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ファーバーカステル 伯爵コレクション クラシック スターリングシルバー ボールペンのレビューと口金部ナンバーについての考察

2024年10月17日

去年くらいから金属軸にハマる状態が続いていて、その矛先はついに最上位モデルへ…。
 
各メーカーから出ている上位モデルの筆記具を買って使うようになると、物欲が無くなり懐事情が暖かくなるというメリットもある反面、何かしらバリエーションがある筆記具を買ってしまうとそれぞれの違いが気になり、また調査のために入手してしまうといった二次災害も起こるわけで…。
 
皆さんも筆記具に限らずそのようなご経験はないでしょうか。
 
私の経験で、バリエーションを調査することで増えすぎてしまった筆記具に「カヴェコ」と「カランダッシュ」があります。
当サイトのカテゴリーを見て頂くと、一旦モンブランは置いておいて、カヴェコとカランダッシュの記事数がやけに多いことに気付かれると思います。
 
特にこの2メーカーは、ベースとなるモデルが同じでカラバリやデザイン(柄)違いに加え、販売期間が長いことによるマイナーチェンジの多さによりかなりの点数が確認できます。
 
カヴェコであればスポーツシリーズの万年筆、カランダッシュであれば849やエクリドールがそれにあたるかと思います。
 
というか、上記2メーカーに限らず歴史が長いメーカーでいわゆるベストセラーと呼ばれるモデルであれば少なくとも数十種類のバリエーションがあることもざらなのです。
(CROSSのクラシックセンチュリーとかもそうですよね…)
 
今回の記事の筆記具はまたそういったカラバリやマイナーチェンジとは毛色が違い、意図的に仕様を変えて設計されていることが覗える筆記具。
それでいて、レギュラーなラインナップ中では最上位のモデル。
 

 
「ファーバーカステル クラシックコレクション スターリングシルバー ボールペン」
 
このモデルについて、入手するまでは同じクラシックコレクションである木軸のエボニーやペルナンブコとキャップ以外のデザインは同じで素材がシルバー925になっているだけだと思っていました。
 
実際は、単なるクラシックコレクション木軸のバリエーションではなく、細かな仕様や刻印が異なるれっきとした別モデル(アップグレードモデル)だったのです!
 
それでは、クラシックコレクションスターリングシルバーの細かなデザインや木軸モデルとの違い、また、他のシルバー925ボールペンとの比較を行っていきましょう。
 

 

 

 

クラシックコレクションスターリングシルバーの各部刻印と特徴

クラシックコレクションスターリングシルバーは、各年に発売される限定モデルを除き伯爵コレクションの中の最上位モデルに位置づけられています。
 

 
伯爵コレクション ボールペンの基本的デザイン・筆記具の機構として、優雅に湾曲したバネ式のクリップ、シルバーのバレル(昨今はルテニウムコーティングやローズゴールドといったシルバー以外のカラーラインナップもあり)、直径10mmのストレートな中細軸と胴軸の切り返し素材、ペン先に向かうほどシェイプされた口金、回転繰り出し機構にアクセスする王冠のようなデザインの天冠キャップなど。
 
使う者を伯爵にするといわれている(と勝手に言ってしまっています)クラシックコレクション。
シンプルながらも細部にまで練られたデザインからエレガントを感じます。
 
以前もエントリーモデルのギロシェと木軸のクラシックコレクションを比較しましたが、今回は総スターリングシルバー製のモデル。
 
軸の仕上げにおいて通常のクラシックコレクションと違う部分は、銀無垢(コーティング無し)ということ。
銀無垢故に表面にキズが付きやすく、経年仕様や長期保管により硫化が進み黒ずんでくるという特徴もありますが、それを味わいとするのがこれらスターリングシルバー軸の醍醐味と言えます。
 
それでは刻印とデザインをキャップの部分から順に見ていきましょう。
 
まずは回転繰り出し機構を含めたキャップ部分。
今回のモデルは新ロゴです。
 

 
個人的にはレーザー刻印の新ロゴより刻印打ち込みの旧ロゴの方が好みですが、新ロゴは新ロゴでスッキリとした印象。
伯爵コレクションのボールペンはキャップ部分を180°回転させてペン先を繰り出しますので、筆記中このロゴは裏側に回り、表には(925)の刻印が回ってくるようにできています。
 

 
ちなみに毎回やりますが、知らない方のための新ロゴと旧ロゴの比較。
左が新ロゴ、右が旧ロゴです。
 
旧ロゴは「ファーバー=カステル家」の紋章そのままが刻印されています。
盾の左右にあるごちゃっとしたものはずっと神獣か何かだと思っていたのですが、実際はスート(紋印)で植物のような柄です。
そう考えると、この小さなボールペンの刻印に紋章のデザインを落とし込むのは大変だったのではないかと思います。(紋章を完全再現できているとは言い難いですし…)
 
しかもしかも、旧ロゴの中にある伯爵が手に持っている物はワイングラスだと思っていました(失礼)が、実際は「槌」。
 

 
クラシックコレクションスターリングシルバーと聞いて、まず思い浮かぶ違いがこのキャップのローレットではないでしょうか。
深いローレットの刻みに硫化による疑似墨入れが入り味わいのある出で立ちに。
天頂は他のモデルと同じく滑らかに凹んでいます。
 

 
伯爵コレクション3モデルのキャップを並べてみました。
スターリングシルバーはダブルローレットですが、通常のクラシックに比べるとリングの太さ自体も太くなっていることが分かります。
 
ローレットのリングが上に一つ追加された訳ではなくペン自体の全長は他の2本と変わらず。
 
キャップの刻印についても、ギロシェはロゴのみ、クラシックはロゴと「GRAF VON FABER-CASTELL」、スターリングシルバーはさらに(925)の刻印と、クラスが上がるにつれて追加されていきます。
 

 
このローレットのダブルリングはデザインだけでなく、ペン先繰り出し時の操作性向上にも一役買っています。ポケットから出すと同時にペン先を繰り出すが非常にスムーズ。
 
キャップの話が長くなりましたが続いてはクリップ。
 

 
実はクリップ部分は付け根の幅がギロシェとクラシックで同じ、スターリングシルバーは更に幅増しとなりクリップ自体の形状も大きくなっています。
並べると結構いかり肩化している事が分かります。
 

 
クリップ付け根のリング下にも(925)の刻印。
クラシックの木軸ではリブパターンが印象的でしたが、スターリングシルバーもリブですが、よりストライプ感が強くなっています。
 

 
胴軸と口金の間のリングにも「GRAF VON FABER-CASTELL」の刻印。
スターリングシルバー軸は刻印の溝が硫化することで墨入れされ、使えば使うほどにクッキリと際立ち格好良くなるのが堪りません。
 

 
その背面には「HANDMADE IN GERMANY」の刻印。
こちらは新ロゴになってから変更となった製造国刻印で、旧モデルの際は「GERMANY」のみとなっています。
 
このようにキャップのみならず、デザインや刻印についてはクリップ形状や(925)刻印など、細かな部分ではありますが変更点が見られ 単なるクラシック木軸の色違いではなくアップグレードであることが分かってきます。
 

 

伯爵コレクション各モデルの互換性

さて、伯爵コレクションの基本となるボールペンの仕様(回転繰り出し機構やパーツ点数)は同じですが、ここでは上位モデルとのパーツの互換性はどうなのかをみていきます。
 
互換性を確認する主な部分としてはキャップと口金の2点があり、これらに互換性があるか確認していきます。耳を澄ませると そんなことをする必要ある?という声も聞こえてきますが、互換性があるということになれば、木軸にスターリングシルバーのキャップや口金を合わせる というさらに素敵な組み合わせもできるという事になります。
 
まずはキャップです。
 

 
左からギロシェ、クラシック、クラシックスターリングシルバーの順。
キャップの基本はどれも同じに見えるのですが、果たして入れ替えはできるのか。
 
手元のクラシック ボールペンはペルナンブコ・エボニー・アネロの3本。
これらにスターリングシルバーのキャップが着けられるかを確認したところ、
 
・ペルナンブコ→差し込めるがスカスカでロゴが中心からズレる
・エボニー→差し込めるが緩くロゴが中心からズレる
・アネロ→差し込めるがスカスカでロゴが中心からズレる
 
という結果に…。
逆にクラシックのキャップをスターリングシルバーの胴軸に差し込もうとすると、そもそもキツいのか嵌まりませんでした。
 
クラシック→クラシックという木軸同士で交換した場合も、嵌まるもののロゴが中心に来ず、実用的とは言えません。
 

 
ということで、結果はそれぞれのキャップはそれぞれのモデル(カラー)でしか適合しないということになります。(ギロシェも同様)
これはちょっと残念というか意外でした。
 
そのため、もし落下等でキャップが破損および大きく凹んだ場合の修理は、キャップの購入や2個イチということでは対処できず「修理に出す」という選択肢しかなさそうです。
 

 
互換性検証2点目の口金部分を入れ替えてみたところ、こちらは問題なく入れ替えができ、木軸にスターリングシルバーの口金という組み合わせが成立。
 
ただし、ギロシェについてはもともとの口金パーツの形状が違うため適合外。
クラシックとスターリングシルバー間でのみパーツの交換が可能となっています。
 

 

伯爵コレクションの口金に隠されたナンバーの謎

さて、比較検証についてはここからが本番と言って良いでしょう。
 
クラシックコレクション(木軸)を購入してからというものの最も気になっていた口金パーツネジ切り部の6桁のナンバー刻印の謎。
 
ギロシェを合わせて手元の伯爵コレクションが7本となりましたので、一斉に確認し並べていきたいと思います。
 

▲左から、ギロシェ(BP)、クラシック(エボニー・アネロ・ペルナンブコそれぞれBP)、スターリングシルバー(BP)、クラシック(MP)、ギロシェ(MP)という並び。
 
BP(ボールペン)とMP(メカニカルペンシル)はパーツや構造の違いから全長に差があります。
 

 
リフィルやペンシル芯交換の際は口金を捻って外すのですが、その時に確認できるのが謎のナンバー(赤枠内の部分)。
 

 
伯爵コレクションのBPとMPはこの刻印が確認できます。(クラシックコレクションのローラーボールは持ち合わせていないため未確認)
 
スターリングシルバーはナンバー以外にここにも(925)の刻印。
クラシックコレクションのプラチナコーティングはここに「PT」の刻印があります。
ギロシェは6桁の数字以外の刻印は無し。
 
以下に伯爵コレクションの各モデルにおける口金ナンバーを表にしています。
 

 
ナンバーの意味を考察する上で必要な情報として、モデル名と筆記モード(BPかMPか)、メーカーロゴの新旧を載せています。
 
この表を作るまで口金のナンバーは「口金パーツの品番」であると仮説を立てていたのですが、そうなると一番後発と考えられる新ロゴのスターリングシルバーの品番頭が「03~」であるのは合点がいかず(後発の品番であれば通常04以降になるはず…)。
 
また、同じボールペンかつ同じクラシックコレクションのプラチナコーティング同士でパーツを流用しないというのもおかしな話であるため、品番説はいよいよ怪しい。
 
BPとMPで関係を考えても規則性がないため品番説は無さそうな予感です…。
 
ついでにこの記事を書いている時に、ふとクラシックエボニーの万年筆はどうなんだろうと首軸(ネジ切り付近)を見たところ、ナンバー刻印があり「020707 PT」!?
 
となると、手元のエボニー万年筆はキャップと尻軸がシルバーコーティングで、首軸がプラチナコーティングということになります。
もしかすると仕様変更途中のモデルか、販売後 意図的に首軸のみを組み換えられた物である可能性があります。
考え方を変えると「PT=プラチナコーティング」という意味ではない可能性も。
 
ナンバーについては万年筆・ボールペン・メカニカルペンシルそれぞれについて02~のナンバーがあることから品番ではないと断定できそうです。
 
そうなると、このナンバーは「シリアルナンバー」と考えるのが自然かと思います。
筆記モードに関係なく、製造年月順にナンバーが打たれていると考えると合点が合うからです。
 
上記の表だと新ロゴのスターリングシルバー(BP)の方がクラシックエボニー(BP)より後に製造されたということになりますが、モデルチェンジの際は新旧混合が付きものであることや、上位モデルであるスターリングシルバーから新ロゴ化が進んでいったとも考えられます。
 
あくまで考察ですのでこれが事実でない可能性もありますが、ナンバーの状況から色々考えてみるのも楽しいですね。
 
皆さんのお手元にあるクラシックコレクションのナンバーはいかがでしょうか?
 

 

重量と筆記感の関係について/他のシルバー925ボールペンと比較

最後にクラシックスターリングシルバーの筆記感について書いていこうと思います。
 
名前の通り、スターリングシルバー素材の総金属製ボールペンであるがゆえに重量はかなり重く45gとなっていて、その辺のごっつい限定万年筆くらいの重さがあります。
 

 
持ってみた感じも軸径10mmの中細軸でありながらズシリとくる重み。
胴軸内の芯は真鍮ですが、それ以外はすべてシルバー925が使われているため金属の凝縮感があります。
 

 
現在はジェットストリームG2リフィルを入れており極細字でサラサラと筆記。
軸の重さもあってA4用紙に半分くらい書くと流石に親指の付け根が痛くなってきますが、重量軸でも軸径が細いため低粘度インクも快適。
 
ただ、重い軸には太めでヌラヌラ筆記がお勧めのため、長時間筆記する場合はインクを入れ替えて使うのも有りかと思います。
 

 
他のスターリングシルバー軸のボールペンとサイズ比較。
左から、カランダッシュエクリドールアンモナイト、ヤード・オ・レッドのバイスロイ、ファーバーカステルクラシックスターリングシルバー、パイロットカスタム切子、クロスタウンゼント。
 
5本のサイズ感はそれぞれですが、注目は重量。
なんとこの中では43gの太軸、パイロット カスタム切子を抑えて一番重いクラシックコレクション。
 

 
スターリングシルバーの刻印もメーカー、製造国でそれぞれ特徴がありこれを拝むだけでも愉しいです。
硫化が進んで刻印や模様(溝)が黒くなってくるとさらに味わい深くなります。
 
銀軸や木軸は書くことが楽しくなる筆記具。
仕事ではブラックとブルーのインクを使っていますが、インクの色もメーカーによって特徴があり面白いです。
ジェットストリームは極細で低粘度、エクリドールのゴリアットリフィルは低粘度に近い油性インクでこの中では一番書きやすく感じます。
ヤードはヴァルドマンのリフィルを入れていて少し濃いめで落ちついた(枯れ系)色合いが目にも優しく書いていると落ち着きます。
 

 
パイロットのアクロインキもジェットストリーム並みに柔らかな油性インクで、且つこちらは0.7mm。ぬらぬらとした品質の良い日本製油性インクをたっぷりと楽しめます。墨のようなインクの黒さもポイント。
クロスはクラシカルな印象のある少し薄めの色合いのブルー。
 
こういった歴史のあるメーカーのリフィルは、インクの色についても安価なボールペンインクによくあるテカリのある青々・黒々としたインクではなく、少し落ち着いた色合いのものが多く書き読みがしやすいのです。
 

 

さて、今回はファーバーカステル伯爵コレクションより、スターリングシルバーの最上位モデル「クラシックコレクション スターリングシルバー ボールペン」をレポートしました。
 
気品溢れる軸に重みによる高級感増し増しのボディは、クラシックコレクション(木軸)と比べても様々なデザイン上の相違点がありました。
 
冒頭でも触れた通り、バリエーションは調べる愉しさもありますが、追い求めていくと懐を圧迫するのも事実。
そんなときは初めから最上位モデルを買うという選択肢も良いかもしれません。
特にスターリングシルバー軸は一生の相棒として活躍してくれることでしょう。
 
それでは今回はこの辺で。
長くなりましたが、最期までお読み頂きありがとうございました。

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