廃番ボールペンの楽しみ方 【パーカー ベクターXL ボールペン】
皆さんこんにちは。
最近というか、以前からTwitterでも廃番文房具がアツいのですが、それはボールペンにおいても同じで廃番モデルやモデルチェンジによる旧モデルの方が人気が出る場合があります。
今回紹介するボールペンは、人気があるのか無いのかはよく分からないけど製造期間が短いうえデザインが珍しいため、個人的にはレアなんじゃないか?と思うボールペンです。
製造期間が短いと言っても モデル自体の息は長めで、長らくパーカーの廉価モデルとして一時はコンビニ等でも販売されていたモデル。
ベクターの派生モデルである、
「パーカー ベクターXL ボールペン」をレポートしていきます。
こちらも発売当時の販売価格としては2000円ほどと手が出しやすいモデルでしたが、一般的に知られる「ベクター」と比べて太く大きな軸が特徴。
さらに特筆すべきはそのカラー(ラインナップ)とクリップのデザイン!
おっと、いきなり本題に入りかけましたが順を追って見ていくことにしましょう。
ベクターXLのデザインとスペック
まずはベクターXLのデザインを見ていきます。
パッと見て印象的なのが大きな口金と天冠からクリップにかけてのデザインではないでしょうか。
他のパーカー筆記具と違い、キャップ・胴軸・口金という部品構成と言うにはキャップが小さすぎるデザイン(というか、ほぼ天冠からクリップが生えている感じ)です。
もともとクラシックな趣のジョッターに対して、モダンなデザインのベクターだったこともあり、この辺はベクター系の意匠をそのまま引き継いでいると言って良いでしょう。
クリップのラインと一体型の天冠。
胴軸よりも天冠の径の方が太いという独特のデザインです。
また、個人的にすごく気に入っている部分が胴軸に使われているレジンの色合い。
カラー名は「アイス」ですが、乳白色に少しグリーンが混ざったようなこの色は、何となく昔あったナショナル(現:Panasonic)のレトロモダンな扇風機に似ていると思いませんか?
何となく昭和を感じるこのカラー。
他にもブラウン、ブラックのラインナップがあるようです。
レトロモダンな感じのクリップ。
ベクターの場合、矢羽クリップというよりは矢印に近いクリップです。
先端も綺麗に“矢印”していますねー(笑)
矢印の中心を境に傾斜がつけられているため明暗のコントラストが美しい…。
矢印の挟み込む力もそこそこあります。
通常の一枚クリップではなくしっかりと別パーツで造られており、さらに(おそらく)板バネが仕込まれているようで適度な弾力があります。
天冠はティアドロップ型の面に胴軸と同じ樹脂が埋め込まれています。
若干カッパっぽくなってしまっている気がするので、個人的にはフラットなデザインでも良かったのではないかと思います。
続いて口金部分の刻印を見てみましょう。
携帯時の正面に来るのが「PARKER」ロゴ。文字の前につく旧ロゴもまたノスタルジックでいいですね。
携帯時の口金背面には製造年月を表す「LⅠ(Ⅰがかなり小さめ)」と「MADE IN UK.」。
製造年月ですが、パーカーの製造年月を表す刻印「QUALITYPEN」に則り予測すると、このベクターXLは2004年の第3四半期(7月~9月)製だということが分かります。
この「QUALITYPEN」については しばしば過去記事を紹介していますが、
今回もこちらの記事(パーカー75の後継ボールペン【ソネットとプリミエ比較】)を参考にお願いします。
そして「MADE IN UK.」ということでイギリス工場製。
特にどう変わるというわけでは無いのですが、何となく嬉しいUK製です。
最後にスペックですが、ベクターXLは全長134mm(携帯時)、重量が33g。
ボールペンとしては重い部類に入ります。
この重さがもたらす筆記感については後述していきますが、廉価モデルにしては高級感があるデザインとマッチした“重み”ではないでしょうか。
デュオフォールド他とのデザイン比較
パーカーと言えばデュオフォールド。ということでフラッグシップモデルのデュオフォールド・その他パーカーボールペンとデザインやサイズを比較します。
左から、デュオフォールド、ベクターXL、ソネットシズレ、パーカー75シズレ。
サイズの比較からですが、
携帯時の全長は左から132mm、134mm、134mm、128mmと、コンパクトな75シズレ意外は同じくらいのサイズ。
しかし、ベクターXLの軸径はこの4本の中では最大。
口金も大きいため握る三本の指に圧迫感を感じるほど。
ペン先の比較。
左からデュオフォールド、ベクターXL、ソネットシズレ。
真ん中のベクターXLはかなり大きな口金でスタイリッシュとは言い難いですが、近未来をデザインしたノスタルジックといった趣はなかなか面白いです。
デュオフォールドとソネットは、クラシックな矢羽を引き継いだ伝統的デザインで口金も先細りストレート。
筆記するときの文字の見やすさは断然先細りストレート口金の方が優れています。
口金の素材はデュオフォールドがシルバーコーティング、ベクターXLがステンレス、ソネットシズレがゴールドコーティング。
ベクターXLのステンレス口金は廉価モデルの最たるもので、経年劣化には強いのですが滑りやすいのが難点。
▲矢羽クリップの比較
高級感はクラシックな矢羽クリップの方がありますが、ベクターXLの矢印のような矢羽クリップもモダンで良い感じ。
装飾を削ぎ落としたシンプルかつミニマルなデザインです。
ベクターXLの一番格好いい部分ですね!
パーカーの廉価機種では珍しい回転繰り出し機構とリフィル交換方法
ベクターXLのペン先出しは回転繰り出し式。
通常のベクターはノック式やキャップスライド式ですが、この辺りXLは拘って造られているのではないでしょうか。
このベクターXLは生産期間が短く、後に全く同じデザインの「IM XL」にモデルチェンジします。
パーカーIMというと現在のパーカーの入門モデルで、価格的にはベクターシリーズの上に位置するモデル。
ですのでベクターXLはパーカーIMの全身モデルと言えそうです。
しかしながら「IM XL」は2008年に生産を終えた後、ノック式としてパーカーIMに生まれ変わります。
どちらかというとベクターXL(後のIM XL)の回転繰り出し機構を受け継いだのは「アーバン」の方で、皮肉なことにパーカーIMはデザイン・内部構造共にベクターXLの面影を消して全く別のボールペンとして誕生しているのです。
ベクターXLのリフィル交換は口金部分を反時計回りに回して行います。
変わった形の金属筒が姿を現しました。
この口金一体型パーツだけで22gと重く、全体の重量の約7割を占めています。
しかし胴軸内部にまで伸びる金属筒と天冠の金属パーツが作用して、うまい具合にフロントヘビーになり過ぎないように調整されていると感じます。
同じ回転繰り出し機構であるデュオフォールドとの違い。
デュオフォールドは天冠部分を回してペン先を繰り出すのに対して、ベクターXLは口金部分を回してペン先を繰り出します。
ひと言に同じ回転繰り出し機構といえど、パーカー社の試行錯誤が垣間見えて面白いですね。
中に入っているリフィルのパーカーロゴも新旧が確認できます。
デザインも新鮮で重量・回転繰り出し機構による操作感など、中級クラスとしてヒットするには十分なスペックを備えていたベクターXL。
なぜ、後継モデルを残さずに廃番となったのか。
最後は筆記感からそれを考えていきたいと思います。
大きめのペン先からもたらされる筆記感は…
ボールペンが筆記具であるために一番重要視しないといけないのが筆記感。
ベクターXLの書き心地はどうなのか。
結論から言うと「悪くない」、けど書きやすくは無い。
というのが私の正直な感想です。
一番ポイントとなる点が、ステンレス削り出しの口金。
軸径が太いのはすごく良いのですが、如何せん滑る。
私の指に潤いが無いだけなのかも知れませんが、非常に滑ります。(手を洗った直後なら大丈夫でした)
私が書き慣れた字を書くためのグリップポイントは通常口金の上辺りの胴軸なのですが、そこがステンレス無垢。
せめてもう少し金属部分が小さくペン先寄りならば私の手に合ったのかも知れません。
ただ、そうなるとベクターXLのベクターXLたるデザインが損なわれてしまいます。
愛情を持って使い続けるためにはグリップポイントを胴軸側にずらし、万年筆を握るような位置に指を添える。こうするとかなり握りやすくなるのですが、ボールペンは本来ペン先を立てて書く筆記具。
万年筆のような持ち位置で使うとなると慣れが必要となります。
回転繰り出し機構を備え、口金が大きめのデザインである同じメーカーの「パーカー アーバン」や、以前にレポートした「モンブラン スターウォーカー ドゥエ」はグリップポイントとして口金に明確な膨らみが設けてあるので同じ金属口金でも握りやすいのですが、ベクターXLは太軸でも膨らみが無く寸胴のため、書いていても無意識に指が胴軸側に逃げてしまいます。
そして胴軸側の樹脂を握る理由が「口金が滑るから」に他ならないのです。
そのような理由から私的には「書きやすい」と感じるボールペンではなかったです。
しかし…!
ベクターXLの醍醐味は筆記感ではなくそのデザイン!(と勝手に思っています!)
そのアイスという希なカラー、太い軸径、重さ、「MADE IN UK」、そして矢印のようなクリップ。
ベクターXLを手元に置く理由はたくさんあります。
ということで、その独特な筆記感に慣れつつこの廃番ボールペンを楽しんでいきたいと思います。
さて、皆さんのお手元の廃番筆記具は如何でしょう。
廃番筆記具には廃番となった「理由」が何かしらあるはずです。
それが生産コストなのか書き味なのか はたまたデザインなのか、自分なりの想像を働かせて使うのも一興です。
メーカーの歴史的に廃番ではあるものの、自分の手や感性にマッチする筆記具はあるはずです。
それを今後も探していこうではありませんか。
それでは今回はこの辺で。
最期までお読み頂きありがとうございました。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません