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ドネーションペン(ボールペン)の書きやすさはマイスターシュテュックに匹敵する【ユーディ・メニューイン ボールペン】

モンブランの筆記具の中では相当書きやすい部類に入るボールペンに出逢ってしまった…。

 

書きやすいけど他の人とはなるべく被りたくない、筆記具という身近なアイテムで個性を出したいという方にはピッタリではないかと感じる今回の記事のボールペン。

 

モンブランのボールペン中で間違いなく万人にお勧めできるのがマイスターシュテュックというモデル。
サイズは様々で、一番小さいのが106mmのモーツァルト(#116)で一番大きなサイズが146mmのル・グラン(#161)。

 

その中間にはクラシック(#164)があり、前回のモンブランの記事でも書いた「プレシャスレジン」による触り心地と、バランスの良い21gの重量が老若男女にお勧めできる要因となっています。

 

しかし、マイスターシュテュック#164と言えどモンブランのラインナップの中では定番中の定番で、高級筆記具の入門には最適ですが、周りに使われている方も多いのが現状。

 

クラシック#164をベースモデルとして個性を出すには、今であれば「Le Petit Prince®(星の王子さま)」等もありますが、ユーズドでリーズナブルに手に入る過去のモデルも狙い目。

 

過去のモデルで個性を出すとなるとお勧めなのがソリテールドゥエ系(これは球数が多く状態も良いものも多い)。ドゥエはキャップが金属、胴軸がレジンという組み合わせのため、プレシャスレジンの握りやすさプラス金属素材の高級感の両面を愉しめる仕様。
もしくは#164系からデザイン的に脱するのであれば、作家コレクションやドネーションペンあたりでしょうか。

 

最近リリースしたドネーションペン万年筆の記事でも書いたとおり、ドネーションや作家シリーズの一部モデルはデッドストックやユーズドにおいて価格が熟れているため手が出しやすいです。

 

特にドネーションペンのボールペンはマイスターシュテュックシリーズに近い仕様となっているため、すでに#164をお使いで結構気に入っていて且つグレードアップしたい場合に最適なチョイスとなります。
 

 
同じ限定モデルの作家シリーズは全体的に太めのイメージですが、ドネーションは太くても中太くらいのため#164に近い感覚で使うことができるのです。

 

それではドネーションペンの中から「モンブラン ドネーションペン ユーディ・メニューイン ボールペン」を比較を交えながら見ていきましょう。

【マイスターシュテュックとドネーションペンのボールペン比較】

マイスターシュテュックはその「最高傑作」の名の通り、軸径・重量・サイズからもたらされる最高の筆記バランスと書きやすさが特徴。

 

そして飽きの来ないクラシックで洗練されたデザインが長きにわたり筆記具ファンに愛される理由で、モンブランがラインナップの主軸として置いてるのも頷けます。
 

 
先程も書いたとおり、マイスターシュテュック ボールペンのラインナップは3種類。
一番小さな#116は小型の手帳にピッタリなサイズ、#164と#161は通常筆記に向き、#164より一回り大きな#161は#164よりも10g重く、モンブランの油性インクの書き味も相まって少ない力でぬらぬらと筆を走らせることができます。

 

そんな最高傑作がベースとなっているモンブラン ドネーションペンの「ユーディ・メニューイン」。
細かなデザインについては後々見ていきますが、ブラック×ゴールドのカラーリングやキャップ、胴軸、ペン先のバランスは#164の面影がありますね。
 

 
先ほどのマイスターシュテュック3本の横に並べると“骨格”が#164と同じだという事が分かります。
(クリップの位置、キャップリングの位置、ペン先の位置など)

 

スペックは、左から
・クラシック#164:全長136mm(携帯時)、重量21g、軸径10mm。
・メニューイン:138mm(携帯時)、重量26g、軸径11mm。
・ル・グラン#161:146mm(携帯時)、重量31g、軸径12mm。

 

スペック的にもちょうど#164と#161の間がドネーション メニューインとなっています。

 

特にこの軸径は絶妙で、#164に5gプラスの重量がどっしりとした手応えを残しつつ、力まずに握れるため近年の硬すぎず柔らかすぎないモンブランの油性インクとも非常に相性良く感じます。
 

 
マイスターシュテュックの良さを残しつつ、ドネーションペンとしてのデザインに昇華させたボールペンのメニューイン。
マイスターシュテュックの書き味に慣れ親しんだユーザーも満足のいく仕上がりです。
 

 
重心を比較してもマイスターシュテュックとほぼ同等となっており、クリップやキャップリング等装飾性のあるデザインではあるものの、軸の太さを足すことで全体の重心がうまくまとめらています。

 

軸の方の秘密については後の項で見ていくことにして、次の項では個性豊かなデザインについて見ていきましょう。

【メニューインのデザインと刻印を詳しく見る】

モンブラン ドネーションペン ユーディ・メニューインは、2000年の限定モデル。
ドネーションペンとしては1996年発売のレナード・バーンスタインに続くモデルで、メニューインの後は翌年2001年のヨハン・セバスチャン・バッハへと続きます。

 

ドネーションペン ボールペンのほぼ全般に言える事として、軸径などのベースがマイスターシュテュック#164であること。

 

ドネーションペンの各モデルは作家シリーズに比べシンプルな軸が多く、クリップは各大音楽家をイメージするモチーフがデザインされています。
 

 
メニューインはヴァイオリン、ヴィオラ奏者ということで、ヴァイオリンのネックをモチーフとしたクリップを装備。
のっぺりとしがちなペンのクリップというパーツを立体感溢れる物へと変えています。
 

 
メニューインが愛用していたグァルネリ・デル・ジェスに似ているかというとそうではないですが、ヴァイオリンのネックはシルエットが優美でペンのデザインとしても好相性。
ペグのデザインこそ割愛されていますが、強度のあるクリップとしてデザインをうまく落とし込んでいると言えます。

 

ドネーションペンの中でも個人的にカラヤンのキャップリング(鍵盤)に次いでインパクトのある部位ではないかと思うのですが如何でしょう?
 

 
キャップリングのセンターには「ユーディ・メニューイン」のサインがエングレービングされています。
 

 
このキャップリングの作り込みは秀逸で、メニューインのサインにヴァイオリンのサウンドホール(f)、そして「MONTBLANC」と続くのですが、斜めに入った彫り込みが光を反射して刻印を浮かび上がらせるような演出となっているのです!
(うまく表現できませんが、当記事中の画像を数枚見て頂くと何となくお分かり頂けるかも…)
 

 
サウンドホール(f)やMONTBLANCの文字も立体的な造りをしています。
ついでに偽物のメニューイン ボールペンも存在しており、私がネットで確認したものだとこのキャップリングの部分がエングレービングではなく表面がツルッとしたプリントのようになっていました。

 

偽物を見かけることも少ないですが、オークション等でドネーションペンのメニューインが出品されている際はキャップリングを注意して見てご判断ください。
 

 
クリップの裏には「GERMANY Pix®」の刻印。
実はこのGERMANYの刻印の字体、キャップリングの字体に合わせてあるのです(「G」を見て頂くと分かりやすいかと)
細かなところまで作り込まれている事が分かります。
 

 
天冠はお馴染みのホワイトスターですが、カラーはオフホワイト。
天冠の形はレナード・バーンスタインやバッハと同じ形状です。
ついでにクリップリングに刻印やシリアルナンバーはありません。GERMANYもクリップ裏のため無し。
 

 
改めてモンブランのペンはホワイトスターの形が様々でとても面白いです。
緩やかなドーム型もあればフラット型もあり、大きさもモデルにより様々でペン1本1本のアイデンティティーとして、新しいホワイトスターに出逢うと嬉しくなります。(うーむ、もはや病気かも知れない…)
 

 
ペン先に目をやると、ここにも刻印が存在しています。
初期のドネーションペンには共通でデザインされていた「MONTBLANC – PHILHARMONIA OF THE NATIONS -」(フィルハーモニア管弦楽団)の刻印。

 

この刻印がペン先に入るのは初期の4本のドネーションペン(バーンスタイン、メニューイン、バッハ、カラヤン)のみで、2005年以降に発売されたゲオルグ・ショルティからは文字は刻印されていません。

 

「MONTBLANC」の部分はマイスターシュテュックに見られる斜めラインの字体と同じで、それが超細かな刻印としてペン先に着いているという拘りよう。
この刻印が愉しめるのはボールペンだけの特権と言えましょう。
 

 
通常のマイスターシュテュック#164と並べるとキャップリングの深さが引き立つドネーションペン ユーディ・メニューイン。
まさに個性が引き立つ仕様となっています。

【ドネーションペン メニューインが使いやすい理由】

さて、デザインを詳しく見たところで話を少し戻し、メニューインの書きやすさの要因について探っていきたいと思います。
 

 
前述したとおり、マイスターシュテュック#164の兄弟モデルとも言えるドネーションペンのボールペン。
#164が丸みのあるシルエットに対して、ガッチリとした四角いイメージのあるメニューイン。

 

四角さが書きやすさと関係している訳ではありませんが、やはりこの絶妙な軸径が一番の要因と考えています。とにかく書いていて疲れない。
5g軽い#164の方が疲れないのでは?という声も聞こえてきそうですが、秘密はどうも軸径にありそうです。
 

 
メニューインも#164と同じく、キャップを(キャップに向かって)反時計回りに回してリフィル交換を行います。
この写真でも分かるように、わずか1mmの軸径差。されど1mmの軸径差なのです。
 

 
ル・グランまでは行かずとも十分に厚みを感じる11mmの軸径。
胴軸キャップ付近で11mmですが、実際に指を置く部分は10mmくらいでしょうか。#164の胴軸の一番太い部分を持っているかのような握り心地。
 

 
胴軸の断面を見てみると、ドネーションペンの方が1.5倍ほど太いことが覗えます。
ネジ切り径は同じですが、軸のレジンを太くすることでボリュームを出し全体の重量バランスを整えているよう。
外観からは見えない部分ですが、握ることで分かる厚いレジンの安定感。
 

 
キャップ側もネジ切りの部分が同じ=中身の回転繰り出しユニットも同じということになります。
#164の方がキャップリングが下に長いため少し違っては見えますが真鍮パーツは同じです。
 

 
回転繰り出し動作の塩梅もベースが#164とあって滑らか。
さらにメニューインはヴァイオリンネック型という大きめのクリップのため、右手でペン先繰り出し操作を行う際、人差し指がクリップにかかりやすく回しやすいのです。
 

 
デザインだけでなくボールペンとしての完成度も非常に高いメニューイン。
キャップから胴軸に繋がる真っ直ぐなシルエットは合谷への収まりも良く、ペン先を摘まむ3本の指に負荷をかけません。
それが一番の使いやすさの要因となっていると考えます。

 

使っていて気持ちの良いボールペンはそうそう出逢える物ではありません。
筆記感というのは人それぞれですが、ドネーションペンはマイスターシュテュックに裏付けられた使いやすさがあります。

 

そしてドネーションペンならではの個性的なデザインは、音楽好きに止まらずマイスターシュテュックを愛する全ての人に使って頂きたい、と思うのです。

【メニューイン ボールペンまとめ】

限定モデルというと装飾的で優美なところばかりフィーチャーされがちですが、ことドネーションペンに関しては万年筆もボールペンも、実用向けに造られたと感じる部分が多いです。
 

 
▲右から2番目がドネーションペン、ユーディ・メニューイン ボールペン。

 

ベストセラーで誰もが書きやすい筆記具自体をさらにグレードアップさせているような印象を受けます。
ベーシックな中にも大音楽家に由来する大胆なデザイン、しかしそれが書き味の邪魔をすることなく、マイスターシュテュックで培われてきた書くことに対するモンブランの前向きな姿勢が覗えるボールペンでした。
 

 
天冠のホワイトスターは書く時に必ず見え、確かにモンブランを使っているという満足感へ。
加えて最高傑作を扱うことは書く事への自信にも繋がっているようです。
 

 
▲ブラックのプレシャスレジンに美しく映り込むヴァイオリンネック型クリップ。

 

作家シリーズのような派手さこそないですが、シンプル故に磨かれた使いやすさが生きてくるという。
少し褒めすぎかも知れませんが、モンブランのボールペンで個性を出したい、でも書き味も捨てたくないという方は迷わずドネーションペンを手にすることをお勧めしたい。

 

それでは今回はこの辺りで。
最後までお読み頂きありがとうございました。

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