコウと違わぬ仕上げですが、胴軸側がどう見ても“セルロイド イシガキ”なんですよね…。
 

 
現行のイシガキはベージュも混ざっているため、こちらとは少し見た目が異なるかもしれませんが、樹脂同士の色がハッキリと分かれているのがイシガキの特徴で、樹脂同士の色合いがボンヤリと混ざっているのがベッコウとなります。
なので、もしかするとこの個体は何かの間違いで胴軸がイシガキ、キャップがベッコウという可能性もありますね。
 

 
クリップのデザインは旧型も現行も同じでプラチナの伝統的なデザインを踏襲していると言えます。
現行もそうですが、トリムの色がシルバーなのはミッドナイトオーシャンのみで他の5モデル(エメラルド・ベッコウ・キンギョ・サクラ・イシガキ)はすべてゴールドトリム。
セルロイドの色との相性が考えられた組み合わせと言えるでしょう。
 

 
現行と細かな部分を比べることで、前から持っていた旧型のセルロイドベッコウが本物だということが判明しホッとしました。
いやー、しかしデザインはほぼそのままで、なぜ繰り出し機構の仕組みをガラッと変えたのかは謎が残りますね。インク容量の問題か何なのかネットを見てもどこにも情報がないため、もし同じような旧型のセルロイドをお持ちの方がいらっしゃれば参考にして頂ければと思います。

【万年筆とセットで満足感は3倍に】

先に手にれていて、その書きやすさに感動したプラチナの#3776セルロイド万年筆ミッドナイトオーシャン。
そこに今回のボールペンをプラスして持ち歩き、3倍楽しんでしまおうという魂胆です。

 

2本だから2倍じゃないのか!というところですが。
いやいや、数としては2倍ですが2本一緒に持ち運んで万年筆とボールペンを使い分けることができる愉しさというのがプラス1本分なのですよ。
 

 
私は紺色が好きなので迷わずミッドナイトオーシャンを2本ですが、他のセルロイド軸同士を組み合わせても面白いかも知れません。
例えば、エメラルドとサクラ、イシガキとミッドナイトオーシャン等、セルロイドの美しさは眼鏡と一緒で常に持ち運ぶ(身につける)ことで間違いなく気分の高揚につながってきます。

 

万年筆が#3776センチュリーや他の国産メーカー万年筆、例えばプロフィットやカスタム74と比べて小さいサイズでしたが、ボールペンも然り一回り小さく造られており、素材の凝縮感と持ち運びやすさという点でもう100点満点ではないでしょうか。
 

 
万年筆はキャップを尻軸にポストするとそれなりのサイズになりますが、ボールペンはペン先が小さくせり出すのみで携帯時/筆記時を問わずコンパクトな運用が可能。
何回も書きますが、この小ささで21gという凝縮感がたまりません。
 

 
キャップやクリップのサイズも大きく違います。
海のように深いブルーとシルバーのクリップが良く合いますね!
 

 
このサイズ感ですので、男性だけでなく女性の手にも合わせやすいかと思います。
プラチナの細軸ボールペンというとリビエールとかになってきますが、このクラシックなデザインのセルロイド軸を女性が仕事で使っていたら格好良い。断トツに格好いいと思います(個人的にですが…!)

 

しかしこの#3776セルロイドボールペンの素晴らしいところは仕様にも現れています。
「この記事のタイトルの内容、まだ出てきてないな…」とお気づきの読者様、流石です。
 

 
実はこのセルロイドボールペンは左右どちらにキャップを回しても芯を繰り出すことができる、希な仕様なのです…!
今まで手元に置いてきたボールペンの中で、この両側繰り出しに対応しているのは#3776セルロイドとヤード・オ・レッドのみです。
 

 
両側に繰り出せる。それすなわち左利きの方にも使いやすいという仕様と言えるのではないでしょうか。
通常はキャップに向かって反時計回りに回転させることでのみペン先は繰り出されますが、片手でキャップを捻って操作するとなった場合、左利きだと手前にキャップを回す必要があり使いにくいのではないかと。
(指の構造上、回しにくい方向に指を回す必要が出てくる)

 

私は右利きですので、実際左利きの方が使いにくいとお感じなのかは分かりませんが、#3776セルロイドやヤードのボールペンの場合、そういった操作系の心配が無いというのは回転繰り出し式の高級ボールペン選ぶ上でを大きなメリットではないかと思います。

 

そういった仕様上の抜け目の無さをみても、プラチナの#3776セルロイドボールペンは完成度の高いボールペンと言えるでしょう。

【各社ボールペンとの比較で見えてくるもの】

さて、最後はさんざんこの#3776セルロイドボールペンが小さい小さいとのたまわってきましたので、いつものように他のボールペンと大きさを比較して締めたと思います。

 

プラチナのセルロイドが気になっていて、購入を検討されている方はぜひサイズ感や重さをご参考に頂けたらと思います。

 

早速並べてみました。
レジン製のボールペンで書き味・持ちやすさ・所有満足感の3点においてお勧めできる5本。
コメントと重量データを載せておきます。
 

 
左から、

 

◆セーラープロフィット21。国産の高級ラインボールペンとしては珍しいホワイトカラーのボールペン。胴軸内ペン先寄りに配置されたの金属素材により低重心で書きやすい。
重量:33g

 

◆パイロットカスタムヘリテイジ91。どっしり大きめのシルエットでぬらっとした小気味良い回転動作と樽型の胴軸が持ちやすいボールペン。ビッグサイズで安定した筆記を愉しめる。
重量:28g

 

◆#3776セルロイドミッドナイトオーシャン。国産・外国産の回転繰り出し式ボールペンの中でもひときわコンパクトで艶やかなボールペン。軸の凝縮感は所有満足感に直結しています。
重量:21g

 

◆モンブラン マイスターシュテュック#P164。言わずと知れたドイツのモンブラン発、伝統的なシルエットと長きにわたり愛され続けてきた最高傑作のボールペン。手に吸い付くようなプレシャスレジン。
重量:23g

 

◆ウォーターマン チャールストン。アールデコ調の太軸ボールペン。金属素材のボールペンが多いウォーターマンの中でも一番お勧めなのが樹脂軸のチャールストン。お洒落です。
重量:28g

 

重量はこの中で一番軽い#3776セルロイドですが、このサイズ感を考えると軸のバランスはマイスターシュテュックやチャールストンに近いものがあると感じます。
 

 
樹脂製の書きやすいボールペンは胴軸部分が軽く湾曲(樽型)になっており、樹脂の指紋に吸い付くようなグリップ感と相まって余計な力を抜きながら長時間の筆記も可能となっています。

 

漆黒や純白の軸も美しいですが、大理石のような深いブルーのセルロイドも良いですね。

 

海のように深いブルーとシルバーのコンビネーションが美しいプラチナ#3776セルロイドミッドナイトオーシャン ボールペン。
コンパクトなサイズに手馴染みの良いセルロイド、左右どちらにも回転繰り出し可能な繰り出し機構など、総合的に高い満足感、快適な使用感が得られるボールペンです。

 

特に左利きの方には試して頂きたいボールペン。
1.5万円のクラスでありながら高いクオリティを誇る国産ボールペンを試さない手はありません。

 

それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

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